melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

BTS - Love Yourself: Her [2017 Big Hit Entertainment]

2013年に初のアルバム『2 Cool 4 Skool』をリリースすると、アメリカのR&Bを取り込んだスタイリッシュな作風と、メンバーの若い感性が発揮されたメッセージ性の強い歌詞で、韓国を代表する人気グループの一つとなったBTS。

そんな彼らは、2016年に発表したムーンバートンを取り入れたシングル”Blood Sweat Tears”が、アメリカやヨーロッパを中心に大ヒット。同作を収めたアルバム『Wings』は全米総合アルバム・チャートの26位に入り、翌年にはビルボード・ミュージック・アワードのトップ・ソーシャル部門を受賞するなど、アジアを代表するヴォーカル・グループとしてその名を世界に轟かせた。

本作は、前作『Wings』から約1年ぶりの新作となる11曲入り(配信版は9曲)のミニ・アルバム。2月には『Wings』に新曲を追加した再発盤『You Never Walk Alone』をリリースし、5月には”Blood Sweat Tears”の日本語版”血、汗、涙”を発表、7月には韓国がボーイズ・グループ大国になるきっかけを作った、セオ・タジ&ザ・ボーイズ(余談だが、同グループにはYGエンターテイメントの創業者、ヤン・ヨンソクも在籍している)のデビュー25周年企画として、彼らの”Come Back Home”をカヴァーするなど、精力的に活動していたBTS。だが、7人はその勢いを緩めることなく、今回のアルバムに有り余るエネルギーを注いでいる。

メンバーのラップ・モンスターがプロデュースしたオープニング・トラック”Intro : Serendipity”に続くのは、本作のリード・シングル”DNA”。『Wings』に収められているシングル曲”Not Today”を手掛けたシュープリーム・ボーイが制作を担当、小気味良いギターのカッティングと”Bloood Sweat Tears”を彷彿させるムーンバートンのフワフワとしたビートを融合したトラックが新鮮なアップ・ナンバーだ。曲の途中で”Not Today”を彷彿させる荒々しいEDMのサウンドを組み込むなど、色々な音楽のエッセンスを取り入れながら、一つの楽曲に落とし込む技術が光っている。ファルセットが中心の甘い歌声と、パワフルなラップのコンビネーションをアレンジの妙で活かしている。

だが、本作の目玉はなんといっても”Best Of Me”だろう。2017年のアルバム『Memories...Do Not Open』が各国のヒット・チャートを制覇したアメリカのプロダクション・ユニット、チェインスモーカーズとのコラボレーション曲だ。7人(といっても、うち2人はラップ担当だが)の滑らかな歌声で幕を開けるこの曲は、チェインスモーカーズの持ち味が発揮されたキャッチーな四つ打ちのトラックが格好良いダンス・トラックへと繋がっていくアップ・ナンバー。フランク・オーシャンジョン・レジェンドとコラボレーションしたカルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol. 1』を連想させる、エレクトロ・ミュージックとR&Bが融合した楽曲だ。

また、メンバーのラップ・モンスターと、彼らの作品を数多く手掛けてきたPドッグが制作を主導した”Pied Piper”は、ゆったりとしたテンポの”Bloood Sweat Tears”といった趣のミディアム・ナンバー。フワフワとしたシンセサイザーの音色が印象的なトラックに乗せて、しなやかなメロディをじっくりと聴かせるリラックスした雰囲気が心地よい曲だ。彼らの持ち味である、繊細で美しいテナー・ヴォイスが思う存分堪能できる。

そして、ラップ担当の二人にスポットを当てたのが、シュープリーム・ボーイをプロデューサーに起用した”Mic Drop”。ロック・ワイルダーやスコット・ストーチのプロデュース作品を思い起こさせる、シンセサイザーを多用したヒップホップのビートに乗ってワイルドなパフォーマンスを聴かせるミディアム・ナンバーだ。アメリカのR&Bやヒップホップを適度に取り入れつつ、彼らの声質に合わせて、軽妙なラップを取り入れた面白い作品だ。

今回のアルバムでは、『Wings』のスタイリッシュなR&B路線を踏襲しつつ、エレクトロ・ミュージック寄りの曲やギターの演奏を取り入れた曲など、新しい手法にも積極的にチャレンジしている。そのスタイルは、ボーイズIIメンのような本格的なヴォーカル・グループというよりも、プリティー・リッキーやマインドレス・ビヘイビヴァのような、ポップ・スターに近いものだ。しかし、ワン・ダイレクションが活動を休止するなど、ボーイズ・グループの勢いが衰えつつある欧米では、彼らのようにR&Bを取り入れながら、幅広い層をターゲットにしたヴォーカル・グループの需要は、意外に多いのかもしれない。

東アジア出身のポップ・グループがJ-ポップやK-ポップという枠組みを超えて、世界に通じる可能性を感じさせる魅力的な作品。彼らが韓国や日本、それ以外のアジア諸国のグループにどんな影響を与えるか、今から楽しみになる面白いアルバムだ。

Producer
P.Dogg, The Chainsmokers, Ashton Foster, Andrew Taggart etc

Track List
1. Intro : Serendipity
2. DNA
3. Best Of Me
4. Dimple
5. Pied Piper
6. Skit : Billboard Music Awards Speech
7. MIC Drop
8. Go Go
9. Outro : Her
10. Skit: Hesitation and Fear
11. Sea

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Musiq Soulchild - Feel The Real [2017 eOne]

映画「ナッティー・プロフェッサー2」のサウンドトラックに収録された”Just Friends(Sunny)”で注目を集め、同曲を収録したファースト・アルバム『Aijuswanaseing』が全米R&Bアルバムチャートの4位に入り、プラチナ・ディスクにも認定された、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター、ミュージック・ソウルチャイルドことターリブ・ジョンソン。

その後も、2016年までに8枚のアルバムを発表。うち、2作目の『Juslisen』と4作目の『Luvanmusiq』は全米総合アルバム・チャートの1位を獲得。往年のソウル・ミュージックを現代の音楽に還元した作風が認められ、人気ミュージシャンの一人になった。

このアルバムは、前作から僅か1年という短い間隔で発表された9枚目のフル・アルバム。前作に引き続き、ワイクリフ・ジョンラトーヤなど、多くのベテラン・ミュージシャンのアルバムを配給しているeOneからのリリース作品。だが、何よりも驚くのはその曲数。彼のキャリアでは初の2枚組24曲という大作だが、マンネリに陥ることなく、彼の豊かな想像力と歌唱力を遺憾なく発揮している。

本作の1曲目は、マイケル・ジャクソンの”Butterfly”の作者としても知られているイギリスの女性デュオ、フロエトリーのマーシャ・アンブロジウスとコラボレーションした曲。”Butterfly”を思い起こさせるゆったりとしたテンポのトラックをバックに、朗々と歌う姿が印象的なミディアム・ナンバー。遅いテンポのトラックの上で敢えてメロディを崩して歌うミュージックの歌唱が格好良い。曲の途中、絶妙なタイミングで入り込み、素晴らしい掛け合いを聴かせるマーシャの存在も見逃せない。

これに対し、ベル・ヴィウ・デヴォーの新曲でもペンを執ったサイラス・デシールドが制作を担当した”Start Over”は、ストリングスを使ったスロー・テンポの伴奏に乗って、しなやかな歌声を響かせるバラード。太く柔らかいミュージックの歌声を際立たせる、流れるようなメロディと温かい音色のトラックの組み合わせは、彼の代表曲”Halfcrazy”を思い起こさせる。デビューから15年以上の時が経っても、変わらない彼の良さと、時間をかけて磨き上げたヴォーカル技術が光る良い曲だ。

また、2枚目の1曲目に収められている”Humble Pie”は、前作にも参加しているウィリー・ヒンと作ったミディアム・ナンバー。ダニー・ハザウェイやマーヴィン・ゲイを思い起こさせる、柔らかい音色を駆使した優雅な伴奏に乗って、軽やかな歌を聴かせるダンス・ナンバー。曲の途中にラップのようなメロディを挟み込み、メリハリをつけている点が面白い。2007年に発表したヒット曲”B.U.D.D.Y.”の手法を踏襲した、ヒップホップとソウル・ミュージックが融合したスタイルが魅力の佳曲だ。

そして、本作の最後を飾るのがアルバムからの先行シングル”Simple Things”だ。ギターとシンセサイザーを組み合わせたロマンティックな演奏に乗せて、ロマンティックなメロディを丁寧に聴かせるスロー・ナンバー。ミュージックのみずみずしい歌声が、流麗なメロディの良さを引き立てている。斬新なメロディも奇抜な演奏もない、シンプルな楽曲だが、それ故に彼の声と制作能力の高さが際立っている。

今回のアルバムには、過去のアルバムの2倍近い量の曲を収めている。それだけの曲を準備するエネルギーも凄いが、それ以上に意外なのは、奇抜な作品や実験的な楽曲を集めたものではなく、従来のスタイルを踏襲しつつ、それを磨き上げたものになっていることだ。だが、そんな作品でも最後まで聴き手を飽きさせることなく、楽しませることができるのは、彼の音楽がジョーブライアン・マックナイトのように、一つのスタイルを磨き上げ、確固たる個性を確立したものだからだろう。

ソウル・ミュージックとヒップホップを融合した独特の作風を突き詰め、一つの芸風として確立したことを感じさせる佳作。ノスタルジーとも目新しさとも違う、楽曲の魅力で勝負している稀有なアーティストだと思う。

Producer
Musiq Soulchild, BLAQSMURPH, Christopher Bradley, Phil Cornish, Gmjr, J'rell etc

Disc 1
1. Feel The Real feat. Marsha Ambrosius
2. Benefits
3. Serendipity feat. Willie Hyn
4. Sooner Or Later
5. My Bad feat. Willie Hyn
6. Start Over
7. Hard Liquor
8. Shudawudacuda
9. Broken Hearts
10. Love Me Back
11. I'm Good
12. Jussa Lil Bih feat. BLAQGxLD
Disc 2
1. Humble Pie
2. Party Life
3. One More Time feat. The Husel, Willie Hyn
4. Let Go
5. Test Drive
6. Like The Weather
7. Fact Of Love
8. Heaven Only Knows
9. The Moon feat. Neil deGrasse Tyson
10. We Go Together Now
11. Sunrise Serenade feat. BLAQGxLD, Chris Theory
12. Simple Things



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Feel the Real
Musiq Soulchild
Ent. One Music
2017-09-15

Damar Jackson - Unfaithful [2017 Think It's A Game Records, Label Gold]

子供の頃に聞いた、ドネル・ジョーンズやルーシー・パールが奏でる美しいメロディとしなやかな歌声に魅了されて音楽の道を志し、若い頃からボビー・ヴァレンチノやクリセット・ミッシェルと一緒のステージに立ってきたという、ルイジアナ州デリッター出身のシンガー・ソングライター、デイマー・ジャクソン。

2016年には自身のレーベル、レーベル・ゴールドから5曲入りのEP『Ninety3Until EP』を発表。同作に収められている、甘くロマンティックなバラード”Crazy”が、R.ケリーやブライアン・マックナイトがしのぎを削っていた90年代のR&Bを知る人から、絶頂期の彼らを知らない若い世代まで、幅広い年代の人から高く評価された。その後も、ラバーバンドOGなどのラッパーの作品に客演しつつ、様々なステージを経験。経験と実力を蓄えていった。

このアルバムは、前作から約1年ぶりとなる通算2枚目のEP。前作同様、配信限定の作品だが、本作はラバーバンドOCなどの作品を取り扱っている、アトランタの大手インディー・レーベル、シンク・イッツ・ア・ゲームが配給を担当。前作からの再録曲を含め、収録曲の大半を彼自身がプロデュースした力作になっている。

本作の1曲目に入っている”Ritenow”は、前作に収められている”Crazy”の共同制作者でもあるビッグ・フルーツがプロデューサーとして参加したスロー・ナンバー。R.ケリーやドゥー・ヒルのような、90年代に一世を風靡したバラードの名手を彷彿させるエロティックなメロディが印象的な曲だ。だが、今までの作品と大きく違うのが、甘い歌声を聴かせるサビの間を繋ぐメロディの部分。ファット・ジョーを思い起こさせるがなり声でラップをするという、今までの曲にはなかったスタイルに挑戦している。甘く優しい声質の彼が空気を引き裂くような声でラップをするのは少し違和感があるが、これはこれで面白い。

続く”Club Again”は、”Down in the DM”などのヒット曲を残しているメンフィス出身のラッパー、ヨー・ガッティをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。デイマーの作風に、クランクやトラップの要素を混ぜ合わせた、陰欝なシンセサイザーの音色と跳ねるようなビートを使ったトラックは彼の作品では異色だ。淡々と言葉を繋ぐヨー・ガッティのラップと、艶っぽいデイマーの歌声のコンビネーションにも注目してほしい。90年代のR&Bから多くの影響を受けた彼が、現代のヒップホップやR&Bに当時の音楽のエッセンスを注ぎ込んだ佳作。

また、これに続く”Changed”は、アッシャーの”You Make Me Wanna”やアリーヤの”One In A Million”を思い起こさせるチキチキ・ビートを取り入れたミディアム・ナンバー。通常の二倍のテンポで刻まれるシンバルの音色がトラックにスピード感を与える、チキチキ・ビートを取り入れた楽曲だが、この曲の面白いところは、メロディとサビでリズムの取り方を大きく変えているところ。メロディの部分ではハットを基準にした早いテンポのメロディを取り入れているのに対し、サビの部分ではドラムの音でリズムを取って、じっくりと歌い込でいる。一人の歌手がテンポを大きく変えて歌うことで、シンガーとラッパーがコラボレーションしているように聴かせる演出が光っている。

そして、本作の隠れた目玉と呼んでも良いのが、第二の”Crazy”といっても過言ではないスロー・バラード”Everything”だ。ビッグ・フルーツがプロデュースしたこの曲は、フィンガー・スナップやポロポロと鳴り響くキーボードの伴奏が切ない雰囲気を醸し出している。しっとりとしたメロディを丁寧歌う姿は、”I Wanna Know”がジャンルの壁を越えて多くの人を魅了していたジョーに少し似ている。”Crazy”で彼のことを知った人が一番望んでいたのは、この曲のような王道のバラードだろう。

今回のアルバムでは、従来のヴォーカルにフォーカスしたバラードに加え、トラップなどの新しいサウンドやラップなどの新しい表現を取り入れて、彼の音楽を聴いたことのない人にもアピールした楽曲が目立っている。しかし、ただ新しいものを取り入れるのではなく、サビの部分は音数を絞ってじっくりと歌い込むなど、スロー・ナンバーが得意な彼の持ち味を活かしたアレンジになっているのが心憎い。

一つ一つのフレーズに丁寧に向き合い、じっくりと言葉やメロディを聴かせることに重きを置いた、真摯な姿勢が魅力のヴォーカル作品。ソウル・バラードが苦戦を強いられる時代に、トレイ・ソングスブライソン・ティラーなどのメジャー・レーベルに所属する歌手とは違うアプローチで、「歌」の魅力を教えてくれる良作だと思う。

Producer
Damar Jackson, Big Fruit

Track List
1. Ritenow
2. Club Again feat. Yo Gotti
3. Changed
4. FN Everything
5. Calling Me
6. Everything
7. No Protection
8. Crazy






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