ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Ronald Bruner Jr. ‎– Triumph [2017 World Galaxy]

ダイアナ・ロスやグラディス・ナイト等の作品でドラムを叩いていた、ロナルド・ブルーナー・シニアを父に持ち、ベーシストのサンダーキャットことステファン・ブルーナーや、ジ・インターネットの元メンバーでもあるキーボーディストのジャミール・ブルーナーの兄でもある、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のドラマー、ロナルド・ブルーナー・ジュニア。

自身も2歳のころにドラムを始め、15歳のころにはウェイン・ショーターやダイアン・リーヴス、ロン・カーターのステージでドラムを叩きながら、ステファンと一緒に西海岸を拠点に活動するパンク・バンド、スーサイド・テンシーズの一員としても活動していた。

2000年代以降は、多くのレコーディング作品に参加。2004年にはカマシ・ワシントンやステファンと結成したユニットヤング・ジャズ・ジャイアンツの名義でアルバムを発表する一方、スタンリー・クラークやジョージ・デューク、ケニー・ギャレットといった大物ミュージシャンから、カマシ・ワシントンやサンダーキャットのような彼とは縁の深い面々、ケンドリック・ラマーやサイ・スミス、フライング・ロータスといったR&B、ヒップホップ、エレクトロ・ミュージックの録音まで、色々なミュージシャンの作品に携わってきた。

彼にとってキャリア初となるフル・アルバムは、マイルズ・モーズリーの『Uprising』や、ジョセフ・ライムバーグの『Astral Progressions』などを配給している、ワールド・ギャラクシーからのリリース。カマシ・ワシントンの『Epic』と同じ時期に録音された本作は、ベースをステファン、キーボードをジャミールが担当。多くのゲストとともに、彼自身がヴォーカルを担当した意欲作になっている。

アルバムの1曲目を飾る”True Story”は、彼の派手なドラム・ソロから始まるアップ・ナンバー。ドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』に入ってそうな、緻密で爽やかなロック・ナンバー。楽曲の途中で披露されるドラムの乱れ打ちが、楽曲のアクセントになっている。

続く”Take The Time”も、”True Story”に近い、ロック色の強い楽曲。ヴォーカルをステファンが担当しているほか、曲中で複数のテンポとビートを使い分けた、起伏の激しい伴奏と、ステファンの甘い歌声が印象的なアップ・ナンバーだ。バラエティ豊かなビートと、エネルギー溢れるパフォーマンスは、スーサイド・テンシーズの影響を感じさせる。

これに対して、ソウル・ミュージックの影響が色濃いのは”Whenever”だ。柔らかい音色を響かせるホーン・セクションと力強いビート、ロナルドの甘い歌声が合わさった優しい雰囲気のミディアム。ナンバー。スマートだけど繊細で優しい歌声は、彼の音楽に多くの影響を与えた、スティーヴィー・ワンダーを連想させるものだ。

また、ミディアム・ナンバーの中では”One Night”も見逃せない存在だ。ギターとベース、ドラムが軸のシンプルな編成をバックに、泣き崩れるような歌を聴かせるロナルドの存在が光る佳曲。イーグルスやジャクソン・ブラウンのようなロック・ミュージシャンの音楽が好きな人には堪らない佳曲だと思う。

そして、本作の終盤で強烈な印象を残してくれるのが”To You / For You”だ。図太いビートとシンセサイザーの音色が心地よい、シックやシャラマーの音楽を彷彿させるスタイリッシュなディスコ・サウンドに乗せて、爽やかな歌声を響かせる前半から一転、後半に入るとトラップ・ビートの上でラップを披露する異色の楽曲。攻撃的な口調が、本職のラッパーっぽい点も面白い。

今回のアルバムは、彼より先にデビューした弟の作品同様、ヒップホップやR&B、ジャズやロックの要素を取り込み、自身の感性で編集したジャンルの枠にとらわれない作品になっている。しかし、このアルバムでは、色々な音楽のエッセンスを取り込みつつ、その要素をジャズの枠に落とし込んでいるように見える。おそらく、彼が多くのセッションを重ねてきた大物ジャズ・ギタリスト、スタンリー・クラークに代表されるフュージョンのスタイルを、積極的に採用していることが大きいのだろう。また、ジャズの要素に比重を置くことで、多くの音が乱れ飛ぶ、ダイナミックなドラム・ソロを随所に盛り込むことにも成功しているように映る。

ヒップホップやロックの要素を取り込んだ先鋭的な作風と、複雑で大胆なドラム演奏を両立した、長兄の面目躍如といえる佳作。CDで聴いても楽しいが、ぜひライブを観てみたいと思わせる。人間が演奏する音楽の面白味を再確認させられる充実の内容だ。

Track List
1. True Story
2. Take The Time feat. Thundercat
3. She'll Never Change
4. Geome Deome feat. George Duke
5. Whenever
6. Doesn't Matter
7. Open The Gate
8. One Night
9. Sensation feat. Mac Miller and Danielle Withers
10. To You / For You
11. Chick's Web

※動画は本作とは無関係のライブ映像





Triumph(トライアンフ)
Ronald Bruner Jr.(ロナルド・ブルーナ-・ジュニア)
rings
2017-04-19

 

Leela James - Did It for Love [2017 Shesangz, BMG]

2000年代の初め頃に、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート。ブラック・アイド・ピーズやメイシー・グレイのライブでオープニング・アクトを務めるなどして経験を積んだ後、2005年にサム・クックの同名曲のカヴァーを含むアルバム『A Change Is Gonna Come』でメジャー・デビュー。60年代のソウル・シンガーを彷彿させる力強いヴォーカルと、ヒップホップの手法を取り込んだバック・トラックを組み合わせた楽曲で、老若男女幅広い世代から注目を集めた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、リーラ・ジェイムス。

その後も、スタックスやシャナチーといったR&B、ソウル・ミュージックの名門レーベルから、2016年までに通算5枚のアルバムと多くのシングルを発表。その中でも、ジェイムズ・ブラウンやローリング・ストーンズの名曲を歌った2009年の『Let's Do It Again』や、エッタ・ジェイムスの楽曲をカヴァーした2012年の『Loving You More...』などは、原曲を知らない若い世代に、往年の名曲の魅力を知らしめるきっかけになった。

このアルバムは、2014年の『Fall for You』以来、約3年ぶりとなる通算6枚目のフル・アルバム。配給元は前作と同じBMGで、プロデューサーには、BJ ザ・シカゴ・キッドの『In My Mind』など、多くのヒット作を手掛けている、レックス・ライドアウトを中心に多くの実力者が参加。今回も過去の作品同様、グラマラスな歌声と、重厚な伴奏が合わさったダイナミックなソウル・ミュージックを楽しませてくれる。

アルバムの1曲目”Hard For Me”は、シャーリー・マードックなどとも仕事をしているキーボード奏者、イーヴァン・ブリックが制作を担当したスロー・ナンバー。色々な音色のキーボードを組み合わせてた、オーケストラっぽい豪華な伴奏をバックに、艶っぽい歌声を響かせるスロー・ナンバー。エッタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンにも見劣りしない迫力と、バーバラ・メイゾンやグラディス・ナイトにも通じるセクシーな歌唱が心地よい佳曲だ。

続く”Don’t Mean A Thang”は、”Hard For Me”にも携わっているカルヴィン・フレイザー(デトロイトのギタリストとは同名の別人と思われる)が手掛けるアップ・ナンバー。ドラムを軸に据えたスタイリッシュなビートに乗せて、妖艶な歌唱を聴かせている。落ち着いた雰囲気の伴奏と流麗なメロディ、ふくよかで色っぽい歌声の組み合わせはクリセット・ミッチェルの人気曲”Like a Dream”を連想させる。

そして、本作の目玉が、シングル化された”Don't Want You Back”だ。彼女とレックスが主導したロマンティックなバラードは、カニエ・ウエストのプロデュース作品を思い起こさせる、ソウル・ミュージックっぽい音色を加工してコラージュしたようなトラックに乗せ、派手ではないが味わい深いメロディをじっくりと歌い上げた作品。オーケストラの使い方が、ディオンヌ・ワーウィックやローラ・リーの作品にもちょっと似ている。

また、味わい深さでいえば、エリック・ベネイの最新作『Eric Benét』にも関わっている、ジャイラス・モジーがソングライターに名を連ねるミディアム・バラード”I Remember”も捨てがたい。ドラムとベースを強調した落ち着いた雰囲気のトラックに乗せ、色っぽいファルセットを聴かせる妖艶な雰囲気の楽曲。ストリングスやギターの演奏を随所に挟み込んで、楽曲にメリハリをつけつつ、ロマンティックな雰囲気を強調している点も注目してほしい。

最後に取り上げたいのは、本作では珍しいアップ・ナンバー”Good To Love You”だ。R.ケリーの”Step In The Name of Love”を彷彿させるスタイリッシュなビートを取り入れたこの曲は、90年代に一世を風靡した男性ヴォーカル・グループ、ブラックストリートのリード・シンガー、デイヴ・ホリスターと組んだ曲。豊かな歌声をウリにした音楽スタイルや、レーベルの先輩後輩(デイヴ・ホリスターの2016年作『The MANuscript 』はシャナチー配給)など、音楽的には近しい二人だけあって、相性は抜群。豊かな声量を誇る二人が、自慢の喉を軽々と操り、ダイナミックな歌を聴かせるパフォーマンスは贅沢としか形容できない。

全曲を通して聴いた印象は、デビュー当時からの武器であったヴォーカルが、経験を積んで表現の幅と安定感が増したということ。元々、奇抜なトラックやキャッチーなメロディで勝負するタイプのシンガーではなかったが、新作を発表するごとに、ファルセットを効果的に使った色っぽい楽曲がら、地声を響かせるパワフルな作品まで、一筋縄ではいかない高い難易度の曲を着実に乗りこなし、自分の色に染め上げてきた。本作は、その総決算と呼んでも過言ではない作品で、高い表現力が求められる楽曲を着実に歌い込みつつ、力強さと大人の女性の色気が同居した、彼女らしさに溢れる音楽に仕立て上げてくれた。

アレサ・フランクリンやチャカ・カーンの系譜に立つ、恵まれた歌声と高い技術を持ちつつ、彼女独特の大人の色気を感じさせるパフォーマンスで、先人と差別化したも両立した、本格的なヴォーカル作品。往年のソウル・ミュージックが好きな人はもちろん、ビヨンセやリアーナを通してブラック・ミュージックを知った人にも是非聴いてほしい。「歌」や「声」奥深さと面白みを思う存分堪能できると思う。

Producer
Leela James, Rex Rideout, Evan Brice, Butta-N-Bizkit, Calvin Frazier, Jairus Mozee

Track List
1. Hard For Me
2. Don’t Mean A Thang
3. Don’t Want You Back
4. Real Talk – Relationships (Interlude)
5. I Remember
6. Good To Love You feat. Dave Hollister
7. There 4 U
8. This Day Is For You
9. Take Me
10. All Over Again
11. Our Love
12. Did It For Love





Did It for Love
Leela James
Bmg Rights Managemen
2017-03-31

 

Glenn Lumanta - In My Element EP [2017 Glenn Lumanta]

フィリピン生まれ、オーストラリアのシドニー育ちのシンガー・ソングライター、グレン・ルマンタ。

2012年ごろから、SNSや動画投稿サイトに、フランク・オーシャンの”Super Rich Kids”やミュージックの”Half Crazy”、マックスウェルの”Pretty Wings”といった、男性R&Bシンガーによるヒット曲のカヴァーをアップロードする一方、ライブなども精力的に行ってきた。

そして、2016年には初のオリジナル曲となるシングル『What You Deserverd』を発表。翌年には本作にも収録されている『Silver』を発売。90年代のR&Bシンガーを思い起こさせる甘いメロディと柔らかい歌声で注目を集めた。そして、このアルバムは『In My Element』に続く彼の初のEPで、初のフィジカル・リリース作品でもある。

甘い歌声とロマンティックなトラックが印象的なイントロ”In My Element”に続く実質的な1曲目”Heart Strings”は”Half Crazy”を彷彿させる、。太く温かい音色の伴奏と滑らかな歌唱が魅力のミディアム・ナンバー。甘い歌声を活かして、悠々と歌うグレンの姿が耳に残るムーディーな楽曲だ。

一方、これに続く”Treat You Good (Your Mind)”は、ベイビーフェイスの”When I See You Again”を思い起こさせる、しっとりとしたメロディと甘酸っぱいヴォーカルが光るスロー・バラード。90年代のR&Bを連想させる、生楽器っぽい音色のシンセサイザーも当時の音楽の雰囲気を作るのに一役買っている。20代とは思えないR&Bへの造詣の深さと、高い歌唱力が堪能できる良曲だ。

そして、本作では希少なアップ・ナンバー”Know You Better”は、ジョンBの”Simple Melody”などを連想させる、洗練されたメロディとスマートな歌声が聴きどころ。他の曲とのバランスを考えたのか、ドラムの音圧を抑えているのは少し気になるが、耳元を駆け抜ける爽やかなヴォーカルは見逃せない存在だ。

また、キーボードとギターを軸にした伴奏に乗せて、一つ一つの言葉を丁寧に紡ぎ出す姿が印象的なミディアム・バラード”Imagination”は、ライブで演奏する姿が目に浮かぶ、生演奏っぽい伴奏が格好良い楽曲。多くの曲で使われているフィンガー・スナップが、切ない雰囲気を際立たせている。

だが、本作のクライマックスはアルバムの最後を飾る”Silver”だろう。本作に先駆けて配信限定でリリースされたされたこの曲は、ベイビーフェイスっぽい甘ずっぱいメロディと、ギターやキーボードを巧みに配置した、優しい雰囲気と繊細な音色が印象的な伴奏、恋人に語り掛けるように、優しく歌うグレンのヴォーカルが合わさった美しいミディアム・バラード。若き日のアッシャーの代表曲”Nice & Slow”や、テヴィン・キャンベルの”Can We Talk”にも通じる、爽やかな歌声とロマンティックなメロディの相乗効果が魅力的だ。

彼の楽曲を聴いて、真っ先に思い出したのはベイビーフェイスやトニー・リッチなどの90年代に一世を風靡した男性シンガー達の音楽。スマートで繊細な歌声と、それを活かすロマンティックなメロディ、そして絶妙なさじ加減でヴォーカルの良さを引き立てる伴奏が揃った音楽は、90年代に流行した美しいメロディのR&Bナンバーを彷彿させる。

自主制作の限られた環境で、使える機材を最大限駆使して、自分の持ち味である甘い歌声を活かした甘い雰囲気のR&Bを作り上げた才能は恐ろしい。90年代のブラック・ミュージックに慣れ親しんできた世代の人にこそ聴いてほしい、歌とメロディを思う存分堪能できる傑作だ。

Producer
Glenn Lumanta

Track List
1. In My Element (int.)
2. Heart Strings
3. Treat You Good (Your Mind)
4. Know You Better
5. Imagination
6. Silver






 
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