2017年初頭に約1年半ぶりの新作となる3曲入りのEP『Fux with the Tux』を発表。70年代終盤から80年代前半にかけて一斉を風靡した、電子楽器を多用したディスコ・ミュージックを現代のトレンドに合わせて再構築した楽曲で健在っぷりをアピールした、メイヤー・ホーソンとジェイク・ワンによるユニット、タキシード。同EPの発表からわずか1ヶ月という短い期間を経て、彼らにとって2枚目のフル・アルバムとなる新作『Tuxedo II』がリリースされた。
『Fux with the Tux』にも収録されている3曲"Fux With The Tux"、"Special"、"July"は別の記事で触れているので、ここでは簡単な説明に留めて置くが、実際に音を聴いてみた印象では、これらの既発曲はEPのヴァージョンをそのまま再録しているようだ。新しい発見といえば、"Fux With The Tux"の途中で挟まるMCがスヌープ・ドッグだったことだ。飄々とした声で煽るスタイルは、彼らしいといえば彼らしいが、大物な上、フォロワーの多いラッパーなので、ちょっと予想外だった。
さて、新録曲に目を向けると、2曲目に収められている"2nd Time Around"は"Fux With The Tux"の路線を踏襲したアップ・ナンバー。80年代のディスコ音楽を彷彿させるアナログ・シンセサイザーっぽい音色を使ったモダンなトラックと洗練されたメロディが光る楽曲。ゲヴィン・トゥレックの爽やかなバック・コーラスが、メイヤー・ホーソンの甘い歌声を引き立てている点も見逃せない。続く"Take A Picture"も同系統の曲だが、こちらはギターやホーンを加えたバック・トラックで、バーケイズなどのファンク・バンドを思い起こさせる華やかな雰囲気が印象的だ。
一方、中盤の2曲"Rotation"や"Shine"はギャップ・バンドの"Outstanding"やケニ・バーグの"Risin' to the Top"を連想させる。スタイリッシュな伴奏が心地よいミディアム・ナンバー。"Rotatiom"はキラキラとしたシンセサイザーのリフをアクセントに使った煌びやかな演奏をバックに、ゆったりとしたメロディを丁寧に歌った"Outstanding"風の楽曲。レイドバックしたトラックのせいか、サビの歌声がLVやネイト・ドッグのような西海岸のヒップホップ・シンガーっぽく聴こえるのがちょっと面白い。そして、"Shine"は太いベースの音と、ピアノっぽいキーボードや煌びやかなシンセサイザーの伴奏が高級感を漂わせる楽曲。ゲヴィンの甘酸っぱい歌声と絡み合うメイヤーのヴォーカルが、普段以上に色っぽいエロティックな楽曲だ。
それ以外の曲でも、色々な音色のシンセサイザーを使い分けた極彩色の演奏が印象的なインストゥルメンタル・ナンバー”Scooter’ s Groove”や、この曲の手法をヴォーカル曲に取り入れたディスコ・ブギーの”U Like It”など、前作でも見せたディスコ音楽への愛着を惜しげもなく披露した良質なトラックが揃っている。
ブルーノ・マーズの『24K』やマーク・ロンソンの『Uptown Special』のような大ヒット作から、ストーンズ・スロウの同僚だったディム・ファンクもメンバーに名を連ねるユニット、ナイト・ファンクの『Nite-Funk EP』や本作にも参加しているゲヴィン・トゥレックの『Good Look For You EP』のようなコアなファン向けのアルバムまで、多くの作品が70年代末から80年代中盤のディスコ音楽から刺激を受けている。その中で、2人の作品が多くのファンを引き付けてきたのは、機材選びからヴォーカルのアレンジまで曲の全てに気を配って、当時の雰囲気を忠実に再現してきたからだと思う。
もちろん、彼らの作品は過去の音楽の単純なトレースではなく、当時の手法を使いながら、現在のリスニング環境や二人の持ち味を意識して作られている。だからこそ、往年の音楽の手法を取り入れても、しっかりと独自性を発揮しているのだと思う。彼らの作品は偶然の産物ではない、実力によって構築されたものだと再認識させられる、良質なソウル・ミュージックのアルバムだと思う。
Producer
Tuxedo
Track List
1. Fux With The Tux feat. Snoop Dogg
2. 2nd Time Around
3. Take A Picture
4. Rotational
5. Shine
6. Scooter’ s Groove
7. U Like It
8. Back In Town
9. Special
10. Livin’ 4 Your Lovin’
11. July
『Fux with the Tux』にも収録されている3曲"Fux With The Tux"、"Special"、"July"は別の記事で触れているので、ここでは簡単な説明に留めて置くが、実際に音を聴いてみた印象では、これらの既発曲はEPのヴァージョンをそのまま再録しているようだ。新しい発見といえば、"Fux With The Tux"の途中で挟まるMCがスヌープ・ドッグだったことだ。飄々とした声で煽るスタイルは、彼らしいといえば彼らしいが、大物な上、フォロワーの多いラッパーなので、ちょっと予想外だった。
さて、新録曲に目を向けると、2曲目に収められている"2nd Time Around"は"Fux With The Tux"の路線を踏襲したアップ・ナンバー。80年代のディスコ音楽を彷彿させるアナログ・シンセサイザーっぽい音色を使ったモダンなトラックと洗練されたメロディが光る楽曲。ゲヴィン・トゥレックの爽やかなバック・コーラスが、メイヤー・ホーソンの甘い歌声を引き立てている点も見逃せない。続く"Take A Picture"も同系統の曲だが、こちらはギターやホーンを加えたバック・トラックで、バーケイズなどのファンク・バンドを思い起こさせる華やかな雰囲気が印象的だ。
一方、中盤の2曲"Rotation"や"Shine"はギャップ・バンドの"Outstanding"やケニ・バーグの"Risin' to the Top"を連想させる。スタイリッシュな伴奏が心地よいミディアム・ナンバー。"Rotatiom"はキラキラとしたシンセサイザーのリフをアクセントに使った煌びやかな演奏をバックに、ゆったりとしたメロディを丁寧に歌った"Outstanding"風の楽曲。レイドバックしたトラックのせいか、サビの歌声がLVやネイト・ドッグのような西海岸のヒップホップ・シンガーっぽく聴こえるのがちょっと面白い。そして、"Shine"は太いベースの音と、ピアノっぽいキーボードや煌びやかなシンセサイザーの伴奏が高級感を漂わせる楽曲。ゲヴィンの甘酸っぱい歌声と絡み合うメイヤーのヴォーカルが、普段以上に色っぽいエロティックな楽曲だ。
それ以外の曲でも、色々な音色のシンセサイザーを使い分けた極彩色の演奏が印象的なインストゥルメンタル・ナンバー”Scooter’ s Groove”や、この曲の手法をヴォーカル曲に取り入れたディスコ・ブギーの”U Like It”など、前作でも見せたディスコ音楽への愛着を惜しげもなく披露した良質なトラックが揃っている。
ブルーノ・マーズの『24K』やマーク・ロンソンの『Uptown Special』のような大ヒット作から、ストーンズ・スロウの同僚だったディム・ファンクもメンバーに名を連ねるユニット、ナイト・ファンクの『Nite-Funk EP』や本作にも参加しているゲヴィン・トゥレックの『Good Look For You EP』のようなコアなファン向けのアルバムまで、多くの作品が70年代末から80年代中盤のディスコ音楽から刺激を受けている。その中で、2人の作品が多くのファンを引き付けてきたのは、機材選びからヴォーカルのアレンジまで曲の全てに気を配って、当時の雰囲気を忠実に再現してきたからだと思う。
もちろん、彼らの作品は過去の音楽の単純なトレースではなく、当時の手法を使いながら、現在のリスニング環境や二人の持ち味を意識して作られている。だからこそ、往年の音楽の手法を取り入れても、しっかりと独自性を発揮しているのだと思う。彼らの作品は偶然の産物ではない、実力によって構築されたものだと再認識させられる、良質なソウル・ミュージックのアルバムだと思う。
Producer
Tuxedo
Track List
1. Fux With The Tux feat. Snoop Dogg
2. 2nd Time Around
3. Take A Picture
4. Rotational
5. Shine
6. Scooter’ s Groove
7. U Like It
8. Back In Town
9. Special
10. Livin’ 4 Your Lovin’
11. July