ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

Liz Aku - Ankhor [2017 Sonar Kollective]

ドイツのプロダクション・チーム、ジャザノバがベルリンに設立した音楽レーベル、ソナー・コレクティブ。同社が新たに送り出したのは、ベルギーのゲント出身のシンガー・ソングライター、リズ・アクだ。

彼女の武器は、強くしなやかな歌声と、高い技術を誇るバンド・メンバーによる繊細だが強靭なサウンド。そんな彼女は、シャーデーを彷彿させる神秘的な雰囲気と、ビラルやディアンジェロを連想させる、ジャズやヒップホップを取り込んだ作風で人気のシンガーだ。

本作は、彼女にとって初のフル・アルバム。マオリ族のサイケデリック・ロック・ミュージシャン、ビリーTKの息子で、自身も電子音楽の作品を数多く残している、ニュージーランド出身のプロデューサー、マラTKとの共同プロデュース作品だ。また、バンド・メンバーには、ピアノのデイヴィッド・ソーマエレや、ベースのジュアン・マンセンスなど、実力に定評のある面々を揃えている。

アルバムの1曲目”The Drum Major Instinct”は、マラTKをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。セルジュ・ヘルトージュのしっとりとしたギターの演奏と、マラTKが生み出す電子音を組み合わせ、フォーク・ソングの素朴さとR&Bの洗練されたサウンドを両立している。リズの涼しげな歌声が、透き通った音色の伴奏を際立たせている。

また、”Secret Change”は、ジュアンのベースとジョルディ・ギーエンズのドラムが生み出す変則的なビートと、マラTKが生み出すエレクトロ・サウンドが一体化した、クレイグ・デイヴィッドのアルバムに入っていそうなガラージ色の強い曲。バンドによる演奏と、柔らかい音色のシンセサイザーを多用することで、癖のあるトラックを聴きやすくしている点も面白い。音数を減らしメロディをシンプルにすることで、ビートの衝突を避けながら、歌声をきちんと聴かせているヴォーカルのアレンジも魅力的だ。

そして、ズールー・ムーンを招いた”Ankhor”は、デイヴィッドの美しいピアノの演奏から始まるミディアム・ナンバー。古いレコードからサンプリングしたような、温かい音色を使ったビートと、ポロポロと鳴り響くピアノの伴奏が切ない雰囲気を醸し出している。ラップを交えつつ、気怠そうに歌うリズの歌唱は、エリカ・バドゥやアンジー・ストーンにもよく似ている。エリカ・バドゥやディアンジェロのような、ソウルとヒップホップを融合させた音楽をより洗練させたような印象を受ける曲だ。

それ以外にも、見逃せない曲が”Hunger”だ。電子音を多用したきらびやかな伴奏と、ヒップホップのビートを組み合わせたトラックが印象的な、ミディアム・ナンバー。サーラ・クリエイティブ・パートナーズやプラチナム・パイド・パイパーズを連想させる先鋭的なビートと、荒々しい歌唱の組み合わせは、ジョージ・アン・マルドロウの音楽を彷彿させる。本作の収録曲では異色だが、とても格好良い曲だ。

彼女の魅力は、透き通った歌声を活かしたしなやかなヴォーカルと、ジャズやソウル、ヒップホップや電子音楽を混ぜ合わせた先鋭的だけど聴きやすいサウンドだと思う。フォークソングと電子音楽を混ぜ合わせたり、生バンドにガラージの要素を取り入れたり、ヒップホップの手法を取り入れたりと、色々なスタイルに挑みながら、自身の持ち味である、流麗で洗練されたヴォーカルに個性を加えている。その手法は、エリカ・バドゥやインディア・アリーにも似ているが、エリカよりもシンプルで聴きやすく、アリーよりも個性的という、ありそうでなかったものだ。

ヒップホップや電子音楽の手法を取り入れて、感性の鋭い若者にアピールしつつ、緻密で洗練された演奏技術によって、大人の鑑賞にも耐えうる作品に纏め上げている。コンピューターと生演奏を対立項にするのではなく、両者を上手に使い分けることで新鮮で優雅な音楽に仕立てた、大人のための新しいR&B作品だと思う。

Producer
Liz Aku, Mara TK etc

Track List
1. The Drum Major Instinct feat. Mara TK
2. Slowly
3. Deceive The Mind
4. Seasons Change
5. Secrets Die
6. Flight & Fall
7. Just What I Need
8. Ashamed
9. Hiding Alone
10. Ankhor feat. Zulu Moon
11. Hunger
12. Breathing Underwater feat. Mara TK





Ankhor
Sonar Kollektiv
2017-05-05

Bryson Tiller - True to Self [2017 RCA]

2011年、18歳の時に発表したミックステープ『Killer Instinct Vol.1』をきっかけに注目を集め、R&Bとトラップを融合した独特の作風が、熱心な音楽ファンの間だけでなく、一般の音楽好きからも高い評価を受けた、ケンタッキー州ルイスヴィル出身のシンガー・ソングライターでラッパーの、ブライソン・ティラーことブライソン・ジャン・ティラー。

そんな彼は、『Killer Instinct Vol.1』を公開した後も、ストリーミング・サイトなどを通して楽曲を発表。そこで公開した楽曲がティンバランドやドレイクの目に留まり、RCAOVOからメジャー・デビューのオファーを受け、RCAと契約する。

2015年には、メジャー・デビュー作となるフル・アルバム『Trapsoul』をリリース。その名の通り、トラップとR&Bを融合した彼の音楽は、ヒップホップが好きな人、R&Bが好きな人の両方から愛聴され、全米総合チャートの8位、R&B、ヒップホップ・チャートの2位を獲得。プラチナ・ディスクにも認定された。また、同作からカットされた3枚のシングル”Don’t”、”Exchange”、”Sorry Not Sorry”もプラチナ・ディスクを獲得、前二者はダブル・プラチナにも認定される大ヒットとなった。

本作は、前作から2年ぶりとなる、2枚目のオリジナル・アルバム。前作がR&Bシンガーのデビュー作としては異例のヒットになり、2017年には、アメリカの雑誌フォーブスの特集で、「30歳以下の重要人物30人」の一人に選ばれる(ほかには、ガラントウィークエンドジャスティン・スカイなどが選ばれている)など、多くの人が期待する中で発売された新作だ。

プロデューサーには、前作で”Sorry Not Sorry”など、3曲を担当したティンバランドの名前こそないものの、リアーナの”Work”などを手掛けたボーイ・ワン・ダやアヨが前作に引き続き参加、それ以外にも、フランク・デュークスやテディ・ウォルトンなど、豪華な面々が並んでいる。

アルバムの実質的な1曲目である”No Longer Friends”は、スウィフDとグレイブズがプロデュースした曲。電子音を使った重いドラムと、チキチキという音色が印象的なトラップ・ビートに乗って、じっくりと歌を聴かせるスロー・ナンバー。歌に重きを置きながら、随所でラップに切り替えることでリスナーを飽きさせない配慮が心憎い。トゥイートの”My Place”をサンプリングしたトラックも、いい味を出している。

これに対し、NESが手掛けた”We Both Know”は、バス・ドラムの音を軸にしたシンプルなトラックをバックに、語りかけるように歌う姿が印象的なバラード。チェンジング・フェイシスの”Stroke It Up”を引用したトラックも格好良い。歌とラップを使い分ける技術が彼の魅力だが、この曲のように、メロディのついたラップもこなせるから凄い。

また、ボーイ・ワン・ダがペンを執った”Run Me Dry”は、本作では珍しいアップ・ナンバー。ドレイクの”Passionfruit”にも似ている、明るい音色を使ったレゲトン風のビートに乗って、軽妙な歌を聴かせている。ドレイクの”Passionfruit”はメロディをしっかりと歌ったR&B作品だったが、こちらは喋るように歌うラップ寄りの曲。南国風の明るいビートを前にして、ラッパーのドレイクと、R&Bシンガーのブライソンが対称的な解釈を加えた点は興味深い。

そして、本作からの先行シングルでもある”Somethin Tells Me”は、ドレイクの”The Motto”やリュダクリスの”How Low”などを手掛けてきた、カナダ出身のプロデューサー、T-マイナスが制作した曲。電子音を組み合わせたトラックは、トラップのスタイルそのものだが、テンポを徹底的に落としたスロー・バラード。トレイ・ソングスやマーカス・ヒューストンの作品を思い起こさせる、じっくりと「歌」を聴かせる曲だが、華やかな電子音を盛り込んだビートのおかげで、キャッチーで聴きやすい雰囲気にまとまっている。ある意味、彼の作風を象徴する曲。

彼の音楽は、R&Bとトラップを融合させた斬新さに目が向けられやすいが、メロディや歌にじっくりと耳を傾けてみると、その緻密さに驚かされる。曲のタイプに応じて声色を使い分け、ラップと歌を融合させた歌唱や、声色を変えて疑似デュエットのように仕立てたものなど、多彩な演出を用意している。それだけでなく、歌声やメロディを聴かせるタイプのバラードでは、丁寧でダイナミックなヴォーカルも聴かせてくれる。この本格的なヴォーカルと色々なスタイルを取り込む器用さ、トラップの要素を取り入れたキャッチーなビートを組み合わせた作風が、彼の音楽をキャッチーだけど奥深いものにしていると思う。

ヒップホップの技術を用いて、とっつきにくいと感じる人もいる本格的なR&Bを、聴きやすいものに仕立て直した面白い作品。R.ケリーやドレイクのように、ヒップホップとR&Bの融合しつつ、彼らとは違うアプローチを見せた彼の音楽は、多くの人にR&Bの魅力を気づかせるきっかけになりそうだ。

Producer
Boi-1da, Frank Dukes, Illmind, Hollywood Hot Sauce, Keyz, T-Minus, Wondagurl etc

Track List
1. Rain on Me (Intro)
2. No Longer Friends
3. Don't Get Too High
4. Blowing Smoke
5. We Both Know
6. You Got It
7. In Check
8. Self-Made
9. Run Me Dry
10. High Stakes
11. Rain Interlude
12. Teach Me a Lesson
13. Stay Blessed
14. Money Problems / Benz Truck
15. Set It Off
16. Nevermind This Interlude
17. Before You Judge
18. Somethin Tells Me
19. Always (Outro)





True to Self
RCA
2017-06-23

Eric Bellinger - Cannabliss [2017 YFS]

ジャクソン5がカヴァーした”Rockin' Robin”でも有名な、シンガー・ソングライターのボビー・デイを祖父に持ち、自身もニッキー・ミナージュの”Anaconda”や、クリス・ブラウンの”Fine China”、”Add in Me”といったヒット曲に携わってきた、カリフォルニア州コンプトン生まれ、ロスアンジェルス育ちのシンガー・ソングライター、エリック・ベリンガー。

2013年に初のミックステープ『Born II Sing Vol. 1』を発表すると、翌年には1作目のオリジナル・アルバム『The Rebirth』をリリース。その後も、フル・アルバムとEPを2枚ずつと、ミックステープを5本制作しながら、ザ・ゲームの”Circles”や、ジョー・バドゥンの”Where Do We Go”などに客演。多くの録音作品を残してきた。

今回のアルバムは、2017年3月にリリースされた『Eric B for President: Term 2』から、わずか1か月という短い間隔で発売された、彼にとって3枚目のEP。プロデューサーには、過去の作品にも参加しているソウフウエストやビージー・タイムズのほか、初顔合わせとなるドー・ボーイやビーツ・バイ・デズを起用。多くのヒット曲を生み出してきたエリックの、キャッチーでロマンティックなメロディの魅力を、多彩なトラックで引き出している。

アルバムのオープニングを飾る”Staring At The Ceiling”は、ドー・ボーイのプロデュース作品。音数を絞ったチキチキ・ビートに乗って、じっくりと歌い込んだスロー・テンポの楽曲だ。2分弱の短い曲ながら、甘くロマンティックな、彼の世界に引き込んでくれる魅力的な作品だ。

続く”Flight”は、プロデューサーに『Eric B For President: Term 1』に収録されている”Sometimes”を手掛けたソーフウエストを、ソングライターにエーロックと、クリス・ブラウンの”Add in Me”の共作者でもあるニーマン・ジョンソンを起用。カリフォルニア州インランド・エンパイア出身の女性シンガー、キャンディス・ボイドをフィーチャーしたスロー・ナンバー。”Staring At The Ceiling”に引き続き、 アッシャーの”Burn”やシスコの”Incomplete”を彷彿させる、チキチキという音を使ったトラックの上で、じっくりと歌を聴かせている。甘くグラマラスなエリックの歌声と、線は細いが強靭で色っぽいキャンディスのヴォーカルの対比が光っている。

そして、ビーツ・バイ・デズがプロデュースした”Not High Enough”は、ヒップホップのビートとギターの弾き語りを融合した異色の曲。ビートを意識しつつも、メロディに合わせてリズムを崩したギターの伴奏が、弾き語りっぽい雰囲気を演出している。音数を減らして、ギターと衝突しないように気を配ったトラックや、ビートに乗りつつ、徹底的にメロディを崩して歌うエリックのパフォーマンスも格好良い。粗削りな作りのようで、細部にまで気を配った面白い曲だ。

また、”Circles”でも共演しているザ・ゲームとコラボレーションした ”Blazin' Wit The Bros”は、”Not High Enough”に続きビーツ・バイ・デズがプロデュース。マライア・キャリーの”Fantasy”など、多くのヒット曲でサンプリングされてきた、トム・トム・クラブの”Genius of Love”を使ったミディアム・ナンバーだ。元ネタの有名なフレーズをループさせたトラックに、ゆったりとしたメロディを組み合わせたスタイルは、同曲を引用した作品では珍しい。緊張感溢れるザ・ゲームのラップが、リラックスした雰囲気の楽曲に適度な緊張感を与えている。

アルバムの最後を締めるのは、ビージー・タイムズが手掛けたスロー・ナンバー”Ganja”だ。本作のタイトルに引っ掛けた(どちらも「大麻」という意味。厳密には「Ganja」が麻薬としての大麻、「Cannabliss」は植物としての大麻を指す。)この曲。パーカッションなどの明るい音色を多用した、陽気なトラックに乗せて、まったりと歌う姿が印象的。力を抜いて歌った時の声は、スティーヴィー・ワンダーにちょっと似ている気がするのは自分だけだろうか。

『Cannabliss』というタイトルが示す通り、今回のアルバムは収録曲のほとんどが、ゆっくりとしたテンポのトラックに乗って、のんびりと歌ったものになっている。流行のメロディやトラックをフォローしている点は変わっていないものの、曲調は一貫しており、色々なスタイルの楽曲を並べたこれまでの作品に比べると、異彩を放っている。だが、従来とは異なるタイプの作品でも、自分のスタイルを保ち、多くの人を楽しませるセンスは、頭一つ抜けていると思う。

スヌープ・ドッグのレイド・バックした雰囲気と、トレイ・ソングスの本格的な歌唱、ドレイクのヒップホップとR&Bを融合する技術が揃ったことで誕生したストリート色溢れる作品。クリス・ブラウンやアッシャーといった、流行のR&Bが好きな人はもちろん、ドクター・ドレや50セントのような、ウエストコースト・ヒップホップが好きな人もぜひ聴いてほしい。

Producer
Doh Boy, SoufWest, Beats By Dez, BeazyTymes

Track List
1. Staring At The Ceiling
2. Flight feat. Candice Boyd
3. Not High Enough
4. Blazin' Wit The Bros feat. The Game
5. Ganja





Cannabliss - EP [Explicit]
YFS (Your Favorite Song)
2017-04-17

記事検索
タグ絞り込み検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

アクセスカウンター


    にほんブログ村 音楽ブログへ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 音楽ブログ ブラックミュージックへ
    にほんブログ村

    音楽ランキングへ

    ソウル・R&Bランキングへ
    LINE読者登録QRコード
    LINE読者登録QRコード
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    • ライブドアブログ