ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Fifth Harmony - Fifth Harmony [2017 Sony]

イギリスの人気オーディション番組「Xファクター」のアメリカ版に出場したアリー・ブルック、ノーマン・コーディ、ローレン・ハウレギ、ダイナ・ジェーン、カミラ・カベロの5人からなるガールズ・グループ、フィフス・ハーモニー。

2013年にリリースした初のEP『Better』が全米総合チャートを6位に入り、同作からのシングル曲”Miss Movin’ On”がゴールド・ディスクを獲得するなど、幸先のいいスタートを切った彼女達は、2015年に1枚目のフル・アルバム『Reflection』を発表。全米チャートの5位をはじめ、カナダとニュージーランドで8位に入るなど、各国のヒット・チャートにその名を刻んできた。その後も、2016年に発売した2枚目のアルバム『7/27』が複数の国のヒット・チャートでトップ10圏内に入るなど、アメリカを代表するガールズ・グループへの道を、着実に登って行った。

このアルバムは、グループにとって3枚目となるLP。2016年の終わりにカミラ・カベロがグループを脱退して、4人組として再スタートを切った彼女達にとって初めてのアルバムとなる。

アルバムに先駆けて発売されたシングル曲”Down”は、ビヨンセやジェイソン・デルーロの作品も手掛けている、ボルティモア出身のプロデューサー、アモことジョシュア・コールマンが制作を担当。チャッキー・トンプソンやドリームが作りそうな、シンセサイザーの音色を多用した爽やかなトラックと彼女達のキュートな歌声が印象的なアップ・ナンバー。軽快なビートとメロディを軸にしながら、曲の途中に挟み込まれたグッチ・メインのラップ・パートでトラックを変えるなど、随所に凝った演出を盛り込んでいる。

続く、もう一つのシングル曲”He LIke That”も、アモのプロデュース作品。こちらは、80年代のウェイン・ワンダーやUB40を思い起こさせる、ゆったりとしたトラックと軽妙なメロディが心地よいレゲエ風ナンバー。可愛らしい歌声の合間に、地声を使った力強い歌唱を挟み込むことで、楽曲に起伏を付けている。オーディション番組で鍛えられた彼女達らしい、豊かな表現力と親しみやすさが光る曲だ。

一方、エレクトロ・ミュージックのプロデューサー、スカイレックスと、アッシャーやクリス・ブラウンなどの楽曲に携わってきたプー・ベアのコンビによる”Angel”は、プー・ベアもペンを執ったアッシャーの”Burn”を連想させるチキチキ・ビートが印象的なミディアム・ナンバー。奇抜な楽曲を作ることが多いスカイレックスだが、この曲ではジャーメイン・デュプリを連想させる、シンセサイザーを多用したチキチキ・ビートに近いものを提供。彼女達の溌剌としたヴォーカルを引き立てている。2000年代前半にアッシャーやマライア・キャリーが発表していたような、親しみやすいメロディのR&Bが、現代のクリエイターのフィルターを挟むと新鮮に聴こえるのは面白い。

そして、もう一つ見逃せない曲が、ドリームラブが手掛けた”Messy”だ。セレーナ・ゴメスやニッキー・ミナージュなどに楽曲を提供してきたポップス畑の作家が用意したのは、甘酸っぱいメロディとそれを引き立てるシンプルなアレンジが光るミディアム・バラード。グラマラスな歌声や艶めかしいパフォーマンスは、”Touch My Body”などの楽曲でセクシーなヴォーカルを披露していたマライア・キャリーを彷彿させる。最年長のアリソンでさえ24歳と、全員が20代前半のグループとは思えない、大人っぽい歌唱が魅力的だ。

カミラの脱退を経た後の作品だが、各人の歌唱力がレベルアップしたこともあり、パワー・ダウンした印象はない。むしろ、経験を積んで各メンバーの個性が際立つようになり、メンバーの個性とグループとしての一体感を両立した音楽が増えたようにも思える。

デスティニーズ・チャイルドやTLCなどが活動を休止、もしくは縮小し、アメリカのポップス市場からガールズ・グループの存在感が薄れていく中、唯一無二の存在となりつつある彼女達の持ち味が遺憾なく発揮されている。TLCやスパイス・ガールズのように、世界を股にかける存在になると思わせる、高いスター性とヴォーカル・スキルが楽しめる佳作だ。

Producer
Ammo, DallasK, Poo Bear, Skrillex etc

Track List
1. Down feat. Gucci Mane
2. He LIke That
3. Sauced Up
4. Make You Mad
5. Deliver
6. Lonely Night
7. Don't Say Love Me
8. Angel
9. Messy
10. Bridges





Fifth Harmony
Fifth Harmony
Epic
2017-08-25

D'Angelo - Brown Sugar: Deluxe Edition [2017 Capitol]

宣教師の父のもとで、幼いころから音楽の才能を開花し、91年にEMIと契約すると、デビュー前の新人ながら、ボーイズIIメンやキース・スウェットらが参加した企画シングル”U Will Know”のソングライターに抜擢されるなど、若いころから華々しい活躍を見せてきたバージニア州リッチモンド出身のシンガー・ソングライター、ディアンジェロこと、マイケル・ユージン・アーチャー。

1995年に、初のフル・アルバム『Brown Sugar』をリリースすると、ヒップホップのシンプルなダイナミックなビートと、生演奏を使った、往年のソウル・ミュージックを連想させる温かい演奏を融合した斬新な作風で、音楽ファンの注目を集めた。その後も、2000年には『Voodoo』を 2014年には『Black Messiah』を発表。寡作ながら、多くの人の記憶に残る傑作を残してきた。

今回のアルバムは、95年に発売したデビュー作の新装版。オリジナル盤の収録曲(ディスク1の1~11曲目)に本作が初出のリミックスなどを加えた、豪華なものになっている。

本作の目玉である追加曲に目を向けると、最初に目を惹くのはプロデューサーの仕事も多いイギリスのジャズDJ、ドッジがリミックスを担当した”Brown Sugar”だ。原曲と同じ音色を使いつつ、キーボードの激しい演奏を、しっとりとした伴奏に置き換えたアレンジが光る作品だ。発売された当初は、オリジナルに比べて地味な印象を抱いたが、改めて聴き返すと、ディアンジェロの歌声を際立たせたアレンジの妙味が光っている。

これに対し、インコグニートが制作した同曲のリミックスは、原曲のヴォーカルを残しつつ、伴奏の大半を新しく録音し直したもの。イントロを聴いた瞬間、インコグニートの仕事とわかる爽やかで上品な伴奏に、ディアンジェロのドロドロとした歌唱が乗っかったアレンジは奇抜にも映るが、実は相性が良い。普段はジャズやソウルに傾倒したスタイリッシュなパフォーマンスを披露することが多い彼らだが、この曲ではディアンジェロに合わせて、ヒップホップのビートや抽象的なフレーズを盛り込んでいることが功を奏している。同じ生演奏を多用した作風ながら、全く異なる音楽性でファンを魅了していた両者の持ち味が一つの音楽に同居した面白い作品だ。

それ以外の曲では、DJプレミアをリミキサーに起用した”Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Two Way”のリミックスも面白い。古いレコードの音色をコラージュして、ソウルフルで躍動感溢れるビートを数多く生み出してきたDJプレミアだが、この曲では音と音の隙間を効果的に使うディアンジェロの作風に合わせて、音数の少ないシンプルなトラックを用意している。プリモが制作に携わった『Voodoo』からの先行シングル”Left & Right”では、パンチの聴いたビートに、メソッドマンとレッドマンの荒々しいラップを組み合わせた斬新な作品だったが、こちらはディアンジェロの作風をベースにヒップホップの要素を追加したものだ。好みは分かれると思うが、個人的にはこちらの方がディアンジェロの作風と合っていると思う。

そして、本作の最後に入っている”Cruisin’”は、スモーキー・ロビンソンが79年に発表したシングル曲のカヴァー。95年に発売されたプロモーション用レコードにも入っていたが、正式にCD化されるのは今回が初となる。ほかの曲はリミキサーが明らかになっているが、この曲を含む複数の曲ではクレジットが明らかになっていない。ベタっとした音を使ったヒップホップのビートは、マーク・モリソンのようなイギリスのR&Bシンガーを思い起こさせる。90年代のトレンドが垣間見える佳作だ。

このアルバムを聴いていて驚くのは、追加曲を含むほとんどの作品が90年代に録音されているにも関わらず、今も新鮮に聴こえることだろう。もちろん、彼自身が佳作で作風の変化が小さいことも大きいが、それ以上に、メロディ、歌、演奏の全てが聴きどころという点も大きいと思う。そして、この完成度が極めて高い曲に、音を足したり引いたりして、新しい表情を吹き込むクリエイターの存在も目立っている。音楽配信サービスの隆盛によって、プロやアマチュアのクリエイターが多くのリミックス作品を発表する時代になったが、このアルバムに収められているような楽曲の持ち味を尊重しつつ、クリエイターの独自性を打ち出したものはそれほど多くないと思う。

ディアンジェロの音楽が一時の熱狂で評価されたものではない「不朽の名作」であること、彼だけでなく、本作を傑作にしたのは、彼一人の才能ではなく、作品に関わった全てのクリエイターの才能と技術によるものであることを再認識させられる名企画。彼の音楽を聴いたことがない人はもちろん、オリジナル盤を持っている人にもぜひ聴いてほしい。価値のある特別版だ。

Producer(Original Version)
D'Angelo, Kedar Massenburg, Ali Shaheed Muhammad, Bob Power, Raphael Saadiq

Track List
Disc 1
1. Brown Sugar
2. Alright
3. Jonz In My Bonz
4. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine
5. Sh*t, Damn, Motherf*cker
6. Smooth
7. Cruisin'
8. When We Get By
9. Lady
10. Higher
11. Brown Sugar A Cappella
12. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine A Cappella
13. Brown Sugar Instrumental
14. Lady Just Tha Beat Mix/featuring AZ (Remixed by DJ Premier for Works of Mart Productions, Inc.)
15. Brown Sugar Soul Inside 808 Mix (Mix by DJ Dodge)

DISC 2
1. Brown Sugar King Tech Remix feat. Kool G. Rap
2. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Def Squad Remix feat. Redman (Remixed by Erick Sermon for Funk Lord Productions)
3. Cruisin' Cut The Sax Remix (Remix by King Tech)
4. Lady Just Tha Beat Mix/featuring AZ (Remixed by DJ Premier for Works of Mart Productions, Inc.)
5. Brown Sugar Soul Inside 808 Mix (Mix by DJ Dodge)
6. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Two Way Street Mix (Remixed by DJ Premier for Works of Mart Productions, Inc.)
7. Cruisin' Dallas Austin Remix)
8. Lady 2B3 Shake Dat Ass Mix (Remix produced by Neville Thomas and Pule Pheto for 2B3 Productions)
9. Brown Sugar Incognito Molasses Remix
10. Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine Dreamy Remix (Remixed by Erick Sermon for Funk Lord Productions)
11. Cruisin' Wet Remix
12. Brown Sugar Dollar Bag Mix
13. Cruisin' God Made Me Funky Remix
14. Brown Sugar CJ Mackintosh Remix (Additional production and Remix by CJ Mackintosh)
15. Lady CJ Mackintosh Mix Radio Edit (Additional production and Remix by CJ Mackintosh)
16. Cruisin' Who's Fooling Who Mix





ブラウン・シュガー(デラックス・エディション)
ディアンジェロ
ユニバーサル ミュージック
2017-08-25

Damian Marley - Stony Hill [2017 Island]

“One Love”や”Get Up Stand Up”などの名曲を残し、レゲエ界のアイコンとして今も絶大な人気のあるボブ・マーリー。彼の息子達も、それぞれミュージシャンとして個性的な作品を送り出しているが、その中でも特に精力的に活動しているのが、ボブにとって二人目の妻である、シンディ・ブレイクスピアとの間に生まれたダミアン・マーリーだ。

10代前半から他の兄弟と一緒に音楽を始めた彼は、歌やプロダクションに興味を持った他の兄弟とは異なり、早くからディージェイ(ヒップホップでいうMCに相当)に傾倒し始める。

そんな彼は、96年に初のアルバム『Mr. Marley』でレコード・デビューを果たすと、ビルボードのレゲエ・アルバム・チャートで2位を獲得。その5年後に発表した2作目『Halfway Tree』はグラミー賞を獲得するなど、華々しい実績を上げてきた。

また、彼は自身の活動と並行して、色々なジャンルのアーティストとコラボレーション作品を録音。なかでも、2010年にヒップホップ・ミュージシャンのナズと共作した『Distant Relatives』は全米アルバム・チャートの5位を獲得。彼をフィーチャーしたエレクトロ・ミュージックのクリエイター、スカイレックスのシングル”Make It Bun Dem”は、プラチナ・ディスクに認定されるなど、偉大な父と同様に、レゲエに詳しくない人達からも親しまれるようになった。

今回のアルバムは、自身の名義では実に12年ぶりとなる通算4枚目のアルバム。近年もジェイZの『4:44』に参加するなど、多芸っぷりを発揮していた彼だが、本作ではセルフ・プロデュースの作品や兄であるステファン、幾度となくグラミー賞を獲得しているジャマイカを代表するプロダクション・チーム、スライ&ロビーといった、レゲエ畑のクリエイターを中心に起用。ゲストもステファンやメジャー・マイジャーといったレゲエ・ミュージシャンが顔を揃えた、原点回帰とも受け取れる作品に仕上がっている。

2016年に、アルバムに先駆けてリリースされたシングル曲”Nail Pon Cross”は、彼自身のプロデュースによるミディアム・ナンバー。コンピューターによる重低音を強調したビートはスレンテンのような80年代終わりから90年代初頭に流行したスタイルを踏襲したものだが、彼はナズやノートリアスB.I.G.のようなニューヨークのヒップホップ・ミュージシャンを連想させる、昔のソウル・ミュージックのような温かい音色を取り入れて、アメリカの音楽っぽく仕上げている。

また、彼自身がペンを執ったR.O.A.R.は、ブジュ・バントンの”Me & Oonu”をサンプリングした作品。マーチング・バンドっぽい軽快で緻密なビートをバックに、荒々しいパフォーマンスを聴かせてくれる。ブジュ・バントンのワイルドな歌声が、楽曲に攻撃的な雰囲気を加えている。

これに対し、ピットブルの作品に参加するなど、ダミアン同様アメリカでの活躍が目立つ兄、ステファンが参加した”Medication”は、生前のボブ・マーリーの音楽を思い起こさせる、生バンドによるゆったりとしたサウンドが心地よい曲。ステファンの艶やかなテナー・ヴォイスとダミアンのワイルドな歌声の組み合わせが面白い。歌とディージェイ、スタイルは違うが一緒に仕事をすることも多い二人だから作れる、際立った個性と一体感が両立された佳作だ。

そして、本作の隠れた目玉と言っても過言ではないのが、バウンティ・キラーやアシュリー・ロスなどの作品に携わってきた気鋭の若手、メジャー・マイジャーを招いた”Upholsteryv”だ。ピコピコという電子音を使った躍動感溢れるサウンドは、2000年代初頭、アメリカを中心に世界を席巻したダンス・ホール・レゲエを思い起こさせる。ファルセットを多用したメジャーのヴォーカルと、ダミアンのパンチが効いたパフォーマンスのコンビネーションも、いい味を出している。ボブ・マーリーの音楽が持つ親しみやすさと、21世紀に世界の耳目を惹きつけたダンス・ホールの斬新さを融合させた面白い曲だ。

今回のアルバムでも、レゲエをベースにしつつ、アメリカの音楽市場を意識してメロディやサウンドに工夫を凝らした、彼の持ち味が遺憾なく発揮されている。ボブの音楽がロックやソウル・ミュージックを取り入れながら唯一無二の個性を発揮したように、彼はヒップホップやエレクトロ・ミュージックを取り込みつつ、自分の音楽に落とし込んでいる。

ショーン・ポールやウェイン・ワンダーなど、アメリカの音楽を取り込んで成功を収めたレゲエ・ミュージシャンは少なくないが、アメリカの音楽を分解、研究して、自分の音楽の糧にした例は希少だと思う。海外のトレンドを意識しつつ、母国の音楽や自身のスタイルに昇華した好事例といえる傑作だ。

Producer
Damian Marley, Stephen Marley, Sly & Robbie, Stephen McGregor

Track List
1. Intro
2. Here We Go
3. Nail Pon Cross
4. R.O.A.R.
5. Medication feat. Stephen Marley
6. Time Travel
7. Living It Up
8. Looks Are Deceiving
9. The Struggle Continues
10. Autumn Leaves
11. Everybody Wants To Be Somebody
12. Upholsteryv feat. Major Myjah
13. Grown & Sexy feat. Stephen Marley
14. Perfect Picture feat. Stephen Marley
15. So A Child May Follow
16. Slave Mill
17. Caution
18. Speak life






ストーニー・ヒル
ダミアン“ジュニア・ゴング”マーリー
ユニバーサル ミュージック
2017-08-09

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