ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

6LACK - Free 6LACK [2016 LoveRenaissance, Interscope]

メリーランド州ボルティモア生まれ、ジョージア州アトランタ育ちのシンガー・ソングライター、6LACK(どうやら「ブラック」と読むらしい)こと、ロドリゲス・バルデス・ヴァレンティン。2011年にインディペンデント・レーベルと契約したことをきっかけに、当時通っていた大学を中退して音楽活動に専念。サウンドクラウドに自作曲などをアップロードするなどして、新しい音に敏感な人々を中心に、少しずつ着実にファンを増やしてきた。

その甲斐もあって、2016年にはインタースコープと契約。同年7月にフューチャーの”Perkys Calling”をサンプリングしたシングル『Ex Calling』でデビューすると、同9月には2作目のシングル『PRBLMS』を発表。こちらは、ビルボードのホット100チャートで最高88位という、新人R&Bシンガーとしては上々の結果を残した。

このアルバムは、上の2枚のシングルを収録した、彼にとって初のフル・アルバム。2016年11月に発売されると、配信限定ながらアルバム・チャートの54位(R&Bのアルバム・チャートでは最高11位)まで上り詰め、翌年にはCD盤、LP盤も発売されるヒット作になった。

まず、本作の新録曲から目を向けると、2曲目に収められた”Rules”は、リュダクリスなどの作品を手掛け2017年にはキャリッドのデビュー作『American Teen』を手掛けたことでも話題になったシック・センスがプロデュースした作品。メロディを乗せやすい、起伏にとんだ変則ビートとトラックを巧みに乗りこなすブラックの歌唱力が光る、味わい深い楽曲だ。

これに対しミュージック・ビデオも制作された”Free””は、カナダ出身の女性ヒップホップ・アーティスト、ノヴァ・ロッカフェラがプロデューサーとして参加した楽曲。シンセサイザーを駆使した、ダークで重いビートに乗せて、切々と歌う彼の姿が印象的なミディアム・バラード。中盤でビートが変化して、楽曲にメリハリをつけるテクニックも面白い。シンガーらしい、トラックの特徴や展開に応じて、声をコントロール技術と、ラッパーのように言葉を上手につなぐスキルが見事に両立された佳曲だ。

一方、ジェイソン・デルーロやブリトニース・ピアーズにも曲を提供している、ブライアン・アイザックが手掛けた”Gettin' Old”は、ブラックの歌唱力にスポットを当てた本格的なヴォーカル曲。恋人に語り掛けるような優しいヴォーカルが心地よいミディアム・バラードだ。ドラムを軸にした、主役の歌声を引き立てる役に徹したシンプルなトラックも、楽曲の切ない雰囲気を盛り立てている。

だが、本作の目玉といえば、やっぱりシングル化された2曲だろう。アトランタ出身のラッパー、フューチャーのミックステープ『Purple Reign』に収められている楽曲のトラックを引用した"Ex Calling"は、原曲の制作もおこなっているアトランタ出身のプロデューサー、サウスサイドがプロデュースをを担当。バウンズ・ビートと哀愁を帯びたピアノの伴奏が印象的なトラックを活かした、切ない雰囲気のミディアム・ナンバーだ。R&Bシンガーというよりもラッパーに近いガラガラとした声で、淡々と言葉を紡ぎ出す姿が耳に残る、どこか悲しい雰囲気の楽曲だ。

そして、ノヴァをプロデューサーに招いたヒット曲”PRBLMS”は、シンセサイザーを使ったダークな雰囲気の伴奏とビートに乗せて、歌ともラップとも形容しがたい、絶妙な起伏のヴォーカルを聴かせてくれるミディアム・ナンバー。なんとなくだけど、 ドレイクパーティネクストドアの作風に似ている気がするのは自分だけだろうか。

アルバムをリリースした時点で24歳(パーティネクストドアの1歳年上で、ウィークエンドよりも2歳若い)と、若者らしい新鮮な視点を見せつけてくれる一方、シンガー・ソングライターとして5年以上活動してきた経験に裏付けられた、自身の感性を具体的な作品に落とし込む確かな技術も兼ね備えている。実力派シンガー、華やかさやスター性では見劣りする部分もあるが、それ以上に、聴き手の心を確実に惹きつける、存在感のある声とフロウが光っている。

同作がヒットした翌年には、ガラントのデビュー・アルバム『Ology』で強烈なパフォーマンスを聴かせてくれた、日系アメリカ人シンガーのジェーン・アイコとコラボレーションしたシングル『First Fuck』を発表するなど、1作目の結果に驕ることなく、素敵な新曲を生み出し続けている。アンダーソン・パックケラーニと並んで、これからのR&B業界をけん引する台風の目になるかもしれない。2010年代のR&Bの醍醐味が凝縮された、現代のR&Bを象徴する作品だと思う。

Producer

6LACK, Frank Dukes, Dot da Genius, Breyan Isaac etc

Track List
1. Never Know
2. Rules
3. PRBLMS
4. Free
5. Learn Ya
6. MTFU
7. Luving U
8. Gettin' Old
9. Worst Luck
10. Ex Calling
11. Alone / EA6





Free 6lack
6lack
Interscope Records
2017-03-17

 

Various Artist - The Fate Of The Furious: The Album [2017 Atlantic Records, Universal Music Group]

2001年に第1作が公開されると、本物の公道で繰り広げられるスリリングなレース・シーンと、自動車好きには堪らない、有名メーカーの人気車両を使ったダイナミックなカー・アクションが話題となり、あっという間に人気作品の仲間入りを果たした『Fast & Furious』(邦題『ワイルド・スピード』)。

派手なアクション・シーンと並んで、同シリーズの目玉になっているのが、劇中で使われている楽曲を収めたサウンドトラック。公道レースがテーマの作品ということもあり、ヒップホップやR&Bを中心に、ストリートを意識した人気のダンス・ミュージックや舞台になった都市にちなんだ楽曲を収録。2006年に公開された 『The Fast and the Furious: Tokyo Drift』では、舞台になった東京にちなんで、ドラゴン・アッシュやテリヤキ・ボーイズといった日本のアーティストの楽曲が取り上げられたことでも話題になった。

このアルバムは、2017年4月に公開された同シリーズの第8作『The Fate of the Furious / Fast & Furious 8』(邦題『ワイルド・スピード ICE BREAK』)のサウンドトラック。映画本編はアメリカ国内が舞台だが、サウンドトラックは西海岸出身のヒップホップ・アーティストからカナダ勢、ラテン・アメリカのアーティストまで、バラエティ豊かな面々を揃えている。

人気ミュージシャンが集結した企画盤だけあって、捨て曲は一つもないが、R&Bが好きな人に最初に聴いてほしい曲といわれたら 2017年にデビュー・アルバム『SweetSexySavage』を発表したケラーニとオークランド出身のラッパー、G-イージーのコラボレーション曲”Good Life”しかないだろう。トレイ・ソングスの”Touchin, Lovin”などを手掛けたフェザーストーンズが手掛けるこの曲は、レイド・バックしたメロディとケラーニのキュートな歌声が切ない雰囲気を醸し出すミディアム・ナンバー。G-イージーの華がある声と、シンセサイザーを多用した派手なトラックが、楽曲をポップで気軽に楽しめるものにしている点も見逃せない。

また、ヴォーカルもこなすルイジアナ州バトン・ルージュ出身のラッパー、ケヴィン・ゲイツが歌う”911”も面白い曲だ。LVやネイト・ドッグを彷彿させる。太く柔らかいバリトン・ヴォイスを駆使して、歌にラップに縦横無尽の活躍を見せる、切ない雰囲気のミディアム・ナンバー。フランク・デュークらが手掛ける、主役の声の魅力を巧みに引き出す味わい深いビートもこの曲の聴きどころ。

そして、同シリーズのサウンドトラックに収められている楽曲の中でも、五本の指に入る美しいメロディを堪能できるのが”Don't Get Much Better”だ。ジェレミー、タイ・ダラ・サイン、サーガ・ザ・ジェミニの三人がコラボレーションしたこの曲は、ジェイソン・デルーロの”Talk Dirty ”や”Wiggle”などを手掛けてきたリッキー・リードがプロデュースを担当。彼の作品らしいポップで切ないメロディの上で、甘酸っぱい歌声を響かせるジェレミーの存在感が光る佳曲。耳元で囁きかけるような、甘いラップを披露するタイ・ダラ・サインとサーガ・ザ・ジェミニのパフォーマンスが、楽曲にメリハリをつけている。

だが、本作の目玉は、英語とスペイン語の2ヴァージョンが収録された”Hey Ma”だろう。コロンビアのメデジン出身のレゲトン歌手Jバルヴィンとマイアミ出身のピットブル、キューバのハバナ出身で、フィフス・ハーモニーの元メンバーでもあるキャミリア・キャベーロと、出自も音楽性もバラバラの3人がコラボレーションしたこの曲は、レゲトンのビートをベースに、R&Bやポップス、ヒップホップの要素を織り込んだ切ない雰囲気のアップ・ナンバー。リッキー・マーティンを彷彿させる男の色気を見せつけるJバルヴィンと、R&Bグループ出身らしい妖艶なヴォーカルをを披露するキャミリアの個性が、互いの持ち味をうまく引き出している。

アルバムを通して聴いて抱いた印象は、隙のない作品だなということ。有名なアーティストやプロデューサーを起用し、流行のサウンドを取り入れながら、曲単位で聴いてもアルバム全体を通しても、第1弾のころから続く、一貫したスタイルのようなものが感じられる。おそらく、映画自体が「公道レース」という一つの軸を持っていて、サウンドトラックもそれを引き立てるストリート色と疾走感を重視しているからだと思う。

流行のダンス・ミュージックを1枚のアルバムに凝縮した、濃縮果汁のように密度の濃い作品だ。流行りものだと思って見逃していると、絶対に損をするよ。

Producer
Ricky Reed, 30 Roc, Frank Dukes, Murda Beatz etc

Track List
1. Gang Up - Young Thug, 2 Chainz, Wiz Khalifa & PnB Rock
2. Go Off - Lil Uzi Vert, Quavo & Travis Scott
3. Good Life – G-Eazy & Kehlani
4. Horses - PnB Rock, Kodak Black & A Boogie Wit Da Hoodie
5. Seize The Block - Migos
6. Murder (Remix) - YoungBoy Never Broke Again feat. 21 Savage
7. Speakerbox (F8 Remix) - Bassnectar feat. Lafa Taylor, Ohana Bam
8. Candy Paint - Post Malone
9. 911 - Kevin Gates
10. Mamacita - Lil Yachty feat. Rico Nasty
11. Don't Get Much Better - Jeremih, Ty Dolla $ign & Sage The Gemini
12. Hey Ma(Spanish Version) - Pitbull & J Balvin feat. Camila Cabello
13. La Habana - Pinto "Wahin" & DJ Ricky Lunafeat. El Taiger
14. Hey Ma - J Balvin & Pitbull feat. Camila Cabello






Fate of the Furious: The Album
Various Artists
Atlantic
2017-04-14


Kendrick Lamar - Damn. [2017 Top Dawg Entertainment]

2000年代初頭に音楽活動を開始。2004年にK-ドットの名義で発表したミックス・テープ『Youngest Head Nigga in Charge (Hub City Threat: Minor of the Year)』が、現在も所属するトップ・ドッグ・エンターテイメントのオーナー、アンソニー・ティフスの目に留まり、同レーベルと契約。ザ・ゲームなどの、西海岸出身のヒップホップ・アーティストのオープニング・アクトなどを務めながら、自身の作品をレコーディングしてきた、カリフォルニア州コンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマーことケンドリック・ラマー・ダックワーズ。

2010年に配信限定で発表したミックス・テープ『Overly Dedicated』が, ビルボードのヒップホップ・R&Bアルバム・チャートに入ると、往年のギャングスタ・ラップを彷彿させるリリックと、様々なビートを自在に乗りこなすスキルが注目を集め、ドクター・ドレが率いるアフターマスと契約。2011年に初のフル・アルバム『Overly Dedicated』をトップ・ドッグから発売すると、気鋭の新人ヒップホップ・アーティストとして多くのメディアに取り上げられる。翌年にはアフターマスからメジャー・デビュー・アルバムとなる『good kid, m.A.A.d city』をリリース。2015年には2枚目のフル・アルバム『To Pimp a Butterfly』を発売。2作連続でプラチナ・セールスを獲得する一方、多くのメディアや愛好家のコミュニティから絶賛され、2016年にはヒップホップ・アーティストでは史上最多となる、グラミー賞11部門にノミネートする快挙を成し遂げた。

本作は、前作から約2年ぶりの新作となる通算3枚目のオリジナル・アルバム。といっても、前回のアルバムが発売されたあとも、編集盤『Untitled Unmastered.』やマルーン5とのコラボレーション・シングル『Don’t Wanna Know』など、多くの作品をリリースしていたので、どちらかと言えば「まだ3作目なのか」という印象を抱いてしまう。

今回のアルバムは、演奏者やゲスト・ミュージシャンが多数参加していた前作に比べると、本作のゲストは少なく、主役のラップとトラックにスポットを当てたシンプルなもの。だが、それ故に彼の実力の高さと、メジャー・デビュー後に更なる進化を遂げたラップのスキルが明確になったように思える。

アルバムの実質的な1曲目”DNA”は前作でも演奏しているギタリストのマット・シェファーが参加した楽曲。マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースしたトラックは、2000年代初頭のジャーメイン・デュプリやリル・ジョンが手掛けたようなバウンズ・ビートだが、ケンドリックは滑らかなラップで軽やかに乗りこなしている。曲の前半と後半で異なるビートを採用している点も面白い。決して斬新な曲ではないのだが、彼の手にかかると新鮮に聞こえるのはなぜだろうか。

これに対し、ドクター・ドレやエミネムの作品にも携わっている、ベーコンことダニエル・タンネンバウムがプロデュースを担当した”Element”はキッド・カプリがヴォーカルで、ジェイムズ・ブレイクがソングライティングで参加している。ウータン・クランの楽曲を彷彿させる不気味なピアノやキーボードの音色が鳴り響き、声ネタやスクラッチを使っているが、特定の楽曲をサンプリングしたものではないらしい。おどろおどろしいトラックに乗せて、言葉を畳みかけるスタイルは、ウータン・クランの一員として華々しいデビューを飾ったころのRZAを思い起こさせる。

一方、本作の中で異彩を放っているのは、リアーナをフィーチャーした”Loyalty”。DJダーヒらが手掛けたトラックは、ブルーノ・マーズの”24K Magic”をサンプリングしたものだ。原曲を知る人にはお馴染みのフレーズを、テンポを落としてループさせたトラックの上で、歌うようにラップする2人の姿が印象的。高揚感が魅力のダンス・ナンバーを陰鬱な雰囲気のヒップホップに組み換える発想の豊かさと、それを具体的な楽曲に落とし込む各人のスキルが光っている。

そして、本作のハイライトともいえるのが、マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースした”Humble”だ。シンセサイザーとギターによるシンプルな変則ビートに乗せて、リズミカルに言葉を繋ぐ姿が格好良い曲。かつてはポップな印象を与えていたバウンズ系のビートを、緊迫感あふれるヒップホップ・ナンバーに生まれ変わらせるケンドリック・ラマーの個性を再認識させられる楽曲だ。

今作は、シンセサイザーを使ったトラックが多く、ゲスト・ミュージシャンも少なくなっているなど、前作や『Untitled Unmastered.』で彼の音楽を知った人には少し地味に映るかもしれない。だが、あらゆるトラックを器用に乗りこなすだけでなく、ダークでスリリングな、ストリートの雰囲気を楽曲に吹き込む彼のスキルは、トラックで使われる音色に関係なく、本作でも堪能できる。

流行の変化に抵抗することも、過剰に順応することもなく、独自の解釈を加えて自身の音楽に染め上げるスキルは、現役のミュージシャンの中では頭一つ抜けている。このアルバムは2017年のヒップホップ・シーンを代表する作品の一つになると思う。

Producer
Anthony "TopDawg" Tiffith, Dr. Dre, Dave "miyatola" Free etc

Track List
1. Blood
2. DNA
3. Yah
4. Element
5. Feel
6. Loyalty feat. Rihanna
7. Pride
8. Humble
9. Lust
10. Love feat. Zacari
11. XXX feat. U2
12. Fear
13. God
14. Duckworth



Damn
Kendrick Lamar
Aftermath
2017-04-14

 
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