2000年代半ば、ニーヨが『In My Own Words』でブレイクして以来、これまでソングライターとして裏方で活躍していたミュージシャンが、自身の名義でも作品をリリースすることが珍しくなくなった。この中にはゴードン・チェンバースのように、ある程度の成功を収めた人もいれば、曲作りの才能には恵まれていても、シンガーとしては幸運に恵まれず、成功することができなかった人も数多くいた。

そんな中、ザ・ドリームことテリウス・ナッシュは、ソロ・シンガーとしても息の長い活動を続けるソングライターの一人。

作家としては、リアーナの”Umbrella”やマライア・キャリーの”Touch My Body”、ブリトニー・スピアーズの”Me Against The Music”など、多くのヒット曲を手掛けてきた一方で、自身の名義でも6枚のフル・アルバム(うち1枚はテリウス・ナッシュ名義)と1枚のEPをリリースしている。

キャピトルから2015年に発表されたEP『Crown』以来となる新作は、ジェイ・Zが率いるロック・ネイションからリリースされた5曲入りのミニ・アルバム。本作でもこれまでの作品と同様、ほぼすべての楽曲を自身の手で制作、プロデュースしており、作品のクオリティは極めて安定している。

アルバムのオープニングを飾る”Lemon Lean”では、過去の作品でもおなじみのラップとヴォーカルの中間のようなスタイルの歌を使ったミディアム・バラード。甘い歌声で語り掛けるように歌うドリームの姿と、弾き語り風のシンセサイザーをアクセントに使ったモダンなトラックが格好良い。続く”College Daze”では、静かに唸るようなベースの音色とシンセサイザーの伴奏をバックに、しみじみと歌うバラード。ファルセットを多用したサビの部分が、クリス・ブラウンやオマリオンの曲にも少し似ている。

また、外部のプロデューサーが制作にかかわっている”Rih-Flex”と”Madness”は、彼らの個性が発揮された、ドリームの曲としては新しいタイプの作品。

まず、ジェローム・ポッターやサミュエル・グリズマーが参加した”Rih-Flex”は、リアーナの”Umbrella”を思い起こさせる荘厳でダークなトラックに、ほとんどラップといっても差し支えない、しゃべるようなメロディが乗っかったミディアム・ナンバー。カニエ・ウエストの2016年作『The Life Of Pablo』に参加している面々だけあって、音色を絞り込みつつ、リスナーに強烈な印象を残すトラック作りのテクニックは、頭一つ抜けている。そして、モニカやボーイズ・II・メンなど、多くのR&Bアーティストを手掛けている、カルロス・マッキンニーやジェローム・ゴードン、テヴィン・ゴードンが参加した”Madness”は、こちらもカニエ・ウエストっぽい、少ない音数のトラックを使ったミディアム・ナンバー。ラップのような歌が、隙間だらけのトラックの上で響く光景が、寂しい雰囲気を醸し出している。

そして、アルバムの最後を飾る”Ferris Wheel”は、柔らかいシンセサイザーの音色と、強力なフィルターをかけた幻想的なトラックが、ラリー・レバンがプレイした80年代のハウス・ミュージックを彷彿させるアップ・ナンバー。オートチューンやトーク・ボックスでヴォーカルを加工する曲は珍しくないが、エフェクターを使って自分自身を素材にしてしまうのは斬新かもしれない。

2作連続の配信限定作品だが、各楽曲への力の入れ具合は過去の作品と変わらない。フルアルバムのリリースが楽しみだ。

Producer
Terius "The-Dream" Nash

Track List
1. Lemon Lean
2. College Daze
3. Rih-Flex
4. Madness
5. Ferris Wheel