melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Miles Davis & Robert Glasper ‎– Everything's Beautiful [2016_Columbia,Blue Note]

ジャズの世界に、ヒップホップやR&Bの要素を取り込んだ、『Black Radio』シリーズが大成功。一躍21世紀を代表するミュージシャンに上り詰めた、ヒューストン出身のピアニスト、ロバート・グラスパーによる通算5枚目となるオリジナル・アルバム。

今回の作品はアーティスト名が示す通り、所属レーベルの大先輩であり、ジャズ界を代表する巨人、マイルス・デイヴィスとのコラボレーション・アルバム。といっても、マイルスは既に故人なので、本作では彼が残した膨大な録音を再構成し、現代のミュージシャンの演奏と組み合わせた、仮想セッションの形を取っている。

本作を聴いて最初に驚くのは、空気を切り裂くようなマイルスの鋭い演奏が、大胆に解体されていることだろう。もっとも、70年代以降のマイルスは膨大な演奏を録音し、それをプロデューサーのテオ・マセロが編集することで一つの作品に仕上げていたので、彼が21世紀まで生きていたら、このようなスタイルを積極的に受け入れていたかもしれない。

74年の『Get Up With It』に収められている”Maiysha”に、エリカ・バドゥが歌詞をつけた”Maiysha (So Long)”では、ダブを連想させる幻想的な響きを醸し出した原曲に対し、音と音の隙間を意識した立体的なアレンジと、彼女の気怠い雰囲気のヴォーカルで、『Kind Of Blue』に収録されマイルスの代表曲”So What”を彷彿させるモーダルな演奏にリメイク。1958年にリリースされた『Milestones』のタイトル曲をジョージ・アン・マルドロウと再構築した”Milestones”では、原曲の有名なフレーズを、SF映画の効果音のようなシンセサイザー音で演奏しつつ、強く歪ませたギターや、エフェクターで響きを増した声を加えて、フライング・ロータスやマッドリブにも通じる、抽象性の高いインストルメンタル・ヒップホップに生まれ変わらせている。

このように、本作では原曲の音色やメロディを取り込みつつ、それを分解、再構成して、新しい解釈を加えた曲が目立つ。

その一方で、”Right On Brotha”のように、マイルスの演奏をそのままの形で残しつつ、DJスピナによるハウスのビートや、スティービー・ワンダーのブルース・ハープを絡ませることで、マイルスが現代のミュージシャンとセッションをしているように思わせる曲もあるなど、色々なスタイルを使い分けた、彼らしい作品に仕上がっている。

メロディやアレンジを大胆に改編しながら、マイルスの音の出し方や間の取り方、新しい音へ挑戦し続ける姿勢を忠実に踏襲した点は、コラボレーションと呼ぶにふさわしい。彼が現代に蘇って、現代のヒップホップやR&Bと出会ったら、こんな曲を作るだろうな思わせる内容だ。

Producer
Robert Glasper

Track List
1. Talking Shit
2. Ghetto Walkin” featuring Bilal
3. They Can’t Hold Me Down” featuring Illa J
4. Maiysha (So Long)” featuring Erykah Badu
5. Violets” featuring Phonte
6. Little Church” featuring Hiatus Kaiyote
7. Silence Is The Way” featuring Laura Mvula
8. Song For Selim” featuring KING
9. Milestones” featuring Georgia Ann Muldrow
10. I’m Leaving You” featuring John Scofield and Ledisi
11. Right On Brotha” featuring Stevie Wonder




Everything's Beautiful
Miles Davis
Sony Legacy
2016-05-27


Black Dylan – Hey Stranger [2016_Black Dylan Records]

シンガー・ソングライターのワフェンデと、DJやプロデューサーとしても活動しているニュープレックスによる、デンマーク発のソウル・ユニット、ブラック・ディランにとって1枚目のオリジナル・アルバム。

2015年にアルバムに先駆けてリリースされたシングル”Don’t Wanna Be Alone”では、初期のシュープリームスやヴァンデラスを彷彿させるポップでキャッチーなサウンドと、ジョン・レジェンドを思い起こさせる、泥臭い声で丁寧に歌うワフェンデの姿が印象的だった二人。待望のファースト・アルバムでは、同曲のような60年代以前のソウルから影響を受けたことを伺わせる楽曲が、数多く収められている。

アルバムの発売前にリリースされたもう一つのシングル曲“Hey Stranger”は、曇ったホーンの音色と、今時のR&Bっぽい打ち込みによる安定したビートを組み合わせて、アナログ楽器の温かい音色と精密な演奏技術で独特のサウンドを生み出した、モータウンの作風を現代に蘇らせたアップ・ナンバー。この他にも、フィンガー・スナップとウッドベースっぽい音色のベースを使って、街頭で演奏されていた初期のドゥー・ワップっぽく聴かせたミディアム”The One”。崩れ落ちるような歌と演奏で、初期のジェイムズ・ブラウンのダイナミックなパフォーマンスを取り入れつつ、ヒップホップで用いられるような硬いビートを使うことで、21世紀のリズム&ブルース像を示したスロー・ナンバー”She Said I Was A Failure”など、60年代以前のソウル・ミュージックやリズム&ブルースのスタイルをベースに、新しい楽器も積極的に使って、新しいブラック・ミュージックの形を感じさせる良曲が揃っている。

往年の黒人音楽を現代風にアレンジしたと聞くと、メイヤー・ホーソンやジョン・レジェンドを思い出す人もいるかもしれない。実際、ワフェンデの歌を聴くと、ジョンに似た部分も見受けられる。しかし、彼の歌声はロック・シンガーのように硬く、ソウル・シンガーに多いゴスペルの影響が薄いうえ、バックのトラックも音数を絞り込んだシンプルなもので、現行のR&Bとリズム&ブルースの中間にあるものだと思う。この点で、分厚いトラックを背景に、豊かな声を披露するほかのソウル・シンガーとは一線を画しているだろう。

イギリスのイーライ・ペイパーボーイ・リードやフランスのベン・ロンクル・ソウルに続く、欧州発のソウル・リヴァイバル。初期のルーファス・トーマスやバレット・ストロングのような、60年代初頭のソウルやリズム&ブルースを現代風にリメイクした、ありそうでなかったアルバムだ。

Track List
1. Hey Stranger
2. Get Up Child
; 3. Don’t Wanna Be Alone
4. You’re Getting Stronger
5. The One
6. She Said I Was A Failure
7. Who Got My Back
8. Keep Your Eyes On The Road
9. Papa
10. Hummin’





Hey Stranger
Black Dylan
Imports
2016-09-02

After 7 – Timeless [2016_eOneMusic]

80年代から90年代にかけて、多くのヒット曲を生み出してきた、シンガー・ソングライター、プロデューサーのベイビーフェイス。彼の兄弟達によるヴォーカル・グループ、アフター7の実に21年ぶりとなるオリジナル・アルバムが本作だ。

プロデューサーに、ベイビーフェイスや彼の右腕であるダリル・シモンズが名を連ね、SWVやフェイス・エヴァンスの近作を配給した、eOneが配給している本作。この前情報だけでも、90年代に一世を風靡した、ベイビーフェイスの流麗でキャッチーなR&Bが現代に蘇ることを期待してしまう人は少なくないだろう。このアルバムでは、そのような往年のファンの期待に応えるかのように、90年代の彼らのスタイルを踏襲した、美しいメロディの楽曲をたっぷりと収めている。

アルバムのオープニングを飾る”Runnin’ Out”は、ベイビーフェイスの”Every Time I Close My Eyes”を思い起こさせる、シンプルで落ち着いたトラックの上で、一つ一つの言葉をシックなメロディに乗せて、丁寧に紡ぎ出してみせるロマンティックなバラード。この曲だけでも、90年代のR&Bが好きな人なら買って損はないと断言できるほど、クオリティが高いスロー・ナンバー。また、数少ないミディアム・ナンバーの一つで、ベイビーフェイスもセルフ・カヴァーした”I Want You”は、テヴィン・キャンベルの”Can We Talk”が好きだった人にはたまらない、甘酸っぱい雰囲気のメロディを軽やかに歌う4人の姿が魅力的な、本作を代表する楽曲だ。それ以外にも、”If I”や”Lovin’ You All My Life”、”More Than A Woman”など、ベイビーフェイスがボーイズ II メンやトニ・ブラクストンに提供してきた、大人の色気を感じさせる、ロマンティックなメロディを踏襲したスロー・ナンバーやミディアム・ナンバーが続く。いずれの曲も、ベイビーフェイス、エドモンズ兄弟の持ち味が存分に発揮された、美しいメロディと、シンプルだが味わい深いトラックが上手い具合に融合した、大人向けのR&Bに仕上がっている。

デビュー・アルバムのタイトルに引っ掛けた、2015年の『Return To The Tender Lover』では、80年代の跳ねるようなリズムの上で、華麗なメロディを泳ぐように歌い、当時のソウル・ミュージックが持つ、煌びやかな雰囲気を現代に復活させたベイビーフェイス。これに対し、90年代風の重く、落ち着いたビートの上で、流れるようなメロディを大切に歌い、当時のR&Bの持つロマンティック雰囲気が、21世紀の音楽シーンでも通じることを証明したAfter7。エドモンズ兄弟が牽引した、20世紀のR&Bが持つ美しいメロディが、長い時を経ても色褪せない、「タイムレス」なものであることを、このアルバムが証明した。ボーイズ・II・メンやテヴィン・キャンベルのヒット曲に心を奪われた世代なら見逃せない、2016年の隠れた最高傑作だろう。

Track List
1. Runnin' Out
2. Let Me Know
3. More Than Friends
4. I Want You
5. Too Late
6. Lovin' You All My Life
7. If I
8. Everything
9. Betcha By Golly Wow
10. Home

Executive Producer
Babyface, Daryl Simmons, Kevon Edmonds




Timeless
After 7
Ent. One Music
2016-10-14

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