ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

G.Rina - 想像未来 feat. 鎮座DOPENESS[2017 plusGROUND, Victor]

2003年に、アルバム『サーカスの娘』でレコード・デビュー。その後は、自身名義でも作品を発表する一方、2008年にはビクター・エンターテイメントからカヴァー集『The Nightbird ~ Goodings RINA NONSTOP COVERS~』をリリース。それ以外にも、トーフビーツの”No. 1”やドリアンの”Natsu No Owari”、土岐麻子”Fools Fall In Love”や坂本冬美の”秋まつり、お月さま”で、制作やヴォーカルを担当するなど、幅広いジャンルで活躍している東京出身のシンガー・ソングライター、G.リナ。彼女が2017年に発売したアルバム『Live & Learn』からのリカット・シングルが本作だ。

アルバムのオープニングを飾ったこの曲は、東京出身のラッパー、鎮座ドープネスをフィーチャーしたアップ・ナンバー。乾いたギターとアナログ・シンセサイザーの音色を駆使したモダンなサウンドが、リック・ジェイムスを思い起こさせるクールな楽曲だ。

しかし、本作の目玉は何といっても、フランスのディギー・ダウンからリリースされた初のソロ・アルバム『Move Your Body』好評な、青森県八戸市出身のプロデューサー、T-グルーヴこと高橋佑貴がトラックを担当したリミックス・ヴァージョンだ。

記憶違いでなければ、T-グルーヴがメジャー・レーベル発の日本語曲に携わるのは今回が初めて。しかも、これまでの作品でコラボレーションしてきた、エノイス・スクロギンスやウィンフリーのような、豊かな声量と表現力がウリの歌手とは対極の、透き通った歌声と繊細な表現が魅力の女性シンガーへのトラック提供という、一筋縄にはいかないお題に取り組んでいる。

そんな彼女の楽曲に対し、彼は普段の作品よりも少しだけベースの音を強調したトラックを提供。彼女のモダンな音楽としなやかなヴォーカルの良さを引き出している。

G.リナのヴォーカルは、ビヨンセよりもアリーヤに近い、日本でいえば、矢野顕子やカヒミカリイのようなタイプの歌手だと思う。端的に言えば、あらゆるトラックを力強い歌声で自分の色に染め上げる人ではなく、歌の持つ個性をうまく取り込むタイプのシンガーだ。そんな彼女の個性を活かし、キーボードやベースなどの演奏を少しだけ強調したトラックを制作するセンスの高さは圧巻の一言。

また、演奏者には、彼の作品では欠かせない存在であるナカシマ・タカオやドゲット・ブラザーズのグレッグ・ドゲットなどの名手を集め、グルーヴや音色は欧米向け作品と変わらないものにしている点も見逃せない。この拘る点と調整すべき点を選別する編集能力の高さが、楽曲に往年のディスコ音楽の雰囲気と、日本人ミュージシャンが作るポピュラー・ソングの繊細さを両立しているのだと思う。

確固たる個性を持ちながら、演歌歌手やアイドル、海外アーティストとの仕事でコミュニケーション・スキルを磨き上げてきた、彼女達にしか作れない本格的なダンス・ナンバー。複数のミュージシャンによる、コラボレーション作品の一つの理想形といっても過言ではないと思う。

Track List
1. 想像未来 feat. 鎮座DOPENESS
2. 想像未来 feat. 鎮座DOPENESS (T-Groove Remix)
3. 想像未来 feat. 鎮座DOPENESS (Inst)
4. 想像未来 feat. 鎮座DOPENESS (T-Groove Remix Inst)




Mavis Staples - Mavis Staples: I'll Take You There: An All-Star Concert Celebration [2017 Caroline International]

メイヴィス・ステイプルズはイリノイ州シカゴ出身のシンガー・ソングライター。1950年に家族と結成したゴスペル・グループ(後のステイプル・シンガーズ)の一員として音楽活動を開始し、53年にシングル『These Are They / Faith And Grace』でレコード・デビュー。その後は”I’ll Take You There”や”Respect Yourself”、”Let's Do It Again”などの後世に語り継がれる名曲と、多くのアルバムを残し、2000年にはロックの殿堂入りも果たしている。

また、彼女自身は69年に初のソロ・アルバム『Mavis Staples』を発表。以後、2016年までに14枚のアルバムと30枚以上のシングルを発表。近年はベン・ハーパーやボン・イヴェールのジャズテン・ヴァーノンを起用したアルバムを発表したり、アーケード・ファイアやゴリラズの作品に客演したりするなど、70歳を超えた今も一線で活躍している。(余談だが、ゴリラズのツアーには映像で参加している)

このアルバムは、彼女の生誕75歳を祝って行われたコンサートを収めたライブ盤。多くの後輩ミュージシャン(といっても、現役のミュージシャンで、彼女より先にデビューした人は殆どいないが)が集結し、ステイプル・シンガーズやソロ名義で発表した名曲を披露している。

本作のトップ・バッターを飾るのは、ケンタッキー州出身のベテラン女性シンガー・ソングライターのジョーン・オズボーン。69年の初ソロ作『Mavis Staples』に収められている”You're Driving Me”に取り組んでいる。フレッド・ブリッジ作の泥臭いソウル・ミュージックを忠実に再現する歌唱力は圧巻の一言だ。

その後は、ケブ・モーやオーティス・クレイら、ベテラン・シンガー達が彼女のキャリアを祝福する名演奏を披露し、本日の主役、メイヴィスへと繋いで行く。

彼女のステージは、ステイプル・シンガーズの名義で71年に発表した”Respect Yourself”でスタート。ニューオーリンズを代表するR&Bバンド、ネヴィル・ブラザーズの一員であるアーロン・ネヴィルと披露したデュエットは、長いキャリアと豊富な実績が反映された、パワフルな歌唱と豊かな表現力が存分に発揮された名演だ。30年以上前にリリースされた曲を、現在の自分達に合わせてアレンジし直す技術が見どころだ。

これに対し、本作の収録曲では最も新しい、2013年のアルバム『We'll Never Turn Back』が初出の”Turn Me Around”は、御年67歳のベテラン・ブルース・シンガー、ボニー・レイットとのコラボレーション。ボニーが鳴らす荒々しいギターの音色をバックに、力強いヴォーカルを披露するメイヴィスの姿が印象的な名演だ。遥か昔に還暦を迎えたとは思えない二人の、パワフルなパフォーマンスを堪能してほしい。

そして、本作の最後を飾るのは、ザ・バンドが68年のアルバム『Music from Big Pink』で発表し、ステイプル・シンガーズが同年のアルバム『Soul Folk In Action』で取り上げた”The Weight”だ。原曲がザ・バンドの作品だけあって、ブルースやロックのミュージシャンが多数参加している本作のバンド・メンバーとは相性が良い。近年はロック畑のミュージシャンと共演することの多いこともあり、ステイプル・シンガーズ時代にはないロックの繊細な表現への適応力を見せている。

今回のステージでは、ブルースやソウル、ロックなど、色々な分野で活躍するベテランが集まり、老練した技で彼女のキャリアを総括、祝福している。だが、一番輝いているのは、豪華なゲストを前に、圧倒的な歌唱力を見せている主役のメイヴィスだと思う。何十年も前に発表した楽曲を、現在の声質や技術に合わせて巧みにアレンジし、現在の彼女の音楽に仕立て上げる技術は稀有なものだと思う。

豊富な実績を誇る名手たちによる、名シンガーへの最高の祝福。本作を堪能した後は、参加ミュージシャンや彼女のオリジナル・アルバムにも耳を傾けてほしい。ポピュラー音楽の奥深い世界を堪能できると思う。

Producer
Keith Wortman

Track List
Disc 1
1. Joan Osborne - You're Driving Me
2. Keb' Mo' - Heavy Makes You Happy
3. Otis Clay - I Ain't Raisin' No Sand
4. Buddy Miller - Woke Up This Morning
5. Patty Griffin - Waiting For My Child To Come Home
6. Emmylou Harris - Far Celestial Shore
7. Michael McDonald - Freedom Highway
8. Glen Hansard - People Get Ready
9. Mavis & Aaron Neville - Respect Yourself
10. Widespread Panic - Hope In A Hopeless World
11. Ryan Bingham - If You're Ready (Come Go With Me)
12. Grace Potter - Grandma's Hands
13. Eric Church - Eyes On The Prize
Disc 2
1. Taj Mahal - Wade In The Water
2. Gregg Allman - Have A Little Faith
3. Mavis & Bonnie Raitt - Turn Me Around
4. Gregg Allman, Taj Mahal, Aaron Neville, Bonnie Raitt, & Mavis Staples - Will The Circle Be Unbroken
5. Mavis, Win Butler & Régine Chassagne - Slippery People
6. Mavis & Jeff Tweedy - You Are Not Alone
7. Mavis Staples - I'll Take You There
8. Mavis & everybody: Encore: The Weight




Mavis Staples I'll Take You There: All-star Concert Celebration
オムニバス(コンピレーション)
Caroline
2017-06-01

Various Artist - Despicable Me 3: Original Motion Picture Soundtrack [2017 Columbia, Sony]

90年代以降、プロダクション・チーム、ネプチューンズの一員として多くのヒット曲を送り出し、2014年には各国のヒット・チャートを制覇したシングル”Happy”を含むアルバム『GIRL』が大ヒット。2016年には映画「Hidden Figures(邦題:ドリーム)」の音楽を手掛けている、シンガー・ソングライターのファレル・ウィリアムス。2017年に入ってからも、サンダーキャットの”The Turn Down”や、カルヴィン・ハリスの”HeatStroke”など、多くのヒット作に携わっている彼にとって、約1年ぶりとなる自身名義での新作。

「Despicable Me」は、「怪盗グルー・シリーズ」として知られるアメリカの人気アニメーション映画。 ファレルはスピンオフ作品の「ミニオンズ」を除く、同シリーズの全ての作品に楽曲を提供しており、彼の代表曲である”Happy”も、元々は2013年に公開された「怪盗グルーのミニオン危機一髪」のサウンド・トラックに収められていたものだった。

本作は、同シリーズの3作目「怪盗グルーのミニオン大脱走」のサウンドトラック。ファレルはこのアルバムで、マイケル・ジャクソンの”Bad”などの既発曲と、ミニオンズによるキャラクター・ソングを除くほぼ全ての曲を制作している。

アルバムに先駆けて公開された”Yellow Light”は、ネプチューンズがバスタ・ライムズに提供した”What It Is”を連想させる、ピコピコという電子音が印象的なミディアム・ナンバー。80年代のゲーム音楽のようなトラックをバックに、軽快な歌声を聴かせるファレルの姿が光っている。曲の途中でビートを変える演出は、ヒップホップとポップスの両分野で活躍してきたファレルらしいものだ。

それ以外の曲では、本作で悪役、バルタザール・ブラットを演じているトレイ・パーカー(日本でもヒットしたコメディ・アニメ「サウスパーク」の作者としても有名だ)とのコラボレーション曲”Hug Me”も気になるところだ。歌手の経験もあるトレイだけあって、ファレルの作る奇抜な曲もきちんと乗りこなしている。劇中と同じ声色で歌っているのかは未確認だが、両者の持ち味が発揮されたポップ・ナンバーだと思う。

一方、ファレルのソロ曲である”Doowit”は、”Happy”を彷彿させる躍動感溢れるトラックと軽妙なメロディが印象的なアップ・ナンバー。本作には”Bad”や”Take On Me”など、ポップスの名曲が数多く収録されているが、それらの流れを汲んだ楽しくキャッチーな曲だ。

また、今年の5月に亡くなった伝説のロック・ミュージシャンから名前を貰った”Chuck Berry”は、ファレルの得意なサウンドを使いつつロックンロールに挑戦した、本作でも異色の楽曲。ゴム毬のように跳ねるビートを核に据え、女性コーラスや太いエレキギター、ホーンの音色やハンド・クラップなどを組み合わせて、ポップでダイナミックなロックンロールの雰囲気を再現した作風は新鮮だ。R&Bやヒップホップで使われる機材で、多彩な楽曲を生み出すセンスは流石としか言いようがない。

今回のアルバムはアニメーション映画のサウンド・トラックだが、子供向けの音楽という印象は感じられない。N.E.R.D.や自身名義の作品では、ヒップホップやR&B、ソウル・ミュージックをベースにしながら、多彩なアレンジを施した楽曲で私達を楽しませてきたファレルだけあって、本作のポップな世界観にマッチしつつ、楽曲単体でも十分に楽しめる素晴らしい音楽を作り上げている。このセンスと技術が、彼を音楽業界のトップに導いたのだろう。

ポピュラー・ミュージック界の鬼才が、その能力を遺憾なく発揮した佳作。子供から大人まで、あらゆる年代の人にブラック・ミュージックの魅力を伝えてくれそうだ。

Producer
Pharrell Williams etc

Track List
1. Yellow Light - Pharrell Williams
2. Hug Me - Pharrell Williams & Trey Parker
3. Bad - Michael Jackson
4. Take On Me - A-Ha
5. Papa Mama Loca Pipa - The Minions
6. There's Something Special - Pharrell Williams
7. Tiki Tiki Babeloo - The Minions
8. Freedom - Pharrell Williams
9. Doowit –Pharrell Williams
10. 99 Luftballons - Nena
11. Into The Groove - Madonna
12. Chuck Berry - Pharrell Williams
13. Fun, Fun, Fun - Pharrell Williams
14. Despicable Me - Pharrell Williams
15. Despicable Me 3 Score Suite - Heitor Pereira
16. Malatikalano Polatina - The Minions






Despicable Me 3
Various
DESPICABLE ME 3
2017-06-23

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