子供のころからフェラ・クティやボブ・マーレーなどの音楽に慣れ親しみ、11歳の頃になるとレコーディング活動を開始。同時に、リル・プリンズの名義で多くのステージを経験してきた、ナイジェリアのラゴス出身のシンガー・ソングライター、ウィズキッドことアヨデジ・イブラヒム・バロガン。

2010年に初のフル・アルバム『Superstar』をリリースすると、アフロ・ビートとヒップホップやR&Bを融合した作風が評判を呼び、ナイジェリアの音楽賞でアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得。ナイジェリアを代表するアーティストの一人に上り詰めた。また、2014年には2枚目のアルバム『Ayo』を発表。フェミ・クティのようなナイジェリア出身のアーティストに加え、エイコンやウェイルのようなアメリカのミュージシャンも起用した本作も成功を収め、アフリカ地域を代表する人気ミュージシャンと称されるようになった。

3年ぶりの新作となる今回のアルバムは、RCAソニー(ただし、RCAはソニー系列)が配給を担当した世界デビュー作。サーズやスペルズといった、ナイジェリア出身のプロデューサーを起用しつつ、ドレイククリス・ブラウン、メジャー・レイザーなど、アメリカで人気のヒップホップ、R&Bアーティストを何人も招いた豪華な作品になっている。

ドレイクをフィーチャーした”Come Closer”は、サーズがプロデュースを担当。色々な音色を取り入れた色鮮やかなビートは、ドレイクの”Passionfruits”にも似ているが、こちらの方がビートは重い。声質が似ているだけでなく、歌うように言葉を繋ぐラップが特徴の両者のパフォーマンスは、一聴しただけでは判別できないくらいそっくりだ。そんな二人が、微妙な声質の違いを活かしてなめらかなマイク・リレーを行う姿は必見だ。

これに対し、メジャー・レイザーがプロデュースとパフォーマンスで参加した”Naughty Ride”は、アフロ・ビートとエレクトロ・ミュージックを融合した不思議なトラックが印象的なアップ・ナンバー。軽妙でリズミカルなビートに、アクセントとして電子音を加えたビートは新鮮だ。斬新なトラックの上で、流麗なメロディを響かせるヴォーカルも意外性があって面白い。

しかし、本作の斬新さを強く感じるのは、なんといってもクリス・ブラウンを招いた”African Bad Gyal”だろう。プロデュースはサーズだが、アフロビートにギターやサイレンの音を組み合わせたトラックは、ダンス・ホール・レゲエやトラップのようにも聴こえる。そんなビートをバックに、太い声で軽やかに言葉を繋ぐウィズキッドと、しなやかで色っぽい歌声を披露するクリス・ブラウンが個性豊かなパフォーマンスを披露する面白い曲だ。

そして、本作の最後を締めるのがトレイ・ソングスが客演した”Gbese”は、デルBが制作を担当した作品。低音を絞ったビートは、カリプソのようにも聴こえる新鮮なもの。その上で、滑らかな声質を活かした丁寧な歌唱がウリのトレイ・ソングスと、軽やかなラップを披露するウィズキッドのコンビネーションも見逃せない。

彼の音楽の面白いところは、アフロ・ビートをベースにしながら、アメリカのヒップホップやR&Bのトレンドを的確に押さえている点だろう。ヒップホップやR&Bがアフロ・アメリカン由来の音楽とはいえ、アフリカのポップスとは異なる点が数多くある。彼の音楽はその差異と正面から向き合い、アメリカの音楽をアフロ・ビートに多様性をもたらすパーツとして使いこなしている点が特徴的だと思う。

世界中の音楽市場に影響を与えてきたアメリカのブラック・ミュージックを丁寧に咀嚼し、母国のポピュラー音楽と組み合わせて、自身の音楽に落とし込んだ魅力的なアルバム。世界には魅力的なミュージシャンが沢山いることを再認識させてくれる良作だと思う。

Producer
Sarz, Del B, Major Razer, DJ Mastard etc

Track List
1. Sweet Love
2. Come Closer feat. Drake
3. Naughty Ride feat. Major Lazer
4. African Bad Gyal feat. Chris Brown
5. Daddy Yo feat. Efya
6. One for Me feat. Ty Dolla Sign
7. Picture Perfect
8. Nobody
9. Sexy
10. All for Love feat. Bucie
11. Dirty Wine feat. Ty Dolla Sign
12. Gbese feat. Trey Songz