melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

Raul Midón - Bad Ass and Blind [2017 Artistry Music Limited

ニューメキシコ州のエンブドで、アルゼンチン系の父とアフリカ系アメリカ人の母の間に生まれ、幼い頃に視力を失ったシンガー・ソングライターのラウル・ミドン。だが、彼は音楽の分野で才能を発揮し、4歳の時にドラムを習得。その後、ギターの厳しい訓練を経てさらに才能を開花、マイアミ大学のジャズ専攻を優秀な成績で卒業するまでになった。

大学を卒業した彼は、セッション・ミュージシャンとして活動する一方、2005年までに自主制作で3枚のアルバム発表する。当時の彼は、シャキーラやフリオ・イグレシアスといったラテン系のミュージシャンと一緒に仕事をすることが多く、シャキーラのツアーにも帯同したことがあるようだ。その後、彼はソロ・シンガーとしてデビューするためにニューヨークへ移住。ハウスDJのルイ・ヴェガなどと活動をともにするようになり、彼の来日公演にも参加している。このようにして、活躍の場を広げていった彼は、キャピトル傘下のマンハッタン・レコードと契約、メジャー・レーベルとのディールを手にする。

2005年にアルバム『State Of Mind』でデビューした彼は、2014年までに5枚のアルバムを発売。2012年以降はインディ・レーベルからのリリースだが、2014年に発表した『Don't Hesitate』では、マーカス・ミラーやダイアン・リーヴスといったジャズ界の大御所が集結するなど、現在もミュージシャンを中心に根強い支持を集めている。

本作は、前作から約3年ぶりの新作となる、彼にとって通算7枚目のスタジオ・アルバム。再発レーベルとして有名なイギリスのチャーリー・レコードの新録部門、アーティストリー・ミュージックが配給を担当し、スタンリー・ジョンソンやオスカー・カストロ・ニーヴスといったギタリストの作品を手がけている、マリア・エーレンライヒをプロデューサーに招いた、大人向けのポピュラー・ミュージック作品になっている。

アルバムのオープニングを飾る"Bad Ass and Blind"は、ハービー・ハンコックの"Cantaloupe Island"とスティーヴィー・ワンダーの"Too High"のフレーズを織り込んだリズミカルでキャッチーなアップ・ナンバー。中盤で三拍子のパートやハンド・クラップの乱れ撃ち、ラップを披露するなど、彼の多芸な一面が垣間見れる佳曲だ。

一方、これに続く"Red, Green, Yellow"は、爽やかなヴォーカルと軽やかなギターの音色が心地よいポップ・ナンバー。伸び伸びと歌うラウルの姿と、ラテン音楽やソウル・ミュージックの影響が薄い、流れるようなメロディが心地よい楽曲だ。

そして、"Wings of Mind"はジャズの影響が色濃い軽妙なアップ・ナンバー。ハットからバスドラムまで、全てを活用して絶妙なさじ加減のビートを刻むドラムに、ブンブンと唸るベース。ソロ・パートもきっちりとこなす職人肌のトランペットやピアノをバックに、絹のように滑らかで艶やかな歌声を響かせている。中盤で披露するギター・ソロも、グラント・グリーンやガトー・バルビエリのような、丁寧で正確だが優雅で色っぽい。多くの音楽に向き合ってきたキャリアの重みと確かな技術を感じさせるものだ。

これに対し、"If Only"はサンタナのようなラテン色の強いロック音楽と、ジャズやソウル・ミュージックの要素を混ぜ合わせたミディアム・バラード。妖艶なギター・ソロやマックスウェルの姿がダブって見える繊細なヴォーカルと、彼の豊かな表現力を脇から支える、緻密だが多彩な表情を見せる演奏が一体化した、非の打ち所がない完璧な曲だ。

そして、見逃せないのが本作の最後を飾る"Fly Like An Eagle"だ。ベースなどの伴奏にシンセサイザーを使った本作では珍しいタイプの曲で、モダンなバック・トラックに乗せて、荒々しい歌声を響かせる、往年のブルースやソウルの要素と現代のR&Bの要素が同居した佳曲だ。

2005年に『State Of Mind』を発表した頃の彼は、高度なギターの演奏技術と、繊細なヴォーカルが同居した、ギタリスト版スティーヴィー・ワンダーとも、第2のテリー・キャリアーとも言えそうな作風だった。だが、それから十数年、彼の音楽性はどんどん広がり、色々なジャンルのルーツ・ミュージックを飲み込んだ、懐かしいようで新しい、彼独自の音楽スタイルを確立したように映る。

斬新な音楽が次々と登場する中、着実な活動で見識と技術を深め、他のミュージシャンとは異なる個性的な作品を生み出した彼。どのジャンルにも属さない、だけど、どのジャンルが好きな人でも楽しめる、現代のポップ・スタンダードだと思う。

Producer
Raul Midón, Maria Ehrenreich

Track List
1. Bad Ass and Blind
2. Red, Green, Yellow
3. Pedal To The Metal
4. Wings of Mind
5. If Only
6. Sound Shadow
7. Jack (Robert Lorick)
8. You & I
9. All That I Am
10. Gotta Gotta Give
11. Fly Like An Eagle





バッド・アス・アンド・ブラインド [日本語帯・解説付] [輸入CD]
ラウル・ミドンj
ARTISTRY / King International
2017-03-10

 

Stone Foundation - Street Ritual [2017 100% Records]

2011年に自分達のレーベル、ターニング・ポイントからアルバム『The Three Shades Of...Stone Foundation』 でデビュー。ビートルズやザ・フーに代表されるリズム&ブルースを取り入れたロックと、彼らに多大な影響を与えたアメリカのソウル・ミュージックの要素を融合した独特のサウンドで、多くのファンを魅了してきたイギリスのファンク・バンド、ストーン・ファンデーション。彼らにとって、2015年の『A Life Unlimited』以来となる、通算4枚目のフル・アルバム。

本作の特筆すべき点は、何と言っても豪華なゲスト・ミュージシャン達。これまでの作品でも、ノーラン・ポーターやカリーン・アンダーソンなどの著名なミュージシャンが参加していたが、今回のアルバムでは、彼らがソウル・ミュージックに触れるきっかけを作った、伝説のロック・バンド、ザ・ジャムのポール・ウェラーがプロデュースとフィーチャリング・ヴォーカルで参加。それに加え、2016年のアルバム『This Is Where I Live』がグラミー賞を獲得したことも記憶に新しい、スタックス・レコード所属の名手ウィリアム・ベルと、2015年に発売されたロックの名曲をカヴァーしたアルバム『Worthy』がヒットしたことでも話題になったベティ・ラヴェットを招聘。彼らが憧れたモッズの音楽面のルーツ、アメリカのソウル・ミュージックの現代風リメイクに挑戦している。

アルバムの1曲目は、ポール・ウェラーがヴォーカルを担当した"Back In The Game"。哀愁を帯びたギターの音色や、泥臭いビート、ちょっと野暮ったいコーラスが、60年代のスタックスの音楽を彷彿させるミディアム・ナンバー。70年代にはロックのアイコンとして喝采を浴びたポールが、オーティス・レディングが乗り移ったかのように、ダイナミックで荒々しい歌声を響かせる光景に、時間の経過と人間の成熟を感じさせる。

一方、ポールがヴォーカルを担当したもう一つの楽曲で、本作からのシングル曲でもある"Your Balloon Is Rising"は、ジーン・チャンドラーやジャッキー・ウィルソンが活躍していた60年代後半のシカゴのソウル・ミュージックを思い起こさせるロマンティックなバラード。ストリングスを使った流麗な伴奏や三連符を多用した優雅なメロディは、都会的な作風で多くのリスナーを惹きつけた、往年のシカゴ・ソウルを忠実に再現している。"Back In The Game"では、泥臭く、田舎っぽ歌唱を披露していたが、こちらの曲では、蜂蜜のように甘く、絹糸のように繊細なヴォーカルを聴かせくれる。経験を積んだことで、単なる歌唱の技術だけでなく。曲の性質に応じて表現方法を切り替える技も身につけた、ポールの優れた音楽センスが光る楽曲だ。


また、それ以外の楽曲にも、魅力的な録音がたくさんある。ウィリアム・ベルをヴォーカルに起用した
"Strange People"は、彼の最新作『This Is Where I Live』に収められていても不思議ではない、泥臭い雰囲気のミディアム・バラード。親子ほどの年齢差がある両者が、音楽によって結びつき、共通の趣味である60〜70年代の音楽に取り組む姿を見ると、音楽が先達から後進へと受け継がれる光景を見るようで、感慨にふけってしまう。

そして、本作のクライマックスとも言えるのが、ベティ・ラヴェットが参加した"Season Of Change"だ。御年70歳を超えるベティが、アレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムズといった、アメリカの音楽史を代表する一流の女性シンガー達に負けずとも劣らない、強烈な音の塊を飛ばす力強いヴォーカルを聴かせてくれる重厚なバラードだ。バック・トラックも、彼女の歌にあわせ、往年のディーヴァの伴奏のような、生演奏を駆使した重く、荒々しい演奏にまとめあげている。

今回のアルバムは、これまでの作品以上に、往年のソウル・ミュージックを意識した作風になっている。だが、面白いのはその方向性だ。シカゴ・ソウルやサザン・ソウルを意識した楽曲が数多く並ぶ一方、モータウンなどのデトロイトの音楽や、ジェイムズ・ブラウンの登場以降、音楽の一ジャンルとして存在感を増し続けているファンクの要素は少ない。このセレクトにおける「癖」が、メンバーはポールを音楽の世界に引き込んだモッズ達の趣味趣向であり、彼らから多くの刺激を受けたバンドの音楽面のルーツであると考えると非常に興味深い。

イギリス人の解釈と、アメリカ人の演奏技術が融合したことで生まれた、21世紀を生きるリスナーに向けた本格的なソウル・ミュージック。これは、年季を積んだソウル・ファンに独り占めさせちゃダメでしょ。

Producer
Pall Weller

Track List
1. Back In The Game feat. Paul Weller
2. Open Your Heart To The World
3. Love Rediscovered
4. The Limit Of A Man
5. The Colour Of.....
6. Street Rituals
7. Strange People feat. William Bell
8. Your Balloon Is Rising feat. Paul Weller
9. Season Of Change feat. Bettye Lavette
10. Simplify The Situation





ストリート・リチュアルズ
ストーン・ファンデーション
Pヴァイン・レコード
2017-03-31

 

Jamiroquai ‎– Automaton [2017 Universal]

1992年にフロント・マンのジェイ・ケイを軸にした6人組バンドとして活動を開始。メンバーの脱退、加入を経て同年のシングル『When You Gonna Learn』でデビュー。翌93年には初のフル・アルバム『Emergency on Planet Earth』をコロンビアから発表し、全英チャートの1位を獲得するなど、華々しいデビューを飾った英国発のファンク・バンド、ジャミロクワイ。

その後、2016年までに7枚のオリジナル・アルバムと、多くのシングルを発表。中でも97年に発表された『Travelling Without Moving』は日本だけで140万枚、全世界で700万枚を売り上げるなど、ポピュラー・ミュージックの歴史に残る大ヒットになった。

本作は、2010年の『Rock Dust Light Star』以来、実に7年ぶりとなるオリジナル・アルバム。今回の作品では、「AIなどの新しい科学技術が浸透した現代の世界で、私達が見失いつつあるもの」をテーマに掲げるなど、相変わらず社会派な態度を見せる一方、収録曲では、シンセサイザーなどの電子楽器をこれまでの作品以上に積極的に取り入れた、モダンなサウンドを聴かせてくれる。

アルバムの1曲目である"Shake It On"は、リズム・マシーンなどの電子楽器と、従来から続く生バンドの演奏を融合したスタイリッシュなダンス・ナンバー。ローファイなシンセサイザーを多用しながら、ストリングスの音色や、人力で演奏されるキーボードなど、アナログの要素も取り入れた楽曲で、ヴォーカルのキャラクターこそ異なるが、ダフトパンクの"Get Lucky"にも似た雰囲気の、2017年仕様にアレンジされたディスコ音楽だ。

これに対し、本作のタイトル・トラックであり、アルバムからの先行シングルでもある"Automaton"は、電子楽器(テクノロジー)を演奏の中核に据えた、本作のコンセプトを体現したような楽曲であり、彼らのキャリアの中では異色の作品。オープニングで使われるシンセサイザーなどのリフから、リズム機材、ベースまで、伴奏の大半を電子楽器で録音し、演奏内容も機械にプログラミングしたような緻密で正確なものになっている。ジェイ・ケイの声も途中でループさせるなど、細かいところまで手が込んでいる。電子音を多用した緻密な演奏とソウルフルな歌声はウィークエンドの"Starboy"を彷彿させる。

一方、もう一つのシングル曲である"Cloud 9"は、"Shake It On"に近い、電子楽器とバンド演奏を巧みに組み合わせた洗練されたアップ・ナンバー。図太いシンセサイザーの音色や、地味だが無駄のないメロディを取り入れている点が少し違うが、97年に発表された”Canned Heat”と雰囲気が似ている、疾走感が心地よい楽曲だ。

それ以外で気になるのは、シンセ・ベースの重厚な演奏と、色々な音色のキーボードを用いた華やかな伴奏が、ジェイ・ケイのクールな歌声を引き立てる"Something About You"や、シュガーヒルズ・ギャングのような80年代のヒップホップ・ミュージシャンを思い起こさせる複雑でコミカルなベース・ラインと、一度聴いたら耳から離れないフレーズを次々と放つジェイ・ケイの存在感が光るファンク・ナンバー”Nights Out In The Jungle”、エムトゥーメイの"Juicy Fruits"を連想させる、リズム・マシンやシンセサイザーの正確な演奏と、人間にしか生み出せない絶妙な匙加減のパフォーマンスを同居させた”Dr Buzz”などの楽曲。これらの曲では、今まで以上に多くの新しい技術や機材を取り入れる一方、それを既存のバンド・サウンドで差し替えるのではなく、バンドの音楽に新しい一面を引き立てるツールとして活用しているのが面白い。

今回のアルバムの中核となるコンセプトは、おそらく「テクノロジーに支配されず、それを利用してやろうぜ!」というメッセージだと思う。だが、収録曲をじっくり聴くと、それ以上に、作品の背後にある前作から7年の間に起きた音楽業界の変化、具体的に言えば、ドレイクやウィークエンド、ダフトパンクやカニエ・ウエストなどが、新しいツールと既存の音楽スタイルを絶妙なバランスで同居させた作品でで成功を収めてきた現状に対する、彼らなりの意思表示にも聴こえる。

電子音楽の要素を取り入れた黒人音楽や、生演奏を含むディスコ・ミュージックのエッセンスを取り入れたクラブ・ミュージックなど、ジャンルの枠を超えた音楽性の楽曲が流行している2010年代。その思想を、90年代から新しい機材や前衛的なプロモーション・ビデオで先取りしてきた彼らによる、同時代への批評まで飲み込んだ傑作だ。

Producer
Jay Kay, Matt Johnson

Track List
1. Shake It On
2. Automaton
3. Cloud 9
4. Superfresh
5. Hot Property
6. Something About You
7. Summer Girl
8. Nights Out In The Jungle
9. Dr Buzz
10. We Can Do It
11. Vitamin
12. Carla
13. Nice And Spicy (Bonus Track)




オートマトン
ジャミロクワイ
ユニバーサル ミュージック
2017-03-31

 
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