ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Sampha - Process [2017 Young Turks, XL Recordings]

2010年にCD-Rでリリースした自主制作のEP『Sundanza』でデビュー。同作に収められている、ソウル・ミュージックと電子音楽やヒップホップを融合した個性的なサウンドが、新しい音に敏感な音楽ファンやミュージシャンの間で注目を集めた、サウス・ロンドンのモーデン出身のシンガー・ソングライター、サンファことサンファ・シセイ。彼にとって初のフル・アルバムが、XL傘下のインディー・レーベル、ヤング・タークスから発表された。

デビュー後の彼は、アーロン・ジェロームの音楽プロジェクト、SBTRKTやドレイク、カニエ・ウエスト、フランク・オーシャン、ソランジュなど、先進的な音楽性で多くのファンを魅了する人気ミュージシャンの作品に、制作やヴォーカルで参加し、その美しい歌声と鋭いセンスを披露してきた。

そんな彼にとって、CD形式では初のアルバムとなる本作では、マックスウェルの柔らかいテナーヴォイスとサム・スミスの洗練された歌唱、それにフライング・ロータスのように巧みな電子音の使い方と、Jディラを思い起こさせる厳選した音色を巧みに配置したビートが合わさった、独特の世界観を感じさせる傑作だ。

まず、アルバム発売に先駆けて発表された”Blood On Me”は、ナズやギャングスターの音楽を連想させる、90年代のヒップホップっぽい軽快なビートに、電子音を絡めたトラックを使ったアップ・ナンバー。そんなトラックの上で、感情をむき出しにしながら、泣きじゃくるように激しく歌うサンファの姿が印象的。

また、もう一つの先行リリース曲”Timmy's Prayer”は、カニエ・ウエストが制作に参加したミディアム・ナンバー。管楽器のような音色のシンセサイザーが物悲しい雰囲気を醸し出すトラックでは、他の曲と同じように、シンセサイザーを使ったビートも、どこか哀愁を帯びたように聴こえる。こんな重く、暗い雰囲気の曲に、サンファはロックのビートとギターを奏でるように多くの電子音を盛り込んで、ブラッド・オレンジやレディオヘッドのようなオルタナティブ・ロックっぽい前衛的な楽曲に纏め上げている。彼の歌も、この曲ではどこかラフで爽やかな感じがする、ロック色の強い佳曲だ。

それ以外にも、ガラージっぽい軽妙なビートに、軽い音色のスネアと電子音を組み合わせた高速で鋭いビートの上で、リバーブをかけたファルセットを響かせるアップ・ナンバー”Kora Sings”や、ピアノとシンセサイザーを使った神秘的な伴奏をバックに、繊細な歌声を絞り出すように歌い上げるバラード”(No One Knows Me) Like The Piano”なども、R&Bが好きな人には魅力的だと思う。

だが、彼の本領が発揮されているのは、やっぱり電子音楽とソウル・ミュージックを融合させたミディアム・ナンバーだろう。このアルバムでは”Reverse Faults”や”Under”、”Incomplete Kisses”などがそれに該当する。その中でも、”Incomplete Kisses”は電子楽器の音色に空間処理を施して作った幻想的なトラックの上を、エフェクトがかかったサンファのヴォーカルが響き渡るミディアム・ナンバー。メロディ自体は、フランク・オーシャンやアンダーソン・パックの流れを汲む、ソウル色の薄いR&Bといったところだが、ジェイムズ・ブレイクやフライング・ロータスの系譜に立つ、電子音楽とポップスを融合したトラックや、両者を結び付け、一つに纏め上げる音響技術のおかげで、彼にしか作れない個性的なソウル・ミュージックに仕上がっているのが面白い。

彼の音楽をじっくり聞くと、個別の要素は色々なミュージシャンにルーツを求めることができると思う。ファルセットを駆使したヴォーカル・スタイルは、マーヴィン・ゲイにはじまり、近年ではマックスウェルやロビン・シックなどが採用しているし、感情をむき出しにする繊細なヴォーカルはレディオヘッドのトム・ヨークなど、ロック・ミュージシャンを中心に多くの歌手が取り入れている。電子音楽をポップスに援用する手法も、フライング・ロータスやジェイムズ・ブレイク、ジェイ・ディラなどの作品で見られるもので、全て、純粋な彼のアイディアではない。

だが、彼の面白いところは、色々な音楽で使われている手法を集め、一つの音楽に詰め込みつつ、引用や加工の仕方を工夫することで、各手法の特徴と残しながら、自分の音楽に仕立て上げている点だと思う。その象徴が”Timmy's Prayer”で、電子音を多用しながら、ロックのビートに、レディオヘッドっぽい退廃的なメロディ、サム・スミス風のスタイリッシュなヴォーカルという、タイプの異なる音楽のエッセンスを、一つの作品に詰め込みつつ、きちんと整合性を取っている点が、彼の音楽の特徴だと思う。2013年に、デーモン・アルバーンがボビー・ウーマックの『Bravest Man in the Universe』でエレクトロ・ミュージックとソウルの融合に挑戦していたが、このアルバムは同作の手法を磨き上げ、ソウルと電子音楽を完全に一体化しつつ、各要素の特徴を残した作品といってよいだろう。

これだけ多くの要素を詰め込みつつ、一つの作品に落とし込むセンスはただものではないと思う。カニエ・ウエストの『The Life of Pablo』やソランジュの『A Seat at the Table』が好きだった人にはぜひ聴いてほしい、個性的な発想と緻密な構成、高い演奏技術が光る良作だ。

Producer
Sampha Sisay, Rodaidh McDonald

Track List
1. Plastic 100C
2. Blood On Me
3. Kora Sings
4. (No One Knows Me) Like The Piano
5. Take Me Inside
6. Reverse Faults
7. Under
8. Timmy's Prayer
9. Incomplete Kisses
10. What Shouldn't I Be?






 

Ali Tennant – Get Loved [2017 SEVEN LBS ENTERTAINMENT]

イギリス出身の歌手らしい、流れるようなヴォーカルと、アメリカのR&Bから強い影響を受けた、ヒップホップ色の強いキャッチーなトラックで、多くのR&Bファンに強烈な印象を残した98年の傑作アルバム『Crucial』で知られる、ロンドン出身のシンガー・ソングライター、アリ・テナント。彼にとって、実に19年ぶりとなる新作がこの『Get Loved』だ。

前作の発売から本作がリリースされるまでの間、コンピレーション・アルバムや他のアーティストの楽曲で彼の名前を見ることは何度かあったが、肝心の彼自身の名義での新曲はほとんどなかった。だが、その間も彼は、ジェシーJやブルーといったイギリスのR&Bシンガーやポップ・グループに楽曲を提供したり、XファクターやヴォイスUKなどのオーディション番組で、参加者への歌唱指導を担当したりと、主に裏方として多忙の日々を送っていたようだ。

さて、本作の話に入ろう。20代のときに発表した前作と、40代になってから録音した今回のアルバムを聴き比べて、まず気になったのはアリの歌声の変化だ。しなやかなヴォーカルは前作のときと変わらないが、本作では声に渋みが加わり、感情表現の幅が広がるなど、R&Bシンガーとして、さらに成熟したように思える。また、バック・トラックに目を向けると、前作同様、アメリカのヒップホップを意識したものも多いが、それ以外にも、ドゥームやエクスパンションのような、イギリスのR&Bシーンをリードするレーベルの作品を意識したスタイリッシュなものや、アンソニー・ハミルトンやライフ・ジェニングスが録音しそうな、ソウルとヒップホップを融合した泥臭いビートも登場するなど、前作の路線を踏襲しつつ、バラエティを増やしている。

個別の収録曲に目を向けると、アルバムのオープニングを飾る”Superstar”は、いかにもイギリスのR&Bといった趣の、コンピューターを使ったスタイリッシュなビートに、ホーンっぽい音色を使った上物が心を掻き立てる華やかなダンス・ナンバー。アリのヴォーカルは豊かな歌声を軽やかに操り、洗練されたトラックに溶け込み、一体化している。

そして、続く”Switch”は、コントローラーズが87年に発表した”My Secret Fantasy”をサンプリングした、ミディアム・ナンバー。チェコのラップ・グループ、ケイオズの”Z Klece Do Hrobu”やクッキン・ソウルの”Sky's the Limit (Cookin' Soul Remix)”などでも使われている有名なネタだが、どちらかといえば暗く、しっとりとしたトラックで使われるロマンティックなミディアム・ナンバーを、陽気で爽やかなトラックのアクセントに使った発想は斬新だ。アリの歌もファルセットを多用したセクシーなもので、前作に収録された”Feelin’ You”を彷彿させるキャッチーで色っぽいヒップホップ・ソウルだ。

一方、”Tell Me What You Want”や”Get 2Gether”は、アンソニー・ハミルトンやジャヒームを連想させる、泥臭いミディアム・ナンバー。60年代のサザン・ソウルを再現したような、ロー・ファイな音を使ったビート上で、ファルセットを混ぜつつ、粘り強く歌い上げる姿が強く印象に残る。前作にもミディアム・ナンバーは収録されていたが、ここまでドロドロとした曲は初めてだったと思う。そして、これらのスタイルは、タイトル・トラックの”Get Loved”や”If I Was Your Man”など、他の曲でも採用されており、本作の大きな特徴になっている。

だが、本作の真の目玉は、”No Forgiving”だと思う。AZの”Sugar Hill”やコンプトン・モスト・ウォンテッドの”It's a Compton Thang”など、多くのヒップホップ作品にサンプリングされてきた、ジューシーの”Sugar Free”を引用したこの曲は、前作に収録された”Feelin’ You”の続編のような、”大ネタ”を使ったキャッチーなトラックと流麗なメロディ、そして、ファルセットを多用した色っぽいヴォーカルが心地よいアップ・ナンバーだ。

このように、今回のアルバムは、泥臭いトラックや粘っこいヴォーカルなど、現代の歌手にも強い影響を与えている、60年代のアメリカのソウル・ミュージックのエッセンスを取り込みつつ、21世紀を生きる私達にとって親しみやすい、キャッチーで洗練された作品に落とし込んだ楽曲が目立っている。おそらく、アーティストとして経験を積みながら、裏方として、多くの人の心に訴えるかけるパフォーマンスが求められるポップ・シンガー達と向き合ってきたことが大きかったのだと思う。

19年も待ったことを忘れてしまうくらい、捨て曲のない充実した作品。次回のリリースは2036年なんて言わないでよ(笑)

Track List
1. Superstar
2. Switch
3. Tell Me What You Want
4. Get 2Gether
5. Don’t Say
6. Get Loved
7. If I Was Your Man
8. Cry
9. Suffer 4 Love
10. Where She Lays
11. The Roof
12. No Forgiving
13. Grown & Sexy





Get Loved
Ali Tennant
Seven Lbs Entertainm
2017-01-30



 

ブログ開設から3か月!!1月のアクセス数と人気記事を振り返ってみたよ!!

はい、タイトルの通り、1月末でこのブログは開設3か月目を無事終えることができました。

レビュー50本目を振り返る記事でも触れたように、1月にブログのタイトルとテーマを少し変えたり、音楽ブログを紹介するサイトに登録したりと、色々な人のお世話になったおかげで、先月は月間のPV数が2000を超えるなど、当初の予想以上に多くの人に見ていただくことができました。

そこで、前回から約10日と間が短いですが、この3か月のPV数などの状況と、人気記事を振り返りながら、今後の抱負を考えようかなと思います。

まず、直近3か月のPV数と前月比についてまとめてみました。



PV数 前月比 UU数 前月比 記事数
2016年11月 31
9
9
2016年12月 768 2477% 153 1700% 23
2017年1月 2498 325% 507 331% 27
※記事数はレビュー記事のみの値 

11月19日に始めたこのブログは、12月にブログ・ランキングに参加、1月にブログ紹介サイトに登録、と色々調整を加えてきたので、PV数などを単純に前月と比較するのは難しいですが、12月から1月にかけて、PV数とUU数が3倍になっているのには、ちょっと驚きました。ただ、2月は日数が少ないですし、今の自分の文章力や、取り扱う題材で、急激にアクセスが増えると楽観視はしていませんので、毎日コツコツ、少しずつレビューを増やしていきたいなと思います。

さて、次はこの記事のメイン・コンテンツ、1月の人気記事トップ5を紹介します。

5. Frank Ocean -Blonde [2016 Boys Don’t Cry] [2017年1月13日 51アクセス]

4. Tuxedo - Fux with the Tux EP [2017 Stones Throw] [2017年1月21日 53アクセス]


3. Gallant - Ology [2016 Mind Of Genius, Warner Bros. Records] [2017年1月2日 57アクセス]
 

2. Childish Gambino - Awaken, My Love! [2016 Glassnote Records] [2017年1月12日 58アクセス]
 

1.The James Hunter Six ‎– Hold On! [2016 Daptone] [2017年1月8日 67アクセス]
 

これ以外にもSolangeの『A Seat At The Table』UNV IIの『Kings of The Quiet Storm』が5位と1アクセス差の同率6位にいるなど、4位から8位までの記事のアクセス数は僅差でした。

さて、1月の結果を振り返って感じたのは、前回のレビューでも触れましたが、ネット・ユーザーの間では自分が思っている以上に斬新な尖ったサウンドに関心が向いているんだなということです。今回のトップ5では、5位のフランク・オーシャン、3位のガラント、2位のチャイルディッシュ・ガンビーノと、5組中3組が先鋭的なサウンドをウリにするミュージシャンですし、6位以下には、ソランジュやガブリエル・ガルゾン・モンターノアンダーソン・パックなどの尖ったミュージシャンが並んでいました。 ただ、その一方で、シャイ・ガールズブラッド・オレンジは芳しくない結果になるなど、「異ジャンルを取り入れたソウル」と「ソウルに歩み寄った異ジャンル」の間には、何か大きな違いがあるのかもしれないと思いました。

また、もう一つの発見は、発売日から間を置かずにレビューを書いたアルバムの動向です。チャイルディッシュ・ガンビーノやタキシード、ガブリエル・ガルゾン・モンターノのように、発売日直後に取り上げた作品のアクセス数は想像以上に良く、タキシードは配信限定にも関わらず多くの人がアクセスしていました。

昨年末に配布されたBounce(タワレコのフリーペーパー)で配信限定の作品が取り上げられないことについて触れてましたが、自分はしがらみのない一音楽ファンの立場で、配信限定の音楽も取り上げていこうと思います。

さて、ここまでのまとめを経て考えた、今月の目標ですが。
1. 新譜中心のレビュー
2. 様々な演奏隊形、メジャー、インディー、フィジカル、配信など、色々なタイプの作品をまんべんなく取り上げる
3. 新しいジャンルの開拓
この3つにしたいと思います。

特に、先月は年の始まりということもあり、個人的な印象では、旧譜を取り上げすぎた感じがしました。
ただ、先月末あたりから、今年の新譜が出回り始めたので、これからは積極的に新譜を取り上げていこうと思います。
また、これまでの記事の一覧を見ると、男性シンガーの作品が全体の5割近くを占めるなど、ちょっとバランスが悪い点が気になりました。もちろん、ヴォーカル・グループが少ないなどの背景はありますが、女性シンガーやバンドなど、男性シンガー以外のミュージシャンも積極的に取り上げていこうと思います。
そして最後に、これは今月以降の課題ですが、ヒップホップやブルース、レゲエなど、R&Bやソウルの周辺ジャンルの音楽や、日本を含むアジアのミュージシャンなども、必要ならば取り上げられるよう、準備をしておきたいなとかんがえてます。

以上、とりとめもないことをつらつらと書いてますが、これからは心を入れ替えて、コツコツと進めていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 
記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ