ストーンズ・スロウから発表したアルバム『Good Things』のほか、”I Need A Dolla”や”The Man”など、多くのヒット作を世に送り出しているシンガー・ソングライターのアロー・ブラックと、同郷のラッパー、ブルーとのユニット、ブルー&エグザイル名義での作品のほか、ジュラシック・ファイブやスヌープ・ドッグへの楽曲提供でも知られているDJ兼トラック・メーカーのDJエグザイルこと、アレクサンダー・マンフレディ。ロス・アンジェルスで一緒に下積み時代を過ごし、それぞれの道で成功を収めた二人によるユニット、エマノンが、10年ぶりの新作を録音した。
渋い歌声を活かしたミディアム・ナンバーに定評のあるアロー・ブラック。だが、このアルバムでは原点に返ってラッパーに専念。DJエグザイルの作る、様々なレコードのフレーズを組み合わせた奇想天外なビートの上で、いぶし銀の声を軽やかに操った、クールなラップを披露している。
アルバムのオープニングを飾る”Make It Over”は、ジャズのレコードからウッドベースのフレーズを抜き出して作った、ソウルフルなグルーヴの上で、歌うようにラップするミディアム・ナンバー。続く”Aloe Be Thy Name”はチェンバロの演奏をサンプリングした、嵐のように音の塊が飛び交うトラックの上で、伴奏に負けじと言葉を畳み掛けるアロー・ブラックの姿が印象的な楽曲だ。この後には、声ネタを効果的に使ったトラックが、ディレイテッド・ピープルズの作品を彷彿させる”Shine Your Light”(一部の盤では”This Little Light”と表記)や、崩れ落ちるようなピアノの演奏をループさせたビートの上で、アロー・ブラックとブルーがラップ・バトルを繰り広げる”Yesterday”、ドラムの響きをエフェクターで強化した高揚感たっぷりのビートの上で、猛々しいラップを聴かせる”Death Is Fair”や、幽霊の声にも妖精の声にも聴こえる、幻想的な女性シンガーの歌声を使ったトラックの上を踊る、LLクールJのように軽妙なライムが格好良い”Night Salkers”や”The E.N.D.”など、サンプリングを軸にしたビートとリズミカルなラップによる、90年代前半のヒップホップを思い起こさせるキャッチーな楽曲が続く。
二人の作品を聴いた瞬間に思い出したのは、ディレイテッド・ピープルズやアルカホリックスなどの、ロス・アンジェルスのローカル・シーンから世界に羽ばたいたラップ・グループの音楽だ。多くのヒップホップ・ミュージシャンは目もくれないマイナーなレコードや、有名なレコードのマイナーなフレーズを組み合わせ、他のミュージシャンとは一味違うトラックを作るDJエグザイルと、奇抜なトラックを前にしても物怖じせず、ジャズ・ミュージシャンがアドリブを演奏するように、言葉を紡ぎ出すアロー・ブラック。両者の姿は個性的なトラックを軽やかに乗りこなす、往年のラップ・グループの姿がダブって見える。
アロー・ブラックの歌手としての経験と、DJエグザイルの独創的な作曲センスが生み出した、ヒップホップの基本に忠実だが極めて独創的な作品。ラップと歌は別物と考えている人にこそ聞いてほしいな。
Producer
Aloe Blacc, Aleksander Manfredi
Track List
1. Make It Over
2. Aloe Be Thy Name
3. Come One Come All feat. Cashus King A.K.A. Co$$
4. Shine Your Light
5. Forgive Us
6. Yesterday feat. Blu
7. In Bruges
8. Death Is Fair
9. Night Salkers
10. The E.N.D.
渋い歌声を活かしたミディアム・ナンバーに定評のあるアロー・ブラック。だが、このアルバムでは原点に返ってラッパーに専念。DJエグザイルの作る、様々なレコードのフレーズを組み合わせた奇想天外なビートの上で、いぶし銀の声を軽やかに操った、クールなラップを披露している。
アルバムのオープニングを飾る”Make It Over”は、ジャズのレコードからウッドベースのフレーズを抜き出して作った、ソウルフルなグルーヴの上で、歌うようにラップするミディアム・ナンバー。続く”Aloe Be Thy Name”はチェンバロの演奏をサンプリングした、嵐のように音の塊が飛び交うトラックの上で、伴奏に負けじと言葉を畳み掛けるアロー・ブラックの姿が印象的な楽曲だ。この後には、声ネタを効果的に使ったトラックが、ディレイテッド・ピープルズの作品を彷彿させる”Shine Your Light”(一部の盤では”This Little Light”と表記)や、崩れ落ちるようなピアノの演奏をループさせたビートの上で、アロー・ブラックとブルーがラップ・バトルを繰り広げる”Yesterday”、ドラムの響きをエフェクターで強化した高揚感たっぷりのビートの上で、猛々しいラップを聴かせる”Death Is Fair”や、幽霊の声にも妖精の声にも聴こえる、幻想的な女性シンガーの歌声を使ったトラックの上を踊る、LLクールJのように軽妙なライムが格好良い”Night Salkers”や”The E.N.D.”など、サンプリングを軸にしたビートとリズミカルなラップによる、90年代前半のヒップホップを思い起こさせるキャッチーな楽曲が続く。
二人の作品を聴いた瞬間に思い出したのは、ディレイテッド・ピープルズやアルカホリックスなどの、ロス・アンジェルスのローカル・シーンから世界に羽ばたいたラップ・グループの音楽だ。多くのヒップホップ・ミュージシャンは目もくれないマイナーなレコードや、有名なレコードのマイナーなフレーズを組み合わせ、他のミュージシャンとは一味違うトラックを作るDJエグザイルと、奇抜なトラックを前にしても物怖じせず、ジャズ・ミュージシャンがアドリブを演奏するように、言葉を紡ぎ出すアロー・ブラック。両者の姿は個性的なトラックを軽やかに乗りこなす、往年のラップ・グループの姿がダブって見える。
アロー・ブラックの歌手としての経験と、DJエグザイルの独創的な作曲センスが生み出した、ヒップホップの基本に忠実だが極めて独創的な作品。ラップと歌は別物と考えている人にこそ聞いてほしいな。
Producer
Aloe Blacc, Aleksander Manfredi
Track List
1. Make It Over
2. Aloe Be Thy Name
3. Come One Come All feat. Cashus King A.K.A. Co$$
4. Shine Your Light
5. Forgive Us
6. Yesterday feat. Blu
7. In Bruges
8. Death Is Fair
9. Night Salkers
10. The E.N.D.