子供のころに教会で歌を覚え、一時はオペラ歌手を目指して研鑽を積むが、音楽ビジネスに挑戦させたほうがいいという父の考えもあり、ポピュラー・ミュージックの歌手に転向。その後、同じ学校に通うビヨンセ達のグループ、デスティニーズ・チャイルドに加入。97年に、ワイクリフ・ジョンがプロデュースした”No, No, No Pt. 2”でメジャー・デビューを果たした、テキサス州ヒューストン出身のシンガー・ソングライター、ラトーヤ・ラケット。

1999年には、”Bills Bills Bills”や”Say My Name”などのヒット曲を含む2枚目のアルバム『The Writing's on the Wall』を発表するが、メンバー間の対立もあり、彼女とラタヴィアは脱退(余談だが、本作に収録されているシングル曲のうち、“Say My Name”と”Jumpin', Jumpin'”の2曲のMVには、2人の姿はなく、新メンバーのミシェル・ウィリアムズが出演している)。ラトーヤはソロに転向する。

サウンドトラックや客演などの仕事を経て、2006年のソロ・デビュー作『LeToya』を発表すると、全米総合チャートとR&Bチャートを制覇、プラチナ・ディスクを獲得し、収録曲の”Torn”もR&Bチャートの2位に入るなど、順当な滑り出しを見せる。また、2009年には『Lady Love』を発売。こちらは総合チャートで12位、R&Bチャートで1位と、本格的なR&B作品が苦戦を強いられるなかで、一定の成果を残した。それ以外にも、役者として映画などに挑戦。2017年にはディオンヌ・ワーウィックを題材にした映画で、主役として出演することが決まっている。

今回のアルバムは、『Lady Love』から約9年ぶりとなる通算3枚目のオリジナル・アルバム。SWVアフター7といった、多くのベテラン・シンガー達の作品を取り扱っているeOneの配給で、プロデューサーには、98ディグリーズやジャスティン・ビーヴァーなどを手がけている、ジョー・ブラックを中心に、ウォーリン・キャンベルやアンドレ・ハリスといった、歌手の声の魅力を引き出す技術に長けた名手が集結している。

アルバムからの先行シングル”B2L(Back 2 Life)”は、ジョー・ブラックのプロデュース作品。1989年にイギリスのソウル・バンド、ソウルIIソウルが発表した同名曲のフレーズをサビに引用したミディアム・ナンバーだ。原曲の有名なフレーズを、テンポを落としてじっくり粘り強く歌ったサビが印象的だが、それ以外のメロディを艶っぽく歌う姿も魅力的だ。メロディを崩して歌う彼女に合わせて、音の配置を崩しつつ、一音一音の「間」を強調した、シンプルなトラックを用意したアイディアも光っている。

この路線を踏襲したのが、もう一つの先行シングル”Used To”だ。ニューヨーク出身のラッパー、Jホワイトとジョー・ブラックの共同プロデュースによるこの曲は、メロディを崩して歌うラトーヤのスタイルに合わせて、タイプが異なる複数のビートを次々と繰り出したアレンジが格好良い曲。クラシック音楽の世界ではしばし見られる、曲の途中で拍子を変える演出を、異なるビートを使うことで、R&Bの世界に持ち込んだ発想が面白い。歌とトラックが一体になったことで、両者の魅力がより一層引き立っていると思う。

また、アルバム発売と同日にシングル化された”Grey”は、2009年のシングル”Regret”でも共演しているリュダクリスをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。マイケル・ジャクソンの”Butterflies”や、アッシャーの”Caught Up”などを手掛けてきた、アンドレ・ハリスが参加したこの曲は、シンプルなビートの上で、滑らかな歌声を響かせた”Butterflies”のテンポを上げたような雰囲気の作品。流麗なメロディを丁寧に歌うヴォーカルが心地よい、ロマンティックな曲だ。脇を固めるリュダクリスのラップもいい味を出している。

だが、本作の隠れた目玉は、ウォーリン・キャンベルがペンを執った”In The Name”だろう。メアリー・メアリーやケリー・プライスなど、多くの歌手に作品を提供してきた売れっ子プロデューサーが手がけた曲は、ゆったりとしたトラックの上で、じっくりと歌を聴かせるスロー・ナンバー。裏声を巧みに混ぜ込んだラトーヤの歌声が、メロディやトラックの持つロマンティックな雰囲気を際立たせている。

今回のアルバムは、これまでの作品同様、ラトーヤの歌をじっくりと聴かせることに主軸を置いた作品だ。トラップやEDM、ディスコ・サウンドといった流行のサウンドとは距離を置き、シンガーの表現力を引き出すことに重きを置いたメロディや、メロディと一体になって、楽曲に豊かな表情を与えるトラックを揃えることで、主役の歌に光を当てている。また、各曲のメロディやアレンジは、歌手に配慮しつつも、現代的なフレーズや音色を用いてスタイリッシュに纏めることで、同時代の作品と並べても、聴き手に古臭さや陳腐さを感じさせないよう配慮している。この「歌を聴かせる」「新鮮に聴かせる」という2点がぶれてないことが、彼女の作品に安定感と、飽きの来ない面白さを与えていると思う。

類稀なる実力を備えた名シンガー、ラトーヤの歌を思う存分楽しめる、本格的なR&B作品。アレサ・フランクリンやオーティス・レディングのような往年のソウル・シンガーが好きな人には今時のR&Bを聴くきっかけとして、ビヨンセやドレイクのような今時のR&B、ヒップホップが好きな人には、歌の奥深さを知るきっかけとして、ぜひ手に取ってほしい。

Producer
Joseph "Jo Blaq" Macklin, D'Mile, @WarrynCampbell, YBZ, J White, First Born, Oh Gosh, Andre Harris

Track List
1. I'm Ready
2. B2L
3. Show Me
4. Used To
5. Middle
6. Grey feat. Ludacris
7. In The Name
8. My Love
9. Worlds Apart
10. Weekend
11. Higher
12. Loving You
13. Disconnected





Back 2 Life
Letoya Luckett
Ent. One Music
2017-05-12