ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Jonwayne - Rap Album Two [2017 Authors, The Order Label]

舞台俳優として活躍していたハイスクール時代、詩が好きな女の子に惹かれたことをきっかけにラップを開始。次第にラップそのものに夢中になり、自身のヒップホップ・グループ、ウエスト・コヴィーナを結成した、カリフォルニア州ラ・ハブラ出身のジョンウェインことジョナサン・ウェイン。

その後、ロス・アンジェルスで行われるクラブ・イベント、ロウ・エンド・セオリーにも出演するようになった彼は、そこでストーンズ・スロウのオーナー、ピーナッツ・バター・ウルフとの知己を得る。

また、2008年には、自主制作による初のフル・アルバム『From The Vault Pt. 1』を配信限定でリリース。その後も、2016年までに20枚近いアルバムとミックス・テープを発売。ラッパーらしからぬ風貌と異色の経歴を活かした、斬新で独創的な作品を送り出してきた。

今回のアルバムは、2016年に発表したLP2枚組『Here You Go』以来となるフル・アルバム。自身のレーベルであるオーサーズ・レコーディングとダディ・ケヴ率いるオーダー・レーベルが配給を担当。プロデュースには彼自身のほか、ディレイテッド・ピープルズやビート・ジャンキーズで活躍するDJバブや、西海岸出身の辣腕プロデューサー、ディビアスなどが名を連ねている。

アルバムの収録曲で目を惹くのは、ジ・インターネットのパトリック・ペイジやジャミール・バーナーが演奏で参加した”Live From The Fuck You”だろう。セシル・テイラーやアルバート・アイラーの音楽を連想させる、不規則で掴みどころのない伴奏をバックに、言葉を繋ぐジョンウェインの姿が光る曲。音の高低や強弱を際立たせて、前衛的なサウンドを強調している点が面白い。ラップを楽器のように使う発想はとても新鮮だ。

これに対し、ストリングス奏者のソフィーと、ベーシストのジュアン・アルデレート・デ・ラ・ペナを招いた”Out Of Sight”は、オルゴールのような音色を使ったトラックが印象的な曲。子守唄のような優しい声で語り掛けるラップが眠りを誘う心地よい作品だ。浮遊感が魅力のトラックだが、随所に色々なフレーズを挟み込むことで、きちんと起伏を付けている心配りが憎い。リスナーの心を落ち着かせ、夢の世界に誘う珍しいヒップホップだ。

一方、DJバブがプロデュース、キーボードをキーファー、ベースをパトリック・ペイジが担当している”City Lights”は、ディレイテッド・ピープルズのような西海岸のヒップホップ・アーティストを思い起こさせる作品。管楽器やピアノなどの音色を使った伴奏が、古いレコードをサンプリングしたような雰囲気を醸し出している。ほかの曲に比べると地声を多く使い、迫力のあるラップを聴かせているジョンウェインが、2パックやノートリアスB.I.G.に少し似ている点も面白い。

そして、アルバムの最後を飾るのが、ディビアスが手掛ける”These Words Are Everything”だ。ギターやハープ、電子音や缶を叩く音(?)などを組み合わせた摩訶不思議なトラックをバックに、太い声を響かせる奇抜な曲。前衛的なトラックの上で、アイス・キューブを連想させる力強いラップを披露するジョンウェインの姿が格好良い。

彼の音楽の面白いところは、不規則なリズムや奇抜な音色を取り入れつつ、曲に応じて色々なラップを聴かせてくれるところだろう。トラックでは、マッドリヴやフライング・ロータスのような先鋭的なビート・メイカーにも負けない柔軟な発想を見せつつ、ラップではディレイテッド・ピープルズやアルカホリックスのような正統派スタイルから、エミネムやカジモトにも負けない個性的なフロウまで、曲調に合わせている色々なスタイルを使い分けている点は、他のアーティストにはない彼の魅力だと思う。

カニエ・ウエストやチャンス・ザ・ラッパーなど、貧困や暴力とは距離を置いた環境で育ったラッパーが活躍の場を広げるなか、その方向性を突き詰めたような、文化系で芸術家肌の感性が光る面白い作品だと思う。「ヒップホップってこんな音楽でしょ?」という固定観念を持っている人にこそ聴いてほしい、ヒップホップの持つ可能性を感じさせるアルバムだ。

Producer
Jonwayne, Eets, Oliver the 2nd, DJ Babu, Dibia$e

Track List
1. Ted Talk feat. D-Styles
2. Live From The Fuck You
3. Human Condition
4. Out Of Sight
5. The Single
6. Paper feat. Shango
7. City Lights
8. Rainbow feat. Danny Watts
9. Afraid Of Us feat. Zeroh
10. Blue Green feat. Low Leaf
11. Hills feat. Zeroh
12. These Words Are Everything





Sevyn Streeter - Girl Disrupted [2017 Atlantic Records]

2001年にガールズ・グループTG4の一員としてデビューしたものの解散。その後、リッチ・ハリソンが手掛けるリッチ・ガールズの一員として再デビュー。アトランティックにシングルを残したものの再び解散。そして今回、ソロに転向し、3度目のデビューを果たしたフロリダ州ハインズ・シティ出身のシンガー・ソングライター、セブン・ストリーターズこと、アンバー・デニス・ストリーターズ。彼女にとって、初のフル・アルバムとなるのが本作だ。

ソロ転向後は、ディディ(=ショーン・コムズ)の”I Know”や”Help Me”、クリス・ブラウンの”Party Hard”や、ザ・ゲームの”Quicks Groove”など、人気ミュージシャンの作品にヴォーカルやソングライティングで参加してきた彼女。本作では、そこで培った経験を活かし、トレンドを的確に捉えた、キャッチーで親しみやすいR&B作品を聴かせてくれる。

アルバムの曲目を見て、最初に目を惹いたのはザ・ドリームがゲストで参加した”Present Situation”だ。2016年に『The Life of Pablo』で音楽界を騒がせたカニエ・ウエストとマイク・ディーンがプロデュースを担当。ドリームがソングライティングで参加している。トラックは電子音を組み合わせた抽象的なもので、『The Life of Pablo』の手法を拡張、発展させた作品だ。リアーナの”Umbrella”など、音数を絞り、歌をじっくりと聴かせるメロディが得意な、ザ・ドリームの持ち味が発揮された曲もいい味を出している。

また、個人的には最もびっくりしたのが、ヤング・バーグがプロデュースしたフェイス・エヴァンスのカヴァー”Soon As I Get Home”だ。95年にリリースされたバラードを、コンピューターを駆使したアップ・テンポのダンス・ナンバーにリメイクしている。トラックにサンプリングを多用したバラードを、打ち込みを音楽によるダンス・ナンバーへと生まれ変わらせる二人の若く、柔軟な発想(といっても、本作発表時点で31歳だが)に驚かされる。一歩間違えれば、ティーンエイジャー向けのアイドル・ソングになってしまいそうなアレンジを、きちんとR&Bとして聴かせている点も見逃せない。

そして、オーガスト・アルシナをフィーチャー、ジャスティン・ビーバーやエド・シーランの作品にも携わっているベニー・ブランコがプロデュースで参加した”Been A Minute”は、ベイビーフェイスやR.ケリーを連想させるシンプルなバック・トラックと流麗なメロディが心地よいスロー・ナンバー。アッシャーを連想させる甘くしなやかな歌声を響かせるオーガスト・アルシナが存在感を発揮している。彼女のキュートな歌声を活かした、キュートでポップな名バラードだ。

それ以外の曲で、面白いのがタイ・ダラ・サインとキャム・ウォレスをフィーチャーした ”Fallen”だ。ニュー・エディションの"If It Isn't Love"をサンプリングしたこの曲は、太いシンセサイザーの音色を活かしたトラックが心地よいスロー・ナンバー。ロマンティックなメロディとキュートなヴォーカルの組み合わせは、ニヴェアやマイアを連想させる。可愛らしさの中にも、大人の色気を感じさせる佳曲だ。脇を固めるキャム・ウォレスとタイ・ダラ・サインのパフォーマンスもいい味を出している。

彼女のスタイルは、メアリーJ.ブライジやビヨンセのような本格的なディーヴァというより、大衆性を保ちながら、じっくりと歌を聴かせるモニカやブランディに近いものだと思う。シンセサイザーを多用したトラックや、歌うように言葉を紡ぐラッパーを起用する手法は、R&Bのトレンドを意識したものだし、その上で、可愛らしい軽妙な歌声を聴かせるやり方も、彼女の声質やキャラクターにマッチしている。この絶妙なバランスが彼女の強みだと思う。

近年少なくなった、大衆性と歌唱力を兼ね備えた女性シンガーによる佳作。リアーナやビヨンセとは異なるアプローチで、魅力的なR&Bを聴かせてくれる希少な作品だと思う。

Producer
Kanye West, Mike Dean, Hit-Boy, Benny Blanco etc

Track List
1. Livin
2. Present Situation feat. The-Dream
3. My Love For You
4. Anything U Want feat. Wiz Khalifa, Jeremih & Ty Dolla $ign
5. Ol Skool feat. Jeremih & DeJ Loaf
6. Soon As I Get Home
7. Before I Do
8. Been A Minute feat. August Alsina
9. Translation
10. Peace Sign feat. Dave East
11. Fallen feat. Ty Dolla $ign & Cam Wallace
12. How Many
13. Everything In Me






Jay-Z - 4:44 [2017 Roc Nation]

1996年にアルバム『Reasonable Doubt』でメジャー・デビュー。以後、多くの作品でプラチナ・ディスクを獲得。全米アルバム・チャートの1位に送り込むだけでなく、シンセサイザー主体のトラックが中心だった時代に、ソウル・ミュージックをサンプリングしたトラックで、ヒップホップ・シーンの流行を一変させた『The Blueprint』など、沢山の傑作を残してきた、ニューヨークのブルックリン出身のラッパーで実業家、ジェイZことショーン・カーター。

本作は彼にとって通算13枚目のオリジナル・アルバム。自身が経営するロック・ネイションからのリリースで、彼が経営陣に名を連ねるストリーミング・サイト「TIDAL」で1週間早く公開。その後、CDや配信で発売、という戦略を採用した作品だ。

過去の作品では、気鋭の若手を含む多くのプロデューサーを起用してきたジェイZだが、本作ではプロデュースを自身とシカゴ出身のプロデューサー、ノーI.Dの手で行っている。しかし、ゲストにはフランク・オーシャンやダミアン・マーリーなどが参加。ヒップホップ界のトップ・ランナーにふさわしい、斬新でキャッチーな作品を聴かせている。

アルバムに先駆けてMVが公開された”The Story of O.J.”は、ニーナ・シモンの”Four Women”とファンク・インクの”Kool Is Back”をサンプリングしたおどろおどろしいトラックが印象的な曲。ニーナ・シモンのピアノとヴォーカルを解体、引用したトラックはオーティス・レディングの楽曲をサンプリングした”Otis”にも匹敵するソウルフルなもの。肩の力を抜いてゆったりとラップを繰り出すジェイZの存在が、楽曲の不気味さに拍車をかけている。ソウル・ミュージックをサンプリングしつつ、過去の作品とは違うものを生み出すセンスに驚かされる。

それ以外の曲に目を向けると、フランク・オーシャンをフィーチャーした ”Caught Their Eyes”は、ニーナ・シモンの代表曲”Baltimore”をサンプリング。レゲエのゆったりとしたビートに、ニーナ・シモンの泥臭い歌声を組み合わせる手法は、予想外の一言。レゲエの要素を盛り込んだトラックでも、普段の荒々しいフロウで自分の音楽に染め上げるジェイZの姿が格好良い。曲の隙間を埋めるフランク・オーシャンのヴォーカルもいい味を出している。

また、本作のタイトル・トラックである”4:44”では、ハンナ・ウィリアムス&ザ・アファーメイションズの"Late Nights and Heartbreak"を引用。『The Blueprint』でも多用された、ヴォーカルを中心にソウル・ミュージックの印象的なフレーズを繰り返し使う手法を採用したトラックが印象的な作品。過去の作品では、テンポを変えるなど、色々と加工を施していたが、この曲では原曲のフレーズの切り取り方に工夫を凝らすことで、トラックに起伏を与える。ジェイZのラップも安定している。

そして、2002年の『The Blueprint 2: The Gift & The Curse』以降、多くの作品で共演している妻、ビヨンセとのコラボレーション曲”Family Feud”は、ゴスペル・グループ、クラーク・シスターズの”Ha-Ya”を引用。ゴスペル曲を引用したトラックといえば、カニエ・ウエストの”Jesus Walks"を思い起こさせる。また、ビヨンセのヴォーカルはこれまでの作品と比べると控えめで、ヴォーカルというよりは声ネタに近い扱い。ジェイZのダイナミックなフロウが堪能できる佳曲だ。

今回のアルバムは、4年ぶりの新作ということで、多くの期待を抱いた人も少なくないと思うが、そういう人からすると、物足りない作品かもしれない。ソウル・ミュージックやジャズをサンプリングしたトラックも、過去の楽曲とは一味違うが、音楽シーンの潮流を塗り替えるものではないと思う。しかし、どんなトラックもしっかりと乗りこなし、自分の色に染め上げるジェイZのパフォーマンスは、彼が紛れもないトップ・ランナーであることを裏付けていると思う。

ヒップホップ業界を揺るがし続けてきたトップ・ランナーのアルバムでは異色の、安定したパフォーマンスが光る佳作。彼の音楽を聴いて育った大人にこそ聴いてほしい、落ち着いた雰囲気の作品だ。

Producer
Jay-Z, No I.D.

Track List
1. Kill Jay Z
2. The Story of O.J.
3. Smile feat. Gloria Carter
4. Caught Their Eyes feat.Frank Ocean
5. 4:44
6. Family Feud feat. Beyoncé
7. Bam feat. Damian Marley
8. Moonlight
9. Marcy Me
10. 11.Adnis
12. We Family
13. MaNyfaCedGod



4:44
Jay-Z
Roc Nation
2017-07-07

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