melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

W-inds. - DoU -EP [2020 Flight Master, Pony Canyon]

安室奈美恵、SPEED、DA PUMP、三浦大知、きら星のように輝くスターを輩出し、日本のR&B界を牽引してきたライジング・プロダクション。同事務所の中でも一際強い個性を放っているのが、橘慶太、千葉涼平、緒方龍一からなる三人組、W-inds.だ。

ライジングのヴォーカル・グループには珍しい、全員が沖縄以外の出身者(橘が福岡、緒方 と千葉が北海道出身)という彼ら。2001年に”Forever Memories”でメジャー・デビューを果たすと、瞬く間に紅白歌合戦やレコード大賞の常連となる人気グループに上り詰めた。

また、2003年には台湾のチャートで日本人男性歌手として初の1位を獲得。2009年には当時から、アジア全域で絶大なる人気を博していたBIGBANGG-Dragonとのコラボレーション・シングル”Rain Is Fallin”’をリリース。アジアを代表する男性アーティストの夢の共演ということもあり、日本、韓国に留まらない話題曲となった。

そして、近年は橘がソング・ライティングやトラックメイクにも才能を発揮、本職にも負けないビート・メイクの技術で、世界でも珍しい、「セルフ・プロデュースができるダンス・ヴォーカル・グループ」として確固たる地位を築いている。

本作は昨年リリースされた”Get Down”以来、約半年ぶりとなる新作。作詞、作曲、編曲すべてが橘慶太の手による力作となっている。

タイトル曲の”DoU”は、90年代に流行したしなやかなメロディのR&Bと、トロピカル・ハウスを融合したダンス・ナンバー。色っぽいメロディやトラックに合わせて、地声からファルセットまでスムーズにつなぐヴォーカルの技術が聴きどころ。歌って踊るヴォーカルには難しいヴォーカル・アレンジを、敢えて取り入れる大胆さに驚かされる。

続く、”Candy”は彼らの真骨頂ともいえるミディアム・テンポのR&B、シンセサイザーのリフと軽快なビートが印象的なトラックはデビュー当時の彼らを彷彿させる。しかし、ヴォーカルのアレンジやそれぞれの楽器の音色は現代の彼らの音楽に合わせてアップデートされていて、過去の作品の焼き直しとは一線を画している。

そして、通常盤のみにおさめられている”We Dont’ You Talk Anymore...”は、彼らとも親交が深い、Sky-HiことAAAの日高光啓を起用したヒップホップ・チューン、Diploのサウンドを柔らかくしたような、ポップなEDMのビートの上で、ファルセットを多用した歌を聴かせる橘と、ゆったりとしたラップを披露する日高のコンビネーションが光る曲。EDMとヒップホップを組み合わせたポップスといえば、BIGBANGやBLACKPINKといった韓国の人気アーティストが得意にするスタイルだ。しかし、この曲では同じスタイルを取り入れながら、より軽妙なアレンジにすることできちんと差別化している。

本作から感じるのは、彼らの音楽に対する誠実さと探求する心の強さだ。歌やダンスのスキルに磨きをかけつつ、楽曲制作にも挑戦するメンバーのエネルギーは生半可なものではない。しかも、その制作技術も、本職のプロデューサーに師事し、細かな音の違いにも気を配るなど、人気アーティストの余技とは言えないものになっている。その一方で、本職のラッパーとの実力差が明確なラップ・パートについては、外部のラッパーを招聘することで対応するなど。きちんと他のミュージシャンとも協働している。この、「良いものを作るために、自分達で取り組むことと、外部のミュージシャンの協力を仰ぐ場面を使い分ける誠実さ」が、彼らの活躍の舞台を世界に広げ、息の長い活動を可能にしているのだと思う。

歌とダンスを高いレベルでこなし、周囲の人々と協力しながら自分たちの音楽を作る彼らの姿は、アイドルとアーティストの新しい形を示している。世界を席巻する韓国のボーイズ・バンドとは異なるスタイルで音楽の可能性を模索する、稀有なグループだ。

Producer
Keita Tachibana

Track List
1.DoU
2.Candy
3.We Don't Need To Talk Anymore... feat. Sky-Hi



DoU [初回盤][CD+DVD]
w-inds.
ポニーキャニオン
2020-01-22


【番外編】「WOMAN TECH TERRACE」これからの働き方を考えてきた

はい、2か月ぶりの記事は、音楽ネタではなくて、ITネタです。
まあ、こんなこともたまにはあると思ってお付き合いください。

半月前の6月15日(土)、「女性エンジニアが” 長く自分らしく”働けることを応援する」をテーマに掲げたカンファレンス。「WOMAN TECH TERRACE」に行ってきました。

会場は、渋谷センター街を抜けた先にあるサイバーエージェントの本社ビル、Abema Tower(余談ですが、サイバーエージェントの本社ビルが宇田川町にあるのは、偶然とはいえヒップホップ好きの藤田社長っぽくて面白い)。
IMG_1753(1)

入り口にはAbema TVの公開録画用スタジオもあるのですね(収録準備中につき写真は省略)。

会場に入ると、受付と同時に複数種類から選べるノベルティを貰えました。
IMG_1756(1)


当日のタイムテーブルですが基調講演を除いて、常に会場を二つ用意、参加者は希望するセッションに参加できる形になってました。詳しいプログラムや登壇者、発表資料はこちらにあるので興味がある人は見てください。

私が聞いてきたセッションについてはメモも残して

1.基調講演(IBM戸倉彩さん)
 彼女の人生経験を題材に、女性のキャリア、生き方をテーマにした講演
 現在の仕事は開発者との関係を構築するDevRel(=Developers Relation)
 技術者とのコミュニケーションを通して自社製品の浸透とフィードバックの吸収を同時に行う
  →一方的な発信だけでなく、企業主催のイベント、コミュニティ主催のイベントなど
   色々なチャネルを駆使している
 担当は6名いて、うち3名は女性
  →この点でもダイバーシティが進んでいる?
 この仕事での目標は「エンジニアをヒーローにすること」
 貿易会社の秘書の仕事からスタート、仕事を通して興味が変わり、
 インフラ→セキュリティ→開発&マーケティング→営業とキャリアが移っていった
  →エンジニアになった後も、秘書時代の経験は仕事で生きているので、
   キャリアをリセットしているわけではない
  →彼女は氷河期世代だったので「選ぶ余裕がない」というのもあった
 エヴァンジェリスト、DevRelへの転身は組織変更によるもの、直前の仕事は営業だった
  →営業の仕事になったのは、上司からの「開発者は一度は営業を経験した方がいい」という
   後押しも大きかった
 キャリアチェンジの過程では恵まれていたこともあったが、
 それと同じくらい「女性だから」という理由でスポイルされることもあった
  →「女性は苦手」という顧客から、担当者の変更を依頼されることもあった
  →転職時の面接でも、女性ということで不利になる場合はあった
   →こういう経験もあって、女性というだけでアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に
    囚われてしまうことも多い
    →「女性エンジニア」という言葉だって「女性」が「エンジニア」ということなだけ
 キャリアについては二つの軸を持っている
 →「得意なことか、腕を磨いていることか」「生活の為にやっていることか、好きでやっていることか」
  →自分が取り組んでいることをこの4つの軸に分けて、仕事とプライベートのシナジーを生む
 「目標にする人」ではなくて「今なりたい自分」をベースに自分のキャリアを考える
  →「目標にする人」は自分が成長する過程で陳腐化するが「なりたい自分」は陳腐化しにくい
 その時代のトレンドを押さえることが大事
  →最近のトレンドはAI、クラウド、セキュリティ
   →この3つを押さえておけば5~10年はやっていける

2.大企業、ベンチャー、フリーランスの働き方
 登壇者
  大企業枠
   mixi
   桃原さん
   GMO
   中村さん
  ベンチャー枠
   キャンプファイヤー→ペイミー
   森さん
  フリーランス枠
   竹馬さん
 Q:会社の良いところ
  桃原
   →1on1の制度が充実している
   →ドキュメントを残す文化が充実している
    →フォーマットはmixi版Qiitaなど、色々なものがある
     →男性の育児休暇といったユニークなものもあるくらい盛ん
   →社内求人制度が充実している
    →社内で新しいキャリアを開けるのがメリット
  中村
   →福利厚生の手厚さ
    →託児所など、色々な制度が整備されているのが大企業の良いところ
  桃原&中村
   →色々な人がいる人材の豊富さ、相談できる相手が多いことは大企業のいいところ
  森
   →個人の特殊な事情に配慮してもらえる
   →リモートワークなど、新しいものを積極的に取り入れている
   →無駄なミーティングなどがない
   →色々な仕事に挑戦できる
    →人数が少ないことの裏返し
  竹馬
   →自分はどういう技術を選びたいか、どんな自分でありたいかを自分で決められる
    →仕事と学ぶべき技術を自分で選べるし、選ばなければいけない
  桃原&中村
   →出戻りを受け入れるのは大企業の強みかも
  それ以外の話題
   →個人の力量を大事にしなきゃいけないのはどこに行っても同じ
    →どこで、だれと、どんな仕事をして、どういう道に進みたいのか決めなきゃいけないのは
     どこに行っても同じ
     →同じ方向性、熱意を共有できる仲間や場所を見つけることが大事

3.Cyber Agentらしいキャリア
  登壇者
   茅野さん
    →ぐるなび(4年)→サイバーエージェント(5年)のウェブ畑エンジニア
    →2019年からAbemaTV(無料のネットテレビ局)
    →担当業務は放送技術(テレビ番組の収録、制作にかかわる技術を扱うセクション)のマネジメント
     →テレ朝とサイバーエージェントの混成部隊になっている
    →マネジメントに興味を持ったのは、将来のことを考えたから
     →家庭で母親として働く、仕事と家庭を両立するなど色々な将来像を考えた
      →いずれにしても、現在のように仕事だけを考えた無茶な生活はできなさそう
       →今後は並行して大きなことにチャレンジするのは難しそうというのも理由
    →チームが楽しく働く中で、充実した開発体制とプロダクトの品質向上を
     実現できるようにすることが現在の目的

4.ママエンジニアを支える技術
  登壇者
   神谷さん
    →2008年度新卒入社(サイバーエージェント)
         →現在はAWA(音楽ストリーミングサービス)に出向中
     →2児の母(5歳の娘&2歳の息子)
     →ソフトウェア畑
     →Node.jsやGolangを使っている
    →入社後はウェブ系のサービス開発に始まり、アンドロイドアプリの開発などをしている。
     その一方で、大学院にも進学、その後も出向、二度の出産、復帰を経験している。
    →現在の主な業務は様々な拡張機能の開発
      →レーベル担当者向けのダッシュボード
      →メタデータを活用するマイクロサービス
       →色々な拡張機能を独力で作っている
    →現在の家庭生活は夫婦ともフルタイム勤務
     →夫婦の生活サイクル、出社、帰宅時間は微妙にずれている
     →子供と過ごせるのは1日5時間しかない
      →限られた時間を濃密なものにするには工夫しかない
       1.家庭内Slack
        →子供ごとのチャンネル
        →カレンダーと連携させている
        →主な用途はReminder
        →夫に対する暗黙的なタスクのアサイン
       2.技術系Podcast
        →移動中などの隙間時間にPodcastを聴いて情報収集、勉強
         →よく聴くのはRebuild.fm,Mozaic.fm,software engeneering daily,
          バイリンガルニュースの4つ
       3.スマートホーム
        →RemoやGoogle HomeなどのデバイスをIFTTTで補完することで、
         家庭の機器の様々な動作を自動化している。
         →家にかかわることの効率化とストレスの削減を両立
          →それ以外にも色々なものを利用している
           →家事代行サービス、病児保育、ママ友のLINE、家族etc
             →便利なサービスや道具、恵まれた人間関係のおかげで仕事と子育てを両立できる
      →最後に一番大切なこと
        →兄弟を徹底的に仲良くさせる
         →子供の世話をしてくれる人が一人増えるし
        →保育園などに長時間預けることに罪悪感を抱き過ぎない
         →長時間保育園に預けることを可哀想に思っても誰も得しない
          →一緒に過ごす時間を濃く有意義なものにすることが大事

5.技術コミュニティを続ける理由
   登壇者(参加コミュニティはTECHPLAY女子部 WITYなど多岐に渡る&重複が多いので省略)
     ZOZOテクノロジーズ
      高木さん
     エンジニア
      須藤さん
     日産自動車
      大河内さん
     以下、発言の抜粋
     コミュニティ活動を始めた理由
      →言語系の勉強会が多い中で、サービスやプロダクトに重きを置いた勉強会を
       やりたかったから自分で始めた
      →人間関係を広げるため
     コミュニティ活動のメリット
      →会社以外の居場所を作って、勤務先以外の価値観に触れることで、
       自分の能力を高め、伸び悩みを回避できる
      →女性エンジニアは職場で少数派になりがちだけど、コミュニティを通して、
       他社の女性エンジニアと横のつながりを作れる
      →登壇者はみんなレベルが高い、レベルが高い人と接することで、
       自分の目標や意識を高められる
       →余談だけど、日産はプレミアムフライデーに部門横断型の勉強会を開いている
     ハラスメント対策について
      →女性技術者の集まりでは非常に多い
       →ハラスメントポリシーとスタッフの連携プレーで抑えることが多いけど、今も模索中
     最後に
      →色々なコミュニティに参加することで、チャンスが増える、それを大切にしてほしい

メモなので、雑な表現をしている点、誤った解釈をしている点はあると思いますが、内容は概ねあっていると思います。

また、本編の後には、懇親会もあったようですが、こちらは女性限定ということで私は帰りました。当日の雰囲気はTwitterのハッシュタグ#wttjpでも検索できるので、興味がある方は見てください。

今回のカンファレンスを通して感じたことは、自分と異なる立場やバックグラウンドの人が持っている経験やノウハウ、考え方からは、多くのことが得られるということです。ライフステージの変化への対応や仕事と生活の両立のような、多くの職業人が直面している問題は、子育てと仕事を両立してきた女性にとって、当たり前のこととして向き合ってきたものだと思います。

また、短い時間ですが、色々な世代、環境で働いてきた女性エンジニアの方の話を聞いたり、お話をする機会があったことは、男性の私にとっても多くのヒントを得られました。エンジニアのような男性が多い職場では、「自分達が考える女性像」「自分達が考える男性像」に固執するあまり、視野が狭くなってしまうことが少なくありません。今回のような、男性が少数派になるイベントを通して「世の中には性別に関係なく色々な人がいる」「色々な人がいるのだから、まずは相手の話に耳を傾けよう」「相手の話を聞いて、自分は何をすべきか考えよう」と考え方を切り替えられたことは大きな経験だと思います。

最後に、イベントの話題からは少しズレますが、私が帰宅の途についた時間に、ちょうどAbema TVの公開録画をやっていたらしく、多くの人が集まっていました。

その場にいた人に、何の番組か聞いたところ、有村架純さん主演のドラマ、「中学聖日記」の相手役でドラマ初出演、一気にブレイクしたという若手俳優の岡田健史さんの番組を収録していたとのことで、情報の感度がよいファンの方が集結していたみたいです。

IMG_1789(1)

この光景を見て、今日のイベントにしろ、最後に見た公開収録の風景にしろ、色々な経験や価値観、スキルや考え方を持った、多種多様な人を受け入れる土壌がある場所だからできたのかな?とふと思いました。

Abema TVのIT企業らしくないコンテンツも、サイバーエージェントが持つメディア企業、広告企業、IT企業の三つの側面と、合弁相手のテレビ朝日のコンテンツ制作能力が合わさったから作れたものだと思います。

当日のイベントを運営していた主催者の方々、会場を提供していた企業の方々、素敵な時間をありがとうございました。

平成も終わったので、平成30年間にリリースされた日本人アーティストの重要作品を10曲、独断と偏見で選んでみた

1989年1月から始まった平成も2019年4月で終わり。この30年間には、音楽を楽しむフォーマットがレコードからCD、音楽データへと移り変わり、DVDや動画配信、音楽ストリーミングなど、新しい視聴手段が次々と登場しました。また、CDの売り上げが下がる一方で、ライブの観客動員数は大幅に上がり、インターネットの世界で名を上げたミュージシャンが、世界的なヒットを生み出すことも珍しくなくなりました。それ以外にも、音楽そのものに目を向けると、世界各地で新しい音楽が生まれ、姿を変えながら新しい流行を生み出してきました。そんな平成という時代を象徴する楽曲を10曲、独断と偏見で選んでみました。

globe - Sweetheart(1996)

毀誉褒貶はあるが、平成の日本のポップス界を代表するクリエイターの一人は、間違いなく小室哲哉だろう。ミリオンセラーを記録した楽曲を幾つも残している彼だが、自身が率いるユニット、globeが1996年に発表した4枚のシングルでは、そんな彼の創造力とビジネスセンスが遺憾なく発揮されている。中でも、ヨーロッパで流行していたドラムン・ベースを日本のポップスに落とし込んだこの曲は、日本のポップスでは厳しいとされる重低音を強調した硬質なビートをポップスに組み込んだ匠の技が聴きどころ。前作「SA YO NA RA」に続く2週連続1位という記録は、2019年にDrakeがアメリカで達成するまで、世界唯一の記録だった。

globe decade-single history 1995-2004-
globe
エイベックス・トラックス
2005-02-16



MISIA – つつみ込むように...(Remix) feat. Muro (1998)

98年のデビュー以降、多くのヒット曲を残してきたMISIA。彼女の良さは高い歌唱力のほかに、大胆なリミックスにも紛れない声の存在感があると思う。このデビュー曲のリミックスでは、DJ WATARAIの手による音数を絞った物悲しい雰囲気のビートと、Muroの鋭さと優しさが同居した独特のラップを加えたアレンジで、シンプルゆえに難しいメロディを巧みに乗りこなす彼女の歌唱力を活かしている。リミックス・アルバムを80万枚以上売り上げた彼女が、ビート・メイカーやリミキサーの地位を高めたといっても過言ではない。

つつみ込むように・・・
MISIA
アリスタジャパン
1998-02-21



RIP SLYME -Stepper’s Delight(2001)

ポップスの世界にラップの存在を知らしめた「今夜はブギーバック」や「DA YO NE」、日本語によるハードコア・ヒップホップの可能性を示した「人間発電所」や「空からの力」など、多くのヒップホップ・クラシックが生まれた平成時代。その中でも後の音楽シーンに大きな影響を与えたのが、5人組のヒップホップ・グループ、RIP SLYMEが2000年に発表したメジャー・デビュー曲だろう。ドラムン・ベースを取り入れた、テンポが速く音数の多い複雑なビートの上で、コミカルなラップを次々と繰り出す姿は、アメリカのヒップホップにも日本のポップスにも見られない独創的なもの。日本の歌謡曲ともアメリカのヒップホップとも一定の距離を置きながら、ヒップホップの実験精神とポップスの親しみやすさを両立した音楽は、後の作品に多くの影響を与えている。余談だが、彼らの所属するヒップホップ・クルー、Funky Grammar Unitは、EAST END、RHYMESTER、KICK THE CAN CREWなど、多くの人気グループを輩出している。

GOOD TIMES(通常盤)
RIP SLYME
ワーナーミュージック・ジャパン
2010-08-04



Suite Chic – Uh Uh feat. AI (2003)

平成を通じて、常に多くの足跡を残してきたシンガーの一人が、安室奈美恵だ。単なるポップ・スターの枠に留まらず、ファッション・リーダーとして多くの女性のスタイルに影響を与え、キャリアの絶頂期に結婚、出産というブランクを経て、再び音楽業界の一線に戻ってきた彼女は、その一挙手一投足が人々の生き方に影響を与えてきた。そんな彼女が音楽で新境地に挑んだのが、2003年のSuite Chic。m-floのVerbalと音楽プロデューサーの今井了介の「日本のJanet Jacksonは誰だろう?」という会話をきっかけに生まれたこのプロジェクトは、彼女の作品でも珍しい、本格的なR&B作品。中でも、ラッパー、シンガーのAI、音楽プロデューサーのYAKKOと制作したこの曲は、アメリカ南部のヒップホップを取り入れた変則ビートと、矢継ぎ早に繰り出されるヴォーカルを組み合わせた、日本のポップスでは異色の作品。「カラオケで仲間と共有する音楽」の時代から「音源や映像、ライブで魅せる音楽」の時代へと移り変わっていった2000年代を象徴している。

WHEN POP HITS THE FAN (CCCD)
SUITE CHIC
エイベックス・トラックス
2003-02-26



Issa – Chosen Soldier(2007)

日本のポップスの特徴的なところに、ドラマやアニメとタイアップした曲が多いことがある。その中でも、仮面ライダーの熱狂的なファンであるDA PUMPのISSAが担当した映画「仮面ライダーTHE NEXT」の主題歌は、ISSAの手による作品のストーリーに沿った歌詞もさることながら、CHEMISTRYや倖田來未などを手掛けてきた日本屈指のR&Bプロデューサー、今井大介が手掛けるトラックが印象的な作品。Usherの”Year”やCiaraの”Goodies”でも取り入れていた当時の流行のサウンド、クランクを使って重厚で陰鬱な雰囲気を演出したアレンジは、楽曲のクオリティを高めつつ、映画と一体になることが求められるタイアップ曲の難しさを、高い次元でクリアしている。




TERIYAKI BOYZ – TOKYO DRIFT(2006)

2000年以降、ミュージシャンにとってファッションは新しい意味を持つようになっていった。単なる自分を飾るツールではなく、自分のイメージを増幅し、活動の場を広げる手段として、多くのミュージシャンが、これまで以上に積極的にファッションを活用するようになっていった。そんな時代に、ファッション業界での実績を活かして、音楽の世界に進出したのがA BATHING APEのデザイナーとして活躍していたNIGO。彼がm-floのVerbalなどと組んだ音楽ユニット、TERIYAKI BOYZは、ファッションを通して交流を深めたKanye WestPharrell Williamsといった海外の有名クリエイターをプロデューサーに招き、アメリカの最先端のサウンドを日本に輸入してみせた。映画「ワイルド・スピード」の主題歌として作られたこの曲も、一回聴いただけでPharrell の音とわかる軽快なビートの上で、4人が巧みなラップを繰り出した佳曲。余談だが、NIGOとVerbalは2019年にもPharrell Williamsをプロデューサー迎えた楽曲を、HONEST BOYZの名義で映画「名探偵ピカチュウ」の主題歌として提供している。




BIGBANG – HARU HARU(2008)

「日本人アーティストの重要曲なのに、なんで韓国のアイドル・グループの曲が?」そう思った人も少なくないだろう。2008年に韓国で最も売れたといわれるBIGBANGのシングル、実は作曲、アレンジ、プロデュースを北海道出身の音楽クリエイター、DAISHI DANCEが担当しているのだ。「踊れるバラードを作りたい」というリーダーのG-Dragonの希望に応えたこの曲は、ピアノの音色を使った切ない雰囲気の伴奏と四つ打ちのビート、ラップを担当するG-DragonとT.O.P.の絶妙な掛け合い、サビを歌う3人の美しい声が生み出す絶妙なバランスが心に残る良曲。メロディやアレンジの随所に、浜崎あゆみっぽさを感じるのは、G-Dragonの要望なのだろうか。彼らの作品の中でも異彩を放っているこの曲は、外国人が日本の音楽のどんなところを評価しているのかを端的に示している。楽曲の世界観を丁寧に描いたミュージック・ビデオも必見。

ALIVE
BIGBANG
YGEX
2012-03-28



Jin Akanishi – Good Times(2014)

平成の30年間を通して、常に日本の音楽業界に影響力を持ち続けてきたプロダクションの一つがジャニーズ事務所だ。同事務所はSMAP、Kinki Kids、嵐、関ジャニ∞など、個性豊かな人気グループを次々と送り出し、日本のポップス史に多くの金字塔を打ち立ててきた。そんな彼らの成功を支えてきたのが、優秀なタレントを育て、切磋琢磨させる事務所の環境にあったことを再確認できるのが、元KAT-TUNの赤西仁が退所直後に発表したこの曲。アメリカのR&Bを取り入れつつ、自分のヴォーカルやダンスのスタイル、ファンが彼に抱くイメージを作品に落とし込むプロデュース能力と、それを一緒に形にしてくれる優れた仲間を集められる人望、個人事務所という負荷の高い環境にいながら、それを微塵も感じさせない安定したパフォーマンスを観ていると、彼らの成功の秘訣が、厳しい環境で鍛えられ、自らの能力を高め続けてきた一人一人のタレントの努力にあることがよくわかる。彼の音楽は、アイドルはIDOL(=偶像)ではなく、たゆまぬ努力を続ける一人の人間なのだということを教えてくれる。

Me(+2) 通常盤
赤西仁
Go Good Records
2015-06-24



T-Groove – Move Your Body(2017)

インターネットの登場は、リスナーが音楽に接する機会を増やすだけでなく、アーティストと世界を繋ぐ機会も増やした。東京を拠点に活躍するT-Grooveこと高橋佑貴も、そんな時代を象徴するクリエイターの一人。彼はミュージシャンになる前から、マイナーなディスコ音楽を紹介するブロガーとして知る人ぞ知る存在だったが、音楽の世界で成功するきっかけになったのもインターネットだった。音楽ストリーミングサイトに投稿した楽曲が海外のミュージシャンやレコード・レーベルの目に留まり、フランスのレーベルからレコードデビューを果たした。デビュー・アルバムのタイトル・トラックであるこの曲は、Roger Troutmanの遠戚であるアメリカのシンガー、B. Thompsonを招いたダンス・ナンバーで、彼のディスコ音楽への深い造詣が遺憾なく発揮されている。日本を拠点に活動するクリエイターがアメリカのシンガーを起用した楽曲でフランスのレーベルからデビューする。インターネットの普及によって、インターネットの力で世界との距離が縮まった平成という時代を象徴する作品だろう。
Cosmic Crush -T-Groove Alternate Mixes Vol. 1
T-Groove
ビクターエンタテインメント
2019-03-06



星野源 – Pop Virus(2018)

90年代後半以降、R&Bの要素を盛り込んだポップスは数多く作られてきたが、その多くはヒップホップ色が強い、荒々しいサウンドをウリにするものだった。そんな中で、2018年に星野源がリリースしたこの作品は、D’Angeloの音楽を思い起こさせる、電子楽器と生音を組み合わせながら、人間の演奏が生み出す揺らぎや、音と音の隙間を効果的に聴かせるスタイルでリスナーの度肝を抜いた。日本を代表する人気ミュージシャンが、R&Bの中でも特に難解で実験的なサウンドに取り組みながら、老若男女問わず楽しめる音楽に落とし込む彼の才覚が光っている。大衆向けのポップスとマニア向けの音楽を両立した稀有な作品だと思う。

POP VIRUS (CD)(通常盤)(特典なし)
星野 源
ビクターエンタテインメント
2018-12-19



今回は敢えてヒット曲に拘らず、平成という時代に起きた色々な変化を象徴する音楽を取り上げてみました。ここで挙げたアーティストのほかにも、沢山のミュージシャンが新しい音楽に取り組み、世界を変えていったのが平成という時代だと思います。令和の時代ではどんな音楽が生まれ、私達を楽しませてくれるのか、これからも追いかけ続けたいと思います。
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