ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Eric Bellinger – Eric B for President: Term 2 [2017 YFS, EMPIRE]

ジャクソン5がカヴァーした”Rockin' Robin”などのヒット曲でも知られているシンガー・ソングライター、ボビー・デイを祖父に持ち、自身もクリス・ブラウンの”New Flame”や”Fine China”、ニッキー・ミナージュの”Anaconda”などを手掛けてきたカリフォルニア州コンプトン生まれ、ロス・アンジェルス育ちのシンガー・ソングライター、エリック・ベリンガー。彼にとって、2016年の『Eric B for President: Term 1』以来約半年ぶり、通算5枚目となるオリジナル・アルバム。

ハイスクール時代はフレッド・ハモンドやキム・バレルなどのゴスペル作品に親しみながら、徐々にブランディやアッシャー、ジャギド・エッジといったR&Bのミュージシャンにも興味を持つようになった彼。その後、彼はハイスクールのチームでキャプテンも務めたフットボールの奨学金を辞退して、音楽の道に足を踏み込んだ。

彼はR&BグループAKNU (A Kind Never Understoodの略)の一員としてエピック・レコードと契約したのをきっかけに、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタートする。だが、彼は歌よりもソングライティングに興味を持ったようで、次第に活動の軸足を制作へと移すようになる。すると、彼はライティング・キャンプの一員でもある友人のエリカ・ヌリの助言もあり、ソングライターとしての才能を開花させる。そして、上述の3曲を含む、多くのヒット曲にライターとして携わる一方、自身の名義でも2013年に発表した『Born II Sing Vol. 1』を皮切りに、4年間で10枚のアルバムやミックス・テープを発売してきた。

今回のアルバムは『Eric B for President: Term 1』の続編にあたる作品。前作より多い5組のゲストを招き、多くの曲を手掛けてきたヒット・メイカーらしい、キャッチーな作品に纏めている。

アルバムの1曲目”Naked In The White House”は奇想天外なタイトルに面食らうミディアム・ナンバー。だが、作風はエイコンの”Lonely”やTペインの”I’m Sprung”の流れを汲んだ、歌とラップの中間のようなメロディの爽やかな楽曲。少しだけ声を加工したヴォーカルの匙加減も心地よい、実質2分というのが勿体なく感じられる佳曲だ。

続く”Make You Mine”は、カラっとしたギターの音色が心地よいアップ・テンポの楽曲。ダンスホール・レゲエの影響を感じさせるビートとラップっぽい歌唱の相性も良いダンス・ナンバーだ。

そして、2016年にリリースされたアルバム『All Have Fallen』も記憶に新しい、アトランタ出身のラッパー兼シンガーのエルハエが参加した”Know / Vibes”は、トレイ・ソングスやマーカス・ヒューストンが歌いそうな、シンプルなトラックと甘く色っぽいメロディが印象的なミディアム・バラード。 甘い歌声のエリックと爽やかな歌声のエルハエという、タイプの違う2人のヴォーカルが、楽曲に適度なメリハリを付けている良質なバラード。彼らには失礼な言い方だが、クリス・ブラウンやアッシャーに提供していれば、全米ナンバー1を取っていてもおかしくないクオリティだと思う。

この次の”Too Cool / Boujee”はエリック一人で歌ったバラード。しっとりとしたメロディは”Know / Vibes”と似ているが、大量に録音した自分の声を絡めて複雑なメロディを作ったり、チャンス・ザ・ラッパー風の電子音を多用したヒップホップに変わったりと、色々な演出を盛り込んだ面白い曲だ。同じ路線は”Coastin”でも見られるが、こちらはメロディをじっくりと聴かせることに重きを置いた、シンプルな作りが印象的。彼のソングライターとしての技術の高さを感じさせる、面白い2曲だ。

また、2016年のミックステープ『Summer On Sunset ‎』に収録されている”Women Of Los Angeles”での共演も記憶に新しいワシントンD.C.出身のラッパー、ウェイルを起用した”Treat Yourself”は、ギターとシンセサイザーの音色を巧みに使い分けた爽やかなビートをバックに、”Women Of Los Angeles”のスタイルを踏襲したようなレイド・バックしたヴォーカルが心地よいミディアム。両者の個性が互いの持ち味を引き立てあった、手堅い楽曲だ。

一方、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、タイラ・パークスが参加した”Island”は、のんびりとしたレゲエ・チューン。ゆったりとしたトラックでも、楽曲のマッタリとした雰囲気を崩さない程度に、絶妙な匙加減で丁寧に歌うスキルの高さが注目ポイント。また、アルバムも最後を飾る”Malib Night”もヴィクトリア・モネットという女性シンガーを起用しているが、こちらは、サックスの艶っぽい伴奏とセクシーな女性ヴォーカルを絡めたエロティックなバラード。シックなトラックも含め各パーツのクオリティは本作でも指折りのレベルだが、ちょっと素材を詰め込みすぎた感じもする。

全体としては、前作同様、裏方での経験を活かして、R&Bやヒップホップのトレンドを的確に捉えた面白い曲が揃っていると思う。だが、作家としての才能に恵まれすぎているのか、「エリックらしさ」が隠れているように感じた。だが、歌手としての個性の弱さを補うくらい、ソングライターとして魅力的な曲を揃えてくれたのも事実。個人的には、第2のニーヨ、ドリームになってほしい名手の一人だ。

Track List
1. Naked In The White House
2. Make You Mine
3. Know / Vibes feat. ELHAE
4. Too Cool / Boujee
5. Treat Yourself feat. Wale
6. Island feat. Tayla Parx
7. Coastin’
8. Malib Night feat. Victoria Monet





Eric B for President: Term 2 [Explicit]
YFS (Your Favorite Song) / EMPIRE
2017-03-10


Miles Mosley - Uprising [2017 World Galaxy]

コーンのフロントマン、ジョナサン・デイヴィス率いるSFAや、ドラマーのトニー・オースティンと結成したユニット、BFIなどで斬新なサウンドを披露する一方、演奏者としてもケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』やカマシ・ワシントンの『The Epic』などで、大胆かつ緻密なプレイを聴かせてくれた、カリフォルニア州ハリウッド出身のベーシスト、マイルス・モーズリー。彼にとって初のフル・アルバムとなる『Uprising』が、ジョセフ・ライムバーグのデビュー作『Astral Progressions』を配給したワールド・ギャラクシーからリリースされた。

ロス・アンジェルス・ダウンタウンのコルバーン音楽学校でジャズを学んでいた彼は、「楽器を家に持ち帰らなくていい」という、少々不純な動機からアップライト・ベースを始めたらしい。だが、使い始めると自分の性に合っていたらしく、エフェクト・ペダルを使って音を加工したり、歌いながら演奏したりと、色々な手法を試しながら、自分のスタイルを築き上げていった。その個性的な演奏スタイルから、周囲の人は彼をアップライト・ベース界のジミ・ヘンドリックスと例えていたらしい。

その後、学校を卒業した彼は、ベーシストやソングライターとして活動を開始。インディア・アリーやローリン・ヒルなどの録音やステージに携わる一方、カマシ・ワシントンのグループや、ジョナサン・デイヴィスの音楽プロジェクト、トニー・オースティンとの音楽ユニットなど、ジャンルや音楽性の壁を越えて、幅広く活動してきた。

今回のアルバムは、ケンドリック・ラマーやカマシ・ワシントンの作品で注目を集めた2015年を経て、レコーディングされた録音ということもあり、彼の持ち味である既存のジャズの枠に拘らない大胆な試みが目立つ作品。2016年に発表された本作の先行シングル『Abraham‎』を手掛けたバーバラー・シーリや、BFIでのパートナー、トニー・オースティン(ドラムでも参加)をプロデューサーに迎える一方、テナー・サックスのカマシ・ワシントンやトロンボーンのライアン・ポーター、キーボーディストのブランドン・コールマンなど、『To Pimp A Butterfly』や『The Epic』で一緒に腕を振るった面々を集め、ヒップホップやR&Bが好きな人の心にもアピールできる傑作を録音している。

アルバムの一曲目”Young Lion”は、自身が楽曲制作やヴォーカルを担当したアップ・ナンバー。マイルスが生み出すダイナミックなベース・ラインは、90年代に一世を風靡したブランニュー・ヘビーズの再来を思わせる、腰に響く音。その上で、ジェイムズ・ブラウンやジミー・スミスを彷彿させる激しいキーボードの演奏を聴かせるブランドンの存在が光るファンキーな楽曲だ。楽曲の途中で、エフェクターを使ってギターのように聴かせたベースの演奏が奇抜で面白い。

続く”Abraham”は、アース・ウィンド&ファイアの”Fantasy”を思い起こさせるミディアム・ナンバー。統制のとれたホーン・セクションや精密なバンド・サウンドはジャズというより70年代以前のソウル・ミュージックに近い。だが、緻密な伴奏の上で荒々しい声を張り上げるマイルスの存在が、当時の音楽にはなかった激しさを加えている。ヒップホップの仕事が多い彼ならではの、大胆な発想が光る佳曲だ。

一方、”Shadow Of Doubt”は、インコグニートの作品を連想させる、スタイリッシュな演奏とメロディが魅力的なアップ・ナンバー。ヴォーカル専業ではないマイルスの粗削りな歌が、楽曲のアクセントになっている。しなやかだけど強靭な楽曲だ。

それ以外にも、”L.A. Won't Bring You Down”では、ベースの音を控えつつ、ビオラやキーボードの演奏を大胆に強調して、起伏の激しいポップ・ナンバーを作り上げたり、”Sky High”では、レミー・シャンドの音楽を思い起こさせる、洗練されたメロディをじっくりと聴かせるミディアム・バラードを録音したりと、手を変え品を変えながら、ジャズをベースにソウルやR&Bの要素を取り込んだ新鮮だが聴きやすい、大人向けのポップスを聴かせてくれる。

「歌も作曲もこなせるジャズ・ベーシスト」というと、グラミーの新人賞を獲得したエスペランザ・スポルディングや、2017年のアルバム『Drunk』も好評のサンダーキャットなどを思い出してしまうが、彼のスタイルは、両者の良いところを吸収したものと言ってもいいかもしれない。マイルス・デイヴィスのように新しいサウンドを積極的に取り込もうとしているサンダーキャットと、高い演奏技術を活かして、難解な楽曲を親しみやすい音楽に還元しようとしているエスペランザ、マイルスの作風は、そんな両者の中間にいるように映った。二人に負けない演奏技術をベースに、ジャズからソウル、メタルまで取り込んだ豊かな発想や作曲術を駆使して、懐かしいようで新しい、流行の半歩先を狙ったように見える。

これまでに参加してきた作品が傑作ぞろいだった分、本作にかかった期待も大きかったのかもしれない。確かに、このアルバムからは『To Pimp A Butterfly』や『The Epic』を聴いたときに受けた強い衝撃みたいなものは感じられなかったし、率直に言えば期待外れの部分もあったと思う。だが、色々な音楽を咀嚼して、ジャズの可能性を押し広げたのは紛れもない事実だと思う。スキルは間違いなく高いので、次回に期待したい。

Producer
Miles Mosley, Barbara Sealy, Tony Austin

Track List
1. Young Lion
2. Abraham
3. L.A. Won't Bring You Down
4. More Than This
5. Heartbreaking Efforts Of Others
6. Shadow Of Doubt
7. Reap A Soul
8. Sky High
9. Your Only Cover
10. Tuning Out
11. Fire





Uprising
Miles Mosley(マイルス・モーズリー)
rings
2017-02-22

 

Lala Romero - Palm Tree Dreams [2017 Silent Giant Recording]

”Suga Suga”などのヒット曲を持つベイビー・バッシュや、2017年に初のカヴァー・アルバム『Malik』を発表したマリクなど、チカーノ(メキシコ系アメリカ人)好みのヒップホップやR&Bに強いロス・アンジェルスのインディー・レーベル、サイレント・ジャイアント。同レーベルに所属する女性シンガー、ララ・ロメロことキャシー・ロメロの新作が、配信限定で発売された。

ロス・アンジェルスに生まれ、ラティーノの多い環境で育った彼女は、早い時期から音楽で自分の思いを表現したいと考えていたようだ。ハイスクールを卒業後、レーベルと契約し、ガールズ・グループやソロでの活動も準備していたが、方向性の違いもあり、具体的な成果には結びつかなかった。

だが、その後、自身のマイスペースで楽曲を発表したところ、ヒップホップとラテン・アメリカ系アメリカ人の音楽の要素を取り込んだ音楽性が地元のラジオ局などの注目を集め、レコード会社との契約に至った。

プライオリティと契約した彼女は、デビュー・シングル“Homegurlz”のビデオがMTVのラティーノ向けチャンネルのチャートで1位を獲得。その後も順調にヒットを飛ばしながら、2012年には現在のレーベルに移籍、自身の名義では初のアルバムとなるEP『After Laughter』をリリースする。  そして、今回のアルバムは、彼女にとって通算2枚目、フル・アルバム(ミックステープという説もある)としては初めての作品。アフリカ系アメリカ人や、アングロサクソン系アメリカ人とは一味もふた味も異なる、ラティーノ(というかチカーノ)の趣味が反映されたR&B作品になっている。

アルバムの1曲目、タイトル・トラックでもある”Palm Tree Dreams”は、なんとドクター・ドレの”Nothin' But a G Thang” をサンプリングしている(つまりリオン・ヘイウッドの”I Want'a Do Something Freaky to You”の孫引き)。スヌープ・ドッグの飄々としたラップで有名な冒頭のフレーズをしっかりと引用しつつ、そこから自分の作品の世界へと引き込んでいくセンスと度胸は圧巻の一言だ。また、楽曲の前半では淡々と歌っていた彼女が、後半になるとしっかりと声を張り上げるなど、シンガーとしての実力をアピールしている点も面白い。

また、この後もチカーノ好みのスウィート・ソウルを色々な形で引用したR&Bが続く。例えば”Potential”では、甘く、ロマンチックなトラックをバックに可愛らしい声で歌ったと思いきや、”Crash”では、サンプリング元からヴォーカル部分も引用し、仮想デュエットのように仕立てたり、”Cry Baby”では、自分の声を幾重にも重ね合わせて、疑似コーラス・グループのように聞かせたりと、様々な手法で、スウィート・ソウルと現代のR&Bやヒップホップの融合に取り組んでいる。

その極地ともいえるのが、シングル・カットされた”God Forgive Me”と、”Hennessey & Regret”だ。甘いコーラスから始まる前者は、モニカを殺伐とさせたような、ストリートの空気と香水の匂いが同居した歌唱が目立つミディアム。一昔前のデス・ロウが作りそうで作らなかった、ギャングっぽさと甘くロマンティックなトラックの共存が心地よい佳曲だ。一方、甘酸っぱいヴォーカルと、元ネタの加工を最小限に抑えたソウルフルなトラックが気持ちいい後者は、チカーノ系R&B界のアイコンとしての彼女を最大限アピールした、魅力的なバラード。この曲に限ったことではないが、マニアックなソウル・ミュージックを引用しながら、若者の鑑賞に堪えうる作品に落とし込むチカーノ・ヒップホップのクリエイター達の才能と努力には頭が下がるばかりだ。

今回のアルバムは、「ラテン」や「チカーノ」というキーワードを外して考えると、非常に希少で面白い作品だと思った。”Palm Tree Dreams”に代表される、往年のヒップホップやソウル・ミュージックの名曲を、原曲の形を留めたまま引用し、自分の世界に取り込むスタイルは、心なしか最近少なくなったと思う。もちろん、ナズやカニエなど、サンプリングを取り入れるアーティスト自体は少なくないが、多くの場合、サンプリングは一部の引用レベルで、原曲を大きく加工せず、作品の骨格レベルに組み込むケースは、限りなく少数だ。その背景には、著作権の管理や手続きの簡便化など、サンプリングを取り巻く環境の変化もあるのだろうが、それを踏まえても非常に面白い作品だと思う。

使えるリソースに限りのあるインディー・レーベルという環境と、チカーノを含むラテン・コミュニティの趣味趣向を飲み込んだ結果生まれた、ローカル・レーベルならではの、メロウで怪しげなR&B作品。これが全国区のヒットになったら大変なことになるけど、地方色豊かなR&Bとしていつまでも残ってほしいな。

Track List
1. Palm Tree Dreams
2. Potential
3. Crash
4. Cry Baby
5. Who's Playing Who
6. God Forgive Me
7. Hennessey & Regret
8. Back in the Day
9. Angels in the City feat. King Lil G, Reverie
10. Bullets
11. After Laughter






 
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