2016年に発表されたデビュー・シングル『Location』がR&Bチャート最高15位を含む、長期間に渡るヒットになったことで注目を集めた、ジョージア州フォート・スチュアート生まれ、テキサス州エル・パソ育ちのシンガー・ソングライター、カリードこと、カリード・ロビンソン。彼にとって、初のオリジナル・アルバムとなる『American Teen』が、RCA傘下のライト・ハンド・ミュージックからリリースされた。

軍の電源技術者だった母の元、全米各地を転々としていた彼は、ハイ・スクール生活の後半からエル・パソに定住。このころから、学業と並行して音楽活動を行うようになった彼は、2016年にデビュー曲”Location”を発表。この曲がリアリティ・ショーの司会者カイリー・ジェナーのスナップチャットで紹介されたことを切っ掛けに、局所的なヒットとなり、最終的に複数のネット・メディアで取り上げられるようになる。その後も、アリーナ・ベレズなどのシングルにフィーチャーされるなど、いくつかの作品に起用された彼は、2017年3月、満を持して初のフル・アルバムをリリースするに至った。

アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラック”American Teen”は、シェリルやアレクサンダー・オニールといった80年代のソウル・シンガーの楽曲を思い出させる、電子ドラムやシンセサイザーの軽い音色が新鮮なミディアム・ナンバー。90年代までのR&Bでは幾度となく見られた、一つ一つの言葉を丁寧に吐き出すヴォーカルが、ラップのように言葉を畳みかけるシンガーが主流になった2017年には却って斬新に映る。

また、アルバムに先駆けて発売された”Location”はブライソン・テイラー”Ten Nine Fourteen”やケリー・ローランドの”Love Me Til I Die”などに携わってきた、シックセンスなどが参加したミディアム・ナンバー。ネプチューンズの”Frontin’”などを連想させる限界まで音数を絞ったビートと、ドレイクやT-ペイン以降のR&Bのトレンドを踏襲した、ラップと歌の中間のような、緩いメロディのヴォーカルが心地よい楽曲だ。

続く、”Another Sad Love Song”は、柔らかい音色のシンセ・ドラムが、リル・ルイスの”French Kiss”やフランキー・ナックルズ”Whitsle Song”が流行していた90年代初頭のハウス・ミュージックを彷彿させる四つ打ちのダンス・ナンバー。DJDSが手掛けるハウス・ミュージックより少しテンポを落としたトラックに、中国の民謡っぽいメロディを組み合わせて、YMOの”東風”のような、異国情緒を感じさせる楽曲に落とし込んだ発想が面白い曲だ。

一方、シックセンスがプロデュースした”Saved”はチキチキ・ビートをベースに、温かい音色のギターと、クールなシンセサイザーの音色を使い分けた伴奏が不思議な雰囲気を醸し出すスロー・ナンバー。カリードの朴訥とした歌と、アッシャーやクリス・ブラウンが歌っても違和感のないモダンなトラックの組み合わせが新鮮だ。

それ以外にも、シンセサイザーの音色をホーン・セクションのように使った高揚感たっぷりのトラックと、どこかのんびりとした雰囲気さえ感じさせるカリードの歌声の対比が面白いアップ・ナンバー”Winter”や、パーティネクストドアの作品を思い出させる、電子音を組み合わせて作られたヒップホップのビートと、哀愁を帯びたメロディが印象的な”Therapy”、ゴリラズの新曲と勘違いしそうなコンピュータを駆使して作られた近未来的なサウンドの上で、武骨な歌声を響かせる”Shot Down”など。シンセサイザーを多用したモダンなトラックと、器用ではないが、太い声を使って丁寧に歌い上げた、牧歌的なヴォーカルが光る楽曲が並んでいる。

インタビューによると、彼はチャンス・ザ・ラッパーやフランク・オーシャン、ケンドリック・ラマーといった、同世代の若者が聴くような2010年代にブレイクした、先鋭的な作風のミュージシャンから強い影響を受けたらしい。確かに、彼の音楽から、ロックや電子音楽の要素を巧みに引用した、彼らのスタイルの影が全く見えないと言ったら嘘になる。だが、彼の音楽が他の人と大きく異なるのは、自身の武骨なヴォーカルを活かす形で、色々なミュージシャンのスタイルを取り込んでいるところだと思う。カリードの音楽は、新しいサウンドを取り入れつつも、自身の朴訥としたヴォーカルと混ぜ合わせることで、幅広い年代、地域の人に親しみやすい作風に落とし込んでいる点が、他の作品と大きく異なっている。

新鮮さと大衆性を両立したという意味では、ウィークエンドやドレイクの次を狙えるアルバムだと思う。保守的なテキサスの空気と若い感性がうまく融合した、面白い作品だ。

Producer

Alfredo Gonzalez, Bryan Medina, Daniel Picciotto, Dave Sava6e, DJDS, Hiko etc

Track List
1. American Teen
2. Young, Dumb & Broke
3. Location
4. Another Sad Love Song
5. Saved
6. Coaster
7. 8TEEN
8. Let’s Go
9. Hopeless
10. Cold Blooded
11. Winter
12. Therapy
13. Keep Me
14. Shot Down
15. Angels





American Teen
Khalid
RCA
2017-03-03

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