4歳のときに楽器を始め、十代の頃からスタジオ・ミュージシャンとして活動している、音楽の都、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者、トロンボーン・ショーティことトロイ・アンドリューズ。自身の名義では11枚目、ブルー・ノートに移籍してからは初となるフル・アルバム。

スタジオ・ミュージシャンとしては、ドクター・ジョンやギャラクティックのようなニューオーリンズ出身の人気アーティストだけでなく、エリック・クラプトンやマーク・ロンソンのような他地域出身の大物ミュージシャンまで(余談だが、メイヴィス・ステイプルズの2016年作『 Livin' On A High Note』でも演奏している)、色々な人の作品に携わる一方、自身の名義でも2002年に初のリーダー作となる『Trombone Shorty's Swingin' Gate,』を発表。その後も、複数の名義で多くのアルバム(ライブ録音を含む)を残してきた。

彼が生まれ育ったニューオーリンズは、ジャズやスワンプ・ポップ、ニューオーリンズ・ファンクなど、色々な音楽を育んだ都市として知られている。そんな土地で育った彼の音楽も、同地の豊かな音楽シーンを反映したものだ。今回のアルバムでは、自作の曲に加えて、ミーターズやアーニーK.ドゥーといった地元出身のファンク・バンドやソウル・シンガーの曲もカヴァー。トロンボーンの他に、歌やピアノも披露した意欲作になっている。

肝心の内容だが、なにはともあれ、R&Bやソウル・ミュージックが好きな人にとって見逃せないのは、2つのカヴァー曲だろう。

ミーターズの74年作『Rejuvenation』に収められている”It Ain't No Use”のカヴァーは、11分に及ぶ大作だった原曲の魅力を、4分間に凝縮したミディアム・テンポのファンク・ナンバー。トロイのヴォーカルはオリジナル・ヴァージョンで歌っていたレオ・ネセントリのものと比べると、線が細く、退廃的な雰囲気すら感じさせる。だが、ニューオーリンズのファンク・ミュージックが持つ、一人一人の演奏者の音色を活かした奔放なサウンドと、のんびりとしているようで緻密で躍動感に溢れたグルーヴは、原曲を忠実に再現している。演奏者のキャラクターによって、同じ曲でも全く違う演奏に仕上がる、ニューオーリンズ音楽の特徴が反映された楽曲だ。

一方、アーニーK.ドゥーが70年に発表したヒット曲”Here Come The Girls”のカヴァーは、マーチング・バンドのエッセンスを取り込んだビートの上で、洗練された歌声を響かせるミディアム・ナンバー。セカンド・ライン(ニューオーリンズで死者を埋葬したあと演奏される陽気なダンス音楽)の要素を取り込んでおり、落ち着いた雰囲気の中にも、どこか陽気な部分が感じられる。

それ以外のオリジナル曲に目を向けると、彼自身がヴォーカルを担当した”Dirty Water”が特に魅力的な作品だ。トロンボーンをピアノとマイクに持ち替え、弾き語りスタイルで切々と言葉を紡ぎ出す姿がいとおしいミディアム・ナンバーだ。甘いヴォーカルはベイビーフェイスに、流麗なメロディはサム・スミスの作風を思い起こさせる。

また、本作では希少なスロー・ナンバー”No Good Time”は、彼自身がキーボードも担当。カシーフやフレディ・ジャクソンといった、80年代に活躍した著名なソウル・シンガーの作品を思い出す洗練されたメロディや伴奏に乗せて、甘い歌声を聴かせてくれる、ブラック・コンテンポラリーっぽい曲だ。曲の中盤でホーン・セクションによるロマンティック演奏が、ムーディーな雰囲気を掻き立てている。このアルバムの収録曲の中では、最もニューオーリンズっぽくない録音だが、確かな演奏技術で、あらゆる手法を自分達の音楽に取り込む作風は、間違いなくニューオーリンズの演奏家のスタイルだと思う。

近年のブルー・ノートは、ハンク・モブレイやアート・ブレイキーの録音を送り出してきた、ハード・バップやモダン・ジャズを探求するレーベルから、ノラ・ジョーンズやロバート・グラスパーに代表されるような、ジャズを軸に、色々な音楽を幅広く取り込もうとするミュージシャンを輩出する、総合音楽レーベルへと姿を変えようとしている。本作は、その方針をストレートに体現したもので、ニューオーリンズという、色々な音楽が生まれ、共存している街のミュージシャンらしい、ソウルやファンク、ポップスやロックの要素を取り込んだ、ごった煮のようなジャズ作品に仕上がっている。

「ジャズ」や「ソウル」という一つの枠にとらわれない、色々なジャンルの音楽のエッセンスを取り込んだ、雑駁なようで一本筋の通った良作。普段ジャズを聴かないorジャズしか聴かない人に手に取ってほしい。

Producer
Chris Seefried
Track List
1. Laveau Dirge No. 1
2. It Ain't No Use
3. Parking Lot Symphony
4. Dirty Water
5. Here Come The Girls
6. Tripped Out Slim
7. Familiar
8. No Good Time
9. Where It At?
10. Fanfare
11. Like A Dog
12. Laveau Dirge Finale





パーキング・ロット・シンフォニー
トロンボーン・ショーティ
ユニバーサル ミュージック
2017-05-03