ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Diggs Duke - Civil Circus [2015 Following Is Leading]

一人で様々な楽器を使いこなす技術力と、ジャズとソウル・ミュージックやヒップホップを融合させた独創的な音楽性で、新しい音楽に敏感な人々の間で注目を集めていた、インディアナ州ゲイリー出身のアーティスト、ディグス・デュークことジョナサン・ディグス・デューク。

2013年には、初めてのフル・アルバム『Offering For Anxious』を、ジャイルズ・ピーターソンのレーベル、ブランズウッドから発売。ディアンジェロやプリンスを思い起こさせる、様々な音楽を飲み込み、自分の音楽に昇華した作風が話題となり、ジャズ・ファンに留まらず、ヒップホップやR&Bが好きな人にも愛聴された。

このアルバムは、2015年の終わりに発表された、彼にとって2枚目のフル・アルバム。彼が立ち上げたフォローイング・イズ・リーディングから、配信限定(CD-R盤もある)でリリースされたもので、2017年に日本のウルトラ・ヴァイヴからCD盤が発売された。

今回のアルバムも、前作同様、全ての曲が彼自身のプロデュースによるもの。しかし、ほぼ全ての楽器を一人で演奏していた前作に対し、本作では多くのミュージシャンを起用。彼の鋭い音楽センスを活かしつつ、彼とは異なるキャリアを積んできた面々の感性を取り込むことで、よりバラエティ豊かになった音楽を聴かせている。

アルバムの最初に入っている”Busker”は、テナー・サックスにジャラニ・ブルックス、ドラムにウォーレンG.クラダップIII世、ベースにルーク・スチュアートを招いた、3人編成による録音。3人の演奏にエフェクトをかけて、ダブやエレクトロニカのように幻想的な雰囲気に仕立て上げた曲だ。エフェクトを活かすため、サックスのフレーズをシンプルにした手法は、マイルス・デイヴィスがエレクトリック・サウンドに適応するために、音数を絞った演奏を吹き込んだ『Bitches Brew』の表現を連想させる。

これに対し、ダンテ・ポープをヴォーカルに起用した”Compensation”は、19世紀に公民権運動を題材にした多くの作品を残している、作家で詩人のポール・ローレンス・ダンバーの詩に曲をつけたもの。ニーナ・シモンなど、多くのミュージシャンに引用されてきた、有名な文学作品を取り入れつつ、フルートやギターを使った抽象的なサウンドで、前衛的なR&Bに仕立て上げたセンスが面白い。全ての楽器を彼自身が演奏したトラックも聴きどころだ。

一方、本作では最長の5分半に及ぶ大作、”Ambition Addiction”は、ヴォーカルにレイチェル・ブロットマンを招いたミディアム・ナンバー。音と音の隙間を意識したトラックは、ジェイムス・ブレイクを彷彿させる、エレクトロ・ミュージックとジャズやソウル・ミュージックが融合した伴奏の上で、繊細な歌声を響かせる2人の姿が印象的な曲だ。電子楽器を使った抽象的なビートと、フルートやギターの演奏を組み合わせた温かい演奏を、うまく使い分けたアレンジ技術は圧巻の一言だ。

そして、本作では2番目に長い4分弱の曲”Warming Warning”は、電子楽器を多用したポップなサウンドが光るミディアム・ナンバー。70年代のスティーヴィー・ワンダーを思い起こさせる音色のエレクトリック・ピアノや、パーカッションのように軽快な音を鳴らす電子ドラムを使ったバック・トラックと、しなやかなディグスのヴォーカルと、グラマラスな歌声のフィーチャリング・シンガー、ジャダ・アーヴィンの対照的な個性が上手く噛み合った、ソウルフルな曲だ。ローファイな音色の電子楽器を使うことで、昔のソウル・ミュージックの雰囲気を再現した手法が格好良い。

今回のアルバムは、1分から2分の曲が中心で、全体では30分に満たない、EPに近い作品だ。しかし、ソウル・ミュージックやエレクトロニカ、アフロ・ミュージックまで色々なジャンルの音楽のエッセンスを取り込み、曲の全てをハイライトのように聴かせる彼の創作能力のおかげで、1時間超の大作にも負けないくらい、多くの見せ場を作っている。

最初から最後まで、全てがヤマといっても過言ではない、密度の濃い作品。このアルバムを聴いて、彼の音楽に興味を持った人がいたら、ぜひ彼のホームページを覗いてほしい。そこには、未だCD化されてない、多くの名曲があるのだ。

Producer
Diggs Duke

Track List
1. Busker
2. Compensation
3. Ambition Addiction
4. Stoplight Lessons
5. Postcard
6. Street Preacher
7. Bumper To Bumper
8. Warming Warning
9. Damn Near Home
10. We Don't Need Love






Daye Jack – No Data [2017 Warner Music]

ナイジェリア生まれ、アトランタ育ちのヒップホップ・ミュージシャン、ダイエ・ジャック。高校時代はプログラミングにのめり込み、ニューヨーク大学時代は、チャンス・ザ・ラッパーやジョーイ・バッドアスといったミュージシャン達の音楽を聴いてヒップホップに夢中になった彼は、2014年に大学の冬期休暇を利用して、初のミックステープ『Hello World』(余談だが、アルバム名はプログラミングを学ぶ人が最初に取り組むコードの通称だ)を制作、発表する。

同作が注目を集めた彼は、ドクター・ドレやエミネムをブレイクさせたことでも知られるマイク・エリゾンドの口添えを得て、2015年にワーナー・ミュージックと契約。同年には初のEP『Soul Clitch』を配信限定で発売。歌とラップを織り交ぜた親しみやすい作風が高い評価を受けた。その後は、キラー・マイクをフィーチャーした”Hands Up”やアリアナ・グランテの”Sometimes”、トリ・ケリーの”Expensive”など、多くの有名ミュージシャンとコラボレーションを経験。その一方で、複数のツアーに帯同するなど、多忙な日々を過ごしていた。

本作は、彼にとって初めてのフル・アルバムで、初のフィジカル・リリース作品。ケイティ・ペリーなどを手掛けているクラス・アーランドや、50セントなどに楽曲を提供しているマイク・エリゾンドなど、有名ミュージシャンの作品に携わっているクリエイターが集結し、2016年に発表したEP『Surf The Wave』の収録曲やシングルで発売された曲のリミックスなどを収録した、豪華なアルバムになっている。

アルバムの1曲目に収められている、本作のタイトル・トラック”No Data”は、彼自身の手で制作された曲。80年代のヒップホップを連想させる、コンピューターを使って作られたポップなビートと、キーボードを演奏して録音したような、シンプルだけどキャッチーな上物、LLクールJを思い起こさせるワイルドでリズミカルなラップが格好良い曲。NWAやKRS-ワンのような、80年代後半から90年代初頭のラッパーを思い起こさせる荒々しいフロウと、シンセサイザーを多用した現代的なサウンドの共存が新鮮だ。

一方、2016年にシングルで発表された”Lady Villain”は、マイク・エリゾンドのプロデュース作品。ファットバック・バンドやアイズレー・ブラザーズのようなソウル・バンドが、80年代に録音したバラードを連想させる、シンセサイザーを駆使したメロウな伴奏が印象的なトラックに乗って、ファレル・ウィリアムズやスリーピー・ブラウンにも似ているセクシーなファルセットを響かせるミディアム・ナンバー。歌とラップを自在に使い分けるダイエの器用なヴォーカルが、楽曲に親しみやすさと大人っぽさを同居させている。

そして、『Surf The Wave』にも入っているシングル曲”Raw”は、マイアミ出身のデンゼル・カリーと、ヴァージニア・ビーチ出身のグリム・デイヴをフィーチャーしたリミックス・ヴァージョンを収録。重厚なベース・ラインが印象的なトラックは、マイク・エリゾンドのプロデュースによるものだ。彼が携わってきたドクター・ドレや50セントの曲を彷彿させる、重く、緊張感に溢れるトラックの上で、3人が個性溢れるラップを聴かせている。歌とラップを織り交ぜたスタイルが特徴的な、彼の作品では異色の、ハードなラップで勝負した曲だ。

また、マイク・エリゾンドと、アッシャーやジャスティン・ビーバーなどの作品を手掛けているダーンスト・エミールが携わっている”Casino”は、80年代のディスコ音楽を思い出させるポコポコというリズム・マシーンの音色と、乾いた音のギターやシンセサイザーの伴奏が、80年代のディスコ音楽を連想させるアップ・ナンバー。ドラムとシンセサイザーの伴奏を強調した爽やかなトラックと、地声のラップとファルセット中心の歌を使い分け、楽曲に起伏を与えるスタイルは、ファレル・ウィリアムズがサビを歌ったネプチューンズのプロデュース作品にもちょっと似ている。

彼の音楽は、キャッチーなフレーズをひたすら反復させるヒップホップのビートをベースにしつつ、曲調に応じてキーボードやギターの音色を盛り込んだポップなトラックと、ワイルドなラップとセクシーなヴォーカルを上手に使い分けたパフォーマンスが一つに同居した、親しみやすいものだ。そのスタイルは、ドレイクのような歌とラップを使い分けるアーティストよりも、ラッパーとヴォーカリストとのコラボレーション作品がヒットチャートを席巻した2000年代初頭のヒップホップに近い印象を受ける。

このアルバムのリリース時点で23歳にもかかわらず、聴き手の心をつかんで離さないキャッチーだけど緻密で完成度の高い音楽を聴かせてくれるダイエ。アッシャーTLCオーガナイズド・ノイズといった、アトランタ出身の偉大な先人の楽曲に負けず劣らずの、魅力的な作品だと思う。

Producer
Klas Ahlund, Mike Elizondo, Dernst Emile II, Lars Stalfors, Noah Passovoy

Track List
1. No Data
2. Deep End (Jayvon Remix)
3. Supernatural feat. Donmonique
4. Finish Line
5. Data Love Interlude
6. Lady Villain
7. Bully Bully
8. Raw (Remix) feat. Denzel Curry & Grim Dave
9. Need Some Mo' Interlude
10. Casino
11. Kick - Door
12. No Data Outro





No Data
Daye Jack
Warner Bros / Wea
2017-05-05


Organized Noize - Organized Noize [2017 Organized Noize]

92年にスリーピー・ブラウンことパトリック・ブラウン、リコ・ウェイド、レイ・マーレイの3人によって結成されたプロダクション・チーム、オーガナイズド・ノイズ。アトランタを拠点に、アウトキャストやグッディー・モブのメンバーとヒップホップ・クルー、ダンジョン・ファミリーとして活動する一方、プロデューサーとして多くの楽曲を制作。TLCの”Waterfalls”やアン・ヴォーグの”Don't Let Go (Love)”、アース・ウィンド&ファイアの”This Is How I Feel”など、多くのヒット曲を世に送り出していった。

また、1995年には彼ら自身もメンバーに名を連ねるヴォーカル・グループ、ソサエティ・オブ・ソウルの名義でアルバム『Brainchild』を発表。60年代のソウル・ミュージックを思い起こさせる泥臭いサウンドを、サンプリングや電子楽器を駆使したヒップホップの技術で現代に蘇らせた作品として、多くのブラック・ミュージック・ファンの記憶に残った。

本作は、オーガナイズド・ノイズの名義では初めてのアルバムとなる7曲入りのEP。ダンジョン・ファミリーやソサエティ・オブ・ソウルとして、傑作を残してきた彼らだが、プロダクション名義での作品は、1996年にリリースされた、同名の映画のサウンドトラックに収録されている”Set It Off”以来、実に21年ぶりとなる。

このアルバムでは、元グッディ・モブのシーロー・グリーンやアウトキャストのビッグ・ボーイといったダンジョン・ファミリーのメンバーのほか、プロデュースやバック・コーラスなどで一緒に仕事をすることが多い女性シンガーのジョイ、アトランタに近いカレッジ・パーク出身のラッパー、2チェインズなど、新旧様々なミュージシャンが集った、豪華なヴォーカル作品になっている。

本作の1曲目に収められている”Anybody out There”は、ジョイと、アウトキャストの”Morris Brown”などに携わってる、男性シンガーのスカーをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。シンセサイザーを使った跳ねるようなトラック、いわゆるトラップ・サウンドの上で、ジョイがラップっぽい歌を聴かせている。男女二人のシンガーが絡む曲では、女性がフックを担当することが多い中、スカーがサビを担当しているのは面白い。

続く”We the Ones”は、ビッグ・ボーイにシーロー・グリーン、ビッグ・ルーベとダンジョン・ファミリーの面々が揃った楽曲。ハンド・クラップを交えた軽妙なビートと、重厚なシンセサイザーの音色を使った伴奏が、アウトキャストやグッディ・モブのヒット曲を連想させるアップ・ナンバーだ。メロディを口ずさむように言葉を繋ぐ、ダンジョン・ファミリー流のラップが思う存分堪能できる。彼らのスタイルは、デビューから20年以上経った今も色褪せないようだ。

一方、ジョージア州出身の気鋭のラッパー、2チェインズとジョイが参加した本作からのリード・シングル”Kush”は、1曲目の”Anybody out There”と同様、トラップ・ビートを取り入れたミディアム・ナンバー。複数のトラックを混ぜ合わせた変則ビートに乗って、荒々しい声でリズミカルなライムを叩き込む2チェインズと、妖艶な歌声を響かせるジョイのコンビネーションが素晴らしい。新しいサウンドを取り入れつつ、彼らの持ち味である泥臭く温かいサウンドに仕上げている点は流石だと思う。

そして、本作の隠れた目玉が、スリーピー・ブラウンがマイクを握った”Awesome Lovin'”だ。70年代のアイズレー・ブラザーズやワンウェイを彷彿させる、アナログ・シンセサイザーの音色を使った、モダンで柔らかい伴奏の上で、流麗なメロディを色っぽいファルセットを交えつつじっくりと歌ったバラード。間奏で流れるワイルドなギターの演奏が、アーニー・アイズレーっぽくて格好良い。彼らのルーツである、往年のソウル・ミュージックを現代の音楽として再構築した、ロマンティックな楽曲だ。

今回の作品は、ダンジョン・ファミリー名義の録音やプロデュース作品で見せた、生演奏のような温かい音色と、小技を交えた複雑なトラック、歌とラップを織り交ぜた、軽妙なフロウが揃った、絶頂期の彼らの音楽性を思い起こさせるアルバムになっている。作品の随所で、2010年以降のトレンドを取り込みつつ、自分達の作風に落とし込んだ楽曲は、ヒット曲を量産していた時代の作品を知る人には懐かしく、そうでない人には新鮮に映ると思う。

時代の変化に適応しつつ、自身の持ち味を存分に発揮した、アトランタを代表する名プロダクション・チームらしい密度の濃い作品。この勢いで、フル・アルバムも出してほしいなあ。

Track List
1. Anybody out There feat. Joi & Scar
2. We the Ones feat. Big Boi, CeeLo Green, Sleepy Brown & Big Rube
3. Chemtrails feat. Jimmy Brown & Sleepy Brown
4. Why Can't We feat. Sleepy Brown
5. Kush feat. 2 Chainz & Joi
6. Awesome Lovin' feat. Sleepy Brown
7. The Art of Organized Noize




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