ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Tyler, The Creator - Scum Fuck Flower Boy [2017 Columbia]

フランク・オーシャンやジ・インターネットなどを輩出した、ロス・アンジェルス発の実力派ヒップホップ集団、オッド・フューチャー。その中心人物が、カリフォルニア州ラデラ・ハイツ出身のラッパーでプロデューサー、タイラー・ザ・クリエイターことタイラー・グレノリー・オコンマだ。

ナイジェリア系アメリカ人の父と、アフリカ系アメリカ人の母親の間に生まれた彼は、7歳の頃からジャケットのイラストを描くようになり、14歳になるとピアノも演奏するようになる。

16歳でオッド・フューチャーを結成した彼は、18歳の時に、自身の名義では初の録音作品となるミックステープ『Bastard』を発表。自主制作の作品ながら、音楽情報サイトの年間ランキングで32位を獲得するなど、高い評価を受けた。その後も、自身の名義で3枚を発表する一方、クルーの中心人物として多くの作品を収録。2017年に入ってからは、フランク・オーシャンの”Bikingに客演して話題になった。

そんな彼にとって、自身名義では4枚目のフル・アルバムにして、初のメジャー・レーベル配給作品となるのが本作。全ての曲を自らの手でプロデュースし、ゲストにはフランク・オーシャンやジ・インターネットのスティーヴ・レイシー(ただし、彼はオッド・フューチャーのメンバーではない)のようなオッド・フューチャーと縁の深い人のほか、エイサップ・ロッキーやリル・ウェインなどの人気アーティストが参加した意欲作になっている。

アルバムに先駆けて発表された”Who Dat Boy?”は、エイサップ・ロッキーをフィーチャーした楽曲。サイレンのようなシンセサイザーのリフが不気味な雰囲気を醸し出している。電子楽器を多用した作品だが、デビュー当初のウータン・クランを思い起こさせる、おどろおどろしいビートが格好良い。そんなトラックの上で、ワイルドなラップを聴かせる二人の存在も光っている。

これに対し、カップリング曲の”911/Mr. Lonely ”は、フランク・オーシャンとスティーヴ・レイシーがゲストで参加。バック・コーラスにはスクール・ボーイQやジャスパー・ドルフィンも加わるなど、オッド・フューチャー色の強い作品。前半部分の”911”は、多くのヒップホップ作品にサンプリングされてきたギャップ・バンドの”Outstanding”を使用したミディアム・ナンバーで、シンセサイザーの音色を効果的に使いながら、ビートの音圧を落としたトラックを用意することで、ロマンティックな曲に仕上げている。流れるように言葉を繋ぐ、歌うようなラップも、メロウなビートと合っている。また、後半の”Mr. Lonely”は90年代のジャーメイン・デュプリを連想させる、躍動感溢れるチキチキ・サウンドが格好良い曲。前半との流麗なトラックとのギャップもあり、強烈なインパクトを感じさせる。

また、もう一つのシングル曲”Boredom”は電子音楽畑のシンガー、レックス・オレンジ・カントリーとアンナ・オブ・ザ・ノースを招いた曲。電子楽器を多用しつつ、往年のソウル・シンガーの作品を彷彿させる、生演奏っぽいアレンジのトラックを作ることで、斬新さと親しみやすさを両立している。フィーチャリング・シンガー達の繊細な歌声が、太く荒々しいタイラーのラップを際立たせている点も見逃せない。

今回のアルバムは、彼にとってメジャー・デビュー作品だが、リスナーの目を意識したポップス志向や、豪華なゲストを集結させることもなく、あくまでもマイペースに、自身の音楽を貫いているように見える。既に、ソロ活動やプロデューサー、クルーの中心人物として多くの実績を上げてきた自信もあるのだろうが、フランク・オーシャンやジ・インターネット、そのメンバーであるシド(ただし、彼女はソロ・デビューの時点でクルーを離れている)やマット・マーシャンズが次々と成功を収めるなど、彼らのサウンドが注目を集めていることを踏まえて、敢えて自身の作風を貫いているようにも映る。

彼に先駆けてメジャー・デビューを果たした、クルーの面々にも負けず劣らずの先鋭的かつ緻密な作品。「大物は最後にやってくる」を体現したような、充実した内容と安定感が魅力の傑作だ。

Producer
Tyler, The Creator

‎ Track List
1. Foreword feat. Rex Orange County
2. Where This Flower Blooms feat. Frank Ocean
3. Sometimes...
4. See You Again feat. Kali Uchis
5. Who Dat Boy? feat. ASAP Rocky
6. Pothole feat. Jaden Smith
7. Garden Shed feat. Estelle
8. Boredom feat. Rex Orange County and Anna of the North
9. I Ain't Got Time!
10. 911 / Mr. Lonely feat. Frank Ocean and Steve Lacy
11. Dropping Seeds feat. Lil Wayne
12. November
13. Glitter
14. Enjoy Right Now Today






French Montana - Jungle Rules [2017 Bad Boy Entertainment Epic]

モロッコのラバットに生まれ、13歳の時にアメリカへ移住。MCバトルで腕を磨いた後、友人とDVDやミックステープを発表して、叩き上げのラッパーとして名を上げた、ニューヨーク州ブロンクス地区出身のラッパー、フレンチ・モンタナこと、カリーム・カルブシ。

その実績を買われ、複数のレーベルから誘いを受けた彼は、2012年にショーン・コムズ率いるバッド・ボーイとリック・ロス率いるメイバッハの2社と契約。翌年には初のフル・アルバム『Excuse My French』を発表。全米ラップ・アルバム・チャートの1位を獲得し、同作からのシングル曲”Pop That”はプラチナ・ディスクも獲得する。その後も、フィーチャリング・アーティストとして、多くの作品に客演。ウィル・アイ・アムの”Feelin' Myself”や、クリス・ブラウンの”Loyal”など、色々なアーティストのヒット曲で存在感を発揮してきた。

このアルバムは、彼にとって4年ぶり2枚目のフル・アルバム。所属レーベルの都合で、配給がインタースコープからエピックに変わっているものの、今作でも、バッド・ボーイらしいキャッチーなサウンドと、彼の荒々しいラップが堪能できる良質なヒップホップを聴かせている。

本作のオープニングを飾る”Whiskey Eyes”はニューヨーク出身のラッパー、チンクスをフィーチャーした曲。ロンドン出身の女性シンガー、フェのヴォーカルを効果的に使ったトラックと、二人の刺々しいラップの組み合わせが光っている。

一方、スワエ・リーが参加した”Unforgettable”は、レゲトンやカリプソの要素を取り込んだアップ・ナンバー。聴き手を幻想的な世界に引きずり込むトラックやヴォーカルは、モロッコのダンス・ミュージック、ジャシューカに通じるものがある。アメリカではあまり知られていない音楽のエッセンスをさりげなく盛り込むプロデューサーのセンスが素晴らしい楽曲だ。

また、メジャー・レーベルと契約する前からの盟友、ハリー・フラウドが制作を主導した”A Lie”は『Starboy』も好評のウィークエンドと、ニューヨークのハーレム出身のラッパー、マックスBを起用した作品。ウィークエンドやドレイクの楽曲に近い、シンセサイザーを多用した近未来的な雰囲気のトラックと、ウィークエンドの繊細な歌声が印象的な作品。ドレイクに代表される歌うようなラップを聴かせるアーティストがヒット・チャートを席巻する時代に、彼らのサウンドを取り入れつつ、LLクールJやノートリアスB.I.G.のような、荒々しいラップを聴かせる手法が魅力的。往年のヒップホップと現在のサウンドが融合した、本作最大の聴きどころだと思う。

それ以外の曲では、2017年も「Despicable Me 3(邦題:怪盗グルーのミニオン大脱走)」のサウンドトラックや、カルヴィン・ハリスの”Feels”などに携わるなど、活躍を続けているファレル・ウィリアムスが参加した”Bring Dem Things ”が面白い。ハリー・フラウドが作ったトラックは、ファレルが作りそうな、音数を絞ったキャッチーなもの。その上で、フレンチ・モンタナがリズミカルに言葉を繋ぐ姿は堂に入ってる。ファレルのスタイルを借りつつ、自分の音楽に染め上げるスキルの高さは流石の一言だ。

今回の作品は、多くの人気ミュージシャンを招き、流行のサウンドを積極的に取り入れた、バッド・ボーイらしいアルバムだ。しかし、妄信的にトレンドを追いかけるのではなく、太く、荒々しいフレンチ・モンタナのラップが活きるシンプルなトラックを中心に揃えることで、硬派だけど聴きやすい、絶妙なバランスの音楽に落とし込まれている点が面白い。恐らく、ノートリアスB.I.G.やメイスなど、ハードなラップをウリにするミュージシャンをヒット・チャートに送り込んできたショーン・コムズのビジネス・センスと、フレンチ・モンタナの確かなラップ・スキルが揃ったから、作れたのだろう。

ヒップホップが人気ジャンルの一つになった時代だからこそ新鮮に聴こえる、ワイルドなラップを活かした佳作。90年代からヒップホップを聴いてきた、年季の入ったファンにこそ聴いてほしい、本格的なヒップホップ・アルバムだ。


Producer
Puff Daddy, French Montana, Rick Steel etc

Track List
1. Whiskey Eyes feat. Chinx Drugz
2. Unforgettable feat. Swae Lee
3. Trippin
4. A Lie feat. Max B, The Weeknd
5. Jump feat. Travis Scott
6. Hotel Bathroom
7. Bring Dem Things feat. Pharrell Williams
8. Bag feat. Ziico Niico
9. Migo Montana feat. Quavo
10. No Pressure feat. Future
11. Push Up
12. Stop It feat. T.I.
13. Black Out feat. Young Thug
14. She Workin feat. Marc E. Bassy
15. Formula feat. Alkaline
16. Famous
17. Too Much
18. White Dress





JUNGLE RULES
FRENCH MONTANA
EPIC
2017-07-21

Mura Masa ‎– Mura Masa [2017 Anchor Point, Interscope, Universal Music, Polydor UK]

ギターやベース、ドラムやヴォーカルまで何でもこなし、パンクからゴスペルまで、色々な音楽に取り組んできた、イギリスのガーンジー島出身のDJでプロデューサー、ムラ・マサことアレックス・クロッサン。彼にとって待望のフル・アルバムが本作だ。

ハドソン・モーホークの作品を聴いてエレクトロ・ミュージックに開眼。動画投稿サイトなどを通して、ジェイムス・ブレイクやSBTRKT、ゴリラズなどの音楽を研究した彼は、自身もエレクトロ・ミュージックを作るようになる。そして、2014年に初の作品”Lotus Eater”を音楽配信サイトに投稿すると、ラジオ番組に取り上げられるなど話題を呼ぶ。その後、大学進学のため、サセックス州ブライトンに移り住むと、ステージにも立つようになり、現地ではレコード・デビュー前ながらチケットが完売するほどの人気だった。

そんな実績が買われ、ドイツのジャカルタ・レコードと契約した彼は、2015年に初のEP『Someday Somewhere』を発表。BBCのプレイリストに入るなど、高い評価を受ける、そして、自身のレーベル、アンカー・ポイントを立ち上げた彼は、ポリドールインタースコープとも配給契約を結ぶ。また、2016年にはエイサップ・ロッキーとのコラボレーション曲”Love$ick”を発表。2017年には、イギリスのラッパー・ストームジーの”First Things First”をプロデュース。同じ年には、イギリスの女性シンガー、ナオのリミックス・アルバム『For All We Know - The Remixes』で”In the Morning”を担当して話題になった。

本作は、彼にとって初のフル・アルバム。アサップ・ロッキーやナオのほか、ブラーやゴリラズでおなじみのデーモン・アルバーンも参加するなど、気鋭の新人のメジャー・デビュー作にふさわしい、豪華な顔ぶれが集結している。

アルバムに先駆けて発表された”Love$ick”は、エイサップ・ロッキーをフィーチャーしたヒップホップ色の強い曲。スティール・パンやトイ・ピアノの音色を使った色鮮やかなトラックと、荒々しいラップの組み合わせが面白い曲。電子音楽を中心に、色々な音楽への造詣が深いムラ・マサの柔軟な発想が光っている。

続く”1 Night”は、イギリス出身の女性シンガー、チャーリーXCXとコラボレーションした、前曲同様、カラフルなトラックが魅力のアップ・ナンバー。”Love$ick”はヒップホップのビートを取り入れていたが、こちらの曲はカリプソやレゲトンの要素を盛り込んだポップで軽妙なサウンドが印象的。チャーリーXCXの爽やかで甘酸っぱいヴォーカルと、陽気なトラックの相性も素晴らしい。

また、アイルランド出身、ロンドン在住の女性クリエイター、ボンザイを起用した楽曲。感情をむき出しにしたワイルドなヴォーカルと、精密なリズムを刻む電子音楽の対称的な音のコンビネーションが光る佳曲。エレクトロ・ミュージックでありながら、どこか生演奏のような雰囲気を感じさせるアレンジが格好良い。

そして、本作の収録曲では最も早く公開された”Firefly”はナオがゲストで参加。妖精のような可愛らしい歌声で、軽快な電子音の上を舞うように歌う姿が魅力的。彼女のアルバムでも感じたことだが、ナオの歌声はポップなトラックと組み合わせると最も輝くと思う。

今回のアルバムでは、既に公開されてる作品同様、R&Bやカリプソなど、色々な音楽の要素を取り入れつつ、音色を選別に工夫を凝らすことで、一貫性のある独自の音楽を構築している。このような作品を生み出す、音楽に対する造詣の深さと、鋭い聴覚が彼の持ち味なのだと思う。

弱冠21歳(本作の発表時点)でこのクオリティ。今後、どんな進化を遂げてくれるのか楽しみな、期待の若手による傑作だ。

Producer
Mura Masa

Track List
01. Messy Love
02. Nuggets feat. Bonzai
03. Love$ick feat. A$AP Rocky
04. 1 Night feat. Charli XCX
05. All Around The World feat. Desiigner
06. give me The ground
07. What If I Go feat. Bonzai
08. Firefly feat. Nao
09. NOTHING ELSE! feat. Jamie Lidell
10. helpline feat. Tom Tripp
11. Second 2 None feat. Christine & The Queens
12. Who Is It Gonna B feat. A. K. Paul
13. Blu feat. Damon Albarn





Mura Masa
Mura Masa
Imports
2017-07-14

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