ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

The Playlist Featuring Glenn Lewis ‎– Chasing Goosebumps [2017 Playlist Music]

1985年にラッパーのウィル・スミスとヒップホップ・ユニット、ジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンスを結成。87年にアルバム『Rock The House』でジャイブからメジャー・デビューを果たすと、全米R&Bチャートを制覇した”Summertime”や、全英チャートを1位を獲得した”Boom! Shake the Room”など、多くのヒット曲を世に送り出してきた、フィラデルフィア出身のDJでプロデューサーの、DJジャジー・ジェフことジェフリー・アレン・タウンズ。

グループの解散後は、故郷のフィラデルフィアに自身のプロダクション、ア・タッチ・オブ・ジャズを設立。同所を拠点に、ジル・スコットやミュージック・ソウルチャイルド、フロエトリー等の作品をプロデュースする一方、自身の名義でも『The Magnificent』シリーズを含む多くのアルバムをリリース。往年のソウル・ミュージックを彷彿させる柔らかい音色を使ったアダルティなトラックと、豪華なフィーチャリング・ミュージシャンによる個性豊かなパフォーマンスで、ユニット時代を知らない若い世代から、ヒップホップを聴いて育った大人達まで、幅広い年代の支持を集めてきた。

今回のアルバムは、彼の新プロジェクト、ザ・プレイリストの名義で発表された新作。彼の自宅に親交のあるミュージシャン達を集め、1週間で1枚のアルバムを制作するという、野心的なチャレンジの成果だ。

このアルバムでは、カナダのトロント出身のシンガー・ソングライター、グレン・ルイスをほぼ全ての曲でメイン・ヴォーカルに起用。ソロ作品では、ヒップホップのビートとアナログ楽器の音色を組み合わせたトラックに乗せて、ダニー・ハザウェイやスティーヴィー・ワンダーを彷彿させる親しみやすく洗練された歌声を聴かせてくれた彼だけに、音楽性の近いジェフとのコラボレーションには、いやが上にも期待してしまう。

アルバムの1曲目は、フィラデルフィア出身のDJ兼スポークン・ワード・アーティスト、リッチ・メディーナをゲストに迎えた”Distraction”。アナログ・シンセサイザーの温かい音色が印象的なトラックにのせ、淡々と言葉を吐き出すメディーナの姿が印象的なミディアム・ナンバー。中盤以降を担当する、グレンのヴォーカルが、声質こそ大きく違うがR.ケリーを彷彿させる、ラップっぽいスタイルなのも面白い。ヒップホップ出身のジェフとメディーナ、ソウル・ミュージックを聴いて育ったグレンの個性が上手く噛み合った佳曲だ。

これに対し、続く2曲目の”Faceless”は、グレンの歌声を活かした優しい雰囲気のミディアム・ナンバー。柔らかい音色のベースを使い、どっしりと落ち着いた雰囲気を醸し出すトラックに載せて、艶やかな歌声を響かせている。太いベースの音や、トラックに合わせてメロディを崩す歌い方は、フィラデルフィア出身のシンガー、ミュージック・ソウルチャイルドのスタイルに似ている。フィラデルフィアでは、彼みたいな歌い方が流行っているのだろうか?どうでも良いことだが少し気になる。

また、ラッパーのデイン・ジョーダンをフィーチャーしたアップ・ナンバー”Stone Cold”は、ギターやホーンの演奏を取り入れた、この企画を象徴するような楽曲。ジャジー・ジェフが作るビートの上で、今回のプロジェクトのために集結したミュージシャン達が音を重ね合わせ、デインとグレンがマイク・リレーを聴かせている。ジャム・セッションのように各人が自分の技術をアピールしながら、長い時間かけて練り上げられたような、隙のない曲に仕上げている彼らのチームワークと構成力にはひたすら感服する。

そして、本作のハイライトと呼んでも過言ではないのが、スロー・バラードの”Take My Time”だ、アイズレー・ブラザーズの”Footsteps In The Dark”を彷彿させるしっとりとしたビートと、キーボードやホーン・セクションを使ったロマンティックな伴奏の上で、甘い声でじっくりと歌い上げるムーディな楽曲。ヒップホップの手法を用いて作られたトラック使って、デルフォニックスやイントゥルーダーズのような、70年代の甘いソウル・ミュージックを連想させるバラードを作り上げる彼らのセンスとテクニックを堪能できる魅力的なスロウ・ジャムだ。

アルバム全体を通して聴いた印象は、奇抜なトラックや斬新なメロディの曲は少なく、ヴォーカル曲だけを収めた『The Magnificent』といった趣すらある。だが、実力には定評のあるミュージシャン達が、1週間という短い時間に心血を注いで録音された楽曲は、各人が自分の持ち味を思う存分発揮しつつ、それをジェフが調整することで、新鮮ではないが、何度聞いても飽きない、緻密さと躍動感が同居した作品にまとまっている。

ジェフが長い時間をかけて培った人脈によって、個性豊かなヒップホップとソウル・ミュージックのアーティストたちが集結し、彼らの音をジェフが自身の経験を活かして、最適な形に編集する。引用と編集という、ヒップホップの技術をフル活用して作られた。大人向けの本格的なR&B作品。これは、女性シンガーで第2弾を作って欲しい傑作だ。

Producer
DJ Jazzy Jeff

Track List
1. Distraction feat. Rich Medina
2. Faceless
3. Superman
4. Die Empty
5. 1995
6. Defeated feat. Dayne Jordan
7. Mr. Grump
8. Lullaby
9. This Could Be Us
10. Stone Cold feat. Dayne Jordan
11. Good Time
12. Kelo And Kaidi Be Snoring
13. First Time Again
14. Take My Time
15. Chasing Goosebumps







Trombone Shorty - Parking Lot Symphony [2017 Blue Note]

4歳のときに楽器を始め、十代の頃からスタジオ・ミュージシャンとして活動している、音楽の都、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者、トロンボーン・ショーティことトロイ・アンドリューズ。自身の名義では11枚目、ブルー・ノートに移籍してからは初となるフル・アルバム。

スタジオ・ミュージシャンとしては、ドクター・ジョンやギャラクティックのようなニューオーリンズ出身の人気アーティストだけでなく、エリック・クラプトンやマーク・ロンソンのような他地域出身の大物ミュージシャンまで(余談だが、メイヴィス・ステイプルズの2016年作『 Livin' On A High Note』でも演奏している)、色々な人の作品に携わる一方、自身の名義でも2002年に初のリーダー作となる『Trombone Shorty's Swingin' Gate,』を発表。その後も、複数の名義で多くのアルバム(ライブ録音を含む)を残してきた。

彼が生まれ育ったニューオーリンズは、ジャズやスワンプ・ポップ、ニューオーリンズ・ファンクなど、色々な音楽を育んだ都市として知られている。そんな土地で育った彼の音楽も、同地の豊かな音楽シーンを反映したものだ。今回のアルバムでは、自作の曲に加えて、ミーターズやアーニーK.ドゥーといった地元出身のファンク・バンドやソウル・シンガーの曲もカヴァー。トロンボーンの他に、歌やピアノも披露した意欲作になっている。

肝心の内容だが、なにはともあれ、R&Bやソウル・ミュージックが好きな人にとって見逃せないのは、2つのカヴァー曲だろう。

ミーターズの74年作『Rejuvenation』に収められている”It Ain't No Use”のカヴァーは、11分に及ぶ大作だった原曲の魅力を、4分間に凝縮したミディアム・テンポのファンク・ナンバー。トロイのヴォーカルはオリジナル・ヴァージョンで歌っていたレオ・ネセントリのものと比べると、線が細く、退廃的な雰囲気すら感じさせる。だが、ニューオーリンズのファンク・ミュージックが持つ、一人一人の演奏者の音色を活かした奔放なサウンドと、のんびりとしているようで緻密で躍動感に溢れたグルーヴは、原曲を忠実に再現している。演奏者のキャラクターによって、同じ曲でも全く違う演奏に仕上がる、ニューオーリンズ音楽の特徴が反映された楽曲だ。

一方、アーニーK.ドゥーが70年に発表したヒット曲”Here Come The Girls”のカヴァーは、マーチング・バンドのエッセンスを取り込んだビートの上で、洗練された歌声を響かせるミディアム・ナンバー。セカンド・ライン(ニューオーリンズで死者を埋葬したあと演奏される陽気なダンス音楽)の要素を取り込んでおり、落ち着いた雰囲気の中にも、どこか陽気な部分が感じられる。

それ以外のオリジナル曲に目を向けると、彼自身がヴォーカルを担当した”Dirty Water”が特に魅力的な作品だ。トロンボーンをピアノとマイクに持ち替え、弾き語りスタイルで切々と言葉を紡ぎ出す姿がいとおしいミディアム・ナンバーだ。甘いヴォーカルはベイビーフェイスに、流麗なメロディはサム・スミスの作風を思い起こさせる。

また、本作では希少なスロー・ナンバー”No Good Time”は、彼自身がキーボードも担当。カシーフやフレディ・ジャクソンといった、80年代に活躍した著名なソウル・シンガーの作品を思い出す洗練されたメロディや伴奏に乗せて、甘い歌声を聴かせてくれる、ブラック・コンテンポラリーっぽい曲だ。曲の中盤でホーン・セクションによるロマンティック演奏が、ムーディーな雰囲気を掻き立てている。このアルバムの収録曲の中では、最もニューオーリンズっぽくない録音だが、確かな演奏技術で、あらゆる手法を自分達の音楽に取り込む作風は、間違いなくニューオーリンズの演奏家のスタイルだと思う。

近年のブルー・ノートは、ハンク・モブレイやアート・ブレイキーの録音を送り出してきた、ハード・バップやモダン・ジャズを探求するレーベルから、ノラ・ジョーンズやロバート・グラスパーに代表されるような、ジャズを軸に、色々な音楽を幅広く取り込もうとするミュージシャンを輩出する、総合音楽レーベルへと姿を変えようとしている。本作は、その方針をストレートに体現したもので、ニューオーリンズという、色々な音楽が生まれ、共存している街のミュージシャンらしい、ソウルやファンク、ポップスやロックの要素を取り込んだ、ごった煮のようなジャズ作品に仕上がっている。

「ジャズ」や「ソウル」という一つの枠にとらわれない、色々なジャンルの音楽のエッセンスを取り込んだ、雑駁なようで一本筋の通った良作。普段ジャズを聴かないorジャズしか聴かない人に手に取ってほしい。

Producer
Chris Seefried
Track List
1. Laveau Dirge No. 1
2. It Ain't No Use
3. Parking Lot Symphony
4. Dirty Water
5. Here Come The Girls
6. Tripped Out Slim
7. Familiar
8. No Good Time
9. Where It At?
10. Fanfare
11. Like A Dog
12. Laveau Dirge Finale





パーキング・ロット・シンフォニー
トロンボーン・ショーティ
ユニバーサル ミュージック
2017-05-03

La'Porsha Renae - Already All Ready [2017 Motown]

ファンタジアやルーベン・スタッダード、ジョーダン・スパークスといった実力派シンガーを輩出し、スターへの登竜門として注目を集めている、アメリカの人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」。同番組の第15シーズンで、力強い歌声とダイナミックな表現が審査員や視聴者の耳目を惹き、ファイナル・ステージでは2位を獲得した、ミシシッピ州マッコム出身のシンガー、ラポーシャ・ラナエ。彼女にとって初のオリジナル・アルバム。

オーディションでは、アデルの”Hello”やレディオヘッドの”Creep”のような、ポップスやロックの有名曲に加え、ビヨンセの”Halo”やリアーナの”Diamonds”といった人気R&Bシンガーのヒット曲、ティナ・ターナーの”Proud Mary”やディオンヌ・ワーウィックの”A House Is Not a Home”などのソウル・クラシックも披露。決勝ではマーヴィン・ゲイとキム・ウェストンのデュエット曲”It Takes Two”で勝負するなど、高い歌唱力が求められる楽曲が中心の選曲で、圧倒的な実力を見せつけていた。

そんな彼女のデビュー・アルバムは、マーヴィン・ゲイを含む、多くの名シンガーを送り出してきた黒人音楽の名門、モータウン・レコードからのリリース。レーベルの経営にも携わっているニーヨが、ソング・ライティングで参加するなど、新人の作品としては異例の、豪華な布陣で制作されている。

アルバムの1曲目に収められている”What Is Love”は、ジャスティン・ビーバーやアッシャーの曲を手掛けてきた、ジェイソン・ボイドが制作したミディアム・ナンバー。キラキラとした音色のシンセサイザーを使った伴奏に乗せて、思いっきり声を張り上げるラポーシャの姿が印象的なミディアム・ナンバー。アレサ・フランクリンの”Think”や”Respect”を思い起こさせる、シンプルでキャッチーだが、どこか荘厳さを感じさせるメロディが、彼女の豊かな歌声と高い歌唱力を引き出している。

続く”Good Woman”は、エッジ・エチエンヌやティファニー・フレッドなどがペンを執ったバラード。ストリングスや三連符を取り入れた優雅な伴奏の上で、時に妖艶な、時にダイナミックなパフォーマンスを披露している。ポップスの仕事が多い作家らしい、親しみやすいメロディの楽曲だが、彼女の恵まれた歌声のおかげで、ディープなソウル・ミュージックに聴こえるのが面白い。

また、3曲目に入っている”Somebody Does”は、キース・スウェットの2016年作『Dress to Impress』の収録曲”Say”などに関わっている、アンドラエ・アレクサンダーが参加した作品。ドラムとベースを中心にしたシンプルなトラックの上で、ギターをかき鳴らしたフォーク・ソング風の伴奏の上で、乙女心を切々と歌い上げたミディアム・ナンバー。ヴィジュアルや歌声から「強い女性」のイメージを抱かれがちな彼女だが、まだ23歳(本作の発売時点)のうら若き乙女らしく、この曲のような甘酸っぱいメロディも良く似合っている。

そして、ニーヨがソングライティングに携わっている”Hideout”は、電子楽器を多用した、リアーナやビヨンセの楽曲を連想させるモダンなトラックと、”Sexy Love”や”Closer”のような、ニーヨのヒット曲を思い起こさせる、爽やかで流麗なメロディが魅力のミディアム・ナンバー。ハンマー投げのハンマーのような、重く力強いラポーシャの歌声を、爽やかなメロディが中和して、絶妙なさじ加減に落とし込んでいる。

それ以外の曲でも、アデルやワン・ダイレクションに代表される、ポップ・シンガーのスタイルと、ビヨンセやリアーナのようなR&Bシンガーの手法、それにアレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムスのような往年の名シンガー達の表現技法をうまく混ぜ合わせ。メロディやバック・トラックでは、黒人音楽好き以外の様々な人を意識しながら、ダイナミックな感情表現とパワフルな歌声の良さをきちんと引き出す、本格的なソウル・ミュージックを聴かせている。その作風は、アレンジ技術を含む総合的な歌唱力が問われる、同番組を勝ち上がった彼女の持ち味を生かしたものだ。

ファンタジアやルーベン・スタッダードに負けず劣らずの、類稀な歌唱力を持つ彼女の魅力を活かした、親しみやすいメロディと、高度なヴォーカル技術が合わさった本格的なR&B作品。アレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムスから、ビヨンセやリアーナへと続く、力強い女性シンガーの系譜を継ぐ有望な新人のデビュー作だと思う。

Track List
1. What Is Love
2. Good Woman
3. Somebody Does
4. Hideout
5. When in Rome
6. Breathe
7. No Problem (Self Talk)
8. Already All Ready
9. Will You Fight
10. Lock You Down
11. Send Me Your Love
12. Stay
13. Cover Up





Already All Ready
La'Porsha Renae
Motown
2017-03-31

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