ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Az Yet – She’s Magic [2016 X-Ray]

96年に『Az Yet』でラフェイスからデビューした、フィラデルフィア発の5人組ヴォーカル・グループ、アズ・イエット。彼らにとって、実に20年ぶりとなるフル・アルバムが、ロス・アンジェルスのX-レイ・レコードから発表された。

正直に言うと、自分は彼らの1作目があまり好きではなかった。ボーイズIIメンのように華やかなコーラス・ワークで魅せるわけでもなければ、ジョデシィのように泥臭いヴォーカルを聴かせるわけでもない。ベイビーフェイスがプロデュースしたにも関わらず、メロディやバックトラックが地味な彼らの音楽は、上手だと思うが、退屈に感じられたのだ。

だが、20年ぶりにリリースされた彼らのアルバムを聴いて、その認識を改めさせられた。

マーク・ネルソンが中心になって、メンバー自らが手掛けた新曲は、そのほとんどがバラード。にもかかわらず、1曲1曲のメロディやトラックは個性が際立っている。ベイビーフェイスの作品を彷彿させる、コンピューターを使ったシンプルなビートと、ギターやシンセサイザーによるシックな伴奏をバックに、甘酸っぱいメロディを悠々と歌う”Love Her Mind”のほか、キーボードの伴奏をバックにしっとりと歌う“Young Girl”や、アッシャーの”Confessions”を思い起こさせる変則ビートの上で、流麗なメロディをじっくり聴かせる”Quality Time”など、前作に比べて格段にバラエティ豊かになった楽曲を、丁寧かつ表情豊かに歌い上げる姿が強く印象に残った。また、本作では、曲ごとに美しいファルセットを強調したり、豊かな中音域を響かせたりと、歌い方を使い分けているのも前作とは大きく異なる点だ。

だが、これらの曲以上に彼らの変化がはっきりと感じられたのは、2曲のアカペラ・カヴァーと、彼らの代表曲”Last Night”のリメイクだ。

シールの大ヒット曲”Kiss from a Rose”のカヴァーでは、力強いヴォーカルが光る壮大なバラードを、5人の声が複雑に絡み合って、クラシック音楽のように荘厳な雰囲気を醸し出すスロー・ナンバーに作り変え、ブライアン・マックナイトの“Last Night”は、原曲の爽やかなメロディを活かすため、肩の力を抜いた軽めのヴォーカルを、丁寧に折り重ねた軽妙だが重厚感のあるコーラスで聴かせるなど、曲調に応じて歌い方やアレンジに工夫を凝らしている。シカゴの”Hard to Say I'm Sorry”をカヴァーした前作と比べると、アレンジは複雑に、各人の表現の幅はより豊かになっている。

また、”Last Night”のリメイクでは、トラックやヴォーカルのアレンジは原曲をベースにしつつ、20年の時を経て磨き上げられた各人のグラマラスな歌声と、それを活かすダイナミックなアレンジで、ベイビーフェイスの作るロマンティックで感情表現が豊かなメロディを、きっちりと聴かせている。

流麗な歌声と緻密なコーラス・ワークに加えて、豊かな表現力を身に着けた5人の音楽は、シンプルだが地味でも退屈でもない。人間の声の奥深さと、コーラスの醍醐味を思う存分味わえる、隠れた傑作だと思う。

Track List
1. She's Magic
2. Love Her Mind
3. Young Girl
4. Real Man
5. Quality Time
6. Kiss from a Rose
7. Last Night
8. Better Than Sex
9. Feel Good Blues
10. Tell Her How I Feel
11. One Last Cry




She's Magic
Az Yet
X-Ray
2016-09-16


 

UNV II – Kings of The Quiet Storm [2016 Powwer Moves Records]

1993年にマドンナが経営するマーヴェリックから、レーベル初の男性ヴォーカル・グループとして、アルバム『Something's Goin' On』でデビュー。同作のタイトル曲をR&Bチャートの3位に送り込んだ、ミシガン州はランシング出身の4人組、ユニヴァーサル・ヌヴィアン・ヴォイス(以下UNV)。その中心人物で、近年はソロでも活躍しているジェイ・ポウが、新しい4人組ヴォーカル・グループUNV IIを結成。彼が関わった作品としては、2014年のゴスペル・アルバム『Savior Made』以来、カルテットでの作品としてはUNVの95年作『Universal Nubian Voices』以来となる新作を、自身のレーベル、パワー・ムーブス・レコードから発表した。

メンバーのうち、ジェイ・ポウを除く3人が新しいメンバーだが、均整の取れたハーモニーと滑らかな歌声はUNVと遜色ない。むしろ、円熟味を増したジェイ・ポウを中心に、地道に経験を積み上げた4人のダイナミックなコーラス・ワークは、UNV時代以上に豊かな表現を見せてくれる。

まず、このアルバムの特筆すべき点は、90年代の音楽シーンを盛り上げた、ヒップホップ・クラシックをサンプリングした楽曲の存在だ。キャンプ・ローの”Luchini AKA This Is It”を引用した”Sunshine”や、ファーサイドの同名曲のトラックを使った”Running”、クレイグ・マックの”Flava In Ya Ear”をサンプリングした”Grown Folks”など、UNVが活躍していた90年代中ごろに、ヒップホップやR&Bを聴いていた人なら、思わずニヤリとしてしまう大ネタ使いは本作の聴きどころの一つだ。

一方、それ以外のバラードやミディアム・ナンバーに目を向けると、90年代のジェラルド・レヴァートを彷彿させる洗練されたトラックと濃密なヴォーカルのコンビネーションが心地よい”Baby You Are”や、シルクやドゥー・ヒルを彷彿させる濃厚な歌声が折り重なったハーモニーが印象的な”Bad Case”など、90年代のR&Bのスタイルをベースに、ヴォーカルの技術を磨き上げた楽曲が光っている。

アルバム全体を通して、UNVが活躍した90年代のR&Bやヒップホップを意識したサウンドやメロディを、2016年に合わせてブラッシュ・アップすることで、往年の彼らを知るファンにアピールしたように感じられる。ジョデシィやアフター7など、90年代に活躍したグループが復活の狼煙を上げる中、その流れに乗りつつ、往年のサウンドを徹底的に突き詰めた、本格的な90年代リバイバルの一つといえるだろう。

Track List
1. Baby You Are
2. Sunshine
3. Bad Case
4. Take You Out Tonight
5. Wanna See You Dance
6. Running
7. Let You Go
8. Let Me Love You
9. Nobody
10. Grown Folks




Kings of the Quiet Storm
Powwer Moves Records LLC
2016-12-09


Maxwell ‎– blackSUMMERS'night [2016 Columbia]

1996年のデビュー作、『Maxwell's Urban Hang Suite』が、幅広い層から好評価を受けて以来、ディアンジェロやエリカ・バドゥとともに、ネオ・ソウルの旗手としてシーンをけん引しているブルックリン出身のシンガー・ソングライター、マックスウェルの実に7年ぶりとなるオリジナル・アルバム。

2009年に発表された通算4枚目のオリジナル・アルバム、『BLACKsummers'night』の続編に位置付けられている本作は、マイペースで完璧主義者な彼の個性が反映された、緻密なパフォーマンスと大胆な発想が光る好作品だ。

まず、本作のクレジットを見て驚くのは、ロバート・グラスパーがキーボードで参加していることだろう。もっとも、ジャンルこそ違えど、ドラムのマーク・コーレンバーグやベースのデリック・ホッジのような、両者の作品にかかわってきたミュージシャンが本作でも演奏しているので、ロバートが参加しているのは、彼らの口添えもあったのだろう。また、このアルバムでは、彼のクリエイターとしての側面は控えられ、いち演奏家として、様々な音楽の間を行き来するマックスウェルの想像力を、具体的な作品に落とし込むサポート役に専念している。

収録曲に目を向けると、アルバムに先駆けて発表された”Lake By the Ocean”は、2001年にリリースされた”Lifetime”を思い出す、ロマンティックなバラード。しかし、シンプルなバンド演奏が繊細なファルセットを引き立てた”Lifetime”に対し、こちらはサンプラーかドラム・マシンの演奏と勘違いしそうな、ドラムの乱れ打ちが飛び交うビートに、流れるようなキーボードが絡む伴奏と、しなやかなヴォーカルが絡む、ヒップホップ色の強い楽曲。バンドを使いながらヒップホップのビートを打ち鳴らす楽曲は珍しくないが、昔のソウル・ミュージックのように、過度に低音を強調せず、バランス良くまとめた点は面白い。

一方、もう一つのシングル曲、”199x”はきらきらとしたシンセサイザーの音色をアクセントに使ったバラード。こちらは一聴した瞬間にバンド演奏とわかるアレンジだが、まるで機械が鳴らしているかのような、均質で正確な伴奏を聴かせることで、フランク・オーシャンやウィークエンドのような、コンピューターを使いつつ、生演奏のように聴かせる若いミュージシャンと対極のアプローチから、斬新なサウンドを作りあげている。

この他にも、四つ打ちのビートと、シンセサイザーの流麗なリフがハウス・ミュージックっぽい演奏をバックに、ひたすらファルセットで歌い続けるアップ・ナンバー”All the Ways Love Can Feel”や、彼のデビュー作を思い起こさせるオーソドックスなアレンジのアップ・ナンバー”Fingers Crossed”など、これまでの路線を踏襲した、バンド演奏による繊細なタッチのソウル・ミュージックから、ヒップホップやハウスの要素を取り入れた音楽まで、バラエティ豊かな楽曲が収められている。

本作を聴いたとき、真っ先に思い浮かんだのは、”I Heard It Through The Grapevine”や”How Sweet It Is (To Be Loved By You)”を歌っていた60年代のマーヴィン・ゲイや、『Innervisions』や『Songs In The Key of Life』を発表していた70年代のスティーヴィー・ワンダーの存在だ。ソウル・ミュージックをベースに、ジャズやリズム&ブルースのエッセンスを加えて自分の音楽の糧にした彼らの姿と、色々な音楽を取り込んでバラエティ豊かな楽曲を生み出す彼の姿は、どこか相通じるものがあると思う。

自分の「歌」と「音色」を大切にしつつ、様々な音楽をどん欲に吸収して自分の糧にするスタイルは、ソウル・ミュージックの原点だと思う。7年間のブランクも納得してしまう会心の出来だ。

Producer
Hod David, Musze(Maxwell)

Track List
1. All the Ways Love Can Feel
2. The Fall
3. III
4. Lake By the Ocean
5. Fingers Crossed
6. Hostage
7. 1990x
8. Gods
9. Lost
10. Of All Kind
11. Listen Hear
12. Night





BLACKSUMMERS'NIGHT
MAXWELL
COLUM
2016-07-01

 
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