melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Mila J - Dopamine [2017 Silent Partner]

後にイマチュアを成功に導く、同郷の音楽プロデューサー、クリス・ストークスが率いるダンス・グループで音楽業界入りのチャンスを掴み、幼いころからプリンスの”Diamonds & Pearls”などのミュージック・ビデオに出演。その一方で、姉妹と結成した女性版イマチュアのガールズ・グループGyrl(ギャル)の一員としても活動してきた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身の日系アメリカ人のシンガー・ソングライター、ミラJことジャミーラ・アキコ・キロンボ。

ギャルの一員としては、イマチュアのツアーに帯同したほか、グループの名義でもシングル”Play Another Slow Jam”や”Get Your Groove On”などをヒットさせている。その後、彼女はデイム・フォーという別のグループに移籍。こちらでもシングル”How We Roll”などを残している。

そんな彼女は、2000年代初頭にソロへと転向。オマリオンなどの作品に客演しながら、マーカス・ヒューストンなどが参加した初のソロ作品『Split Personality』を制作するも、諸々の事情でお蔵入りとなる。しかし、2012年にジャパロニアの名義でミックス・テープを発表。その後、自身の名義でも作品を公開し70万ダウンロードを達成するヒット作となる。

その後、彼女はモータウンと契約、2014年にメジャー・レーベル作となるEP『M.I.L.A.』をリリースする。このアルバムは、DJマスタードやK.E.オン・ザ・トラックなどが制作を担当し、B.O.B.やタイ・ダラ・サインなどがゲストとして参加し、配信限定のデビュー作とは思えない豪華なもので、全米R&B/ヒップホップ・チャートの22位に入った。また、2016年には2作目のEP『213』を発表。クリス・ストークスやマーカス・ヒューストンとともに、彼女自身もプロデュースに携わり、R&Bが好きな人の間で高い評価を受けた。

このアルバムは、前作から約1年ぶりとなる、彼女にとって3枚目のEP。インディー・レーベルのサイレント・パートナーから発売された作品だが、収録曲のほぼすべてを、彼女の楽曲に携わってきたアイリッチことイマニュエル・ジョーダン・リッチがプロデュース。ソングライティングを彼女自らが手掛けた、アーティストとしてのミラJにスポットを当てたものになっている。

アルバムのオープニングを飾る”No Fux”はピアノの演奏をバックにしっとりと歌う姿が魅力的なスロー・ナンバー。低音を強調した艶めかしい歌声が、大人の色気を醸し出している。ピアノとヴォーカルを組み合わせた本格的なバラードを最初に持っていくスタイルは、バラードの表現力で名を上げたマーカス・ヒューストンを連想させる。

これに対し、”New Crib”はシンセサイザーを多用したヒップホップ寄りのトラックと、ゆったりとしたミラJのヴォーカルが心地よいミディアム・ナンバー。バラードにヒップホップの要素を取り入れたスタイルは、トレイ・ソングスやオマリオンの音楽によく似ている。大人の色気と表現力が発揮された佳作だ。

また、ヒップホップ色の強い作品としては”Move”が面白い。トラップやクランクを取り入れた高揚感のあるトラックに、ラガマフィンを取り入れた荒々しいヴォーカルが格好良いミディアム・ナンバーだ。地声を織り交ぜたワイルドな歌唱はリル・キムやフォクシー・ブラウン、ニッキー・ミナージュといった人気女性ラッパーの手法を踏襲したものだ。ハードなヒップホップとセクシーなR&Bを混ぜ合わせるスキルが光っている。

そして、本作の収録曲でも異彩を放っているのが”Fuckboy”だ。一度発表された曲をリミックスして再リリースした、彼女の思い入れの強さを感じさせる曲。90年代のヒップホップを連想させる。古いレコードからサンプリングしたような太く温かい音色を使ったビートをバックに、軽妙なヴォーカルを聴かせるミディアム・ナンバーだ。ヒップホップの要素を取り入れたミディアム・テンポのトラックと、グラマラスなヴォーカルの組み合わせはメアリーJ.ブライジの『My Life』の収録曲を思い起こさせる。

今回のアルバムは、モータウンを離れ、気心の知れたプロデューサーと二人三脚で制作した、彼女の個性が強く反映されたアルバムだ。しかし、その作風は流行の音を適度に取り入れつつ、歌とラップを上手に使い分けた、バランスの取れたものになっている。自らが制作の主導権を握り、持ち味を存分に発揮しつつも、流行の音をしっかりと取り入れて、リスナーの心を掴むスタイルは、若いころから流行のサウンドに触れてきた彼女の本領が発揮されたものといっても過言ではないだろう。

妹、ジェーン・アイコがガラントの作品に起用されるなど、注目を集める中、経験も実績も豊富な姉の存在感をアピールした面白いアルバムだと思う。本作をきっかけに彼女が再び注目を集め、表舞台に返り咲いてくれたらいいなと思わせる、高いクオリティの作品だ。

Producer
iRich

Track List
1. No Fux
2. La La Land
3. Transform U
4. I Do Love You feat. IRich
5. New Crib
6. Lit
7. Doomed
8. Longway
9. Move
10. Fuckboy
11. Drippin
12. Body
13. Bonfire





Dopamine
SILENT PARTNER ENTERTAINMENT/NOVEMBER REIGN
2017-04-07

Goapele - Dreamseeker EP [2017 Skyblaze, EMPIRE]

南アフリカでアパルト・ヘイトと戦っていた父と、イスラエルにルーツを持つユダヤ系の母を持つ、カリフォルニア州オークランド出身のシンガー・ソングライター、ゴアペレことゴアペレ・モーラバーン。

南アフリカからの亡命者が多い環境で育った彼女は、早くから音楽に強い興味を示し、様々な分野の芸術家と交友を重ねてきた。その一方で複雑な家庭環境で育ってきた彼女は、人種問題や性差別の問題にも早くから関心を持ち、学生時代には人権運動にもかかわっていた。そんな彼女は、ハイスクールを卒業するとアーティストを目指してバークリー音楽院に進学。ヴォーカルとソング・ライティングを専攻して、プロのシンガー・ソングライターへの道を歩み始める。

大学を卒業した彼女は、オークランドに戻り、自身にとって初の録音作品となるアルバム『Closer』を制作。自主制作の録音ながら、ジェフ・バクスターやソウライブといった、音楽通にはお馴染みのクリエイター達を集め、アレサ・フランクリンとプリンスの音楽を融合したような、前衛的でありながらヴォーカルを丁寧に聴かせたアルバムは、その独特の作風で、新しい音に敏感な人々の間で注目の的となった。

その後、彼女は自身のレーベル、スカイブレイズを設立。ソニーBMG(どちらもソニー系列)と配給契約を結んで4枚のアルバムを発表したほか、2003年にはMTVが企画した、HIV/AIDSの啓発キャンペーンにアヴリル・ラヴィーンやピンクなどと一緒に参加するなど、自身の個性を発揮しつつ、着実にファンを増やしていった。

この作品は、2014年の『Strong as Glass』以来、約3年ぶりの新作となる、彼女にとって6枚目のオリジナル・アルバム。10曲中4曲がインターリュードと、実質的な収録曲数は6曲だが、プロデューサーには、ベッドロックやマイク・タイガーのような、過去作にも携わっている面々に加え、リーラ・ジェイムスBJザ・シカゴ・キッドの作品で名を上げたコーネリオ・オースティンや、タイガの楽曲を手掛けたクラックウェブが参加した密度の濃い作品。本作で彼女は、時間をかけて築き上げた自身のイメージを大切にしつつ、新しいサウンドも積極的に取り入れた、独創的な音楽を聴かせている。

アルバムに先駆けて公開された”$ecret”は、クラックウェブのプロデュース作品。キラキラとした高音と、唸るような重低音が印象的なトラックは、電子楽器を多用し音数を絞ったトラップのスタイルを応用したものだ、抽象度の高いトラックに乗せて、シャーデー・アデューを彷彿させる神秘的な声を使い、じっくりとメロディを歌い上げるこの曲には、彼女の持ち味が凝縮されていると思う。

一方、本作の収録曲の中でもとりわけ異彩を放っているのは、コーネリオ・オースティンが制作に参加した”Power”だ。フェラ・クティの音楽を思い起こさせる華やかな打楽器の音色が乱れ飛ぶイントロから、ダイナミックなベース・ラインと変則ビートが格好良いヒップホップへと繋がっていくミディアム・ナンバー。アフリカ音楽のにぎやかなパーカッションとファンクの躍動感溢れる低音を組み合わせたアレンジに、アフリカ音楽の要素を取り入れたメロディを組み合わせるセンスの高さが光る曲だ。

また、これに続く”Take It Over”は気鋭の若手クリエイター、ネイト・ヘンドリックスがプロデュースを担当。レゲトンやダンス・ホール・レゲエを連想させる爽やかで軽妙なトラックをバックに、透き通った歌声を伸び伸びと響かせる姿が魅力のアップ・ナンバー。しなやかだが起承転結のはっきりしたメロディは、シャーデーにそっくりだが、シンセサイザーを駆使したトラックを取り入れることで、バンド・サウンドが中心のシャーデーと差別化を図っている。

そして、本作の目玉といっても過言ではないのが、2017年のグラミー賞にノミネートしたことも話題になった、BJザ・シカゴ・キッドをフィーチャーした”Stay”だ。重いビートとストリングスのように荘厳な伴奏が心地よいトラックの上で、大胆にメロディを崩して歌う二人の歌唱が光るスロー・ナンバー。実力を持った歌手から刺激を受けたかのように、メロディに解釈を加え合う二人の姿が心に残る作品。優れた才能を持つ二人が、互いの能力を引き出し合った名演だ。

3年ぶりの新作となる今回のアルバムは、EMPIREからのリリースということで、制作環境の変化が気になったが、大方の心配をよそに、これまでとは大きく変わらない、安定した音楽を聴かせている。初期の作品から、アフリカ音楽やジャズを取り入れてきた彼女らしく、トラップやアフロ・ミュージックも違和感なく乗りこなしている。こんな作品を生み出せるのは、音楽を体系的に学びつつ、幅広い交友関係を通して視野を広げてきた彼女の、高度な思考力と鋭い感性、それを具現化する技術によるところが大きいだろう。

色々な音楽を取り込み、編集し、自分の作品に落とし込む。単純だが難しいプロセスを丁寧に実行する能力がある彼女だからこそ生み出せる。緻密さと新鮮さを両立した作品。彼女の音楽は、往年のソウル・ミュージックを現代の音楽にアップデートするという、多くのミュージシャンが取り組み、苦戦してきた難題への一つの回答だと思う。

Producer
Mike Tiger, Crakwav, Cornelio Austin, Nate Hendrix, Bedrock

Track List
1. Dreamseeker Intro
2. $ecret
3. As Bright As The Sun (Interlude)
4. Power
5. Take It Over
6. Giving Me Life (Interlude)
7. Stay feat. BJ the Chicago Kid
8. Full Circle (Interlude)
9. Stand
10. Cool Breeze






Brian McKnight - Genesis [2017 SoNo Recording]

幼いころからゴスペル・クワイアなどで腕を磨き、92年に自らの名前を冠したアルバム『Brian McKnight』でレコード・デビュー。プラチナ・ディスクに認定される大ヒット作になると、その後も多くの作品をヒット・チャートに送り込み、さまざまな音楽賞にノミネートされてきた、ニューヨーク州バッファロー出身のシンガー・ソングライター、ブライアン・マックナイト。

また、自身の作品だけでなく、ボーイズIIメンやジャスティン・ティンバーレイクなど、多くの人気ミュージシャンに楽曲を提供、スロー・バラードからアップ・ナンバーまで、様々なタイプの楽曲を手掛ける名ソングライターとしても高い評価を受けてきた。

本作は、そんな彼にとって『Better』以来、約1年ぶりとなる通算15枚目のオリジナル・アルバム。今作でもこれまでの作品同様、収録曲の大半を彼自身が手掛けた、美しいメロディと丁寧な歌唱が思う存分堪能できる佳作になっている。

アルバムの実質的な1曲目である”I Want U”は、彼の十八番ともいえるスロー・バラード。しっとりとしたピアノの伴奏をバックに、艶やか声で丁寧に歌い上げた曲。流れるようなメロディと胸を締め付けるような甘く、切ないヴォーカルは彼の真骨頂。美しい歌声をじっくり堪能したい。

これに続く”10 Million Stars”はシンセサイザーを多用したスタイリッシュな伴奏をバックに、繊細な歌声をじっくりと聴かせるロマンティックなバラード。電子楽器の洗練された音色を使いつつ、シンプルなアレンジを取り入れることで、彼の滑らかでしなやかなヴォーカルの持ち味を引き立てている。彼の持ち味が遺憾なく発揮された良曲だ。

また、5曲目に入っている”Forever”は、本作の収録曲では比較的強い音圧のビートを使った躍動感溢れるミディアム・ナンバー。テンポを落とした四つ打ちのビートにハンドクラップを織り交ぜたトラックは、ミッドナイト・スターの”Curious”のミディアム・テンポ版といった趣だ。もっとも、メロディは”Curious”のように流麗なものではなく、リスナーに語り掛けるかのように淡々と言葉を繋いでいる点が大きく異なる。もっとも、胸を締め付けるような美しく、ロマンティックなメロディはこの曲でも健在なので、安心して楽しんで欲しい。

そして、本作に先駆けて公開された”Everything”は、”I Want U”と同じ路線のスロー・バラード。ピアノの伴奏に乗せて美しいテナー・ヴォイスを披露、流れるようなメロディを丁寧に歌い上げている。起承転結がハッキリとした展開や、ヒップホップの要素が少ない、しなやかで緻密なメロディは最近少なくなったが、古臭さを感じさせない点も面白い。

彼の面白いところは、20年以上のキャリアを誇りながら、その音楽性を大きく変えることなく、常に一線で活躍しているところだろう。流行のサウンドや新しいスタイルを積極に取り入れてきたR.ケリーやファレル・ウィリアムスとは対極の、ジョーキース・スウェットのように一つのスタイルを貫きながら、昔からのリスナーを飽きさせず、新しいリスナーに新鮮さを感じさせる姿は、もはや「ブライアン・マックナイト」という、一つのジャンルになっているといっても過言ではない。

ワインが時間をかけて熟成されるように、自身の音楽にじっくりと向き合い、磨き上げた彼だからこそ生み出せる、シンプルだが唯一無二の個性を持った味わい深いR&Bアルバム。声などの身体的要素や表現などの技術を磨き上げることで、ヴォーカル作品の可能性はどこまでも広がることを再認識させる好事例だと思う。

Track List
1. Genesis (Prelude)
2. I Want U
3. 10 Million Stars
4. Hungry 4 U
5. Forever
6. Don't Leave
7. So Damn Real
8. UDONTHAV2BLONELYNOMO
9. Everything
10. Die For Your Love
11. Blow Your Mind
12. Genesis





Genesis
Brian Mcknight
Independent Label Se
2017-08-25

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