動画投稿サイトにアップロードした自作曲や有名なヒット曲のカヴァーが、300万回以上再生されたことで注目を集め、ユニヴァーサル系列のリパブリック・レコードと契約。2012年にシングル『Kings & Queens (Throw It Up)』でデビューした、テキサス州デニソン出身のシンガー・ソングライター、ソーモことジョセフ・アンソニー・ソマーズ・モラレス。彼にとって、フル・アルバムとしては2014年に自身のアーティスト・ネームを冠した1作目『SoMo』以来、ミックス・テープも含めると2015年の『My Life II』以来となる新作。

『SoMo』では、収録曲の大部分をセルフ・プロデュース、もしくはコディ・タープレイとの共同プロデュースで制作していたが、今回のアルバムではトリッキー・ステュアートを含む複数のプロデューサーを起用。ウィークエンドやクリス・ブラウンの楽曲を巧みに乗りこなす、繊細で器用なヴォーカルを活かした、緻密で美しいメロディのR&Bを聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目”Mirror”はピエール・メイダーとトリッキー・ステュアートがプロデュースを担当したミディアム・ナンバー。シンセサイザーの電子音を効果的に使ったシンプルなトラックと、爽やかな歌声を活かした語り掛けるようなメロディが、クリス・ブラウンの”Back To Sleep”を思い起こさせる。デビュー前から、クリス・ブラウンの曲をレパートリーにしていた彼だけあって、この曲のようにポップで軽やかなタッチのR&Bとの相性は極めて高い。

一方、この曲に続く本作からのシングル曲”First”は、電子音と”間”を強調した神秘的なトラックと、丁寧に言葉を紡ぎ出すヴォーカルが印象的なミディアム・ナンバー。電子音をフル活用したトラックと、繊細なヴォーカルはウィークエンドの”Starboy”を彷彿させるが、こちらの曲もプロデューサーはピエール・メイダーとトリッキー・ステュアート。ヒット曲を数多く手掛けている敏腕プロデューサーの多芸多才っぷりと、彼らが作るトラックとソーモの声の相性の良さを再認識させられる。

これに対し、本作で唯一、ゲスト・シンガーをフィーチャーしている”Play”はコディ・タープレイがプロデュースを担当したアップ・ナンバー。マーカス・ヒューストンの”Favorite Girl”を彷彿させる、流麗なメロディが印象的だ。本作に客演しているポップ・シンガーのメイティ・ノイエスのスマートな歌声も、本作の洗練された雰囲気を強調しているように映る。こちらはコディ・タープレイのプロデュース。

それ以外の曲で、特に注目したいのは、本作では異色のダイナミックなバラード”Just a Man”だ。コディ・タープレイに加えジェイソン・ファーマーやジム・ジョンシン、ニコラス・マルゾウカといった大物ミュージシャンも担当しているプロデューサーが終結したこの曲は、キーボードの伴奏からドラムを核にしたシンプルなトラックへと続くこの曲は、ジョーの”I Believe In You”やブライアン・マックナイト”One Last Cry”のような、美しいメロディと感情を巧みに表現する歌唱力で勝負した曲。シンセサイザーを多用した隙間の多いトラックと、繊細な歌声を強調した曲が多い彼だが、声量や表現力が求められる曲も、文句の付けどころがないくらい完璧に歌い上げている。同路線のタイトル曲”Answers”も甲乙つけがたい良曲。ヒットする可能性は皆無だと思うが、この路線を突き詰めたら大化けするんじゃないかと思う。

動画投稿サイトのパフォーマンスが評価されてデビューしただけあって、ヴォーカリストとしてのポテンシャルは非常に高いと思う。だが、流行を切り開く運の良さと大胆さが乏しいのが仇になって、曲のクオリティに見合った結果を得られていないように見える。

だが、彼の明るいメロディからナイーブフレーズまで柔軟に対応する技術や柔らかい声は、稀有なものだ。「歌」や「声」をじっくり味わいたい人にはぜひおすすめしたい。魅力的なシンガーだ。

Producer
Cody Tarpley, J. Pierre Medor, C. "Tricky" Stewart

Track List
1. Intro
2. Mirror
3. First
4. Campion
5. Play feat. Maty Noyes
6. Control
7. Over
8. Curve
9. Do You
10. Want It
11. Just a Man
12. Answers
13. You





Answers
Somo
Republic
2017-03-17