ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Lee Fields – Special Night [2016_Big Crown Records]

79年の『Let’s Talk It Over』でソウル・ファンの注目を集めたあと、長い苦労の時代を経て、2002年の『Problems』で再ブレイクを果たしたノース・カロライナ出身のシンガー、リー・フィールズ。彼にとって2014年の『Emma Jean』以来、2年ぶりとなるオリジナル・アルバム。

御年65歳ながら、ジェイムズ・ブラウンを彷彿させるヴォーカルは衰え知らず。豊かな声を棍棒のように振り回し、喜怒哀楽を全身で表現する姿は70年代から全く変わっていない。しかし、今回のアルバムは、彼を支えるバンド・メンバーの成長によって、これまでとは一味違う作品になっている。

彼の音楽を演奏で支えてきたザ・エクスプレッションズは、今までもシャロン・ジョーンズやエイミー・ワインハウスのアルバムで、絶妙なグルーヴと豊かな表現力を発揮してきたメンバーを擁する実力派バンド。そんな彼らは、近年、レディ・ガガやノラ・ジョーンズといった、様々なジャンルのトップ・アーティストの作品に携わり、ディズニー映画『ジャングル・ブック』の音楽を手掛けるなど、活躍の舞台をさらに広げている。本作では、そんな彼らの経験を反映した、幅広い音楽性と各人の際立った個人技が、主役の歌の魅力をこれまで以上に引き出している。

リー・フィールズのパンチが効いた歌声が光るミディアム・バラード”Precious Love”では、気怠い雰囲気のホーン・セクションで、ロマンティックなムードを出しつつ、一音一音の粒が立ったキーボードで、楽曲にメリハリを効かせてくれる。また、オープニングを飾る”Special Night”では、ジミー・スミスばりに荒々しい演奏を聴かせるオルガンが、泣き崩れるようなヴォーカルと絡み合い、まるでデュエットのようにお互いを引き立てている。それ以外にも、他のメンバーは、楽器の音色で自分の個性をアピールしつつ、バンドとして一つの楽曲を下支えしており、バンド全体では、これまで以上に大胆な表現を披露している。

70年代から活躍するベテラン・シンガーと、10年代に入ってますます目覚ましい活躍を見せる中堅バンド。親子ほどの年齢差がある両者は、お互いに刺戟し合い、前作以上に豊かな表現を見せてくれた。年を重ねて円熟味を増したシンガーと、幅広い音楽を飲み込んだバンドの競演は、ソウルもロックもブルースも取り込んでいた、往年のソウル・ミュージシャンに通じるものがある。

Track List
1. Special Night
2. I’m Coming Home
3. Work To Do
4. Never Be Another You
5. Lover Man
6. Make The World
7. Let Him In
8. How I Like It
9. Where Is The Love
10. Precious Love

Producer
Thomas Brenneck



SPECIAL NIGHT
LEE & THE EX FIELDS
BI CR
2016-11-11

Miles Davis & Robert Glasper ‎– Everything's Beautiful [2016_Columbia,Blue Note]

ジャズの世界に、ヒップホップやR&Bの要素を取り込んだ、『Black Radio』シリーズが大成功。一躍21世紀を代表するミュージシャンに上り詰めた、ヒューストン出身のピアニスト、ロバート・グラスパーによる通算5枚目となるオリジナル・アルバム。

今回の作品はアーティスト名が示す通り、所属レーベルの大先輩であり、ジャズ界を代表する巨人、マイルス・デイヴィスとのコラボレーション・アルバム。といっても、マイルスは既に故人なので、本作では彼が残した膨大な録音を再構成し、現代のミュージシャンの演奏と組み合わせた、仮想セッションの形を取っている。

本作を聴いて最初に驚くのは、空気を切り裂くようなマイルスの鋭い演奏が、大胆に解体されていることだろう。もっとも、70年代以降のマイルスは膨大な演奏を録音し、それをプロデューサーのテオ・マセロが編集することで一つの作品に仕上げていたので、彼が21世紀まで生きていたら、このようなスタイルを積極的に受け入れていたかもしれない。

74年の『Get Up With It』に収められている”Maiysha”に、エリカ・バドゥが歌詞をつけた”Maiysha (So Long)”では、ダブを連想させる幻想的な響きを醸し出した原曲に対し、音と音の隙間を意識した立体的なアレンジと、彼女の気怠い雰囲気のヴォーカルで、『Kind Of Blue』に収録されマイルスの代表曲”So What”を彷彿させるモーダルな演奏にリメイク。1958年にリリースされた『Milestones』のタイトル曲をジョージ・アン・マルドロウと再構築した”Milestones”では、原曲の有名なフレーズを、SF映画の効果音のようなシンセサイザー音で演奏しつつ、強く歪ませたギターや、エフェクターで響きを増した声を加えて、フライング・ロータスやマッドリブにも通じる、抽象性の高いインストルメンタル・ヒップホップに生まれ変わらせている。

このように、本作では原曲の音色やメロディを取り込みつつ、それを分解、再構成して、新しい解釈を加えた曲が目立つ。

その一方で、”Right On Brotha”のように、マイルスの演奏をそのままの形で残しつつ、DJスピナによるハウスのビートや、スティービー・ワンダーのブルース・ハープを絡ませることで、マイルスが現代のミュージシャンとセッションをしているように思わせる曲もあるなど、色々なスタイルを使い分けた、彼らしい作品に仕上がっている。

メロディやアレンジを大胆に改編しながら、マイルスの音の出し方や間の取り方、新しい音へ挑戦し続ける姿勢を忠実に踏襲した点は、コラボレーションと呼ぶにふさわしい。彼が現代に蘇って、現代のヒップホップやR&Bと出会ったら、こんな曲を作るだろうな思わせる内容だ。

Producer
Robert Glasper

Track List
1. Talking Shit
2. Ghetto Walkin” featuring Bilal
3. They Can’t Hold Me Down” featuring Illa J
4. Maiysha (So Long)” featuring Erykah Badu
5. Violets” featuring Phonte
6. Little Church” featuring Hiatus Kaiyote
7. Silence Is The Way” featuring Laura Mvula
8. Song For Selim” featuring KING
9. Milestones” featuring Georgia Ann Muldrow
10. I’m Leaving You” featuring John Scofield and Ledisi
11. Right On Brotha” featuring Stevie Wonder




Everything's Beautiful
Miles Davis
Sony Legacy
2016-05-27


Black Dylan – Hey Stranger [2016_Black Dylan Records]

シンガー・ソングライターのワフェンデと、DJやプロデューサーとしても活動しているニュープレックスによる、デンマーク発のソウル・ユニット、ブラック・ディランにとって1枚目のオリジナル・アルバム。

2015年にアルバムに先駆けてリリースされたシングル”Don’t Wanna Be Alone”では、初期のシュープリームスやヴァンデラスを彷彿させるポップでキャッチーなサウンドと、ジョン・レジェンドを思い起こさせる、泥臭い声で丁寧に歌うワフェンデの姿が印象的だった二人。待望のファースト・アルバムでは、同曲のような60年代以前のソウルから影響を受けたことを伺わせる楽曲が、数多く収められている。

アルバムの発売前にリリースされたもう一つのシングル曲“Hey Stranger”は、曇ったホーンの音色と、今時のR&Bっぽい打ち込みによる安定したビートを組み合わせて、アナログ楽器の温かい音色と精密な演奏技術で独特のサウンドを生み出した、モータウンの作風を現代に蘇らせたアップ・ナンバー。この他にも、フィンガー・スナップとウッドベースっぽい音色のベースを使って、街頭で演奏されていた初期のドゥー・ワップっぽく聴かせたミディアム”The One”。崩れ落ちるような歌と演奏で、初期のジェイムズ・ブラウンのダイナミックなパフォーマンスを取り入れつつ、ヒップホップで用いられるような硬いビートを使うことで、21世紀のリズム&ブルース像を示したスロー・ナンバー”She Said I Was A Failure”など、60年代以前のソウル・ミュージックやリズム&ブルースのスタイルをベースに、新しい楽器も積極的に使って、新しいブラック・ミュージックの形を感じさせる良曲が揃っている。

往年の黒人音楽を現代風にアレンジしたと聞くと、メイヤー・ホーソンやジョン・レジェンドを思い出す人もいるかもしれない。実際、ワフェンデの歌を聴くと、ジョンに似た部分も見受けられる。しかし、彼の歌声はロック・シンガーのように硬く、ソウル・シンガーに多いゴスペルの影響が薄いうえ、バックのトラックも音数を絞り込んだシンプルなもので、現行のR&Bとリズム&ブルースの中間にあるものだと思う。この点で、分厚いトラックを背景に、豊かな声を披露するほかのソウル・シンガーとは一線を画しているだろう。

イギリスのイーライ・ペイパーボーイ・リードやフランスのベン・ロンクル・ソウルに続く、欧州発のソウル・リヴァイバル。初期のルーファス・トーマスやバレット・ストロングのような、60年代初頭のソウルやリズム&ブルースを現代風にリメイクした、ありそうでなかったアルバムだ。

Track List
1. Hey Stranger
2. Get Up Child
; 3. Don’t Wanna Be Alone
4. You’re Getting Stronger
5. The One
6. She Said I Was A Failure
7. Who Got My Back
8. Keep Your Eyes On The Road
9. Papa
10. Hummin’





Hey Stranger
Black Dylan
Imports
2016-09-02

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