ジャクソン5がカヴァーした”Rockin' Robin”などのヒット曲でも知られているシンガー・ソングライター、ボビー・デイを祖父に持ち、自身もクリス・ブラウンの”New Flame”や”Fine China”、ニッキー・ミナージュの”Anaconda”などを手掛けてきたカリフォルニア州コンプトン生まれ、ロス・アンジェルス育ちのシンガー・ソングライター、エリック・ベリンガー。彼にとって、2016年の『Eric B for President: Term 1』以来約半年ぶり、通算5枚目となるオリジナル・アルバム。

ハイスクール時代はフレッド・ハモンドやキム・バレルなどのゴスペル作品に親しみながら、徐々にブランディやアッシャー、ジャギド・エッジといったR&Bのミュージシャンにも興味を持つようになった彼。その後、彼はハイスクールのチームでキャプテンも務めたフットボールの奨学金を辞退して、音楽の道に足を踏み込んだ。

彼はR&BグループAKNU (A Kind Never Understoodの略)の一員としてエピック・レコードと契約したのをきっかけに、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタートする。だが、彼は歌よりもソングライティングに興味を持ったようで、次第に活動の軸足を制作へと移すようになる。すると、彼はライティング・キャンプの一員でもある友人のエリカ・ヌリの助言もあり、ソングライターとしての才能を開花させる。そして、上述の3曲を含む、多くのヒット曲にライターとして携わる一方、自身の名義でも2013年に発表した『Born II Sing Vol. 1』を皮切りに、4年間で10枚のアルバムやミックス・テープを発売してきた。

今回のアルバムは『Eric B for President: Term 1』の続編にあたる作品。前作より多い5組のゲストを招き、多くの曲を手掛けてきたヒット・メイカーらしい、キャッチーな作品に纏めている。

アルバムの1曲目”Naked In The White House”は奇想天外なタイトルに面食らうミディアム・ナンバー。だが、作風はエイコンの”Lonely”やTペインの”I’m Sprung”の流れを汲んだ、歌とラップの中間のようなメロディの爽やかな楽曲。少しだけ声を加工したヴォーカルの匙加減も心地よい、実質2分というのが勿体なく感じられる佳曲だ。

続く”Make You Mine”は、カラっとしたギターの音色が心地よいアップ・テンポの楽曲。ダンスホール・レゲエの影響を感じさせるビートとラップっぽい歌唱の相性も良いダンス・ナンバーだ。

そして、2016年にリリースされたアルバム『All Have Fallen』も記憶に新しい、アトランタ出身のラッパー兼シンガーのエルハエが参加した”Know / Vibes”は、トレイ・ソングスやマーカス・ヒューストンが歌いそうな、シンプルなトラックと甘く色っぽいメロディが印象的なミディアム・バラード。 甘い歌声のエリックと爽やかな歌声のエルハエという、タイプの違う2人のヴォーカルが、楽曲に適度なメリハリを付けている良質なバラード。彼らには失礼な言い方だが、クリス・ブラウンやアッシャーに提供していれば、全米ナンバー1を取っていてもおかしくないクオリティだと思う。

この次の”Too Cool / Boujee”はエリック一人で歌ったバラード。しっとりとしたメロディは”Know / Vibes”と似ているが、大量に録音した自分の声を絡めて複雑なメロディを作ったり、チャンス・ザ・ラッパー風の電子音を多用したヒップホップに変わったりと、色々な演出を盛り込んだ面白い曲だ。同じ路線は”Coastin”でも見られるが、こちらはメロディをじっくりと聴かせることに重きを置いた、シンプルな作りが印象的。彼のソングライターとしての技術の高さを感じさせる、面白い2曲だ。

また、2016年のミックステープ『Summer On Sunset ‎』に収録されている”Women Of Los Angeles”での共演も記憶に新しいワシントンD.C.出身のラッパー、ウェイルを起用した”Treat Yourself”は、ギターとシンセサイザーの音色を巧みに使い分けた爽やかなビートをバックに、”Women Of Los Angeles”のスタイルを踏襲したようなレイド・バックしたヴォーカルが心地よいミディアム。両者の個性が互いの持ち味を引き立てあった、手堅い楽曲だ。

一方、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、タイラ・パークスが参加した”Island”は、のんびりとしたレゲエ・チューン。ゆったりとしたトラックでも、楽曲のマッタリとした雰囲気を崩さない程度に、絶妙な匙加減で丁寧に歌うスキルの高さが注目ポイント。また、アルバムも最後を飾る”Malib Night”もヴィクトリア・モネットという女性シンガーを起用しているが、こちらは、サックスの艶っぽい伴奏とセクシーな女性ヴォーカルを絡めたエロティックなバラード。シックなトラックも含め各パーツのクオリティは本作でも指折りのレベルだが、ちょっと素材を詰め込みすぎた感じもする。

全体としては、前作同様、裏方での経験を活かして、R&Bやヒップホップのトレンドを的確に捉えた面白い曲が揃っていると思う。だが、作家としての才能に恵まれすぎているのか、「エリックらしさ」が隠れているように感じた。だが、歌手としての個性の弱さを補うくらい、ソングライターとして魅力的な曲を揃えてくれたのも事実。個人的には、第2のニーヨ、ドリームになってほしい名手の一人だ。

Track List
1. Naked In The White House
2. Make You Mine
3. Know / Vibes feat. ELHAE
4. Too Cool / Boujee
5. Treat Yourself feat. Wale
6. Island feat. Tayla Parx
7. Coastin’
8. Malib Night feat. Victoria Monet





Eric B for President: Term 2 [Explicit]
YFS (Your Favorite Song) / EMPIRE
2017-03-10