melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

NCT127 - Chain EP [2018 SM Entetainment, avex]

2年間のブランクを終えた2017年に、60万人規模のスタジアム・ツアーを成功させた東方神起や、平昌オリンピックの閉会式で、ダイナミックなパフォーマンスを披露したEXOなど、多くの人気アーティストを輩出している韓国最大手の芸能プロダクション、SMエンターテイメント。同社から2016年にデビューしたのが、「開放と拡張」をテーマに掲げる音楽プロジェクト、NCTだ。

NCT127は、同プロジェクトのメンバーで結成された9人組のダンス・ヴォーカル・グループ。プロジェクト名の由来である「Neo Culture Technology」の頭文字と、彼らの活動拠点であるソウル市の経度127から名前を取ったこのグループは、韓国以外にも、日本、中国、アメリカ、カナダの出身者が在籍する国際色の豊かさと、メンバーが流動的であることをコンセプトに掲げる同プロジェクトでは唯一、メンバーを固定している点が特徴だ。

2016年7月にEP『NCT #127』でメジャー・デビューを果たすと、10万枚以上を売り上げ韓国のアルバム・チャートを制覇。同年にはNCTとして事務所主催のツアーで海外公演を経験し、年末の音楽賞では新人賞を総なめにするなど、華々しい活躍を見せた。

また、2017年に入ると2枚のEP『Limitless』と『Cherry Bomb』を立て続けに発表。後者のタイトル・トラックは、Dr.ドレの2015年作『Compton』で腕を振るったデム・ジョインズをプロデューサーに起用。エミネムや50セントにも通じる陰鬱でハードなサウンドと、平均年齢21歳の若手グループとは思えない、切れ味の鋭いラップとセクシーなヴォーカル、緻密なダンスで海外でも注目を集めた。

本作は、グループ名義の作品としては2017年の『Cherry Bomb』以来となる4枚目のEP。3月にNCT名義のスタジオ・アルバムをリリースしている彼らの新作は、初の外国語作品。本作には4曲の新曲に加え、2作目のタイトル・トラック”Limitless”の日本語版も収めるなど、彼らのファンにも、それ以外の人にも嬉しい内容になっている。

アルバムの1曲目”Dreaming”は、B2Kの”Uh Huh”などを手掛けた、トリッキー・スチュアートの音楽を連想させる。軽やかなヒップホップのビートと、爽やかなヴォーカルが格好良いダンス・ナンバー。低音を響かせたビートの上で、甘酸っぱい歌声を響かせる彼らの姿が光る好曲だ。パンチの効いたラップが楽曲にメリハリをつけている。

続く”Chain”は、クリス・ブラウンやジャスティン・ビーバーなどのアルバムで頻繁に使われる、トラップやEDMを取り入れたアップ・ナンバー。シンセサイザーを多用したヒップホップのビートは、世界各地のミュージシャンが取り入れているが、彼らは曲の途中でビートを切り替えて楽曲に起伏をつけるアレンジと、声質や歌い方も異なる各人の個性を活かしたマイク・リレーで差別化を図っている。ローリング・ストーン誌に「アメリカのR&Bのプロデューサーが韓国に活路を見出している」という記事があったが、その流れを象徴するアメリカの尖ったサウンドと、ヴォーカルを大切にする韓国のポップスの良さが上手く合わさった良曲だ。

また、本作では唯一、既発曲がもとになった”Limitless”は、メアリーJ.ブライジジャスティン・ティンバーレイクのアルバムにも参加しているアンダードッグスが制作に携わったミディアム・ナンバー。チキチキというハットの音色と、低音を効果的に使ったビートと、地声からファルセットまで、メンバーの声をフルに活用したダイナミックなパフォーマンスが光る曲。他の曲に比べ、歌のパートが多いこの曲は、既発曲の中でも飛びぬけて日本語との相性が良いと思う。

そして、4曲目の”Come Back”は、本作でも異色の軽快なビートが格好良いダンス・ナンバー。事務所の先輩、SHINeeが得意とする90年代に流行したR&Bのスタイル、ニュー・ジャック・スウィングを取り入れたものだ。現代のR&Bよりテンポが速く、メロディも複雑なこのスタイルを、柔らかいテナー・ヴォイスで、ファルセットを織り交ぜながら、軽やかに乗りこなしている。軽妙なメロディに乗せて、言葉を多く詰め込む90年代初頭のラップを忠実に再現している点も見逃せない。偉大な先輩が光を当てたサウンドを、彼らの持ち味と組み合わせて進化させた点が聴きどころだ。

また、アルバムの最後を締めるのは、本作唯一のバラード”100”。一つ一つの言葉を大切にしたメロディや起承転結の明確な構成、サビに焦点を置いた曲作りは、アメリカのR&Bよりも、東方神起が得意とするような、日本のポップスに近いスタイル。新しいサウンドを積極的に取り入れるだけでなく、日本のファンにもなじみ深いスロー・ナンバーにも取り組んでいるのは面白い。若さやポテンシャルだけではなく、実力で勝ち上がってきたことを再認識させられる曲だ。

彼らの魅力は、「開放と拡張」というコンセプトを体現した、一つの国や地域に捉われない大胆な曲作りと、SMエンターテイメント出身のグループらしい、緻密なパフォーマンスだ。ニュー・ジャック・スウィングが再び光を浴びるきっかけを使ったSHINeeや、ヒップホップやレゲエを取り入れた作品を残しているEXOなど、海外のプロデューサーを起用して、欧米の黒人音楽を韓国のポップスを取り込む手法に長けているSMエンターテイメントだが、このグループでは西海岸のヒップホップやトラップのような、現在アメリカで流行しているサウンドを積極的に取り込み、それらを韓国のポップスに昇華している。この、海外の音楽を吸収し、自分達の音楽に還元できる点が彼らの強みだろう。

また、彼らのもう一つの大きな特徴は、各人の個性を引き出しながら、あくまでも「NCT127」というチームして纏まっているところだろう。複数の国や地域の出身者を集めたグループながら、ステージや作品を通して、メンバーの出自を意識することは少ない。初の日本語作品であるこのアルバムでも、日本人メンバーのパートを増やすような戦略は採らず、韓国語作品と同じように各メンバーに割り振っている。この、多様なバック・ボーンを持つメンバーを受け入れながら、彼らの出自ではなく個性に着目して「NCT127」というグループを組み立てている点が、彼らの音楽を唯一無二のものにしているのだろう。

世界各国から集めたメンバーをソウルで鍛え、そのメンバーでチームを組み立て、海外のクリエイターを交えて自分達の音楽を作り上げたNCT127。出身地も活動拠点も異なる人々が混ざり合って、一つの音楽を生み出してきた彼らは、人種や国境以上に「個人」が重視される、21世紀を象徴するグループだと思う。

Producer
Soo-Man Lee

Track List
1. Dreaming
2. Chain
3. Limitless
4. Come Back
5. 100






BTS - Love Yourself: Tear [2018 Big Hit Entertainment]

2016年にリリースしたアルバム『Wings』が世界的なヒットになったことで、その名を世界に知らしめた、韓国のボーイズ・グループBTS(漢字圏では「防弾少年団」表記)。

2017年には5作目のEP『Love Yourself: Her』を発表。全米総合アルバムチャートの7位に入り、63年に坂本九のベスト・アルバムが記録した14位を上回っただけでなく、アジア出身の歌手としては史上初のトップ10入りを達成するなど、アジアのポップス史に残る大きな成功を収めた。また、同作からのリカット・シングル”Mic Drop”スティーヴ・アオキによるリミックスは、全米総合シングル・チャートの25位に入り、ゴールド・ディスクを獲得。73年にピンクレディの”Kiss In The Dark”が残した37位を超えただけでなく、フィフス・ハーモニーの”Down”の44位を押さえて、ヴォーカル・グループ作品の同年最高位を記録するなど、多くの足跡を残した。

また、2018年に入るとラップ担当のJ-Hopeの初のソロ作品『Hope World』を公開。韓国出身のソロ・アーティストとしては最高記録となる、全米総合アルバム・チャートの38位に入っただけでなく、インターネット経由で無料ダウンロードも可能だったにも関わらず、初週だけで8000ユニットが購入されたことでーも話題になった。

そして、4月にはデフ・ジャム・ジャパンから発売されたシングル曲に新曲を加えた日本語アルバム『Face Yourself』を発表。外国人でありながら、男性グループの日本語作品で、初めて欧米のヒット・チャートに入るという珍しい記録も打ち立てた。

本作は、韓国語の録音作品としては『Love Yourself: Her』以来、約半年ぶりとなる新作。プロデュースは『Wings』同様、彼らの作品を数多く手掛けてきたビッグヒット所属のプロデューサー、Pドッグが大部分の曲を担当。それ以外にも”Mic Drop”のリミックスで腕を振るったスティーヴ・アオキや、タイラー・アコードといった海外のヒットメイカーが携わった曲や、メンバーのジョングクがプロデュースした曲も収めるなど、大きな成功を収めた後の作品とは思えない、堅実な構成のアルバムになっている。

アルバムからの先行シングル”FAKE LOVE”は、Pドッグのプロデュース作品。シンセサイザーを駆使してスタイリッシュに纏め上げたトラックと、滑らかなメロディの組み合わせは、アッシャートレイ・ソングスの近作を思い起こさせる。ミディアム・バラード向けのトラックで、テンポよく言葉を繰り出す3人のラップと、4人の色っぽい歌声の組み合わせが光る好曲だ。アメリカやヨーロッパで流行しているサウンドを取り入れつつ、きちんと韓国のポップスに落とし込んでいる。

続く、”The Truth Untold”は、スティーヴ・アオキとの2度目のコラボレーション曲。しかし、この曲が本作最大の曲者。伴奏にはシンセサイザーを多用しているものの、躍動感のあるビートも高揚感のあるフレーズも一切入っていない、切ない雰囲気のスロー・バラードなのだ。事前情報を一切入れずに聴いた人なら、まず、スティーヴの作品とは思わない、哀愁を帯びたメロディが魅力のバラード。だが、余計な情報を忘れて、純粋に音楽として聴くと、7人の個性豊かな歌声と、シンプルなメロディの相性が素晴らしいことに気づかされる。世界を相手に知恵と実力で戦ってきた両者らしい、意外性に富んだ発想と、高い実力が伺える楽曲だ。

また、それ以外の曲で見逃せないのは、Pドッグがプロデュースした”Airplane pt.2 ”だ。J-Hopeのソロ作品『Hope World』の収録曲の続編という位置づけだが、注目すべきはそのサウンド。レゲトンやサルサのエッセンスをふんだんに盛り込み、熱く妖艶な雰囲気のラテン・ポップスに落とし込んでいる。本場の歌手と比べても遜色のないエロティックなものになっている、ダディ・ヤンキーのスタイルを取り込んだRMやSugaのラップも堂に入っている。2017年にはルイス・フォンシの“Despacito”が世界的なヒットになり、2018年に入ってからも、韓国の男性グループ、スーパー・ジュニアがラシール・グレースをフィーチャーした“Lo Siento“をリリースするなど、北米を中心に世界の音楽市場で人気のある、中南米の音楽を取り入れた良曲だ。

そして、”The Truth Untold”以上に、異彩を放っているのがPドッグがプロデュースしたヒップホップ作品”Anpanman“だ。自らをアンパンマン(これは、グループ名の韓国語発音Bangtanに引っ掛けている)になぞらえ「僕には逞しい筋肉や特別な能力もないし、バットマンのような凄い自動車も持ってないけど、愛する君のところに直ぐに飛んでいくし、君のために全てを捧げるよ。だから(アンパンマンみたいに)僕の名前を呼んで(大意)」という、ウィットに富んだ歌詞と、レゲトンのリズムを取り入れた軽妙なサウンドの組み合わせが面白い曲だ。前作『Wings』でも、ケブ・モーの渋いブルース作品”Am I Wrong“をポップなダンス・ナンバーにリメイクしたことも記憶に新しい、彼らのセンスが遺憾なく発揮されている。

このアルバムの面白いところは、R&Bやヒップホップ、ラテン音楽のエッセンスをふんだんに取り入れながら、歌、ダンス、ラップを織り交ぜたパフォーマンスを繰り出す、ヴォーカル・グループの強みを遺憾なく発揮している点だ。平均年齢24歳(発売時点)という、若さを活かした爽やかな歌声と、厳しい鍛錬や年齢の割に豊富な音楽経験を活かした多彩な表現。様々なビートを乗りこなしてきたラッパー達の変幻自在なパフォーマンスが、個性豊かな楽曲の魅力を引き出しつつ「彼らの音楽」に落とし込むのに一役買っている。また、バラードを含むバラエティ豊かな楽曲が、ハードで複雑なパフォーマンスが魅力の彼らの手によって、ステージではどのように披露されるのか、想像を掻き立てるものになっている点も見逃せない。

スパイス・ガールズが「イギリス人らしさ」を、ジャスティン・ビーバーが「カナダ人らしさ」を打ち出すよりも、「自分らしさ」を前面に押し出して多くの人から愛されたように、「韓国人らしさ」よりも「BTSらしさ」を強くアピールすることで、流行のサウンドを自分達の音楽に昇華させた魅力的な作品。新しい音を取り込みながら、あくまでもポップスターであり続ける、センスの良さとバランス感覚が光る親しみやすさと奥深さが心に残る名盤だ。

Producer
Pdogg, Steve Aoki, lophiile, Jungkook, Hiss noise, ADORA etc

Track List
1. Intro : Singularity
2. FAKE LOVE
3. The Truth Untold feat. Steve Aoki
4. 134340
5. Paradise
6. Love Maze
7. Magic Shop
8. Airplane pt.2
9. Anpanman
10. So What
11. Outro : Tear




Childish Gambino - This Is America [2018 RCA]

2016年に発表したアルバム『Awaken, My Love!』が、アメリカ国内だけで50万枚を売り上げ、グラミー賞の最優秀アルバム部門にノミネートするなど、ミュージシャンとしても大きな成功を収めた、チャイルディッシュ・ガンビーノこと、ドナルド・グローヴァー。

その一方で、俳優としても、コメディ・ドラマ「アトランタ」で高い評価を受け、スター・ウォーズのスピンオフ作品や、実写版「ライオン・キング」に出演するなど、着実に実績を残していった。

この曲は、『Awaken, My Love!』以来となる新作。チャイルディッシュ・ガンビーノとしては最後のアルバムになると発表している、次回作に先駆けて公開された楽曲だが、同じ時期に「同作には収録されない」というコメントが出るなど、様々な情報が錯綜している。

今回のシングルは、これまでも彼の音楽を一緒に作ってきた、ルドヴィグ・ゴランソンとグローヴァーの共同制作、共同プロデュース作品。電子音の冷たく、刺々しい音色を使ったビートは、現在流行しているヒップホップやトラップのものだが、低音を抑え気味にして、パーカッションなどの音を強調することで、フェラ・クティや彼の息子、ショーン・クティが得意とするアフロ・ビートっぽく仕立てている点が面白い。曲の途中で、リズムを細かく変える演出を盛り込むことで、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックの象徴である「中毒性のあるループ」と、アフリカ音楽やアメリカのブルースを含む、世界各地の土着の音楽が持つ「変幻自在のアレンジ」を同居させている点も見逃せない。

また、この上に乗るヴォーカルは、ラップやブルース、フォーク・ソングなど、様々な音楽の手法を用いて、「現代のアメリカ」を描写したもの。社会問題に切り込む作品自体は無数にあるが、この曲では、抽象的で比喩的な表現を採り入れることで、政治的な作品に芸術性と娯楽性を付け加えている。

この曲の魅力は、歌、トラック、振付、映像表現など、あらゆる手段を用いて「アメリカ社会」に切り込みつつ、きちんとエンターテイメント作品に落とし込んでいるところだろう。歌やトラック以外に目を向けると、本作のミュージック・ビデオでは、ミンストレル・ショウやアフロ・ビートの表現や、現代舞踏の手法を織り交ぜたパフォーマンスを披露する一方、映像そのものも、カメラワークから小物まで、細部にも気を配った作品になっている。おそらく、コメディから先鋭的な音楽まで、あらゆる表現の世界を経験してきた彼の感性によるものが大きいだろう。

コメディアン、俳優、ミュージシャンと、多彩な顔を持ちながら、全ての分野で高い成果を上げてきたドナルドの豊かな才能が凝縮された珠玉の一品。インターネットによって、映像作品を気軽に楽しめるようになった現代ならではの傑作だ。

Producer
Donald Glover Ludwig Göransson

Track List
1. This Is America



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