イギリス南部の中規模都市、コルチェスター出身のシンガー兼ソングライター、ジェイムズ・ハンター率いるソウル・バンド、ジェイムズ・ハンター・シックスの、3年ぶりとなるオリジナル・アルバムがニューヨークに拠点を置くダップトーン・レコードからリリース。

80年代には、Howlin’ Wilf & The Veejays(50年代から70年代にかけて活躍したブルース・ミュージシャン、ハウリン・ウルフと、同時代に隆盛を極めていた黒人音楽レーベル、Vee-Jayが名前の由来)というバンドで、ウィーバーズ・クラブや100クラブといった、ロンドンの名門ライブ・スペースで頻繁にライブを行い、90年代半ばには、ヴァン・モリソンのライブに起用された時のパフォーマンスが注目を集め(そのころの演奏は、ヴァン・モリソンのライブ・アルバム『A Night In San Francisco』に収められています。要チェック!)、2006年に発表した彼のソロ・アルバム『People Gonna Talk』は、ビルボードのブルース・チャートを制覇し、グラミー賞にもノミネートした、実績豊富な実力派ミュージシャンだ。

ジェイムズ・ハンター・シックスは、2012年に結成された彼の新しいバンド。彼の音楽は、以前からミュージシャンの間では好評で、中でも、ダップトーン一派の看板シンガー、シャロン・ジョーンズは彼らの音楽を特に気に入ったこともあり、2013年のデビュー・アルバム『Minute By Minute』は、彼女の作品も手掛けているボスコー・マンをプロデューサーとして紹介、ユニヴァーサルからリリースされた、同作のアナログ盤をダップトーンから発売している。

今回のアルバムでは、ダップトーンに完全移籍し、カリフォルニアにある、ダップトーン・レコード御用達のペンローズ・スタジオでレコーディング。プロデューサーやエンジニアにも同レーベルで多くの仕事を行っている面々が集まって、ジェイムス・ハンターのソウル趣向を具体的な音楽に落とし込むのに一役買っている。

アルバムに先駆け、7インチ・レコードでリリースされた”(Baby) Hold On”は、50年代末に流行した、ラテン音楽を取り入れたジャズやリズム&ブルースの影響が垣間見えるダンス・ナンバー。パーカッションやホーン・セクションが中心になって生み出す、腰に訴えかけるグルーヴと均整のとれたアンサンブルを聴かせる伴奏をバックに、力強く歌うジェイムズの姿が格好いいダンス・ナンバーだ。

この他には、音の塊になって押し寄せる、息の合ったホーンの演奏をアクセントに、熱いヴォーカルを畳みかける”Free Your Mind (While You Still Got Time)”や、サム・クックやデビュー直後のスモーキー・ロビンソン&ミラクルズを彷彿させる、甘く歌ったヴォーカルと、ゆったりとしたバンド演奏が光るミディアム・ナンバー”Something's Calling”。スカ(最近のロックではなく、60年代に流行したブルー・ビートの方)のエッセンスを取り入れた、まったりとした雰囲気のアップ・ナンバー”Light of My Life”や、ジャズの要素を取り入れた流麗なピアノ演奏と、ジェリー・バトラーを連想させる軽妙な歌い口が心地よいミディアム”In the Dark”など、60年代のソウル・ミュージックをベースに、ジャズやリズム&ブルース、ラテン音楽のエッセンスを取り入れた楽曲が揃っている。

ブルーノ・マースやジョンレジェンドのように、60年代以降のソウル・ミュージックから影響を受けたミュージシャンは数多くいるが、彼のようにリズム&ブルースやラテン音楽、ジャズや50年代から60年代初頭のソウル・ミュージックを引用するミュージシャンは珍しい。だが、彼らの母国イギリスの音楽事情に目を向けると、その嗜好にも納得がいく。英国でも米国と同様、ソウル・ミュージックが好きな人は沢山いるが、その中でも、上でも触れたウィーヴァーズ・クラブや100クラブといったクラブやライブ・ハウスでは、彼らが取り上げるような音楽が、ノーザン・ソウルやポップコーンR&Bと呼ばれ、特に珍重されているのだ。ビートルズがマーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスの”Please Mr. Postman”をカヴァーしてヒットさせたのは有名な話だが、イギリス人の間では、アメリカのポップでダンサブルな黒人音楽は、他の国の人が想像する以上に愛されているのだと思う。

イギリス人のセンスとアメリカ人の感性が融合することで、イギリス以外の地域ではあまり光が当たってこなかった、往年のソウル・ミュージックの魅力を提示した面白いアルバム。音楽の世界の広さと深さ、自分達が気づかなかった面白みを提示してくれる。

Producer
Gabriel Roth, Neal Sugarman, Steven Erdman

Track List
1. If That Don't Tell You
2. This Is Where We Came In
3. (Baby) Hold On
4. Something's Calling
5. A Truer Heart
6. Free Your Mind (While You Still Got Time)
7. Light of My Life
8. Stranded
9. Satchelfoot
10. In the Dark





Hold on!
James -Six- Hunter
Daptone
2016-02-05