57年にシングル”The Cow Jumped Over the Moon”で表舞台に登場して以来、60年もの間、音楽業界の一線で活躍しているソウル・グループ、アイズレー・ブラザーズ。一方、66年の結成以降、50年以上、コンスタントに作品を発表し、多くのステージに立ち続けたロック・バンド、サンタナ。この音楽業界屈指のキャリアを誇る、2組のベテランによる初のコラボレーション作品が『Power Of Peace』だ。

アイズレー・ブラザーズにとっては2006年の『Baby Makin' Music』以来、実に10年ぶり(ただし、2013年にはロナルドのソロ作品『This Song Is For You』がeOneから発売されている)、サンタナにとっては2016年の『Santana IV』以来のアルバムとなる本作。ロナルド(ヴォーカル)とアーニー(ギター)のアイズレー兄弟と、カルロス(ギター)とシンディ・ブラックマン(ギター)のサンタナ夫妻に加え、名うてのスタジオ・ミュージシャン達が参加。『Santana IV』や彼らのステージでも披露された、ソウル・ミュージックとロックの距離が近かった時代の、ダイナミックでワイルドな黒人音楽に取り組んでいる。

アルバムの1曲目は、チェンバー・ブラザーズの68年のヒット曲”Are You Ready People”(原題は”Are You Ready”)のカヴァー。ストリングスなどを使った分厚い演奏のオリジナルに対し、こちらではツイン・ギターやパーカッションなど、演奏者を絞った伴奏を取り入れている。荒々しいパーカッションの演奏が乱れ飛ぶ前奏から、鋭いギターの音色が耳に突き刺さるハードな伴奏へとつながる展開が格好良い。『It's Our Thing』や『Get Into Something』でも披露していた、ロナルドの激しいシャウトも聴きどころだ。

これに続くのは、ヴァージニア州ポーツマス出身のシンガー・ソングライター、スワンプ・ドッグが70年に発表した”Total Destruction To Your Mind”のカヴァー。原曲もギターやベースの音色を強調した、泥臭いロック・ナンバーだったが、彼らはそれをより攻撃的な作品にリメイク。鍵盤を叩くようなキーボードの伴奏や、荒っぽいヴォーカルはオリジナルを踏襲しているが、ダイナミックなギター・ソロを加えるなど、よりハードなアレンジを施している。バーケイズのような泥臭さと荒々しさが同居したロック・サウンドと、ロナルドの柔らかい歌声、スワンプ・ドッグのキャッチーなメロディを一つに融合させた面白い作品だ。

そして、スティーヴィー・ワンダーが73年に発表した楽曲”Higher Ground”のリメイクは、原曲よりもテンポを落とし、ドロドロとしたファンク・チューンにまとめ上げたミディアム・ナンバー。ハモンド・オルガンの伴奏を目立つように配置するなど、原曲の雰囲気を残しながら、ジミ・ヘンドリックスを思い起こさせる荒々しいギターの音色を加えるなど、オリジナルとは一味違うアレンジを施している。原曲を知らない人が聴いたら、ジミ・ヘンドリックスの曲のカヴァーと勘違いしてもおかしくない、ワイルドで幻想的なパフォーマンスが格好良い曲だ。

それ以外の曲で、ぜひ聞いてほしいのが、本作が初出となる”I Remember”だ。97年にシンディが制作したスロー・ナンバーは、シンディのキュートなヴォーカルと、ロナルド・アイズレーの滑らかなハイ・テナーの相性の良さが光る、ロマンティックなメロディの曲だ。曲の起承転結が明確な点や、しっとりとしたメロディは、アイズレー・ブラザーズやサンタナというよりも、アース・ウィンド&ファイアの”Reasons”や”After The Love Has Gone”にも近い印象。シンディの可愛らしいヴォーカルを優しく包み込む、ロナルドの貫禄あふれる歌声もいい味を出している。

今回のアルバムでは、スティーヴィー・ワンダーや、チェンバー・ブラザーズ、インプレッションズなど、60年代、70年代のソウル・ミュージックの名曲や、そのスタイルを踏襲した新曲を中心に、色々なスタイルの作品を収録している。しかし、どの曲も彼らの手による大胆なアレンジが施されており、何度も繰り返し聴かないと元ネタがわからないほど、大きく変わった曲も少なくない。だが、どれだけ奇想天外な解釈を加えても、当時の音楽によく似た雰囲気を感じることができるのは、刺々しいギターの音色や、力強いドラムの演奏、そして滑らかでグラマラスなロナルドのヴォーカルなど、彼らが経験し、演奏してきた、70年代のソウル・ミュージックのエッセンスを、丁寧に取り入れているからだろう。

色々なジャンルの音楽が花開き、融合と分裂を繰り返しながら互いに刺激を与えあっていた60年代後半から70年代の音楽の醍醐味を思う存分堪能できる傑作。人間が演奏する音楽の奥深さを感じてほしい。

Producer
Carlos Santana, Cindy Blackman Santana

Track List
1. Are You Ready People
2. Total Destruction To Your Mind
3. Higher Ground
4. God Bless The Child
5. I Remember
6. Body Talk
7. Gypsy Woman
8. I Just Want To Make Love To You
9. Love, Peace, Happiness
10. What The World Needs Now is Love Sweet love
11. Mercy Mercy Me (The Ecology)
12. Let The Rain Fall On Me
13. Let There Be Peace On Earth





パワー・オブ・ピース
サンタナ&アイズレー・ブラザーズ
SMJ
2017-08-09