melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Mary J. Blige – Thick Of It [2016 Capitol]

おそらく、90年代以降の音楽業界では、作品のクオリティとセールスの両面で最も安定した成果を残し続けている女性シンガーの一人、メアリー・J.ブライジの、2014年以来となるオリジナル・アルバムからの先行シングル。

彼女といえば、1991年のデビュー以降、ショーン・コムズにはじまり、ローリン・ヒルにDr.ドレ、ザ・ドリームにサム・スミスと、作品ごとにその時代をリードするクリエイターと組んできた。だが、その一方で、流行のサウンドからは一歩距離を引いた、保守的なメロディとアレンジの作品が中心で、音楽業界の台風の目でありながら、ゲームのルールを変えるような影響力を発揮することはなかった。

今回の新曲は、ジョン・レジェンドの『Love In The Future』やニーヨの『Non-Fiction』などを手掛けてきた、ダリル”DJ”キャンパーをプロデューサーに迎え、ジャズミン・サリヴァンが楽曲制作に参加したミディアム・バラード。ジャズミンが生み出すメロディは、ラップと歌の中間のようなもので、粗削に聴こえる分、聴き手には親しみやすい。だが、高声から低声までフルに使って、話し声の起伏や強弱を『歌』に変えなければいけないこの手の曲は、歌い手の視点に立つと大変厄介なものだと思う。

だが、こんな新しいタイプの曲でも、メアリーの歌声は怯むことなく、自分の色に染め上げている。彼女の特徴ともいえる、太く強靭なファルセットや強烈だが丸みを帯びた地声を器用に使い、ラップや話し声が持つ抑揚や起伏に対応しつつ、きちんとメロディを聴かせることに成功している。しかも、ラップの起伏を歌に取り入れることで、表現の幅をこれまで以上に広くしているようにも見える。

デビュー当初の弾けるようなヴォーカルから、恵まれた歌声を器用に使いこなす大人のシンガーへ、着実に進化し続ける姿を楽しめる。さて、新作はどんな内容になるのだろうか。今から楽しみだ。

Producer
Darhyl "DJ" Camper Jr.


Angie Stone – Coverd In Soul [2016 Goldenlane]

シュガーヒル・レコードからデビューしたヒップホップ・ユニット、シーケンスの時代も含めると、30年以上のキャリアを誇るシンガー・ソングライター、アンジー・ストーン。彼女にとって、2015年の『Dream』以来となる新作は、彼女に影響を与えた楽曲を取り上げたカヴァー・アルバム。

このアルバムでは、ファイヴ・ステアステップスの”O-O-H Child”やスティーヴィー・ワンダーの”I Believe (When I Fall in Love It Will Be Forever)”のような、ソウル・シンガーの楽曲の他、フィル・コリンズの”In the Air Tonight”やキャロル・キングの”It's Too Late”といった、シンガー・ソングライターやロック・ミュージシャンの作品。そして、 “Wish I Didn't Miss You”や “Brotha”などの彼女のヒット曲を収録。新旧様々な楽曲を新しい解釈で演奏している。

アルバムに先駆けて発表された、カナダのロック・バンド、ゲス・フーの69年のヒット曲”These Eyes”のカヴァーでは、ゆったりとしたメロディと伴奏が光る楽曲を、シンセサイザーのリフと原曲よりテンポを速めた演奏で、ギャップ・バンドの”Outstanding”を彷彿させる、レイド・バックした雰囲気のR&Bナンバーに作り変え、虚空に響く物悲しい歌声が印象的だったフィル・コリンズの”In the Air Tonight”は、ドラムとパーカッションを強調したシンプルな伴奏と、パワフルなヴォーカルを惜しげもなく聴かせることで、本格的なソウル・バラードに生まれ変わらせている。また、イギリスのファンク・バンド、ホット・チョコレートの代表曲”Every 1's a Winner”のカヴァーでは、エリック・ゲイルズをゲストに招き、同曲のトレード・マークともいえる派手なギター・リフを盛り込みつつ、シンセ・ベースを使った太いグルーヴを強調して、ディム・ファンクなどのヒットで再び盛り上がっているディスコ・ブギー風の楽曲にリメイクしたり、彼女の2001年のヒット曲”Wish I Didn't Miss You”のリメイクでは、艶っぽいギターと、軽妙なパーカッションを強調したロマンティックなアレンジで、オージェイズの”Backstabbers”を彷彿させる、上品でセクシーなダンス・ナンバーに改編するなど、原曲の持ち味を残しつつ、現代のソウル・ミュージックの流行に合わせたアレンジを施している。

もっとも、このアルバムの一番の醍醐味は、アンジーの豊かな低声の低声と個性的な高声だろう。スティーヴィー・ワンダーやボブ・マーレイなど、ポップなメロディの楽曲を中心に取り上げているにも関わらず、どの曲も重厚でパワフルなヴォーカルが印象的なソウル・ミュージックに聴こえる。というのも、彼女の歌は、現代では少数派となってしまった力強い低音と、かすれ声のような高音部が場面に応じて効果的に使い分けられ、刹那的でありながら安定感のある、独特のヴォーカルになっている。また、かすれ声のようでありながら、どこか優し気な歌い方は、リスナーにとって、親近感と安心感を与えている。

既にイメージが固まっているヒット曲という素材を、アレンジの妙味と、豊かな歌唱力で自分の色に染め上げた面白いカヴァー集。彼女の演奏を聴くと、誰もが持っている「声」と「歌」がどれだけ奥深いものか、改めて考えさせられる。

Producer
Jürgen Engler, Peter Amato

Track List
1. These Eyes
2. Smiling Faces Sometimes
3. In the Air Tonight
4. I Believe (When I Fall in Love It Will Be Forever)
5. O-O-H Child
6. Every 1's a Winner
7. Red, Red Wine
8. Is This Love
9. It's Too Late
10. Wish I Didn't Miss You (Exclusive Soul Sessions)
11. Baby (Exclusive Soul Sessions)
12. Brotha (Exclusive Soul Sessions)






Covered in Soul
Angie Stone
Goldenlane
2016-08-05


 

Various Artist – Hidden Figures: The Album [2016_Columbia]

2014年に発表した”Happy”が同年を代表するヒット曲になったファレル・ウィリアムズ。歌手活動に音楽制作、アパレル・ブランドの運営と八面六臂の活躍を見せる彼の新作は、自身がプロデュースしたコメディ映画のサウンドトラック。

アフリカ・アメリカンの女性科学者達が主役ということで、収録された10曲のうち6曲で女性シンガーをフィーチャーしている。(ただし、そのうち4曲はファレルとのデュエット曲)

彼女の新作でもコラボレーションしているアリシア・キーズがヴォーカルを担当した”Apple”では、グウェン・ステファニの”Sweet Escape”を彷彿させる、60年代のリズム&ブルースのように揺れるグルーヴの上で、一つ一つのフレーズを丁寧に歌うアリシアと、ラッパーのようにビートを乗りこなすファレルの対極的なスタイルが光るミディアム。また、メアリー・J.ブライジが参加した”Mirage”は最小限の音数でバラエティ豊かなビートを生み出す、ファレルの真骨頂が発揮されたミディアム・ナンバー。シンプルだけど癖のあるビートが、彼女の力強く、表現力豊かな歌声の魅力を引き立てている。

この他にも、映画にも出演しているジャネル・モネイ、今回が初のコラボレーションとなるレイラ・ハザウェイなど、聴きどころは多いが、ゲスト・シンガーの中でも特に印象的なのはトリを飾る”I See a Victory”を歌うキム・バレルだ。トミー・ボーイやシャナチーといった、通好みのレーベルでゴスペル作品を録音してきた彼女は、ファレルの作品では珍しいパワフルな声を惜しみなく聴かせるシンガー。この曲では、彼の曲ではお馴染みのハンド・クラップや軽妙なギター・リフを使ったトラックで、ともすれば威圧的に聞こえてしまうゴスペルを、”Happy”のように陽気なソウル・ミュージックに仕立てている。

また、ファレルの楽曲に目を向けると、アルバムに先駆けて発表された”Runnin’”は、クリプスの”Grindin”を思い起こさせる跳ねるようなビートの上で、サム・クックやマーヴィン・ゲイのようにしなやか歌うアップ・ナンバー。また、ラップ風の歌唱を披露した”Able”では、シンセサイザーのリフが印象的なビートの上で、スヌープ・ドッグのように飄々と歌ったり、ジェイムズ・ブラウンのように力を込めて歌ったりして見せるなど、コミカルな一面も見せている。ファレル自身はもともと、楽曲に応じて柔軟にスタイルを変えるタイプの歌手だが、本作ではその傾向が一層強まっているようにも思える。

だが、このように、個性豊かなゲストを起用し、本人のヴォーカルや作曲のスタイルの幅を広げても、本作での彼の音楽性は、これまでになく一貫しているように聞こえる。というのも、各曲を支えるサウンドは、ネプチューンズ時代のように、一つのシンセサイザーやドラムなどの音色を繰り返し使いながら、多種多様なトラックを生み出しているからだ。端的に言えば、ビートやメロディの組み方は多種多様だが、そのトラックを構成する音色は常に同じなので、リスナー側からすれば、統一感が取れているように聴こえるのだ。

このアルバムでは、従来のR&Bの枠に囚われない大胆なメロディやアレンジで、“Happy”のヒット以降に彼のことを知ったファンの期待に応えつつ、一つの音色からバラエティ豊かなビートを生み出すネプチューンズ時代のプロダクション技術を復活させて、コアなファンも満足させている。R&Bアーティスト、ファレル・ウィリアムズの嗅覚と技術が生半可なものではないことを裏付ける佳作だと思う。

Producer
Pharrell Williams

Track List
1. Runnin' - Pharrell Williams
2. Crave - Pharrell Williams
3. Surrender - Lalah Hathaway and Pharrell Williams
4. Mirage - Mary J. Blige
5. Able - Pharrell Williams
6. Apple - Alicia Keys and Pharrell Williams
7. Isn't This The World - Janelle Monáe
8. Crystal Clear - Pharrell Williams
9. Jalapeño - Janelle Monáe and Pharrell Williams
10. I See a Victory - Kim Burrell and Pharrell Williams




記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    読者登録
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ