ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

October London - Not Your Average Album [2017 October London, Cadillacc Music]

2016年に、スヌープ・ドッグのアルバムに起用されたことで注目を集め、同じ年に配信限定でリリースしたデビュー作『Color Blind: Love』が、往年のソウル・ミュージックと現代のR&Bを融合した作風で高く評価された、インディアナ州出身のシンガー・ソングライター、オクトーバー・ロンドンことジャレッド・サミュエル・アースキン。

2017年に入っても、彼の勢いは止まらず。スヌープ・ドッグのアルバム『Never Left』にシンガーとして参加する一方で、自身の名義でも4月に2枚目のEP『Color Blind: Hate & Happiness』を発表。精力的に活動している。

本作は、前作から僅か2か月という短い間隔で発売された、彼にとって初のフル・アルバム。1曲を除いてすべての曲をセルフ・プロデュース。収録曲のほぼすべてを自身の手で書いたもので、これまでの作品同様、新旧のブラック・ミュージックの美味しいところを凝集した、魅力的なヴォーカル作品に仕上がっている。

アルバムのオープニングを飾る”Late Nights”は、重いビートを軸にした泥臭いトラックと、哀愁を帯びた歌声が印象的なミディアム・ナンバー。ヒップホップのビートと荒々しいヴォーカルの組み合わせは、アンソニー・ハミルトンやライフ・ジェニングにも似ているが、彼の歌声の方がスマートで色っぽい。ソウル・ミュージックとR&B、両方に造詣の深い彼らしい作品だ。

これに対し、”Air to Traffic Control”は、ギターの演奏を強調したトラックをバックに、時に荒々しく、時にじっくりと歌う姿が印象的なミディアム・ナンバー。ギターの伴奏に乗せて、次々と言葉を放っていく彼の存在感は、”Like A Rolling Stone”を歌っていたころのボブ・ディランにも通じるものがある。彼の歌手としてのポテンシャルの高さを再確認させてくれる佳曲だ。

また、本作で唯一、外部のプロデューサーを起用した”Burnin'”は、トラップとフォーク・ソングのエッセンスを混ぜ合わせたミディアム・ナンバー。L.A.リードとペブルスの息子であるアーロン・リードが手掛けたトラックは、ソウル・ミュージックの武骨さとR&Bの洗練された雰囲気が同居した不思議なもの。ファルセットを多用して、アッシャーウィークエンドのような、色っぽさと聴きやすさを同居させたヴォーカル・アレンジも光っている。新しいサウンドを取り入れつつ、それをソウル・ミュージックと融合させる二人の技術が光る曲だ。

そして、本作の最後を締める”Im Winning”は、彼の作品では異色の本格的なヒップホップ・ナンバー。ミーゴスやリル・ヨッティのアルバムに入っていそうな、本格的なトラップ・ビートをバックに、ワイルドなラップを聴かせている。曲に応じてラップと歌を使い分けるアーティストといえば、ドレイクパーティネクストドアなどがいるが、彼のラップはドレイクに近い、歌とラップで違う声を使い分けたものだ。ラッパーとしての実力は成長途中だが、今後の進化を期待させるものだ。

今回のアルバムでは、スヌープ・ドッグこそ不参加だが、過去の2作品の路線を引き継ぎつつ、外部のクリエイターを招いて新しいスタイルに挑戦するなど、野心的な姿を見せている。しかし、知名度が高まり、色々なアーティストとコラボレーションをする機会を得ても、「往年のソウル・ミュージックと現代のR&Bを融合した作風」という彼の持ち味がブレていない点は素晴らしい。この、確固とした軸と、柔軟に新しいものを取り入れる感性の鋭さが、彼の音楽を魅力的にしていると思う。

新しいサウンドを貪欲に取り入れながら、往年のソウル・シンガーのように、じっくりと歌を聴かせてくれる希少な作品。ヴィンテージ・サウンドと流行の音が相反するものではなく、一つの作品に同居できることを証明してくれた希少な作品。CDやアナログ盤で発売してくれないかなー。

Producer
October Londonm, Aaron Lead

Track List
1. Late Nights
2. Drunk Irish Love
3. Air to Traffic Control
4. Oh Jackie
5. Im a Dog
6. Burnin'
7. Dancing With the Devil
8. Like a Bullet
9. We Can Change
10. Im Winning





Not Your Average Album [Explicit]
October London/Cadillacc Music
2017-06-07

Karriem Riggins - Headnod Suite [2017 Stones Throw]

90年代にコモンやジェイ・ディラといった、多くの人気ヒップホップ・ミュージシャンの作品を手掛けたことで名を上げ、近年はエリカ・バドゥやカニエ・ウエストなどの作品にも起用されている、ミシガン州デトロイト出身のドラマー兼プロデューサー、カリーム・リギンス。

そんな彼は、演奏者としてもオスカー・ピーターソンやダイアナ・クラールの作品に参加するなど、多くの実績を残していることで知られている。2016年には、カナダ出身のクリエイター、ケイトラナダのアルバム『99.9%』に収録されている”Bus Ride”にフィーチャーされたことも記憶に新しい。

本作は、そんな彼にとって、2012年の『Alone Together』以来となる通算2枚目のオリジナル・アルバム。前作同様、ヒップホップの制作手法とドラムの演奏を組み合わせた、彼らしい作品になっている。

アルバムの実質的な1曲目である”Other Side of the Track”は、ジュニー・モリソンの”Spirit”をサンプリングしたミディアム・ナンバー。DJシャドウとカット・ケミストのツアーでプレイされたことも話題になった”A Whole Lot Of Love”(原曲はレッド・ツェッペリン、シャドウ達はデニス・コフィーのカヴァー・ヴァージョンをプレイ)を彷彿させる、荒々しいギターのサウンドが格好良い楽曲。”Spirit”からサンプリングされたキーボードの音色が、刺々しい雰囲気のトラックをマイルドにしている。

これに対し、同じ”Spirit”をサンプリングしながら、”Other Side of the Track”全く違う雰囲気を醸し出しているのが、デトロイト出身の詩人、ジェシカ・ケア・ムーアをフィーチャーした”Suite Poetry”だ。キーボードの音色をサンプリングした前者に対し、こちらはピアノの演奏を中心に引用。ニッキ・ジョヴァンニを連想させる透き通った声と、重厚で存在感のある言葉が印象的。同じレコードを使いながら、対極の作品を生み出せる彼のスキルとセンスが光る曲だ。

また、ロックやソウルをサンプリングした本作では異色の、電子音楽を使った曲が”Pay.gio”だ、ジョエル・ヴァンドローゲンブロエックが81年に発表した”Computer Groove”を引用したこの曲は、80年代の電子音楽で多用されていたアナログ・シンセサイザーの音色を効果的に使った近未来的な雰囲気の曲。電子音楽をジャズやソウルと同じように、ヒップホップの素材として分解、再構築する姿は、彼とも縁の深いジェイ・ディラの作風を思い起こさせる。

だが、本作の目玉はなんといっても”Bahia Dreamin’”だろう。彼がプロデュースしたエルザイの”Two 16's”のトラックを組み替えた曲で、原曲の雰囲気を生かしつつ、打楽器などの音を追加したインストゥメンタル作品になっている。中盤以降にジャズのピアノトリオの演奏を挟み込み、混ぜ合わせるセンスは、ヒップホップのプロデューサーとジャズ・ドラマーという、二つの顔を持っている彼の持ち味が発揮された楽曲だ。

今回のアルバムでも、彼のビート・メイカーとしての高いセンスと、豊富な演奏経験が反映された正確無比、かつ躍動感溢れるグルーヴが堪能できる。これだけ確固たる作風を持ちながら、収録された29曲一つ一つに個性を与えられるのは、ヒップホップやR&B、ジャズの世界で、いろいろなスタイルのアーティストと一緒に作品を生み出してきたからだろう。

長いキャリアを通して、多くの音楽を見聞きし、経験してきた彼にしかつくれない、魅力的なインストゥメンタル作品。歌やラップが入っていない音楽は苦手な人、ヒップホップや電子音楽のようなコンピュータを使った音楽が苦手な人にこそ、ぜひ聞いてほしい。トラックメイカーの奥深い世界の一端を垣間見れると思う。

Producer
Karriem Riggins

Track List
1. Suite Intro
2. Other Side of the Track
3. Yes Yes Y’all
4. Invasion
5. Trombone Love
6. Crystal Stairs
7. Sista Misses
8. Detroit Funk
9. Oddness
10. Tandoor Heat
11. Chop Chop
12. My Reflection
13. Dirty Drum Warm Up
14. Pay.gio
15. Suite Poetry feat. Jessica Care Moore
16. 4Es’J
17. Joy and Peace
18. Cheap Suite 1
19. Cheap Suite 2
20. Cheap Suite 3
21. Cheap Suite 4
22. Never Come Close
23. Re-doze
24. Bahia Dreamin’
25. Cheap Suite 5
26. Cia
27. Keep It On
28. Fluture
29. Suite Outro – Hodge, Poyser, Riggins





Headnod Suite
Karriem Riggins
Stones Throw
2017-02-24

Taj Mahal & Keb' Mo' - TajMo [2017 Concord Records]

68年に、自身の名前を冠したアルバム『Taj Mahal』でメジャー・デビュー。ジャズやソウル、カリプソやゴスペルなど、色々な音楽を飲み込んだスタイルと高い演奏技術で注目を集め、69年にはローリング・ストーンズが制作した映画「The Rolling Stones Rock and Roll Circus」に出演。92年にはライ・クーダとのコラボレーション・アルバム『Rising Sons』を発表するなど、50年に渡って音楽業界の一線で活躍してきた、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、タジ・マハルことヘンリー・セントクレア・フレデリックス。

かたや、80年にケヴィン・ムーアの名義で発表したアルバム『Rainmaker』でレコード・デビュー。その後は、ブルースやカントリー、ゴスペルなどへの造詣を活かした作風で、3度もグラミー賞を獲得。2015年にはバラク・オバマ大統領(当時)がホワイト・ハウスで開催したコンサートに、アッシャーやスモーキー・ロビンソン、トロンボーン・ショーティーなどと一緒に出演したことも話題になった、サウス・ロス・アンジェルス出身のシンガーソングライター、ケブ・モことケヴィン・ルーズベルト・ムーア。

双方ともに長いキャリアと豊富な実績を誇り、確固たる個性を打ち出してきた二人による、初のコラボレーション作品が、このアルバムだ。

ケブ・モーのレコード・デビューをタジ・マハルが口添えし、ステージでは何度も共演するなど、これまでにも多くの接点があった二人だが、1枚のアルバムを一緒に作るのはこれが初めて。近年も、ヴァレリー・ジューンウィリアム・ベル、エスペランザ・スポルディングといった、大人向けのアーティストが新作を発表しているコンコードからのリリースで、二人の持ち味ともいえる雑食性が発揮されたブルース作品になっている。

アルバムの1曲目を飾る”Don't Leave Me Here”は、ビリー・ブランチの泥臭いブルース・ハープで幕を開けるミディアム・ナンバー。マディ・ウォーターズを彷彿させる荒々しいヴォーカルは、60年代初頭のチェス・レコードの作品を思い起こさせる。しかし、サデアス・ウィザスプーンの重々しいドラムや、3人のホーン・セクションによる重厚な伴奏のおかげで、当時の作品にはない華やかさと高級感が漂っている。

これに対し、ケブ・モーが主導した”All Around The World”は、軽快な伴奏と力強い歌声の組み合わせが心地よいポップなミディアム・ナンバー。フランク・ザッパやオドネル・リーヴィーなどの作品に参加している大ベテラン、チェスター・トンプソンがドラムを担当し、マイケルB.ヒックスが軽妙なキーボードの演奏を聴かせるポップな楽曲。ドン・ブライアントウィリアム・ベルにも通じる泥臭い歌を聴きやすい音楽にアレンジしてみせる、彼らの編集能力が光る曲だ。

一方、ヴァーブやコンコードからアルバムを発表している、ジャズ・シンガーのリズ・ライトをフィーチャーした”Om Sweet Om”は、フォークソングの要素を取り入れた、牧歌的な雰囲気が印象的な曲。チェスター・トンプソンやブルースハープ担当のリー・オスカーといった、ジャズ畑のミュージシャンと、キーボードのフィル・マデイラやパーカッションのクリスタル・タリフェロなど、ロックやポップスに強いミュージシャンを組み合わせることで、ゆったりとした雰囲気を保ちつつも、正確で隙のない、ハイレベルなパフォーマンスを聴かせている。

そして、二人の持ち味ともいえる雑食性が最大限発揮されたのが”Soul”だ。サデアス・ウィザスプーンやマイケルB.ヒックスに加え、シーラE.がパーカッションで参加。タジ・マハルがウクレレやバンジョーを担当したこの曲は、ハワイアンともカリプソとも異なる、陽気で泥臭いサウンドが心地よい曲。どのジャンルにも分類できないが、聴きやすく、楽しい雰囲気の音楽が多い彼ららしい佳曲だ。

今回のアルバムでは、コラボレーション作品に多い、意外性に富んだ楽曲は少なく、どちらかといえば、二人の音楽性が上手く混ざり合った良曲が多い。両者の音楽性が、ブルースをベースにしつつ、色々な音楽を混ぜ込んだものという点も大きいだろう。しかし、華やかな音色の楽器を使って、重厚なブルースにポップな空気を吹き込むのが得意なタジと、ヴォーカルの良さを引き出す技術の高さが魅力のケブという風に、両者の強みが少しずつ違うこともあり、二人のスタイルをベースにしつつも、各人のソロ作品とは一味違う、独特の音楽を生み出している。

ブルースやゴスペル、ソウル・ミュージックなど、二人が親しみ、演奏してきたアメリカの色々な音楽を一枚のアルバムに凝縮した、濃密で充実した作品。アデルやメイヤー・ホーソンのように、往年のブラック・ミュージックから多くの影響を受けたアーティストが人気を集め、BTSがケブ・モーの"Am I Wrong"をサンプリングした楽曲をヒット・チャートに送り込むなど、ルーツ・ミュージックから影響を受けた音楽をたくさん聴くことができる現代。そんな時代だからこそ聴きたい、懐かしいけど新鮮なアルバムだ。

Producer
Keb' Mo', Taj Mahal

Track List
1. Don't Leave Me Here
2. She Knows How To Rock Me
3. All Around The World
4. Om Sweet Om
5. Shake Me In Your Arms
6. That's Who I Am
7. Diving Duck Blues
8. Squeeze Box
9. Ain't Nobody Talkin'
10. Soul
11. Waiting On The World To Change




TAJ MAHAL & KEB' MO' [12 inch Analog]
TAJ MAHAL & KEB' MO'
TAJMO
2017-06-16

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