1985年にラッパーのウィル・スミスとヒップホップ・ユニット、ジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンスを結成。87年にアルバム『Rock The House』でジャイブからメジャー・デビューを果たすと、全米R&Bチャートを制覇した”Summertime”や、全英チャートを1位を獲得した”Boom! Shake the Room”など、多くのヒット曲を世に送り出してきた、フィラデルフィア出身のDJでプロデューサーの、DJジャジー・ジェフことジェフリー・アレン・タウンズ。

グループの解散後は、故郷のフィラデルフィアに自身のプロダクション、ア・タッチ・オブ・ジャズを設立。同所を拠点に、ジル・スコットやミュージック・ソウルチャイルド、フロエトリー等の作品をプロデュースする一方、自身の名義でも『The Magnificent』シリーズを含む多くのアルバムをリリース。往年のソウル・ミュージックを彷彿させる柔らかい音色を使ったアダルティなトラックと、豪華なフィーチャリング・ミュージシャンによる個性豊かなパフォーマンスで、ユニット時代を知らない若い世代から、ヒップホップを聴いて育った大人達まで、幅広い年代の支持を集めてきた。

今回のアルバムは、彼の新プロジェクト、ザ・プレイリストの名義で発表された新作。彼の自宅に親交のあるミュージシャン達を集め、1週間で1枚のアルバムを制作するという、野心的なチャレンジの成果だ。

このアルバムでは、カナダのトロント出身のシンガー・ソングライター、グレン・ルイスをほぼ全ての曲でメイン・ヴォーカルに起用。ソロ作品では、ヒップホップのビートとアナログ楽器の音色を組み合わせたトラックに乗せて、ダニー・ハザウェイやスティーヴィー・ワンダーを彷彿させる親しみやすく洗練された歌声を聴かせてくれた彼だけに、音楽性の近いジェフとのコラボレーションには、いやが上にも期待してしまう。

アルバムの1曲目は、フィラデルフィア出身のDJ兼スポークン・ワード・アーティスト、リッチ・メディーナをゲストに迎えた”Distraction”。アナログ・シンセサイザーの温かい音色が印象的なトラックにのせ、淡々と言葉を吐き出すメディーナの姿が印象的なミディアム・ナンバー。中盤以降を担当する、グレンのヴォーカルが、声質こそ大きく違うがR.ケリーを彷彿させる、ラップっぽいスタイルなのも面白い。ヒップホップ出身のジェフとメディーナ、ソウル・ミュージックを聴いて育ったグレンの個性が上手く噛み合った佳曲だ。

これに対し、続く2曲目の”Faceless”は、グレンの歌声を活かした優しい雰囲気のミディアム・ナンバー。柔らかい音色のベースを使い、どっしりと落ち着いた雰囲気を醸し出すトラックに載せて、艶やかな歌声を響かせている。太いベースの音や、トラックに合わせてメロディを崩す歌い方は、フィラデルフィア出身のシンガー、ミュージック・ソウルチャイルドのスタイルに似ている。フィラデルフィアでは、彼みたいな歌い方が流行っているのだろうか?どうでも良いことだが少し気になる。

また、ラッパーのデイン・ジョーダンをフィーチャーしたアップ・ナンバー”Stone Cold”は、ギターやホーンの演奏を取り入れた、この企画を象徴するような楽曲。ジャジー・ジェフが作るビートの上で、今回のプロジェクトのために集結したミュージシャン達が音を重ね合わせ、デインとグレンがマイク・リレーを聴かせている。ジャム・セッションのように各人が自分の技術をアピールしながら、長い時間かけて練り上げられたような、隙のない曲に仕上げている彼らのチームワークと構成力にはひたすら感服する。

そして、本作のハイライトと呼んでも過言ではないのが、スロー・バラードの”Take My Time”だ、アイズレー・ブラザーズの”Footsteps In The Dark”を彷彿させるしっとりとしたビートと、キーボードやホーン・セクションを使ったロマンティックな伴奏の上で、甘い声でじっくりと歌い上げるムーディな楽曲。ヒップホップの手法を用いて作られたトラック使って、デルフォニックスやイントゥルーダーズのような、70年代の甘いソウル・ミュージックを連想させるバラードを作り上げる彼らのセンスとテクニックを堪能できる魅力的なスロウ・ジャムだ。

アルバム全体を通して聴いた印象は、奇抜なトラックや斬新なメロディの曲は少なく、ヴォーカル曲だけを収めた『The Magnificent』といった趣すらある。だが、実力には定評のあるミュージシャン達が、1週間という短い時間に心血を注いで録音された楽曲は、各人が自分の持ち味を思う存分発揮しつつ、それをジェフが調整することで、新鮮ではないが、何度聞いても飽きない、緻密さと躍動感が同居した作品にまとまっている。

ジェフが長い時間をかけて培った人脈によって、個性豊かなヒップホップとソウル・ミュージックのアーティストたちが集結し、彼らの音をジェフが自身の経験を活かして、最適な形に編集する。引用と編集という、ヒップホップの技術をフル活用して作られた。大人向けの本格的なR&B作品。これは、女性シンガーで第2弾を作って欲しい傑作だ。

Producer
DJ Jazzy Jeff

Track List
1. Distraction feat. Rich Medina
2. Faceless
3. Superman
4. Die Empty
5. 1995
6. Defeated feat. Dayne Jordan
7. Mr. Grump
8. Lullaby
9. This Could Be Us
10. Stone Cold feat. Dayne Jordan
11. Good Time
12. Kelo And Kaidi Be Snoring
13. First Time Again
14. Take My Time
15. Chasing Goosebumps