melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

After 7 – Timeless [2016_eOneMusic]

80年代から90年代にかけて、多くのヒット曲を生み出してきた、シンガー・ソングライター、プロデューサーのベイビーフェイス。彼の兄弟達によるヴォーカル・グループ、アフター7の実に21年ぶりとなるオリジナル・アルバムが本作だ。

プロデューサーに、ベイビーフェイスや彼の右腕であるダリル・シモンズが名を連ね、SWVやフェイス・エヴァンスの近作を配給した、eOneが配給している本作。この前情報だけでも、90年代に一世を風靡した、ベイビーフェイスの流麗でキャッチーなR&Bが現代に蘇ることを期待してしまう人は少なくないだろう。このアルバムでは、そのような往年のファンの期待に応えるかのように、90年代の彼らのスタイルを踏襲した、美しいメロディの楽曲をたっぷりと収めている。

アルバムのオープニングを飾る”Runnin’ Out”は、ベイビーフェイスの”Every Time I Close My Eyes”を思い起こさせる、シンプルで落ち着いたトラックの上で、一つ一つの言葉をシックなメロディに乗せて、丁寧に紡ぎ出してみせるロマンティックなバラード。この曲だけでも、90年代のR&Bが好きな人なら買って損はないと断言できるほど、クオリティが高いスロー・ナンバー。また、数少ないミディアム・ナンバーの一つで、ベイビーフェイスもセルフ・カヴァーした”I Want You”は、テヴィン・キャンベルの”Can We Talk”が好きだった人にはたまらない、甘酸っぱい雰囲気のメロディを軽やかに歌う4人の姿が魅力的な、本作を代表する楽曲だ。それ以外にも、”If I”や”Lovin’ You All My Life”、”More Than A Woman”など、ベイビーフェイスがボーイズ II メンやトニ・ブラクストンに提供してきた、大人の色気を感じさせる、ロマンティックなメロディを踏襲したスロー・ナンバーやミディアム・ナンバーが続く。いずれの曲も、ベイビーフェイス、エドモンズ兄弟の持ち味が存分に発揮された、美しいメロディと、シンプルだが味わい深いトラックが上手い具合に融合した、大人向けのR&Bに仕上がっている。

デビュー・アルバムのタイトルに引っ掛けた、2015年の『Return To The Tender Lover』では、80年代の跳ねるようなリズムの上で、華麗なメロディを泳ぐように歌い、当時のソウル・ミュージックが持つ、煌びやかな雰囲気を現代に復活させたベイビーフェイス。これに対し、90年代風の重く、落ち着いたビートの上で、流れるようなメロディを大切に歌い、当時のR&Bの持つロマンティック雰囲気が、21世紀の音楽シーンでも通じることを証明したAfter7。エドモンズ兄弟が牽引した、20世紀のR&Bが持つ美しいメロディが、長い時を経ても色褪せない、「タイムレス」なものであることを、このアルバムが証明した。ボーイズ・II・メンやテヴィン・キャンベルのヒット曲に心を奪われた世代なら見逃せない、2016年の隠れた最高傑作だろう。

Track List
1. Runnin' Out
2. Let Me Know
3. More Than Friends
4. I Want You
5. Too Late
6. Lovin' You All My Life
7. If I
8. Everything
9. Betcha By Golly Wow
10. Home

Executive Producer
Babyface, Daryl Simmons, Kevon Edmonds




Timeless
After 7
Ent. One Music
2016-10-14

Bruno Mars – 24K Magic [2016_Atlantic]

2010年に『Doo-Wops & Hooligans』でデビューして以来、発表した曲が全てヒットしている、ハワイ出身のシンガー・ソングライター、ブルーノ・マース。彼にとって、2012年の『Unorthodox Jukebox』以来となる3枚目のオリジナル・アルバム。

これまでの作品では、60~70年代のソウル・ミュージックやディスコ音楽のエッセンスを取り入れつつ、それを現代的なポップスに落とし込んできた彼。本作では、その路線をベースに、黎明期のヒップホップや、70年代終わりのモダンなファンク。80年代末から90年代初頭にかけて流行したR&Bへと、スタイルをシフトしている。

彼の音楽性を変えたのは、2014年にリリースされた”Uptown Funk”の成功だろう。イギリス出身のDJ兼プロデューサー、マーク・ロンソンがブルーノをフィーチャーしたこの曲は、ギャップ・バンドやバーケイズに象徴される、70年代後半から盛り上がってきたファンク・サウンドを、ヒップホップのビートと融合したことで、幅広い世代に親しまれた。本作も、この曲の手法を踏襲していて、先行リリースされた”24K Magic”では、オートチューンをトークボックスのように用いたオープニングや、ヴォーカルとバンド・メンバーのコール&レスポンス。キラキラとした音色のシンセサイザーをアクセントに使った演奏など、80年代のファンク・バンドを彷彿させる演出を多用している。他の曲も同様で、シャラマーを彷彿させるシンセサイザーの音色が、美しいメロディとファルセットを引き立てるバラード”Versace On The Floor”や、黎明期をヒップホップを彷彿させるファンクの演奏を複雑な形に組みなおしたビートの上で、ラップのように歌う”Perm”など、マークロンソンやダフトパンクの影響で一躍注目を集めた、70年代後半から80年代初頭の音楽のエッセンスが、これでもかという勢いで注ぎ込まれている。

だが、本当に面白いのは最後の2曲だろう。ニュージャック・スウィングを再現したような”Finesse”では、跳ねるようなビートの上で、軽妙なメロディを爽やかに歌い切り、ベイビーフェイスが制作に参加した”Too Good To Say Goodbye”では、彼の初期作品を思い起こさせるしっとりとしたメロディに、華やかなシンセサイザーで彩を添えたロマンティックなバラードを、当時の雰囲気そのままに歌いつつ、自分の音楽へと染め上げている。

マーク・ロンソンやダフトパンクの作品で、80年代前半の音楽が注目を集める中。ベイビーフェイスやジョデシなど、80年代後半から90年代にかけて活躍したミュージシャンにも、光が当たりつつある。このアルバムは、その流れを本格的なものにする一つのきっかけになるかもしれない。ポップスの世界に新しい風を吹き込む、ゲーム・チェンジャーの登場を歓迎したい。

Track List
1. 24K Magic
2. Chunky
3. Perm
4. That's What I Like
5. Versace On The Floor
6. Straight Up & Down
7. Calling All My Lovelies
8. Finesse
9. Too Good To Say Goodbye

Producer
Jeff Bhasker,Emile Haynie,Shampoo Press & Curl The Stereotypes




24K MAGIC
BRUNO MARS
ATLAN
2016-11-18





Sharon Jones & The Dap Kings – Miss Sharon Jones!(Original Motion Picture Soundtrack) [2016_Daptone]

2013年に膵癌を公表して以来、病と闘いながらステージに立ち続けていたシャロン・ジョーンズ。このアルバムは、そんな彼女の活動を追いかけた、ドキュメンタリー映画のサウンドトラックとして発表された。

もっとも、本作はサウンドトラックと銘打っているものの、その中身は、これまでに彼女が発表してきた楽曲から選りすぐった編集盤。この中には、2007年に発売された『100 Days, 100 Nights』から、2014年に発表された『Give The People What They Want』までの、3枚のオリジナル・アルバムに収められた楽曲と、2011年にリリースされた編集盤『Soul Time!』で初めてCD化された、レコード限定で発表された楽曲から選び抜かれた16曲(2枚組のアナログ盤は19曲)が収録されている。

このアルバムを聴いて強く感じるのは、彼女達の一本筋が通った音楽性と、それを実現する高い技術力。本作のオープニングを飾る、『100 Days, 100 Nights』が初出のアップ・ナンバー”Tell Me”で見せる、シュープリームスを彷彿させる打楽器の音色を効果的に使った明るいダンス・サウンドから、2004年に7インチ・レコードのみで発表されたバラード”Longer & Stronger”で楽しめる、エタ・ジェイムスを彷彿させる迫力のある歌声と緊張感あふれる演奏。グラミー賞のベストR&Bアルバム部門にもノミネートした『Give The People What They Want』の収録曲、”Stranger To My Happiness”で見せる、レイ・チャールズとレイレッツのようなヴォーカルとコーラスの絶妙な掛け合いまで、彼女らの音楽の根底には、モータウンやスタックスのソウル・ミュージックや、ジェイムズ・ブラウンのファンクに代表される、往年のブラック・ミュージックから受けた影響が流れている。そして、デビュー以降、ヒップホップのように一つのフレーズを繰り返し演奏したり、ジャズで使われるような変拍子を取り入れたりしながら、先人とは違う自分達の音楽を作り上げていたように思う。

だが、彼女らの最大の魅力といえば、何よりもシャロン嬢の歌声だ。アレサ・フランクリンやエタ・ジェイムスの系譜に立つ豊かな声量と、アップテンポの曲が多いバンドのレパートリーの中でも、強烈なシャウトやファルセットを正確に放つ技術は、長い黒人音楽の歴史でも屈指のものだろう。

残念なことに、本作はシャロン嬢にとって生前最後のリリースになってしまった。しかし、このアルバムは彼女が残した足跡とその魅力を知る、最良の1枚になったと思う。このアルバムを通して、シャロン・ジョーンズという素晴らしいシンガーと彼女を支えてきた一流のバンドがいたことを、心の中に刻んでほしい。

Producer
Bosco Mann

Track List
1. Tell Me
2. Retreat!
3. Genuine Pt.1
4. Longer and Stronger
5. If You Call
6. 100 Days, 100 Nights
7. People Don't Get What They Deserve
8. Humble Me
9. I'll Still Be True
10. Let Them Knock
11. Stranger to My Happiness
12. Keep on Looking
13. Mama Don't Like My Man
14. I Learned the Hard Way
15. Slow Down, Love
16. I'm Still Here

 





Miss Sharon Jones!
Sharon Jones & The Dap-Kings
Daptone
2016-08-28



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