ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Hi-Five – Legacy [2017 Bronx Most Wanted]

50年代に活躍したフランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズにはじまり、70年代のジャクソン・ファイブやファイブ・ステアステップス、80年代のニュー・エディションや90年代のイマチュア、2000年以降ではB2Kやプリティ・リッキーなど、それぞれの時代でR&Bシーンを盛り上げてきた、変声期前の少年によるキッズ・グループ。そんなグループの中でも、特に大きな成功を収めたグループの一つが、テキサス州はワコ出身の5人組、ハイ・ファイブだ。

90年にジャイブ・レコードからデビューした彼らは、”I Like the Way (The Kissing Game)”や”I Can't Wait Another Minute”などのヒット曲を残しながら、4年間で3枚のアルバムと9枚のシングルという、驚異的なペースで作品をリリースしていった。

その後は、リード・シンガーのトニー・トンプソンのソロ・デビューやメンバーの入れ替わりなどを経て、2005年には4枚目のアルバム『Return』で表舞台に復帰。大人のヴォーカル・グループとして再始動を図ったが、2007年にトニー・トンプソンが事故死。事実上の解散に追い込まれてしまった。

一方、2作目から参加している、ニューヨーク出身のトレストン・アービーは自身のレーベル、ブロンクス・モスト・ウォンテッドを設立して、2011年にソロ・デビュー。その後、ジャイブから発売したグループ名義の作品も扱うようになり、最終的には新旧のメンバーによる新生ハイ・ファイブの録音も行うようになった。

このアルバムは、2012年以降にグループ名義でリリースした、1枚のEPと5枚のシングル(うち1曲はEPからのシングル・カット)と、トレストン名義のソロ・シングル”Everything”の再録を一つにまとめた編集盤。もっとも、これらの作品は配信限定のものだったので、ほとんどの曲は今回が初CD化ということになる。

収録曲を発表された順に並べると、最も古いのは2012年にリリースされた”Favorite Girl”。メアリー・J.ブライジの”Real Love”を彷彿させる、90年代風の軽快なヒップホップのビートの上で、哀愁を帯びた声を響かせる、切ない雰囲気のアップ・ナンバー。この次に発表されたのは、2012年12月に起きた「サンディフック小学校銃乱射事件」の関係者に捧げたバラード、”You Never Know (Sandy Hook Tribute)”。ケイシー&ジョジョの”Crazy”を思い起こさせる壮大なスケールと、R.ケリーの”I Believe I Can Fly”の荘厳な空気が同居した、ダイナミックな楽曲だ。最後に響く子供の声がなんとも切ない。

その後、5人は2014年に『The EP』をリリース。同作には、後にシングル・カットされた”Kit Kat”のほか、”This Love”(EPでは”This Luv”表記)、”It’s Nothing”、”Different Kiss”、”Drop”を収録している。この中で、特に魅力的なのは、本作のオープニングを飾る”This Love”とシングル化された”Kit Kat”の2曲。前者は、2015年のジョデシィの復活を予見したような、シンセサイザーを多用した粘り強いビートに、5人の熱いパフォーマンスが乗った、彼らの曲の中では比較的泥臭いミディアム・ナンバー。爽やかなヴォーカルで名を残した彼らが、対極の路線を披露する姿に、20年という長い時間をかけて磨き上げた技術の重みを感じさせる。一方、”Kit Kat”は、アコースティック・ギターの柔らかい音色で、5人の甘い歌声を引き立てたロマンティックなバラード。爽やかで甘酸っぱいヴォーカルを活かした、シンプルなメロディが聴きどころだ。

そして、クリスマス・ソングの”Christmas”を除くと、最も新しい”Sunshine”は、デビュー当時の彼らを思い起こさせる軽妙なビートと、爽やかなメロディが気持ちいいアップ・ナンバー。使っている楽器が新しい点を除けば、最も彼らのイメージに忠実な楽曲だと思う。

彼らのようなキッズ・グループの大変なところは、変声期を乗り越えなければならないことだ、ジャクソン・ファイブはマイケルの甘い歌声を活かしたポップな楽曲に手を伸ばし、ニュー・エディションはボビー・ブラウンのワイルドなキャラクターを活かした不良路線に舵を切ることで、成人後も活動することができた。しかし、すべてのグループが路線変更に成功したわけではなく、解散してしまったグループも少なくない。

そんな中で、メイン・ヴォーカルを失いながらも、彼らが復活できたのは、爽やかで甘酸っぱい歌声という、彼らの一番の魅力を奇跡的に維持できたことだと思う。オーティス・レディングやテンプテーションズのような、野性的で荒々しいソウル・ミュージックが好きな人には不評なスタイルだが、少なくとも、「親しみやすさ」という意味では、決して軽視できないものだと思う。

ドレイクに代表されるラップ寄りのしなやかなシンガーと、チタリン・サーキットのシンガーに代表される重く、泥臭い歌唱のシンガーに二極化しつつある10年代。彼らの音楽はその間を埋めてくれる貴重な存在だと思う。R&Bはもっとシンプルで、もっと奥深い。彼らの音楽はそのことを僕らに再認識させてくれる。

Track List
1. This Love
2. It’s Nothing
3. Sunshine
4. Favorite Girl
5. Different Kiss
6. Drop
7. Kit Kat
8. Everything
9. You Never Know (Sandy Hook Tribute)
10. Christmas





レガシー
ハイ・ファイヴ
Pヴァイン・レコード
2017-01-06


Dino Conner – You’re My Morning Star EP [2016 MIND TAKER ENTERTAINMENT]

92年代に2ライヴ・クルーのルーク率いる、ルーク・レコードからデビュー。2003年までの11年間に3枚のアルバムと、”Knockin’ Da Boots”や”A Thin Line Between Love & Hate”(パースエイダーズの同名曲のカヴァー)などのヒット曲を残してきた、ヒューストン出身の3人組ヴォーカル・グループ、H-タウン。2003年にリード・ヴォーカルのケヴィン”ディノ”コナーが交通事故で亡くなったあと、活動が停滞していたが、彼の双子の兄弟で、メンバーの一人でもあるソロモン”シャザム”コナーが自身のレーベルを設立して、そこからデュオとして復活。2015年には10年ぶりにアルバムを発表した。

このEPは、シャザムのレーベルからリリースされた、ディノの未発表曲集。クレジットがないので詳細は不明だが、音を聴く限り98年から2003年の間に録音されたもののようだ。

アルバムのタイトルトラックでもある”You’re My Morning Star”は、テヴィン・キャンベルの”Can We Talk”を連想させる、流れるようなキーボードの伴奏を使った爽やかなトラックの上で、R.ケリーっぽい艶めかしい歌声を響かせるミディアム・バラード。H-タウンの楽曲でも、セクシーなヴォーカルを披露していたディノだが、この曲では、あえて色っぽい歌声を強調せず、あっさりと歌い切ったところが面白い。

続く”Hot Jeans”は、ジャギド・エッジ(というよりは、彼らのプロデューサーのジャーメイン・デュプリ)の楽曲を思い起こさせる、荒々しいシンセサイザーのリフと変則ビートが印象に残るミディアム・ダンサー。録音された時代ならともかく、現代の人間から見ると強引に映るメロディや曲の展開は、好き嫌いが分かれそうだが、アッシャーの”You Make Me Wanna”などが好きな人なら楽しめると思う。

一方、ディノの熱い歌唱が堪能できる”Pure Juice”は収録曲の中では一番、H-タウンの作風に近いスロー・バラード。これでもかというくらいテンポを落とし、スピーカーから汗や唾が飛んできそうな勢いで歌い込む姿は、経験を積んで成熟したヴォーカルを聴かせてくれた『Beggin' After Dark』や『Ladies Edition』の路線をさらに深化させたもの。ジョデシィやドゥー・ヒルの泥臭いバラードが好きだった人にはぜひ聞いてほしい1曲だ。

そして、アルバムのトリを飾る”Love Hurts Bad”は、90年代にジャーメイン・デュプリやティンバランドが作っていそうな変則ビートのアップ・ナンバー。こちらは”Hot Jeans”以上に癖のあるビートだが、ミッシー・エリオットの”She's a Bitch”みたいな、ダンス・ポップ寄りのR&Bやヒップホップが好きならぜひ聞いてほしい。

今回、お披露目された4曲を聴いて強く印象に残ったのは、ディノの類稀な歌声と表現力。特に、”You’re My Morning Star”で見せる爽やかで色っぽいヴォーカルと、”Pure Juice”で聴かせる熱く、泥臭いパフォーマンスを両立する、高度な身体能力と声を巧みにコントロールする技術は、インターネット経由で世界中の音楽が楽しめる21世紀になっても、決して色褪せないものだ。しかし、未発表曲の宿命だが、メロディやトラックには多少、古臭さを感じてしまったのも事実だ。

だが、楽曲の古臭さを織り込んでも、素の歌声で様々な楽曲の個性を引き出す姿は、決して見逃すことができない。表現力豊かな声で、熱いヴォーカルを聴かせる歌手が、何人もヒットチャートの上位に食い込んでいた90年代。jこのアルバムは、そんな時代の音楽の魅力を思い出させてくれる貴重な音源だ。当時の音楽が好きだった人なら、一聴の価値があると思う。

Track List
1. You’re My Morning Star
2. Hot Jeans
3. Pure Juice
4. Love Hurts Bad






You're My Morning Star
MIND TAKER ENTERTAINMENT
2016-12-01


Roy Woods – Nocturnal [2016 OVO Sound,Warner]

ドレイクやウィークエンドのブレイクもあり、近年、アメリカの音楽シーンで存在感を増しているカナダ出身のアーティスト。その中でも、特に活躍著しいのがトロント出身のシンガー・ソングライター、ドレイクと彼が率いるレーベル、OVOサウンドの面々だ。

彼のほかにも、パーティーネクストドアやマジッド・ジョーダンなどの売れっ子シンガーを輩出し、40やT-マイナスといった、アメリカの有名ミュージシャンを相手に仕事をしているプロデューサーを抱える同レーベル。その影響力は、今や北米地域に留まらず、全世界に及んでいる。

そんなOVOで現在、最も精力的に活躍しているアーティストの一人が、オンタリオ州の40万人都市、ブランプトン出身のロイ・ウッズことデンゼル・スペンサーだ。彼は2014年に若干19歳でレーベルと契約したあと、僅か2年の間に、本作を含め2枚のEPと1枚のLPをリリースしている、気鋭のシンガー・ソングライター。2015年にはドレイクをフィーチャーした”Drama”を含むEP『Exis』を、2016年7月にはカナダ出身のプロデューサーが数多く参加した初のフル・アルバム『Waking At Dawn』を、配信限定の作品にも関わらず、ビルボードのR&Bチャートの上位に送り込むなど、破竹の勢いでヒット作を生み出してきた。

その前作から5か月という短い間隔で発表された、彼にとって2枚目のEP『Nocturnal』は、これまでの作品同様、カナダ出身のミュージシャンと録音した作品。本作では、過去の2作にも参加しているトロント出身のプロデューサー、サニー・ダイアモンズやフランシス・ゴット・ヒートなどが集結。ポスト・ドレイクと言っても過言ではない、デジタル楽器を駆使した近未来的で洗練されたR&Bを聴かせてくれる。

彼の音楽の特徴は、コンピューターを駆使した洗練されたトラックと、ラップのように多くの言葉を詰め込んだメロディ。レーベルのボス、ドレイクとよく似たスタイルだが、ドレイクに比べて10歳近く若いロイは、デビュー当初のアッシャーやテヴィン・キャンベルを彷彿させる甘酸っぱい声で、爽やかに歌い上げているのが大きな違いだ。

アルバムのオープニングを飾る”Magic”は、ふわふわとしたシンセサイザーのリフとゴム毬のように跳ねるビートが特徴的なスロー・ナンバー。ネリーやT-ペインを彷彿させる、メロディがついたラップのような歌唱が印象的な切ない雰囲気の楽曲だ。続く”Four Seasons”は、ギターとハンド・クラップを軸にした隙間の多いバウンズ・ビートに乗せて、若々しい声で言葉を畳み掛ける哀愁たっぷりのメロウなヒップホップ。艶のある歌声が、高速ラップにメロディを感じさせてくれる。

だが、本作のハイライトはその後の3曲だ。まず、レーベル・メイトのマジッド・ジョーダンが参加した”Chilli Peppers”は、シンセサイザーを使った幻想的な伴奏と、ジニュワインのバラードを思い起こさせる歯切れのよいビートとメロディのコンビネーションが印象的なスロー・バラードだ。泥臭い歌声のマジッドと、ロイの可愛らしい歌声の対比も面白い。続く”Involved”は、Akonの”I Wanna Love You”を暗くしたような、ドラムとシンセサイザーが中心のシンプルなトラックの上にキャッチーなメロディを乗せたミディアム・ナンバー。彼の曲では珍しく、熱く猛々しいヴォーカルを聴かせている。

そして、アトランタ出身のラッパー、メイドインTYOが参加した”Instinct”は、シンセサイザーをパーカッションの代わりに使ったモダンなビートの上で、訥々と言葉を紡ぎ出すメイドインTYOと、言葉の数を絞って、歌っぽく聴かせたロイの対比が光るミディアム・バラード。彼が影響を受けた、ネリーの作品のように、言葉の量を増やしたラップっぽいメロディのヴォーカルと、歌のようにメロディがついたラップを組み合わせた、シックだがキャッチーな楽曲だ。

シンセサイザーを駆使した、シンプルで飾らないトラックと、流麗なメロディに乗せてラップのように多くの言葉を詰め込むヴォーカルは、ドレイクの登場以降、R&Bの主流になった手法だ。だが、そこに若々しく、艶のある声を乗せたスタイルとなると、彼だけの個性といってもいいと思う。「ドレイク以降」のR&Bとして、見逃すことができない佳作。次の作品こそ、フィジカル・リリースをしてほしいな。

Producer
Sunny Diamonds, Francis Got Heat

Track List
1. Magic
2. Four Seasons
3. Chilli Peppers feat. Majid Jordan
4. Involved
5. Instinct feat. MadeinTYO
6. Love You
7. Dangerous





Nocturnal [Explicit]
OVO Sound/Warner Bros.
2016-12-24


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