ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Me'Shell NdegéOcello - Ventriloquism [2018 Naive]

1993年にマーヴェリックから初のスタジオ・アルバム『Plantation Lullabies』を発表、エリカ・バドゥやディアンジェロに先駆けて、ヒップホップとソウル・ミュージックを融合した独創的な音楽を披露し、世間の度肝を抜いた、ミシェル・ンデゲオチェロこと、ミシェル・リン・ジョンソン。

軍隊に務める父親が駐留していたドイツのベルリンで生まれ、ワシントンD.C.で育った彼女は、音楽学校を卒業後、地元のゴー・ゴー・バンドなどに在籍。92年にマドンナが設立したマーヴェリックと契約すると、得意のジャズ・ベースとヒップホップやソウル・ミュージックの要素を盛り込んだ音楽性で、直ぐに頭角を現す。

その後は、初のナンバー・ワン・ヒットとなるビル・ウィザーズのカヴァー”Who Is He (And What Is He to You)?”などをリリースする一方で、マドンナやチャカ・カーンといった大物ミュージシャンの作品にも参加。同業者から高い評価を受けるミュージシャンとして、知られる存在になった。

本作は、2014年の『Comet, Come To Me』以来、約4年ぶりとなる通算12枚目のスタジオ・アルバム。2011年の『Weather』以降、彼女の作品を配給しているフランスのインディペンデント・レーベル、ナイーヴからのリリースで、収録曲は彼女が慣れ親しんできた80年代から90年代のR&Bのカヴァー。本作の売り上げはアメリカ自由人権協会に寄付されることがアナウンスされるなど、これまでの作品とは一味違う、強いメッセージ性を持ったアルバムになっている。

本作の収録曲で、真っ先に目を引いたのは、プリンスが86年に発表したアルバム『Parade』に収められている”Sometimes It Snows In April”のカヴァー。奇抜なファッションと先鋭的なサウンドが魅力のプリンスの作品では珍しい、ギターを使った弾き語りの楽曲を、彼女はバンドをバックに歌っている。鋭く繊細なハイ・テナーを、シンプルなギターの演奏で引き立てたプリンス版に対し、ミシェル版では、バンド編成によるどっしりとした伴奏と、派手ではないが強烈な存在感のあるアルト・ヴォイスで淡々歌い上げている。

また、本作で取り上げた曲の中では最も新しい”Waterfalls”は、TLCが95年にリリースしたポップス史に残る大ヒット作『Crazy Sexy Cool』からのシングル曲。オーガナイズド・ノイズがプロデュースした、泥臭いヒップホップのビートと、「夢の滝を追いかけないで、近くにあるものを大切にして」というガールズ・グループっぽくないメッセージを含む歌詞で、ポップスの歴史にその名を刻んだ大ヒット曲を、ギターとドラムを軸にしたシンプルなバンドと一緒にカヴァーしている。武骨なメロディと強いメッセージ性が魅力の作品だからか、バンドをバックに歌うアレンジがよく似合っている。ギターを強調した演奏や、強烈なメッセージを含む歌詞は、ボブ・ディランのような往年のフォーク・シンガーにも通じるものがある。

それ以外の曲では、ニュー・エディションのラルフ・トレスヴァントが90年に発表した”Sensitivity”の大胆なアレンジに驚かされる。ニュー・ジャック・スウィングを取り入れたポップなトラックと、甘酸っぱい歌声を活かした切ないメロディが心地よいミディアム・ナンバーを、管楽器などを使って軽妙なニュー・オーリンズ・ジャズに組み替えた演奏は、都会的な雰囲気の原曲とは全く違う魅力を放ってる。

そして、ニューヨーク出身の4人組ヴォーカル・グループ、フォースMDsが85年に発売、翌年には映画「Krush Groove」のサウンドトラックにも収録された”Tender Love”は、カントリーの要素を取り込んだパフォーマンス。ジャム&ルイスがペンを執り、アッシャーアリシア・キーズ、バックストリート・ボーイズなどが歌っているスタイリッシュなバラードを、原曲とは正反対の路線にアレンジすることで、新鮮に聴かせる発想が光っている。

このアルバムで彼女が取り組んでいるのは、近年、再び注目を集めている80年代、90年代のR&Bに独自の解釈を加え、新しい音楽として生まれ変わらせたものだ。ブルーノ・マーズの『24K Magic』など、80年代、90年代のR&Bに触発された作品は多くのミュージシャンが発表しているが、80年代から音楽を仕事にし、90年代以降は自身の録音作品を継続的に発表している彼女は、当時の音楽を取り入れるだけでなく、咀嚼し、自分の音楽に還元することで作品の隠れた魅力を掘り起こしている。

本作の発売前に彼女自身が言及した、ブルーノ・マーズなどとは異なるアプローチで、往年のR&Bの魅力を引き出した面白いアルバム。演奏者の感性と技術によって、同じ楽曲でも色々な表情を見せることを教えてくれる好事例だ。

Producer
Jebin Bruni, Me'Shell Ndegéocello

Track List ([]内は原曲を歌ったアーティスト)
1. I Wonder If I Take You Home [Lisa Lisa & The Cult Jam feat. Full Force]
2. Nite And Day [Al B. Sure!]
3. Sometimes It Snows In April [Prince]
4. Waterfalls [TLC]
5. Atomic Dog 2017 [George Clinton]
6. Sensitivity [Ralph Tresvant]
7. Funny How Time Flies (When You’re Having Fun)[Janet Jackson]
8. Tender Love [Force MDs]
9. Don’t Disturb This Groove [The System]
10. Private Dancer [Tina Turner]
11. Smooth Operator [Sade]





VENTRILOQUISM
MESHELL NDEGEOCELLO
NAIVE
2018-03-16

BIGBANG - FLOWER ROAD [2018 YG Entertainment]

2006年に、グループ名を冠したシングル”Bigbang”でレコード・デビュー。同年にリリースした初のスタジオ・アルバム『Bigbang Vol.1』が15万枚を売り上げるヒットになったことで、一気にブレイクしたYGエンターテイメント所属の5人組グループ、BIGBANG。

その後は、初のミリオン・ヒットとなった”Lies”や、北海道出身の日本人プロデューサー、Daishi・Danceが制作にかかわった”Haru Haru”(英題は”Day By Day”)、EDMとヒップホップを融合した独創的なサウンドと、奇抜なミュージック・ビデオが注目を集め、PSY(彼は5人の事務所の先輩でもある)の”Gangnam Style”とともに、韓国のポップスが欧米で注目されるきっかけとなった”Fantastic Baby”など、多くのヒット曲を発表。その一方で、各人のソロ活動やライブも精力的にこなし、フル・アルバムは3枚と寡作(ただし、EPを5枚発表している)ながら、2016年にはヴォーカル・グループとしてはワン・ダイレクションに次ぐ売り上げを叩き出し、世界屈指の人気ヴォーカル・グループとして、その名を知らしめた。

しかし、メンバーが30歳(注:韓国の男性は、特別な事情がない限り、30歳までに2年間の兵役に就く義務がある)を迎える2017年以降、最年長のT.O.P.(ただし、彼は後に諸事情により除隊)を皮切りに、順次に兵役に従事。入隊前のメンバーは、ソロ活動を中心に行っていたが、2018年の2月以降、彼らも順次軍務に就くため、音楽活動を休止している。

この曲は、2月にG-Dragon、3月にテヤンとデサンが従軍した直後、3月14日(日本では3月15日)にリリースされた、活動休止前最後のシングル。プロデューサーにはジェイソン・デルーロやフロー・ライダーなどの作品を手掛け、G-Dragonとテヤンのコラボレーション曲”Good Boy”をプロデュースしたことでも知られている、アメリカの音楽制作チーム、フリップトーンズを起用。また、ソングライターにはG-DragonとともにT.O.P.の名前も入るなど「5人が揃ってこそBIGBANG」というメンバーの強い意志と、ファンや音楽活動への強い思い入れを感じさせる作品になっている。

この曲を聴いて真っ先に驚いたのは、ネプチューンズの音楽を思い起こさせる独特の音質のドラムと、ギターの演奏を組み合わせた軽妙なサウンドを取り入れたことだ。しかし、癖のある音を組み合わせて、ストレートなヒップホップのビートを作る手法は、ネプチューンズというより、ファレルが2005年に発表した『In My Mind』の収録曲に近い。2016年のテディ・パクがプロデュースしたシングル”FXXK IT”でも使われた、彼らの作品では珍しいスタイルを、活動休止前のラスト・シングルに持ってくるセンスは大胆だ。

一方、主役である5人に目を向けると、一人一人の歌とラップをじっくりと聴かせる、絶妙な演出が光っている。”Loser”や”BAD BOY”、”FXXK IT”のように、ラップ担当とヴォーカル、全員の見せ場をきちんと作る、G-Dragonのソングライティング技術は流石としか言いようがない。

しかし、この曲の一番面白いところは、今までの作品以上に、尖ったサウンドを取り入れる一方、彼らの持ち味である、鋭いラップとパワフルなヴォーカルのコンビネーションをきちんと聴かせ、同時にしばしの別れとなるファンへのメッセージもしっかりと盛り込んでいるところだ。G-Dragonやテヤンがソロ作品で取り組んだ、アメリカのヒップホップやR&Bに傾倒したサウンドを取り入れて(といっても、T.O.P.の入隊日を考えると、ソロ作品の方が後に録音されていると思うが)、単なる記念作品ではない「彼らの新曲」として楽しませながら、ヴォーカル担当の3人が歌うサビでは「去りたいのなら見送って差し上げましょう」「あなたの通る道に花を撒いてあげましょう」「恋しくなったら戻ってきて」「その時はまた僕を愛して」「この花道を歩いて少し休んでいいから」「その場所で僕を待っていて」(歌詞の日本語訳は、日本盤を配給するYGEXのHPから引用)と、やんちゃな一面が魅力の5人らしい、器用な言葉遣いと不器用な愛情表現も見せている。この曲からは、兵役という大人への階段に挑む5人ではなく、年を重ねながらもヒップホップやR&Bを愛した続けた5人の少年が、ファンにしばしの別れと再会を約束をしているようにも映る。

アメリカのヒップホップやR&Bを咀嚼し、自分達の音楽に還元することで頭角を現し、最後には音楽市場のルールも書き換えてしまった彼ららしい、鋭い音楽センスと瑞々しい感性が光る良曲。ヒップホップを愛する5人の少年が再びファンのもとに戻ってきたとき、どんな音楽を聴かせてくれるのか、今から楽しみになる名曲だ。

Producer
G-Dragon, Flipnotes

Track List
1. Flower Road



Stefflon Don - Hurtin' Me The EP [2018 Polydor]

女性ラッパーとしては19年ぶりとなる、全米総合シングル・チャート1位を獲得したカーディBを筆頭に、多くのヒット曲を残しているニッキー・ミナージュやラプソディなど、個性豊かな女性アーティストが活躍する現代のヒップホップ・シーン。アメリカ国外に目を向けると、オーストラリアのイギー・アゼリアや、日本のCOMA-CHI、ちゃんみな、韓国のCLなど、世界各地で多くの女性ミュージシャンが活躍している。

ステフロン・ドンことステファニー・ヴィクイトリア・アレンは、現在のイギリスの音楽シーンで、最も勢いのある女性ヒップホップ・アーティスト。バーミンガム生まれのジャマイカ系イギリス人である彼女は、4歳から14歳にかけてオランダで過ごし、その後、英国のハイスクールに進学。卒業後は、菓子職人や美容師の職に就くが、紆余曲折を経て音楽の道に進んだ異色のミュージシャンだ。

彼女が表舞台で注目されるきっかけになったのは、アメリカのR&Bシンガー、ジェレミーが2016年に発表した”London”。同曲で披露した、20代半ばとは思えない色気と、鋭い切れ味を兼ね備えたラップが高い評価を受けた彼女は、翌年にはイギリスのDJ、ジャックス・ジョーンズのシングル”Instruction”に参加。EDMにラテン音楽やレゲエ、ヒップホップを混ぜ合わせた個性的なビートをしっかりと乗りこなして、英国レコード協会のゴールド・ディスク認定を受けるヒット作に導いた。

本作は、彼女にとって初のアルバムとなる4曲入りのEP。既にシングルでリリースされた3曲に加え、本作がお披露目となるリミックス曲を収録したもので、2016年以降に彼女が発表した楽曲を、1枚で楽しめるものになっている。

1曲目は、本作が初出となる”Hurtin' Me (Remix)”。2017年に発表し、40万ユニットを売り上げた楽曲に、ジャマイカを代表する人気DJのショーンポール、シズラ、ポップコーンのヴァースを追加した作品。上物を強調するなど、トラックにも手を加えているが、ダンス・ホール・レゲエをベースにした原曲のビートを活かしたリミックスに仕上がっている。ジャマイカ本国だけでなく、海外のポップス市場でも評価の高いゲスト達を起用することで、彼女のウリであるヒップホップのテイストを残しつつ、楽曲にジャマイカの空気を吹き込んでいる。

続く”Hurtin' Me”は、モロッコ系アメリカン人のフレンチ・モンタナをフィーチャーした同曲のオリジナル・バージョン。上物の音数は少なめで、ロマンティックでしっとりとした雰囲気に纏め上げている。海外のアーティストとも積極的にコラボレーションしているフレンチだけあって、この曲でも彼女とスムーズなマイク・リレーを披露している。中東やアメリカの音楽のエッセンスを盛り込みつつ、レゲエやガラージの影響を強く受けた、イギリスのヒップホップにきちんと落とし込んでいる面白い曲だ。

また、イギリスのグライム・アーティスト、スケプタを招いた”Ding-A-Ling”は、シンセサイザーを多用した泥臭いビートが印象的な作品。ワイリーなどの作品を手掛けている、ライムズがプロデュースしたトラックは、低音を強調したビートと、チキチキという上物を組み合わせたトラップに近いもの。アメリカ南部で流行しているスタイルを取り入れつつ、レゲエやグライムの要素を混ぜ込むことで差別化した発想が光っている。

そして、本作の収録曲では唯一の単独名義作品である”16 Shots”は、チャーリーXCXなどの作品に携わっているフレッド・ギブソンが制作を担当。レゲトンのビートを使いつつ、分厚い音の塊をその上に被せるトラックが新鮮なミディアム・ナンバー。ラップの大半は男性顔負けのハードなものだが、随所で繊細な一面を見せるステフロンのパフォーマンスが聴きどころだ。

ひとくちに女性ラッパーと言っても、歌とラップを使い分けるミッシー・エリオットや。女性ならではの切り口をウリにするニッキー・ミナージュやローリン・ヒルなど、色々なタイプのアーティストがいるが、彼女の面白いところは、一つのスタイルに固執せず、柔軟に切り替えることのできる点だろう 。”Hurtin' Me”で披露するセクシーな表情から、”Ding-A-Ling”で見せる可愛らしい一面、”16 Shots”で聴かせるハードなラップまで、剛柔入り混じったパフォーマンスを、トラックにあわせて器用に使い分けるスキルが、彼女の強みだろう。

レゲエやエレクトロ・ミュージックなど、色々なジャンルの音楽を飲み込みながら、独自の発展を遂げたイギリスのヒップホップ。同国の個性豊かなサウンドを乗りこなし、新鮮な作品に落とし込む彼女は、今後のイギリスのヒップホップ・シーンの台風の目になりそうだ。

Producer
Rodney Kumbirayi, Hwingwiri, Rymez, Fred Gibson

Track List
1. Hurtin' Me (Remix) feat. Sean Paul, Popcaan, Sizzla
2. Hurtin' Me feat. French Montana
3. Ding-A-Ling feat. Skepta
4. 16 Shots









Hurtin' Me
Universal Music LLC
2017-08-11







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