2000年代の初め頃に、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート。ブラック・アイド・ピーズやメイシー・グレイのライブでオープニング・アクトを務めるなどして経験を積んだ後、2005年にサム・クックの同名曲のカヴァーを含むアルバム『A Change Is Gonna Come』でメジャー・デビュー。60年代のソウル・シンガーを彷彿させる力強いヴォーカルと、ヒップホップの手法を取り込んだバック・トラックを組み合わせた楽曲で、老若男女幅広い世代から注目を集めた、カリフォルニア州ロス・アンジェルス出身のシンガー・ソングライター、リーラ・ジェイムス。

その後も、スタックスやシャナチーといったR&B、ソウル・ミュージックの名門レーベルから、2016年までに通算5枚のアルバムと多くのシングルを発表。その中でも、ジェイムズ・ブラウンやローリング・ストーンズの名曲を歌った2009年の『Let's Do It Again』や、エッタ・ジェイムスの楽曲をカヴァーした2012年の『Loving You More...』などは、原曲を知らない若い世代に、往年の名曲の魅力を知らしめるきっかけになった。

このアルバムは、2014年の『Fall for You』以来、約3年ぶりとなる通算6枚目のフル・アルバム。配給元は前作と同じBMGで、プロデューサーには、BJ ザ・シカゴ・キッドの『In My Mind』など、多くのヒット作を手掛けている、レックス・ライドアウトを中心に多くの実力者が参加。今回も過去の作品同様、グラマラスな歌声と、重厚な伴奏が合わさったダイナミックなソウル・ミュージックを楽しませてくれる。

アルバムの1曲目”Hard For Me”は、シャーリー・マードックなどとも仕事をしているキーボード奏者、イーヴァン・ブリックが制作を担当したスロー・ナンバー。色々な音色のキーボードを組み合わせてた、オーケストラっぽい豪華な伴奏をバックに、艶っぽい歌声を響かせるスロー・ナンバー。エッタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンにも見劣りしない迫力と、バーバラ・メイゾンやグラディス・ナイトにも通じるセクシーな歌唱が心地よい佳曲だ。

続く”Don’t Mean A Thang”は、”Hard For Me”にも携わっているカルヴィン・フレイザー(デトロイトのギタリストとは同名の別人と思われる)が手掛けるアップ・ナンバー。ドラムを軸に据えたスタイリッシュなビートに乗せて、妖艶な歌唱を聴かせている。落ち着いた雰囲気の伴奏と流麗なメロディ、ふくよかで色っぽい歌声の組み合わせはクリセット・ミッチェルの人気曲”Like a Dream”を連想させる。

そして、本作の目玉が、シングル化された”Don't Want You Back”だ。彼女とレックスが主導したロマンティックなバラードは、カニエ・ウエストのプロデュース作品を思い起こさせる、ソウル・ミュージックっぽい音色を加工してコラージュしたようなトラックに乗せ、派手ではないが味わい深いメロディをじっくりと歌い上げた作品。オーケストラの使い方が、ディオンヌ・ワーウィックやローラ・リーの作品にもちょっと似ている。

また、味わい深さでいえば、エリック・ベネイの最新作『Eric Benét』にも関わっている、ジャイラス・モジーがソングライターに名を連ねるミディアム・バラード”I Remember”も捨てがたい。ドラムとベースを強調した落ち着いた雰囲気のトラックに乗せ、色っぽいファルセットを聴かせる妖艶な雰囲気の楽曲。ストリングスやギターの演奏を随所に挟み込んで、楽曲にメリハリをつけつつ、ロマンティックな雰囲気を強調している点も注目してほしい。

最後に取り上げたいのは、本作では珍しいアップ・ナンバー”Good To Love You”だ。R.ケリーの”Step In The Name of Love”を彷彿させるスタイリッシュなビートを取り入れたこの曲は、90年代に一世を風靡した男性ヴォーカル・グループ、ブラックストリートのリード・シンガー、デイヴ・ホリスターと組んだ曲。豊かな歌声をウリにした音楽スタイルや、レーベルの先輩後輩(デイヴ・ホリスターの2016年作『The MANuscript 』はシャナチー配給)など、音楽的には近しい二人だけあって、相性は抜群。豊かな声量を誇る二人が、自慢の喉を軽々と操り、ダイナミックな歌を聴かせるパフォーマンスは贅沢としか形容できない。

全曲を通して聴いた印象は、デビュー当時からの武器であったヴォーカルが、経験を積んで表現の幅と安定感が増したということ。元々、奇抜なトラックやキャッチーなメロディで勝負するタイプのシンガーではなかったが、新作を発表するごとに、ファルセットを効果的に使った色っぽい楽曲がら、地声を響かせるパワフルな作品まで、一筋縄ではいかない高い難易度の曲を着実に乗りこなし、自分の色に染め上げてきた。本作は、その総決算と呼んでも過言ではない作品で、高い表現力が求められる楽曲を着実に歌い込みつつ、力強さと大人の女性の色気が同居した、彼女らしさに溢れる音楽に仕立て上げてくれた。

アレサ・フランクリンやチャカ・カーンの系譜に立つ、恵まれた歌声と高い技術を持ちつつ、彼女独特の大人の色気を感じさせるパフォーマンスで、先人と差別化したも両立した、本格的なヴォーカル作品。往年のソウル・ミュージックが好きな人はもちろん、ビヨンセやリアーナを通してブラック・ミュージックを知った人にも是非聴いてほしい。「歌」や「声」奥深さと面白みを思う存分堪能できると思う。

Producer
Leela James, Rex Rideout, Evan Brice, Butta-N-Bizkit, Calvin Frazier, Jairus Mozee

Track List
1. Hard For Me
2. Don’t Mean A Thang
3. Don’t Want You Back
4. Real Talk – Relationships (Interlude)
5. I Remember
6. Good To Love You feat. Dave Hollister
7. There 4 U
8. This Day Is For You
9. Take Me
10. All Over Again
11. Our Love
12. Did It For Love





Did It for Love
Leela James
Bmg Rights Managemen
2017-03-31