アトランタ出身のデイシャ、タイ、タイニーのテイラー姉妹によるヒップホップ・グループ、テイラー・ガールズ。父親がラップをする姿を見て、ヒップホップに興味を持ったデイシャとタイは、自分達もラップに取り組むようになる。そして、腕を磨いた彼女達は、2013年にタイニーをダンサーとして加えた3人組のガールズ・グループとして活動を開始する。

2016年に配信限定のシングル”Watch Me”で表舞台に登場すると、TLCを思い起こさせるエネルギッシュなパフォーマンスとキュートな歌声で、耳の早い音楽ファンの注目を集めた。その後も、シングル”Wedgie”のミュージック・ビデオが、動画投稿サイトで1300万回以上再生されるスマッシュ・ヒットになるなど、ヒット曲を次々と発表し、一気に人気ミュージシャンの仲間入りを果たした。

本作は、そんな彼女達にとって初のEP。配信限定の作品なので、プロデューサー等は不明だが、既発曲同様、トラップやバウンズ・ビートを積極的に取り入れた、アトランタのグループらしい作品になっている。

アルバムのオープニングを飾る”Bang”は2000年代初頭にジャーメイン・デュプリが制作したような、太いベースとチキチキというシンバルの音が印象的なミディアム・ナンバー。重い音色のベースと、シンバルを核にしたシンプルなトラックは、色々な音色のシンセサイザーが多用される2017年に聴くと新鮮に映る。レフトアイを彷彿させる、キュートで弾けるような声のラップが跳ねるようなビートと上手く一体化している点も面白い。

彼女達の姉妹であるトリニティが参加した先行シングル”Steal Her Man”は、サイレンのような音色などを組み合わせたトラップ・ビートが格好良い曲。喉を振り絞って声を出すトリニティのラップが、楽曲のアクセントになっている。

また、本作でも特にインパクトの強い曲が、トリニティの激しいラップが印象的なヒット曲”Wedgie”だ。同郷の人気グループ、ミーゴスの作品を連想させるミステリアスな雰囲気のトラップに乗せて、荒々しいパフォーマンスを響かせるミディアム・ナンバー。甲高いシャウトが、変声期前の男の子ラッパーっぽくも聴こえる、不思議な曲だ。

それ以外の曲では、”Boop”の存在感が光っている。ベルの音を使った童謡のようなメロディを使い、ポップで可愛らしい雰囲気に纏め上げたとラックをバックに、キュートな声で言葉を繰り出すポップな作品。最初から最後まで愛らしい声でラップを続ける2人の姿が耳に残る。

彼女らの音楽を聴いて、真っ先に思い浮かんだのはアトランタからガールズ・グループの頂点へと駆け上がったTLCの存在だ。可愛らしい声で、力強いフロウを聴かせるディシャとタイのラップからは、レフトアイの影響が垣間見える。しかし、同時に彼女達はラッパーのみのグループのため、良くも悪くも、楽曲に統一感が出てしまっているのは気になる。実際、TLCのアルバムに比べると、収録曲のバラエティは乏しく、トラップとバウンズ・ビートが中心になってしまっているのは、ラップ・グループという性質を考えれば致し方ない部分もあるが、少し気になる点だろう。

しかし、純粋に女性ラッパー、もしくはラップ・グループの作品として、このアルバムを聴くと、ポップなようでハード、可愛らしいようでたくましい、絶妙なバランスの作品であることに気づかされる。ラップは怖い、とっつきにくい、というイメージを持っている人に聴いてほしい。キャッチーで楽しいアルバムだ。

Track List
1. Bang feat. Taylor Girlz
2. Bougie
3. Steal Her Man feat. Trinity Taylor
4. Wedgie feat. Trinity Taylor
5. Boop
6. Hater