melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

PJ Morton - Gumbo Unplugged (Recorded Live At Power Station Studios) [2018 Morton Music]

近年は自身名義の活動だけでなく、人気ロック・バンド、マルーン5のキーボード奏者として活躍している、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のシンガー・ソングライター、PJモートンことポール・モートンJr.

2017年には、自身の4年ぶりの新作『Gumbo』を発表。同作を引っ提げてツアーを敢行する一方、マルーン5の一員として『Red Pill Blues』を制作。前者はビルボード・チャートに入らない、通好みの作品でありながら、グラミー賞のベストR&B部門にノミネートし、後者は複数の国でゴールド・ディスクに認定される大ヒット作となった。

このアルバムは、本人名義では約1年ぶりのスタジオ・アルバム。新作の録音やツアーで多忙な日々の合間を縫って録音された本作は、オーケストラと組んで『Gumbo』の作品を再演した、スタジオ・ライブ作品だ。といっても、単なる既発曲の再演ではなく、収録曲の順序を替え、MCも盛り込むなど、スピーカーの向こうの観客を意識して演奏された、本格的なライブ録音になっている。

本作の1曲目は、『Gumbo』では3曲目に収録されている”Sticking to My Guns”。軽快なギターのカッティングに荘厳なストリングスを被せる演出は、これから始まるライブへの期待を掻き立てる。軽やかなリズム・セクションの上で、オルガンを演奏しながら歌うモートンの姿は、”Sir Duke”を歌っていたころのスティーヴィー・ワンダーによく似ている。楽しいライブの幕開けにふさわしい1曲だ。

続く”Claustrophobic”では、スピーカーの向こうの観客に語り掛けるところから始まるミディアム・ナンバー。オリジナル版でも印象的だった、年季を感じさせる音のシンセ・ベースを使いつつ、ヴォーカルはメロディを丁寧になぞるスタイルに切り替えている。原曲ではペルが歌っていたパートを、キーヨン・ハロルドのトランペットが担当してる点も見逃せない。

また、前作の最後を飾ったビージーズのヒット曲のカヴァー”How Deep Is Your Love”は、低音を抑え気味にして、軽妙なヴォーカルを強調している。ストリングスの音を控え、ハンド・クラップやオルガンの伴奏でリズムをとる演出からは、ゴスペルの影響も感じられる。ギターやコーラスのアレンジも含め、伴奏全体でグルーヴを生み出す手法は、ゴスペルからロックまで、あらゆるジャンルの音楽に取り組んできた彼の、音楽への深い造詣とセンスの良さを感じさせる。

そして、今作の最後を締めるのは、BJザ・シカゴ・キッドとハミルトンズをフィーチャーした ”Everything’s Gonna Be Alright”。『Gumbo』では6番目に入っていた曲だが、本作では一番最後に収録。多くの歌手に歌い継がれている名曲だが、本作ではライブのクライマックスを意識して、『Gumbo』版の泥臭さを残しつつも、高揚感のある演奏に仕立てている。コール&レスポンスなどのゴスペルで用いられる手法が、他の音楽でも通用することを教えてくれる。

このアルバムから感じるのは、多くのライブを経験してきたモートンの演奏能力の高さだ。難しいフレーズを正確に演奏するだけでなく、楽曲やライブ全体の展開を意識して緩急をつけたり、アレンジを加えたりする。この単なる手先の演奏技術を超えた、楽曲全体に目を配り、具体的なパフォーマンスに落とし込む技が、彼の魅力だと思う。

同じ楽曲でも、演奏の度に違った表情を見せる、ライブの醍醐味が思う存分楽しめる良質な録音。作品としての完成度が高さだけでなく、彼のステージを見てみたいと思わせる説得力もある名盤だ。

Producer
PJ Morton

Track List
1. Sticking to My Guns
2. Claustrophobic feat. Keyon Harrold
3. Religion feat. Lecrae
4. How Deep Is Your Love
5. First Began
6. Go Thru Your Phone
7. They Gon’ Wanna Come
8. Alright
9. Everything’s Gonna Be Alright feat.BJ the Chicago Kid & The Hamiltones




Gizelle Smith - Ruthless Day [2018 Jalapeno Records, Mocambo]

2014年に発表した、ドイツのファンク・バンド、マイティ・モカンボスとのコラボレーション・アルバム『This Is Gizelle Smith & The Mighty Mocambos』で、ヴォーカルを担当したことをきっかけに注目を集め、その後は、自身の名義でも複数のシングルをリリース。マーサ・リーヴスを彷彿させる、可愛らしさと力強さを両立した歌唱と、キュートなルックスで人気を博した、イギリスのマンチェスター出身のシンガー・ソングライター、ジゼル・スミス。

近年は積極的にライブをこなしているものの、新作のリリースがなかったので気になっていた彼女だが、このたび8年ぶりの新作を発表した。

このアルバムは、彼女自身の名義では初のスタジオ・アルバム。ハンブルクを拠点に活動し、マイティ・モカンボスの作品も手掛けている、デフ・ステッフことステファン・ワグナーがプロデュースを担当。曲作りにはジゼル自身も携わるなど、マイティ・モカンボスとのコラボレーション作品を意識した、ソウル色の強いアルバムになっている。

本作の1曲目は、2018年の頭にリリースされたシングル曲”Dust”。ブリブリとうなるダイナミックなベースと優雅なストリングスの伴奏が心地よいアップ・ナンバー。ダイナミックな演奏を聴かせるリズム・セクションと上品な上物の組み合わせが、彼女のキュートな歌声を引き立てている。 これに対し、2017年に発表された”Sweet Memories”は、流麗なコーラスと愛らしいヴォーカルの組み合わせが光る、甘酸っぱい雰囲気のミディアム・ナンバー。端正の取れたバック・コーラスを効果的に使った曲作りは、メイン・イングリディエントの"Let Me Prove My Love to You"をサンプリングした、アリシア・キーズの”You Don't Know My Name”にも少し似ている。しかし、サビに入ると、リズム・セクションが急に荒々しくなるなど、随所に遊び心を盛り込んでいるから油断できない。

また、ストーンズ・スロウからアルバムを発売したことも記憶に新しい、マイロン&Eのエリック・ボスをフィーチャーした”S.T.A.Y.”は、軽妙で爽やかなメロディが心に残るミディアム・ナンバー。鍵盤楽器とホーンを組み合わせた軽やかな伴奏の上で、繊細でキュートなジゼルと、芯が強いけど柔らかい歌声のエリックによる、対照的な個性を活かしたメリハリのあるパフォーマンスを披露している。両者の持ち味を巧みに引き出すアレンジ技術が聴きどころだ。

そして、本作の隠れた目玉が、日本盤限定のボーナス・トラックである”Dust”のリミックス版だ。マジンガーZの主題歌をリミックスするなど、日本のサブカルチャーにも造詣が深いことで知られるフランスのクリエイター、ディミトリ・フロム・パリが手を加えたこの曲は、彼が得意とする太く、柔らかい音色を使ったハウス・ナンバー。ダフト・パンクやマーク・ロンソンなど、多くの人気ミュージシャンが取り入れているディスコ・サウンドだが、同ジャンルに何十年も取り組んできた彼が作るトラックは一味違う。

今回のアルバムは、メアリー・ウェルズやブレンダ・ハロウェイの流れを汲む、キュートな声と力強いパフォーマンスが武器の、彼女の魅力を丁寧に引き出した、本格的なソウル・アルバムだ。ポップなメロディと軽やかなパフォーマンスは、60年代、70年代のモータウン・レコードが得意としていた音楽とよく似ている。しかし、彼女のスタイルは、ポップだけどどこから粗削りな、60年代のモータウン・サウンドというよりは、ジャクソン5やスモーキー・ロビンソンなどが活躍していた70年代のモータウン・サウンドに近い。おそらく、洗練されたサウンドが流行している現在の音楽シーンを意識したものだが、偶然にも父、ジョー・スミスが演奏でかかわっていた、70年代のフォー・トップスの音楽に歩み寄っているから面白い。

力強い歌声で勝負をするシンガーが多い時代に、可愛らしい声で勝負した潔いアルバム。歌手の数だけ異なる音楽がある、ヴォーカル作品の醍醐味を存分に堪能してほしい。

Produceer
Def Steff

Track List
1. Dust
2. Hero feat. Eric Boss
3. Scared of Something
4. Love Song
5. Sweet Memories
6. Around Again
7. S.T.A.Y. feat. Eric Boss
8. Ruthless Day
9. Hey Romeo
10. Twelve
11. Amen
12. Dust (Dimitri From Paris Remix) *Bonus Track





Ruthless Day
Gizelle Smith
Jalapeno
2018-03-30

Mya - T.K.O. (The Knock Out) [2018 Planet9, MGM]

ミュージシャンだった父と、経理の仕事をしていた母の間に生まれ、幼いころから家族の前でマイケル・ジャクソンを模したパフォーマンスを披露するなど、歌とダンスに強い興味を示していた、ワシントンD.C.出身のシンガー・ソングライター、マイアことマイア・マリー・ハリソン。

4歳になると歌やダンスのレッスンにも通うようになった彼女は、10歳になると高い実力が認められ、多くのステージを経験するようになった。

そんな彼女は、98年にユニヴァーサル傘下のインタースコープと契約。同年に自身の名前を冠したアルバム『Mya』でメジャー・デビューを果たすと、アメリカ国内だけで140万枚を超える大ヒットにする。その後も、2016年までに6枚のアルバムを発表し、クリスティーナ・アギレラやピンク、リル・キムと一緒に、ラベルの”Lady Marmalade”をリメイク。グラミー賞を獲得し、複数の国のヒットチャートを制覇、全世界で500万枚を売り上げる2000年代屈指のヒット曲にした。

本作は、彼女にとって2年ぶり8枚目のスタジオ・アルバム。前作同様、彼女のレーベル、プラネット9からのリリースだが、配給はユニヴァーサル傘下のMGMとソニー系のオーチャードが担当。プロデューサーにはマーズの名義でボビー・ヴァレンチノやクリス・ブラウンの作品を手掛けているラマー・エドワーズや、フェイス・エヴァンスの作品にもかかわっているカイル・タイラーに加え、R.ケリーも参加。美しいメロディと洗練されたトラックを組み合わせる技術には定評のある面々と一緒に、本格的なR&B作品に取り組んでいる。

彼女の代表曲”Fallen”のフレーズを取り込んだ”The Fall”から続く、実質的な1曲目”Open”は、同郷のラッパー、ゴールドリンクをフィーチャーした作品。2017年に、彼のアルバムに収録された”Roll Call”で共演したこともある両者の、新しいコラボレーション曲は、メアリーJ.ブライジの”My Life”のフレーズをサンプリングしたスロー・ナンバー。”Roll Call”ではスタイリッシュなアップ・ナンバーを披露していた二人だが、こちらの曲ではサンプリングを駆使した泥臭いバラードを披露している。90年代に流行していた手法を、効果的に取り込んだ佳作だ。

また、本作に先駆けて公開された、”Ready For Whatever”の続編である”Ready For Whatever 2.0”は、マーズが制作を担当したバラード。ヴォーカルのアレンジなどに手を加え、彼女の色っぽさを強調した作品に仕立てている。セクシーな雰囲気を演出するため、R.ケリーの作品を引用する発想が彼女のキュートな歌声をセクシーにしている、大胆な発想が功を奏した良曲だ。

そして、同曲にさらなるアレンジを加えた”Ready (Part III - 90's Bedroom Mix)”は、R.ケリーの『12 Play』や『R. Kelly』を思い起こさせるロマンティックなアレンジとメロディ、彼女の艶めかしいパフォーマンスが合わさった名バラード。 近年はヒップホップ・アーティストとのコラボレーションも多いケリーだが、この曲では歌を聴かせることに重きを置いた90年代のスタイルを披露している。モダンな音色を使いつつも、少し懐かしい雰囲気を醸し出すトラックと、ヴォーカルの色気を巧みに引き出す作曲技術が聴きどころ。

それ以外の曲では、彼女とフロエトリーのマーシャ・アンブロジアーズが共作した先行シングル”Knock You Out”も見逃せない。マーシャのセンスが加わったメロディは、低域を効果的に使った、シンプルで落ち着いた雰囲気のもの。R.ケリーのエロティックなメロディとは一味違う、貫禄と安定感が魅力だ。

この作品からは、「成熟した大人」になった自身の音楽を模索して、試行錯誤を続けるマイアの姿が強く印象に残る。子供のころからステージに立ち、少女のように可憐な歌声で多くの人の耳目を集めてきた彼女も、まもなく40歳。芸歴も20年を超え、ベテランの域に達した彼女が、持ち前の可愛らしい歌声を活かしつつ、録音やステージの豊富な経験を活かした多彩なパフォーマンスを披露しようと腐心する姿が印象的だ。この、若い時の成功体験を捨てることなく、その一方で、現在の自分に合わせてスタイルを更新しようとする取り組みが本作の面白いところだと思う。

R&B界のキュートな歌姫が、往年の面影を残しつつ、成熟した歌唱を披露した充実の作品。年齢を重ねることで表現の幅を広げる彼女のヴォーカルが光る良盤だ。

Producer
Mya Harrison, Lamar "MyGuyMars" Edwards, Khirye Tyler, R.Kelly etc

Track List
1. The Fall
2. Open feat. GoldLink
3. Simple Things
4. Down
5. Ready For Whatever 2.0
6. Damage
7. Ready (Part III 90's Bedroom Mix)
8. You Got Me
9. T.K.O. Interlude feat. AGuyNamedCliff
10. Knock You Out
11. With You feat. MyGuyMars
12. If Tomorrow Never Comes





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