ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Mya - T.K.O. (The Knock Out) [2018 Planet9, MGM]

ミュージシャンだった父と、経理の仕事をしていた母の間に生まれ、幼いころから家族の前でマイケル・ジャクソンを模したパフォーマンスを披露するなど、歌とダンスに強い興味を示していた、ワシントンD.C.出身のシンガー・ソングライター、マイアことマイア・マリー・ハリソン。

4歳になると歌やダンスのレッスンにも通うようになった彼女は、10歳になると高い実力が認められ、多くのステージを経験するようになった。

そんな彼女は、98年にユニヴァーサル傘下のインタースコープと契約。同年に自身の名前を冠したアルバム『Mya』でメジャー・デビューを果たすと、アメリカ国内だけで140万枚を超える大ヒットにする。その後も、2016年までに6枚のアルバムを発表し、クリスティーナ・アギレラやピンク、リル・キムと一緒に、ラベルの”Lady Marmalade”をリメイク。グラミー賞を獲得し、複数の国のヒットチャートを制覇、全世界で500万枚を売り上げる2000年代屈指のヒット曲にした。

本作は、彼女にとって2年ぶり8枚目のスタジオ・アルバム。前作同様、彼女のレーベル、プラネット9からのリリースだが、配給はユニヴァーサル傘下のMGMとソニー系のオーチャードが担当。プロデューサーにはマーズの名義でボビー・ヴァレンチノやクリス・ブラウンの作品を手掛けているラマー・エドワーズや、フェイス・エヴァンスの作品にもかかわっているカイル・タイラーに加え、R.ケリーも参加。美しいメロディと洗練されたトラックを組み合わせる技術には定評のある面々と一緒に、本格的なR&B作品に取り組んでいる。

彼女の代表曲”Fallen”のフレーズを取り込んだ”The Fall”から続く、実質的な1曲目”Open”は、同郷のラッパー、ゴールドリンクをフィーチャーした作品。2017年に、彼のアルバムに収録された”Roll Call”で共演したこともある両者の、新しいコラボレーション曲は、メアリーJ.ブライジの”My Life”のフレーズをサンプリングしたスロー・ナンバー。”Roll Call”ではスタイリッシュなアップ・ナンバーを披露していた二人だが、こちらの曲ではサンプリングを駆使した泥臭いバラードを披露している。90年代に流行していた手法を、効果的に取り込んだ佳作だ。

また、本作に先駆けて公開された、”Ready For Whatever”の続編である”Ready For Whatever 2.0”は、マーズが制作を担当したバラード。ヴォーカルのアレンジなどに手を加え、彼女の色っぽさを強調した作品に仕立てている。セクシーな雰囲気を演出するため、R.ケリーの作品を引用する発想が彼女のキュートな歌声をセクシーにしている、大胆な発想が功を奏した良曲だ。

そして、同曲にさらなるアレンジを加えた”Ready (Part III - 90's Bedroom Mix)”は、R.ケリーの『12 Play』や『R. Kelly』を思い起こさせるロマンティックなアレンジとメロディ、彼女の艶めかしいパフォーマンスが合わさった名バラード。 近年はヒップホップ・アーティストとのコラボレーションも多いケリーだが、この曲では歌を聴かせることに重きを置いた90年代のスタイルを披露している。モダンな音色を使いつつも、少し懐かしい雰囲気を醸し出すトラックと、ヴォーカルの色気を巧みに引き出す作曲技術が聴きどころ。

それ以外の曲では、彼女とフロエトリーのマーシャ・アンブロジアーズが共作した先行シングル”Knock You Out”も見逃せない。マーシャのセンスが加わったメロディは、低域を効果的に使った、シンプルで落ち着いた雰囲気のもの。R.ケリーのエロティックなメロディとは一味違う、貫禄と安定感が魅力だ。

この作品からは、「成熟した大人」になった自身の音楽を模索して、試行錯誤を続けるマイアの姿が強く印象に残る。子供のころからステージに立ち、少女のように可憐な歌声で多くの人の耳目を集めてきた彼女も、まもなく40歳。芸歴も20年を超え、ベテランの域に達した彼女が、持ち前の可愛らしい歌声を活かしつつ、録音やステージの豊富な経験を活かした多彩なパフォーマンスを披露しようと腐心する姿が印象的だ。この、若い時の成功体験を捨てることなく、その一方で、現在の自分に合わせてスタイルを更新しようとする取り組みが本作の面白いところだと思う。

R&B界のキュートな歌姫が、往年の面影を残しつつ、成熟した歌唱を披露した充実の作品。年齢を重ねることで表現の幅を広げる彼女のヴォーカルが光る良盤だ。

Producer
Mya Harrison, Lamar "MyGuyMars" Edwards, Khirye Tyler, R.Kelly etc

Track List
1. The Fall
2. Open feat. GoldLink
3. Simple Things
4. Down
5. Ready For Whatever 2.0
6. Damage
7. Ready (Part III 90's Bedroom Mix)
8. You Got Me
9. T.K.O. Interlude feat. AGuyNamedCliff
10. Knock You Out
11. With You feat. MyGuyMars
12. If Tomorrow Never Comes





Ruben Studdard - Ruben Sings Luther [2018 Seg Music]

ファンタジアやジョーダン・スパークスなどの人気シンガーを輩出し、アメリカを代表する人気オーディション番組になったアメリカン・アイドル。同番組の第2シーズンで優勝し、レコード会社との契約を獲得したのが、西ドイツ(当時)のフランクフルト生まれ、アラバマ州バーミンガム育ちのシンガー、ルーベン・スタッダードこと、クリストファー・ルーベン・スタッダードだ。

米軍で働く父のもとに生まれた彼は、3歳のころから歌に取り組み、教会のステージに立つようになると、地元では知らぬものがいないほどの名歌手になったという。その一方で、ハイスクール時代にはフットボールにも夢中になっていたらしい。

そんな彼は、母親の持っていたレコードでソウル・ミュージックやゴスペルに慣れ親しんでいたこともあり、ソウル・ミュージックをレパートリーに持つ地元のジャズ・バンドに加入。その後、アメリカン・アイドルに応募し、優勝することになる。

同番組で有名になった彼は、2003年にウエストライフの”Flying Without Wings"のカヴァーで、アリシア・キーズも在籍していたJレコードからメジャー・デビュー。同じ年には初のフル・アルバム『Soulful』を発表し、全米総合アルバム・チャートを制覇。180万枚を売り上げる大ヒット作にした。その後も、2016年までに5枚のアルバムを録音。ずんぐりむっくりとした見た目に違わぬ親しみやすい雰囲気と、ゴスペルを土台にした本格的なヴォーカルで、多くの人に親しまれてきた。

このアルバムは、彼に取って通算7枚目のスタジオ・アルバムにして、初のカヴァー集。70年代から2000年代にかけて、多くの名曲を残してきたルーサー・ヴァンドロスの楽曲を取り上げた作品集で、アメリカン・アイドルの初戦で”Superstar”を披露し、審査員から声質や音楽性が似ていることを指摘された彼にとって、縁の深いアーティストの作品に取り組んだアルバムでもある。

本作の1曲目は、94年に発表された”Always and Forever”。ストリングスを贅沢に使ったバラードを、原曲に忠実なアレンジで丁寧に歌い込んでいる。メロディの部分では抑揚を利かせつつ、サビの部分で一気に盛り上がる展開に心が痺れる。シンプルな構成故に、歌い手の表現力が試される難易度の高いバラードを、きっちりと歌い上げる技術が聴きどころ。

続く”Never Too Much”は81年に発表され、グラミー賞も獲得したルーサーの代表曲。リズミカルなギターのカッティングと、しなやかなストリングスの組み合わせた伴奏に乗せて、グラマラスな歌声を響かせている原曲を、オーケストラを加えた豪華な伴奏をバックに朗々と歌ってみせる。原曲に比べると低音は弱く、ダンス・ミュージックっぽくない面もあるが、その分、ヴォーカルの魅力が引き立っている。

また、88年に発売された”Love Won't Let Me Wait”は、元デルフォニックスのメジャー・ハリスが75年にリリースしたシングルが元ネタ。アイザック・ヘイズやシールなど、古今東西の名シンガーが歌い継いできたバラードを、オリジナルにも負けない豪華な伴奏に乗せて披露している。パワフルな歌声が魅力のルーベンだが、ここではロマンティックなメロディが魅力の楽曲を、オリジナル版を意識して甘く歌っている。

そして、”Never Too Much”と同じアルバムに収録されている、ディオンヌ・ワーウィックの作品のカヴァー”A House Is Not a Home”は、本作のハイライトといっても過言では内容。ピアノとオーケストラを効果的に使った高級感溢れる演奏と、絶妙な力加減でメロディを歌い込むルーベンの姿が印象的、線が細く、繊細な歌声のオリジナル、パワフルな歌声が魅力のルーサー版の良いところを合わせたような名演だ。アメリカン・アイドルの決勝でも披露していた曲だが、今回の録音では当時よりもさらに熟練したパフォーマンスが楽しめる。

このアルバムの面白いところは、ライブ・ツアーと連動した作品ということで、実際にステージで披露されることを意識した、オーケストラを含む豪華なバンド・サウンドをバックに楽しめる点だ。高コストなこともあり、最近は珍しくなった大人数のバンドを用意し、主役の歌を引き立てている点は面白い。また、ルーベンも周囲の大きな期待に応え、大編成のバンドと一体になって、多彩な表現を披露している。この両者の一体感が本作の醍醐味だろう。

恵まれた歌声と、高い技術で人気を博してきた彼らしい、本格的なヴォーカル作品。低コストで様々な演奏を生み出せるデジタル機材がポップスに欠かせないものとなっている時代に、あえて生演奏と歌手の表現力にこだわった曲作りが心に残る良作だ。

Track List
1. Always and Forever
2. Never Too Much
3. So Amazing
4. Don't You Know That?
5. Bad Boy / Having a Party
6. Love Won't Let Me Wait
7. Here and Now
8. Til My Baby Comes Home
9. A House Is Not a Home
10. Power of Love






Tinashe - Joyride [2018 RCA]

2000年頃から役者として活動。2007年にはヴァイタミンCがプロデュースし、ヘイリー・キヨコやアリー・ゴニーノが在籍していた、5人組のガールズ・グループ、ザ・スタナーズに参加。コロンビアからEPをリリースしている、ケンタッキー州レキシントン生まれ、カリフォルニア州ラ・クレセンタ・モントローズ育ちのシンガー・ソングライター、ティナーシェことティナーシェ・ジョーゲンセン・カシンウェ。

2011年にソロ歌手に転身した彼女は、リル・ウェインなどのカヴァー動画をインターネット上に公開する一方で、自主制作のミックス・テープも発表。これらの作品が注目を集めた彼女は、2014年にRCAから初のスタジオ・アルバム『Aquarius』を発売。アメリカ国内だけで70000枚を売り上げた。その後も、ニッキー・ミナージュやケイティー・ペリー、マルーン5などのツアーに帯同しながら、2016年には2作目のスタジオ・アルバム『Nightride』を発表。精力的に活動してきた。

本作は、彼女にとって2年ぶり3枚目、CD盤が正式に発売された作品としては『Aquarius』以来、4年ぶり2枚目となるアルバム。プロデューサーにはスターゲイトやヒット-ボーイといった、個性豊かなヒット・メイカーが集結。その一方で、ソングライティングは彼女自身が主導するなど、久しぶりのフィジカル・リリースに向けた、彼女の意気込みを感じさせる作品になっている。

本作のリード・シングルは、ミーゴスのオフセットをフィーチャーした”No Drama”。プロデューサーには、ニーヨの”So Sick”やサム・スミスの”Too Good at Goodbyes”など、多くのヒット曲を手掛けているスターゲイトを起用。美しいメロディを引き立てるシンプルなアレンジがウリの彼ららしい、洗練されたトラックと、彼女のみずみずしい歌声が心地よいミディアム・ナンバー。耳に刺さるような強烈な音色を使うことが多いトラップのビートを、スターゲイトらしい上品な音色で構築した発想が面白い。

また、タイ・ダラ・サインフレンチ・モンタナを招いた”Me So Bad”は、クリス・ブラウンジェレミーなどの作品に携わっているヒットメイクとドレ・ムーンが制作を担当したアップ・ナンバー。ジェイソン・デルーロの作品を彷彿させる色鮮やかな音色の伴奏と、レゲトンのビートが気持ちよい。歌とラップを両方こなせるタイ・ダラ・サインの器用なパフォーマンスと、フレンチ・モンタナの切れ味鋭いラップが楽曲にメリハリをつけている。

また、スウェーデンのエレクトロ・バンド、リトル・ドラゴンとコラボレーションした”Stuck With Me”は、フェリックス・スノウなどが手掛ける電子音を組み合わせたスタイリッシュなビートと、繊細な歌声を持ちながら、随所で武骨な表現を見せるユキミ・ナガノの歌声が心に残るミディアム。ティナーシェとは異なるタイプの歌手と組むことで、楽曲に起伏をつける手法が光っている。

そして、スターゲイトが手掛けるもう一つのシングル曲”Faded Love”は、アトランタ出身のラッパー、フューチャーが参加。トラップを取り入れた”No Drama”に対し、こちらの曲は”Me So Bad”に近い、ラテン音楽のエッセンスを盛り込んだ鮮やかなトラックが魅力的。フューチャーのドスの利いた声が、軽妙なビートを引き締めている。ティナーシェの声をサンプリングしたサビも凝っている。

彼女の音楽の面白いところは、ビヨンセやリアーナのようなメイン・ストリームのR&Bを意識しつつ、シドシーザの作品を彷彿させる、尖ったサウンドを積極的に取り入れている点だ。アリーヤのような繊細で透き通った歌声を活かすため、伴奏の音を厳選しつつ、その組み合わせで新鮮な音楽を作る戦術は、同じように繊細な声をウリにするシド達とよく似ている。しかし、ガールズ・グループや俳優の仕事も経験している彼女の音楽は、彼女達の音楽と比べるとキャッチーで親しみやすい。この、前衛的な音楽性と大衆性の絶妙なバランスが、彼女の音楽の面白いところだと思う。

キャッチーな作品の随所に、前衛的な演出を盛り込んだ曲作りが光るアルバム。パワフルな歌をウリにする歌手が多いなかで、細部にまで気を配った表現と、新しいサウンドを積極的に取り込む大胆さで勝負した珍しい作品だ。

Producer
Tinashe, Hitmake, Hit-Boy, Stargate, T-Minus, Hitmaka, Mario Luciano etc

Track List
1. Keep Your Eyes On The Road (Intro)
2. Joyride
3. No Drama feat. Offset
4. He Don't Want It
5. Ooh La La
6. Me So Bad feat. French Montana, Ty Dolla $ign
7. Ain't Good For Ya (Interlude)
8. Stuck With Me feat. Little Dragon
9. Go Easy On Me
10. Salt
11. Faded Love feat. Future
12. No Contest
13. Fires And Flames





JOYRIDE
TINASHE
EPIC
2018-04-13

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