ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Alicia Keys – Here [2016 RCA]

R&Bシンガーらしからぬ華奢な身体から放たれる力強い歌声と、クラシック音楽の教育を受けたという本格的なピアノの演奏を組み合わせたスタイルで、2001年のデビュー以降、発表したアルバムのほとんどがナンバー・ワン・ヒットを獲得してきたニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、アリシア・キーズ。彼女にとって、2012年の『As I Am』以来となるオリジナル・アルバムが本作だ。

今回のアルバムでは、彼女にとって公私両面のパートナーであるスウィズ・ビーツが大半の曲をプロデュース。DMXやイブを輩出したラフライダーズの一員としてデビューして以来、作風の幅を広げつつ、ビヨンセやジェニファー・ハドソンなどのR&Bシンガーも手掛けるようになった実績豊富なヒット・メイカーが、知的なたたずまいとパワフルな歌声を兼ね備えた彼女にマッチした、シンプルだが味わいのあるプロダクションを提供している。

アルバムのオープニングを飾る”The Gospel”は、ウータン・クランの”Shaolin Brew”のトラックを使った、泥臭いサウンドが格好良いミディアム・ナンバー。不気味で陰鬱、でもどこか温かいRZAのトラックの上で荒々しいヴォーカルを聴かせる姿は、音楽性は大きく異なるがメイヴィス・ステイプルズやオーティス・レディングなどのサザン・ソウル・シンガーにも通じる躍動感がある。この路線は、スウィズ・ビーツがプロデュースした”Pawn It All”でも見られ、跳ねるようなドラムの音の上で、耳元に絡みつくようなドロドロとした歌を聴かせている。

一方、ナズの代表曲の一つ”One Love”のトラックを引用し、ロイ・エアーズが演奏に参加した”She Don't Really Care_1 Luv”では、Q-Tip作のふわふわとしたビートと一体化するような、肩の力を抜いた軽妙な歌唱を披露している。肩の力を抜いても、音程や起伏を正確に歌い切る技術は本作の聴きどころだ。また、エミリー・サンデーがソングライティングに参加した”Kill Your Mama”では、ギター一本というシンプルな伴奏をバックに、ポップス寄りのメロディを朗々と歌い上げ、エディ・ブリッケル&ニュー・ボヘミアンズとA$AP Rockyが参加した”Blended Family (What You Do For Love)”では、緻密だがどこか粗削りなバンド・サウンドをバックに、語り掛けるようなヴォーカルを聴かせている。また、彼のアルバムでデュエットも披露しているファレル・ウィリアムズが手掛けた”Work On It”では三拍子のリズムを乗りこなすという荒業も見せている。

だが、それ以上に見逃せないのは、彼女の楽曲を彩るピアノの演奏だろう。モーツァルトなどのクラシック音楽に若いころから触れてきた彼女にしかできない、88個の鍵盤全部を使ったダイナミックな演奏は、もはやもう一人のヴォーカルのような存在で、彼女の音楽に豊かな表情をもたらしている。

個性豊かな楽曲に、きちんと適応する高い技術と豊かな表現力、そして、それを支えるスタッフが揃ったことで生まれた、噛めば噛むほど味が出るスルメのようなアルバム。「自分のスタイル」を確立することのお手本のような作品だ。

Producer
Alicia Keys, Swezz Beats

Track List
1. The Beginning (Interlude)
2. The Gospel
3. Pawn It All
4. Elaine Brown (Interlude)
5. Kill Your Mama
6. She Don't Really Care_1 Luv
7. Elevate (Interlude)
8. Illusion Of Bliss
9. Blended Family (What You Do For Love)
10. Work On It
11. Cocoa Butter (Cross & Pic Interlude)
12. Girl Can't Be Herself
13. You Glow (Interlude)
14. More Than We Know
15. Where Do We Begin Now
16. Holy War
17. Hallelujah
18. In Common





Here
Alicia Keys
RCA
2016-11-11

TLC – 『Joyride』 『Haters』 [2016 Warner]

92年、ニュージャック・スウィングのビートの上で、T-ボズとチリの個性的なヴォーカルとレフト・アイやんちゃなラップが飛び出す”Ain't 2 Proud 2 Beg”でデビューするや否や、若者の心を一気に掴み、続くセカンド・アルバムでは、オーガナイズド・ノイズが生み出す温かい音色のビートと、ドロドロとしたヴォーカルに乗せ、歌詞に強烈な人生訓を込めた”Waterfalls”で大ヒットを記録。三作目に収録された”No Scrubs”では新進気鋭のプロデューサー、ケヴィン”シェイクスピア”ブリッグスを起用し、変則ビートとキャッチーなメロディを融合させた楽曲を、あえて感情を押し殺して平坦に歌い上げることで、黒人音楽業界を席巻していた変則ビートの可能性を切り開いた三人組ガールズ・グループ、TLC。2003年にラッパーのレフトアイを失ってから、活動が停滞していた彼女らが2014年以来となる新曲を発表した。

2016年10月に突然、音楽配信サイト限定で発表された2曲のシングル『Joyride』と『Hater』には、正直なところ戸惑った。プロデューサー等のクレジットは一切なく、発売元も日本限定のベスト・アルバムを出したことが1回あっただけのワーナー・ミュージックということで、レーベルを移籍しての再出発か、それとも単発的な契約か、もしかしたら、ただの未発表曲なのか、情報が少ないがゆえに色々と勘ぐってしまった。

しかし、実際にこれらの曲を耳にすると、そんなことはどうでもいいと思えてしまう。”Joyride”はエフェクターの使い方こそ珍しいが、ギターやハンド・クラップなどのフレーズをループさせて、ホーン・セクションをアクセントに使った、90年代中期のショーン・コムズやトラック・マスターズを連想させるキャッチーなトラックが印象的なミディアム・ナンバー。T-ボズの粘っこいアルトと、チリのハスキーなコーラスが、レイド・バックした雰囲気のメロディの上で絡み合うスタイルは、トラックに使われている音色こそ違うが『CrazySexyCool』に収録されていても不思議ではない。また、もう一つの新曲”Hater”は電子音をアクセントに使った変則ビートの上に、明るいメロディとラップが乗ったミディアム・バラード。ダラス・オースティンやジャーメイン・デュプリの影響を感じるサウンドは、『FanMail』の没曲と言われたら信じてしまいそうな、チキチキビートを効果的に使ったバラードだ。

今回の2曲は、90年代に彼女らの曲に親しんだ人々にとっては懐かしく思える、良くも悪くも全盛期のTLCの影を引きずった曲だと思う。今後も過去の実績を引きずって生きるのか、それとも、今回の作品からさらに進化した新しいTLCを見せるのか、現時点ではわからないが、期待して待ちたいと思う。

Producer
Non Credit








Mary J. Blige – Thick Of It [2016 Capitol]

おそらく、90年代以降の音楽業界では、作品のクオリティとセールスの両面で最も安定した成果を残し続けている女性シンガーの一人、メアリー・J.ブライジの、2014年以来となるオリジナル・アルバムからの先行シングル。

彼女といえば、1991年のデビュー以降、ショーン・コムズにはじまり、ローリン・ヒルにDr.ドレ、ザ・ドリームにサム・スミスと、作品ごとにその時代をリードするクリエイターと組んできた。だが、その一方で、流行のサウンドからは一歩距離を引いた、保守的なメロディとアレンジの作品が中心で、音楽業界の台風の目でありながら、ゲームのルールを変えるような影響力を発揮することはなかった。

今回の新曲は、ジョン・レジェンドの『Love In The Future』やニーヨの『Non-Fiction』などを手掛けてきた、ダリル”DJ”キャンパーをプロデューサーに迎え、ジャズミン・サリヴァンが楽曲制作に参加したミディアム・バラード。ジャズミンが生み出すメロディは、ラップと歌の中間のようなもので、粗削に聴こえる分、聴き手には親しみやすい。だが、高声から低声までフルに使って、話し声の起伏や強弱を『歌』に変えなければいけないこの手の曲は、歌い手の視点に立つと大変厄介なものだと思う。

だが、こんな新しいタイプの曲でも、メアリーの歌声は怯むことなく、自分の色に染め上げている。彼女の特徴ともいえる、太く強靭なファルセットや強烈だが丸みを帯びた地声を器用に使い、ラップや話し声が持つ抑揚や起伏に対応しつつ、きちんとメロディを聴かせることに成功している。しかも、ラップの起伏を歌に取り入れることで、表現の幅をこれまで以上に広くしているようにも見える。

デビュー当初の弾けるようなヴォーカルから、恵まれた歌声を器用に使いこなす大人のシンガーへ、着実に進化し続ける姿を楽しめる。さて、新作はどんな内容になるのだろうか。今から楽しみだ。

Producer
Darhyl "DJ" Camper Jr.


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