ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

DJ Khaled – Shining feat. Beyonce & Jay Z [2017 Epic]

プロデューサーとしてファビュラスの”Gangsta”やファット・ジョーの”Get It for Life”、リック・ロス”I'm A G”などを手掛け、2006年以降は自身名義のアルバムを年に1枚のペースでリリースしている、フロリダ州マイアミ出身のDJでプロデューサーのDJキャレドことカリッド・カリッド。彼にとって通算10枚目となるスタジオ・アルバム『Grateful』からのリード・シングルが、この『Shining』だ。

グラミー賞の授賞式直前、2月12日にリリースされたこの曲は、ニッキー・ミナージュやクリス・ブラウンをフィーチャーした1つ前のシングル『Do You Mind』に引き続き、ヴォーカルが主役のR&Bナンバー。ゲスト・ヴォーカルにビヨンセとジェイZを起用し、ソングライターとしてアルバム『PARTYNEXTDOOR 3』やドレイクの”Come and See Me”がヒットした、カナダ出身のシンガー・ソングライター、パーティネクストドアが参加するなど、2016年のR&B,ヒップホップ・シーンを代表する豪華な面々が終結したパーティー・チューンになっている。

ビヨンセとジェイZが一緒に新曲を録音するのは、2013年の”Part II(On The Run)”(ジェイZのアルバム『Magna Carta... Holy Grail』に収録)と”Drunk In Love”(ビヨンセのアルバム『Beyonce』に収録)以来4年ぶり。ジェイZがキャレドの作品に参加するのは2016年の”I Got The Keys”以来だが、ビヨンセとパーティネクストドアにとっては、初のコラボーレーションとなる。

今回のシングルは、ディオンヌ・ワーウィックが70年に発表した”Walk The Way You Talk”をサンプリングしたソウルフルな楽曲。ヴォーカルやストリングスの繊細なタッチが魅力の原曲を、ファットなベース・ラインや思わず踊りだしたくなる高揚感たっぷりのビートで、現代的なR&Bに組み替えた、キャッチーでスタイリッシュな曲になっている。

歌とラップの比率は大体7:3程度で、ビヨンセの”Crazy In Love”に近い構成。だが、彼女が歌うのは、マーク・ロンソンがネイト・ドッグを起用した”Ooh Wee”、ファンクマスター・フレックスがフェイス・エヴァンスをフィーチャーした”Good Life”のような、流れるような洗練されたメロディで、どちらかといえば奇抜な楽曲が多かった彼女の近作をイメージしている人には、拍子抜けする内容かもしれない。また、電子楽器を多用することの多いキャレドの作品では珍しい、有名名曲を原曲がわかる形でサンプリングしたトラックも、過去の作品のような新曲を期待する人には、ちょっと違和感があるかもしれない。

だが、余計な情報を遮断してこの曲と向き合うと、その完成度に驚かされるのも事実だ。一つ一つの音が繊細なディオンヌ・ワーウィックの楽曲を、原曲の魅力を損ねることなく、しなやかなメロディとダンサブルなビートのR&Bナンバーに取り込む技術は恐るべきものだし、豊かな声量と表現力を兼ね備えたビヨンセの持ち味を生かしつつ、流麗なメロディを歌わせる作曲技術も極めて高いものだ。そして、終盤に絶妙なタイミングで入り込み、リスナーを盛り上げつつ、楽曲のアクセントとしても機能しているジェイZのラップも非常に刺激的だ。過去のシングル曲を考えると、この曲がアルバム全体の方向性を指し示しているとは考えにくいが、この曲に関わった面々が、今まで見せてこなかった隠れた魅力を引き出していると思う。

ファンクマスター・フレックスやDJケイスレイのような、コーディネーターとしての才能が魅力のキャリドの持ち味が発揮された面白い楽曲。ファンクマスター・フレックスの”Good Life”やケイスレイの”Not Your Average Joe”、トニー・タッチの”I Wonder Why(He’s The Greatest DJ)”に比類する、DJ発のR&Bクラシックになりそうだ。

Producer
Dj Khaled, Danja


PARTYNEXTDOOR - PARTYNEXTDOOR 3 [2016 OVO Sound, Warner]

2010年にドレイクがアルバム『Thank Me Later』でブレイクして以降、アメリカのヒップホップ、R&Bシーンで存在感を増し続けているカナダ出身のミュージシャン達。そのムーブメントを牽引する、ドレイクとノア・シャビブ率いるOVOサウンドの一員で、彼に次ぐ成功を期待されているのが、オンタリオ州ミシサガ出身のシンガーソングライター、パーティネクストドアことジャーロン・アンソニー・ブラスウェイトだ。

ジャマイカ系の母とトリニダード系の父の間に生まれた彼は、10代のころからシンセサイザーを使ってヒップホップやR&Bを作っていたらしい。その後、本名で発表した曲が音楽情報サイトで高い評価を受けた彼は、友人達と自身のウェブサイトを作成。同サイトで発表したミックス・テープが注目を集め、ワーナーと契約、OVOへの加入と至った。

OVOに加入した彼は、2013年にEP『PARTYNEXTDOOR』を、2014年にフル・アルバム『PartyNextDoor Two』を発表。この2作品では、ドゥー・ヒルの”Share My World”をサンプリングした”SLS”やリル・ジョン&イースト・サイド・ボーイズの”Who U Wit?”を引用した”Welcome to the Party”を収録するなど、ヒップホップのミックス・テープやダンスホール・レゲエを連想させる、既存のヒット曲から巧みに引用、アレンジしたフレーズを盛り込んだ、熱心な音楽ファンなら思わずニヤリとしてしまいそうな楽しい曲を聴かせてくれた。

前作から2年ぶりの新作となる、今回のアルバムでも、彼の音楽性に大きな変化はなく、色々な音楽のエッセンスを取り込みつつ、それに手を加え、自分の音楽として再編集した、新鮮だけど耳馴染みの良い音楽を聴かせている。

前作でも見せてくれた、巧みなサンプリング技術は、アルバムのオープニングを飾る”High Hopes”で既に発揮されている。スウェーデンの電子音楽家、ヴァルグの”Skaeliptom”を使ったこの曲は、陰鬱で繊細な電子音楽の特徴をうまく取り込んだ、音と音の隙間を活かしたダークなトラックが格好良い。その上に乗っかる、ドレイクのようなラップっぽい荒々しいヴォーカルが、突然ブラックストリートの”No Diggity”のフレーズを歌い出す演出も面白い。93年生まれの彼が96年のヒット曲を使って新しい音楽を作る姿に、時間の流れを感じずにはいられない。

それ以外にも、過去のヒット曲を引用した楽曲は複数収められており、T.O.K.が2001年に発表した”Eagles Cry”のトラックを再利用したレゲエ・ナンバー”Only U”や、アメリカのシンガー・ソングライター、デヴァンドラ・バンハートが2013年に公開した”Daniel”を使ったフォークソング風の楽曲”Joy”、ウェイルが2015年にリリースしたアルバム『The Album About Nothing』の収録曲”The Need to Know”のビートを、フィーチャーされたSZAのヴォーカルごと引用した”Nobody”など、色々なジャンルの新旧の名曲を使ったトラックが登場している。

だが、彼の一番の魅力は、多彩なトラックにキャッチーなメロディを乗せるソングライティングとヴォーカルの技術だろう。ドレイクをフィーチャー”Come and See Me”では、彼の作品を彷彿させるコンピュータを使ったチキチキと鳴るビートの上で、胸がキュンと締め付けられるような切ない歌を聴かせてくれるスロー・ナンバー。ラップっぽい歌唱のジャーロンと、メロディのついたドレイクのラップが、楽曲から重苦しい雰囲気を取り払い、切ない印象だけを残している。

また、本作からシングル・カットされた”Nobody”でも、トラックこそウェイルの曲を下敷きにしているが、そこから独特のメロディを紡ぎ出し、ドレイクとは異なるアプローチで、ヒップホップにもR&Bにも分類できない、彼独自の音楽を生み出している。

彼の音楽は、シンセサイザーを多用したシンプルなトラックや、ラップにも歌にも聴こえる明確なメロディを持ちながら音節数が異常に多いヴォーカルなど、ドレイクの影響を伺わせる要素が多いのは事実だと思う。だが、レゲエ作品やミックス・テープ文化からの影響を感じさせる、既存の曲からビートやメロディを引用して、自分の音楽に組み込むセンスや、ヴォーカルの表現の幅など、ドレイクにはない持ち味も数多く見受けられる。

本作には粗削りな部分もあるが、彼はまだ23歳。このアルバムが発表された後、リアーナの『Anti』やアッシャーの『Hard II Love』に起用されるなど、ポップ・スターの作品で着々と実績を積み上げながら、彼自身の音楽にも磨きをかけている。彼自身の将来性も含め、R&Bの今後を左右しそうな、とても面白い作品だ。

Producer
PARTYNEXTDOOR, Sevn Thomas, L8 Show etc

Track List
1. High Hopes
2. Don't Run
3. Nobody
4. Not Nice
5. Only U
6. Don't Know How
7. Problems & Selfless
8. Temptations
9. Spiteful
10. Joy
11. You've Been Missed
12. Transparency
13. Brown Skin
14. 1942
15. Come and See Me feat. Drake
16. Nothing Easy to Please





Partynextdoor 3
Partynextdoor
Warner Bros / Wea
2016-10-07

Rihanna – Anti [2016 Roc Nation]

2005年にデフ・ジャムから『Music of the Sun』でデビュー。同作に収められた”Pon de Replay”が大ヒットしたことでトップ・スターの仲間入りを果たした、バルバドス出身のシンガー・ソングライター、リアーナことロビン・リアーナ・フェティ。その後も、2015年までに7枚のオリジナル・アルバムと、ジェイZをフィーチャーした”Umbrella”やクリス・ブラウンが制作に参加した”Disturbia”、カルヴィン・ハリスを起用した”We Found Love”などのヒット曲を残し続け、ビヨンセと並ぶ2000年以降のR&Bシーンを代表する女性シンガーに上り詰めた。そんな彼女にとって、2012年の『Unapologetic』以来、約3年ぶり通算8枚目となるフル・アルバムがこの『Anti』だ。

祖国バルバドスの音楽とアメリカのR&Bを融合した”Pon de Replay”でブレイクした当初は、若者向けのダンス・ナンバーを歌うポップスターのように見られていたが、”Umbrella”をはじめとする重厚なミディアムやスロー・ナンバーをヒットさせたあとは、本格的な歌唱力を備えたディーヴァとして保守的なソウル・ファンからも一定の評価を得られるようになった。

本作は、ジェイZが率いるロック・ネイションに移籍後第一作目となるフル・アルバム。といっても、デビュー前の彼女をデフ・ジャムに紹介するなど、以前から縁の深い二人だけあって、作風に大きな変化はない。

アルバムの1曲目、セントルイス出身のシンガー、SZAをフィーチャーした”Consideration”は、ケンドリック・ラマーの作品でもペンを執ったタイラン・ドナルドソン作のスロー・ナンバー。ゆったりとしたビートの上で、貫禄のある歌声を響かせるリアーナと、ちょっと癖のあるSZAのヴォーカルが絡み合う不思議な曲だ。電子楽器を使っているのに、エリカ・バドゥの楽曲かと錯覚するくらい、大きく揺らぐリズムが面白い。

一方、ビヨンセやアリシア・キーズの作品も手掛けているジェフ・バスカーがプロデュースした”Kiss It Better”は、力強いビートと派手なギター演奏を盛り込んだロック風のバラード。毛色は多少違うが、同年にリリースされたアデルの”Hello”にも通じるところがある、流行り廃りのない安定したメロディと壮大なスケールのアレンジが気になる楽曲だ。

これに対し、R&Bのトレンドの最先端を走ったのはドレイクが参加した”Work”だ。ドレイクの作品を数多く手掛けているプロデューサー、ノア・シャビブが手掛けるこの曲は、デビュー当時の彼女の音楽を思い起こさせる、西インド諸島のリズムとメロディを取り入れたダンスナンバー。ドレイクの音楽が好きな人にはお馴染みの、透き通った音色のシンセサイザーを使ったトラックが、陽気なメロディに切ない雰囲気を盛り込んでいる。アレクサンダー・オニールの85年のヒット曲”If You Were Here Tonight”や、パーティネクストドアのコーラスといった小ネタを盛り込むセンスも見逃せない。

これ以外にも、グッチ・メインなどを手掛けているDJマスタードがプロデュースした、重苦しいトラックとラップ風歌唱が印象的な”Needed Me”や、オーストラリアのポップ・シンガー、ケヴィン・パーカーが手掛ける、強烈な音響効果が生み出す、シャーデーを彷彿させる幻想的なパフォーマンスが斬新な”Same Ol’ Mistakes”。エミネムの”Stan”にサンプリングされたことでも有名な、ダイドの”Thank You”を大幅に改変した、陰鬱な雰囲気のミディアム・ナンバー”Never Ending”といった、新旧の流行を取り入れつつ、それを再解釈した、懐かしさと新鮮さが入り混じった曲が並んでいる。

本作でも、彼女の音楽のクオリティは高いレベルで安定している。だが、それ以上に印象的なのは、彼女同様、2000年以降のR&B業界を代表する女性シンガーの一人で、ジェイZとも縁の深い、ビヨンセの2016年作『Lemonade』との対比だと思う。ジェイムス・ブレイクやケンドリック・ラマーといった気鋭のクリエイターを起用し、積極的に新しいトレンドを生み出そうとするビヨンセに対し、ドレイクやティンバランドといった、既に多くのヒット作を残しているアーティストを招いて、流行のサウンドに新しい解釈を加えた楽曲を生み出すリアーナという対照的な手法は、好き嫌いは抜きにして大変興味深い。

服飾の世界には、斬新なデザインで積極的に新しいトレンドを生み出すモード系のデザイナーと、過去のデザインを踏襲しつつ、時代の空気を捉えてそれをアップデートするクラシック系のデザイナーがいる。R&Bシンガーに置き換えれば、ビヨンセは前者で、リアーナは後者のタイプなのだと思う。直近の流行を踏まえた上で、そのちょっと先の流行を意識した彼女の音楽は、若者向けの人気シンガーらしい新鮮さと、年を重ねた人々でも安心して楽しめる安定感を両立した、幅広い層にウケるものだと思う。

Producer
Robyn Rihanna Fenty, Kuk Harrell etc

Track List
1. Consideration feat. SZA
2. James Joint
3. Kiss It Better
4. Work feat. Drake
5. Desperado
6. Woo
7. Needed Me
8. Yeah I Said It
9. Same Ol’ Mistakes
10. Never Ending
11. Love On The Brain
12. Higher
13. Close To You
14. Goodnight Gotham
15. Pose
16. Sex With Me





Anti (Deluxe, Explicit)
Rihanna
ユニバーサルミュージック合同会社
2016-02-05

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