2006年にEP『Always』でメジャー・デビュー。同年のファースト・アルバム『Bigbang Vol.1』がアルバム・チャートの1位を獲得して、同国を代表する人気アーティストの仲間入りをした、YGエンターテイメント発のダンス・ヴォーカル・グループ、ビッグ・バン。

そんな彼らは、2012年に発表したEP『Alive』と同作に収録されたシングル”Fantastic Baby”で、世界にその名を轟かせる。特に後者は、EDMとヒップホップやR&Bを融合した独特の音楽性と、色鮮やかで幻想的な世界観のMVが注目を集め、非英語圏のヴォーカル・グループでは唯一となる500万ダウンロードを記録(余談だが、2015年にリリースされた”Bang Bang Bang”も同記録を達成している)。”江南スタイル”が1000万ダウンロードを記録したレーベル・メイトのPSYとともに、韓国のポップスの存在を世界に知らしめた。

SOL(国によってはTaeyang表記)ことトン・ヨンベは、同グループのリード・ヴォーカル。11歳の頃から事務所に所属し、目標とする歌手にマイケル・ジャクソンを掲げてきた彼は、高い歌唱力とダンス技術でグループを牽引。また、ソロとしても2008年にEP『Hot』発表したほか、それ以外にも2枚のフル・アルバムをリリース。その全てを韓国チャートの1位に送り込み、2014年には単独でのアジア・ツアーを成功させるなど、着実に成果を上げてきた。

この作品は、彼にとって3枚目のフル・アルバム。過去作にも関わっていた同僚で盟友のG-ドラゴンは不参加だが、彼が所属するYGエンターテイメントのイン・ハウス・プロデューサーであるテディ・パクやチョイス37などが制作を担当。その一方で、彼自身も大半の曲に携わるなど、ミュージシャンとしてのテヤンを強く打ち出した作品になっている。

アルバムに先駆けて発表された”Wake Me Up”は、テディ・パクがYG傘下に設立したブラック・レーベルに所属するカッシュ、R.ティー、ジョー・リーの3人が手掛けた作品。荘厳さすら感じさせる重厚なトラックをバックに、パワフルな歌声を聴かせるミディアム・バラード。セクシーなファルセットを強調したアレンジや音響技術の妙が光っている。10年以上、音楽業界の一線で活躍してきた彼の円熟した歌声が堪能できる佳作だ。

また、テディ・パクやチョイス37に加え、フィフス・ハーモニーの”Work From Home”やDJスネークの”Let Me Love You”などを手掛けてきた韓国系アメリカ人のブライアン・リーが制作に参加した”Darling”は、ピアノの伴奏をバックに、泣き崩れるように歌う激しいヴォーカルが魅力スロー・ナンバー。ベイビーフェイスが90年代に作ったような、メロディの美しさと歌唱力で勝負した作品だ。6月に発売されたG-ドラゴンのEP『KWON JI YONG’』からシングル・カットされた”Untitled 2014”にも通じる本格的なバラードは、アジア市場を意識したものだろうか?

また、本作の収録曲では珍しいアップ・ナンバー”Ride”は、彼自身がペンを執った曲。2000年代初頭にネプチューンズが作っていたような、軽やかなビートをバックに、流れるようなヴォーカルを披露したダンス・チューン。しなやかなテナー・ヴォイスを器用に操る姿は、彼が目標とするマイケル・ジャクソンのスタイルにも似ている。ヒップホップを基調にしたトラックの上で、彼のスタイルを踏襲する姿は、アッシャーやジャスティン・ティンバーレイクのような、ポスト・マイケル・ジャクソンの系譜に立つものだと思う。

そして、本作の最後を締めるのがブラック・レーベル所属のプロデューサー、ピージェイが制作を担当した”Tonight”だ。古いレコードの音をサンプリングしたようなビートの上で、ダイナミックな歌唱を披露した壮大なミディアム・ナンバー。テヤンの指名で参加したブロックBのジコが切れ味の鋭い高速ラップで、雄大な楽曲に起伏を付けている点にも注目してほしい。

今回のアルバムは、収録曲の大半がミディアム・テンポやスロー・テンポの作品であり、「ヒップホップのビートをバックに激しく歌って踊るテヤン」を期待するファンにとっては意外なものかもしれない。しかし、力強い歌声と、経験を積んで磨かれた豊かな表現力、そしてヒップホップのトレンドを適度に取り入れた本作は、彼が憧れたマイケル・ジャクソンが生前最後のアルバム『Invincible』で見せてくれた、ポップなメロディとダンス・サウンド、そして円熟した歌唱が融合した絶妙なバランス感覚をしっかりと受け継いでいる。その姿は、2年の兵役というアーティストにとって長いブランクを控えた彼の微妙な立場と、兵役後に求められるだろう成熟した大人のテヤンの姿を見据えたものと言ってもいいかもしれない。

マイケル・ジャクソンやジャスティン・ティンバーレイクのように、ボーイズ・グループの枠を超え、一人の男性シンガーへと進化しつつある、彼の歌唱を楽しめる本格的なヴォーカル作品。30代のテヤンがどんな音楽を歌うのか、将来を期待させる良作だと思う。

Producer
Taeyang, Teddy Park, Kush, Choice37, Joe Rhee

Track List
1. White Nighrt
2. Wake Me Up
3. Darling
4. Ride
5. Amazin'
6. Empty Road
7. Naked
8. Tonight feat. Zico