melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Various Artist – Hidden Figures: The Album [2016_Columbia]

2014年に発表した”Happy”が同年を代表するヒット曲になったファレル・ウィリアムズ。歌手活動に音楽制作、アパレル・ブランドの運営と八面六臂の活躍を見せる彼の新作は、自身がプロデュースしたコメディ映画のサウンドトラック。

アフリカ・アメリカンの女性科学者達が主役ということで、収録された10曲のうち6曲で女性シンガーをフィーチャーしている。(ただし、そのうち4曲はファレルとのデュエット曲)

彼女の新作でもコラボレーションしているアリシア・キーズがヴォーカルを担当した”Apple”では、グウェン・ステファニの”Sweet Escape”を彷彿させる、60年代のリズム&ブルースのように揺れるグルーヴの上で、一つ一つのフレーズを丁寧に歌うアリシアと、ラッパーのようにビートを乗りこなすファレルの対極的なスタイルが光るミディアム。また、メアリー・J.ブライジが参加した”Mirage”は最小限の音数でバラエティ豊かなビートを生み出す、ファレルの真骨頂が発揮されたミディアム・ナンバー。シンプルだけど癖のあるビートが、彼女の力強く、表現力豊かな歌声の魅力を引き立てている。

この他にも、映画にも出演しているジャネル・モネイ、今回が初のコラボレーションとなるレイラ・ハザウェイなど、聴きどころは多いが、ゲスト・シンガーの中でも特に印象的なのはトリを飾る”I See a Victory”を歌うキム・バレルだ。トミー・ボーイやシャナチーといった、通好みのレーベルでゴスペル作品を録音してきた彼女は、ファレルの作品では珍しいパワフルな声を惜しみなく聴かせるシンガー。この曲では、彼の曲ではお馴染みのハンド・クラップや軽妙なギター・リフを使ったトラックで、ともすれば威圧的に聞こえてしまうゴスペルを、”Happy”のように陽気なソウル・ミュージックに仕立てている。

また、ファレルの楽曲に目を向けると、アルバムに先駆けて発表された”Runnin’”は、クリプスの”Grindin”を思い起こさせる跳ねるようなビートの上で、サム・クックやマーヴィン・ゲイのようにしなやか歌うアップ・ナンバー。また、ラップ風の歌唱を披露した”Able”では、シンセサイザーのリフが印象的なビートの上で、スヌープ・ドッグのように飄々と歌ったり、ジェイムズ・ブラウンのように力を込めて歌ったりして見せるなど、コミカルな一面も見せている。ファレル自身はもともと、楽曲に応じて柔軟にスタイルを変えるタイプの歌手だが、本作ではその傾向が一層強まっているようにも思える。

だが、このように、個性豊かなゲストを起用し、本人のヴォーカルや作曲のスタイルの幅を広げても、本作での彼の音楽性は、これまでになく一貫しているように聞こえる。というのも、各曲を支えるサウンドは、ネプチューンズ時代のように、一つのシンセサイザーやドラムなどの音色を繰り返し使いながら、多種多様なトラックを生み出しているからだ。端的に言えば、ビートやメロディの組み方は多種多様だが、そのトラックを構成する音色は常に同じなので、リスナー側からすれば、統一感が取れているように聴こえるのだ。

このアルバムでは、従来のR&Bの枠に囚われない大胆なメロディやアレンジで、“Happy”のヒット以降に彼のことを知ったファンの期待に応えつつ、一つの音色からバラエティ豊かなビートを生み出すネプチューンズ時代のプロダクション技術を復活させて、コアなファンも満足させている。R&Bアーティスト、ファレル・ウィリアムズの嗅覚と技術が生半可なものではないことを裏付ける佳作だと思う。

Producer
Pharrell Williams

Track List
1. Runnin' - Pharrell Williams
2. Crave - Pharrell Williams
3. Surrender - Lalah Hathaway and Pharrell Williams
4. Mirage - Mary J. Blige
5. Able - Pharrell Williams
6. Apple - Alicia Keys and Pharrell Williams
7. Isn't This The World - Janelle Monáe
8. Crystal Clear - Pharrell Williams
9. Jalapeño - Janelle Monáe and Pharrell Williams
10. I See a Victory - Kim Burrell and Pharrell Williams




Sebastian Kole – Soup [2016_Motown]

ジェニファー・ロペス feat. フロー・ライダーの”Goin' In”やアレシア・カラの”Here”などを手掛けてきた、アラバマ州バーミンガム出身のソング・ライター、セバスチャン・コールにとって初となるソロ・アルバム。

彼は、子供のころからゴスペルに親しみ、アラバマ大学では音楽技術を専攻してきたという、ソウル・シンガーの保守本流みたいな経歴を歩みながら、プロデビュー後はジェニファー・ロペスやマルーン・ファイブといった、幅広い層から親しまれているミュージシャンとも仕事をしてきたという異色の経歴の持ち主。この幅広い経験は、自身の作品でも存分に発揮されていて、2016年にモータウンからリリースされた本作では、50~60年代のソウル・ミュージックをベースにしつつ、R&Bなどの新しいブラック・ミュージックや、シンディー・ローパーやカーペンターズといった白人のポピュラー・ミュージックからエッセンスを取り入れた、ポップでありながら本格的なソウル・ミュージックを聴かせてくれる。

オープニングを飾る”Home”は、往年のドゥー・ワップ・グループを思い出させる重厚なアカペラのコーラスの上で、スモーキー・ロビンソンを彷彿させるしっとりとしたメロディが光るミディアム・ナンバー。洗練されたメロディにゴスペル仕込みのダイナミックなヴォーカル乗るスタイルは、初期のジョン・レジェンドにも似ているが、アレンジがシンプルな分、彼の方が歌の力強さが際立っているように思う。また、続く”Love Doctor”はロックっぽい荒々しいギターとシンセサイザーが光るアップ・ナンバー。R&Bというよりも、ブラッドオレンジやツイン・デンジャーなどのオルタナティブ・ロックに近いトラックだが、豊かな声量と表現力で本格的なソウルに纏め上げているところに、彼の実力の高さが伺える。

この他にも、R&Bのトラックの上にフォークソングを思い起こさせるギター・リフを織り込んだ”Carry On”や、アリシア・キーズを彷彿させるピアノの弾き語りと、ゴスペルで鍛え上げた強烈なヴォーカルを活かしたミディアム・バラード”Pour Me”など。色々なスタイルの音楽を取り入れた楽曲を揃えることで、表現の幅を広げつつ、幅広い層にアピールできる作品になっている点も心憎い。

ソウル・ミュージックをベースにしつつ、メロディ・ラインやトラックに新旧様々なジャンルのスタイルを取り入れたことで、音楽性の幅とファンの裾野を広げた面白い作品。ソングライターとしての能力も素晴らしいが、それ以上に魅力的な歌声と表現力を持つ、これからの成長が楽しみなアーティストだ。

Track List
1. Home
2. Love Doctor
3. Forgive Me For Trying
4. Carry On
5. Priceless
6. Choose You Again
7. Purple Heart Blvd
8. Pour Me
9. Love’s On The Way
10. Giants
11. Stay
12. Naked (Feat. Alessia Cara)



Soup
Sebastian Kole
Motown
2016-10-07

John Legend - Darkness and Light [2016_Columbia]

2004年のデビュー以来、アッシャーやファレル・ウィリアムズと並んで、R&B業界のトレンドを生み出し続けてきたシンガー・ソングライター、ジョン・レジェンドの2014年以来となる5枚目のオリジナル・アルバム。

前作『Love In The Future』は、シンセサイザーの音色を多用したサウンドや、ボビー・コールドウェルの”Open Your Eyes”のカヴァーに代表される洗練されたメロディの楽曲など、それ以前のアルバムとは大きく異なる作風で注目を集めた彼。本作では、過去のアルバムの路線を踏襲しつつ、2016年のトレンドにも適応した、新しいジョン・レジェンドを披露している。

まず、このアルバムで最初に聴いてほしいのは、チャンス・ザ・ラッパーが参加した先行リリース曲”Penthouse Floor”だ。ストリーミング配信が中心のミュージシャンとしては、初めてグラミー賞候補になった、2010年代の音楽シーンを象徴するラッパーが参加したこの曲。シンセ・ベースやシンセ・ドラムを使ったビートの上に、シンセサイザーやギターのフレーズがふわふわと漂う、宅録ではないかと思うくらいシンプルなサウンドが特徴的だ。このトラックの上で、ゴスペルから強い影響を受けたパワフルなヴォーカルが響く演奏は、エレクトロ・ミュージックと、楽器の演奏や生の歌声を重視したヴィンテージ・ミュージックが同時に流行している、2016年という時代を象徴した楽曲だと思う。また、この曲に先駆けてリリースされた”Love Me Now”も、前作に近い路線の打ち込み中心のトラック。だが、こちらは2006年の『Once Again』の収録曲を彷彿させるバート・バカラックなどの、60年代に流行した白人音楽家のスタイルを取り入れたポップなメロディを伸び伸びと歌っている。サム・スミスやアデルといった、黒人音楽の影響を受けた白人シンガーの活躍する時代。彼が白人のポピュラー・ミュージックを取り入れるのも自然な流れだと思う。

しかし、本作は一番の注目曲は、アラバマ・シェイクスのヴォーカル、ブリタニー・ハワードが参加したタイトル曲”Darkness and Light”だ。スワンプ・ロックを彷彿させる、重くゆったりとしたドラムに、エフェクトを抑え気味にしたギターを加えた伴奏の上で、ゴスペル仕込みのパワフルな歌声を惜しみなく披露したこの曲は、デビュー当時の彼を思い起こさせる、泥臭いパフォーマンスが印象的だ。だが、この曲の面白いところは、泥臭いサウンドに、透き通ったシンセサイザーのリフを絡ませたことだろう。70年代のサザン・ソウルっぽいドロドロとした演奏に、音楽制作では欠かせないものになったデジタル楽器の音色を加えることで、懐かしいけど新しいR&B作品に纏め上げたことは、特筆すべきだと思う。

ダフト・パンクやマーク・ロンソンが70年代、80年代のサウンドを現代に作り変えたサウンドで成功を収め、ロバート・グラスパーがヒップホップの手法を取り入れてジャズの世界をリードするようになった2016年。時代や地域の枠を超えて、色々なジャンルの音楽が混ざり合い、新しいサウンドを生み出す時代を象徴するようなアルバム。モータウンやスタックスが広め、各地のミュージシャンに引き継がれてきたソウル・ミュージックを、2016年の音楽シーンに適合する形でリメイクした魅力的な作品だろう。

Producer
Blake Mills, John Ryan, Greg Kurstin, Miguel, BloodPop. Ludwig Göransson, The Belle Brigade, Eg White

Track List
1. I Know Better
2. Penthouse Floor (feat. Chance the Rapper)
3. Darkness and Light (feat. Brittany Howard)
4. Overload (feat. Miguel)
5. Love Me Now
6. What You Do to Me
7. Surefire 08. Right By You (for Luna)
9. Temporarily Painless
10. How Can I Blame You
11. Same Old Story
12. Marching Into the Dark





Darkness & Light
John Legend
Sony
2016-12-02


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