幼いころからゴスペル・クワイアなどで腕を磨き、92年に自らの名前を冠したアルバム『Brian McKnight』でレコード・デビュー。プラチナ・ディスクに認定される大ヒット作になると、その後も多くの作品をヒット・チャートに送り込み、さまざまな音楽賞にノミネートされてきた、ニューヨーク州バッファロー出身のシンガー・ソングライター、ブライアン・マックナイト。

また、自身の作品だけでなく、ボーイズIIメンやジャスティン・ティンバーレイクなど、多くの人気ミュージシャンに楽曲を提供、スロー・バラードからアップ・ナンバーまで、様々なタイプの楽曲を手掛ける名ソングライターとしても高い評価を受けてきた。

本作は、そんな彼にとって『Better』以来、約1年ぶりとなる通算15枚目のオリジナル・アルバム。今作でもこれまでの作品同様、収録曲の大半を彼自身が手掛けた、美しいメロディと丁寧な歌唱が思う存分堪能できる佳作になっている。

アルバムの実質的な1曲目である”I Want U”は、彼の十八番ともいえるスロー・バラード。しっとりとしたピアノの伴奏をバックに、艶やか声で丁寧に歌い上げた曲。流れるようなメロディと胸を締め付けるような甘く、切ないヴォーカルは彼の真骨頂。美しい歌声をじっくり堪能したい。

これに続く”10 Million Stars”はシンセサイザーを多用したスタイリッシュな伴奏をバックに、繊細な歌声をじっくりと聴かせるロマンティックなバラード。電子楽器の洗練された音色を使いつつ、シンプルなアレンジを取り入れることで、彼の滑らかでしなやかなヴォーカルの持ち味を引き立てている。彼の持ち味が遺憾なく発揮された良曲だ。

また、5曲目に入っている”Forever”は、本作の収録曲では比較的強い音圧のビートを使った躍動感溢れるミディアム・ナンバー。テンポを落とした四つ打ちのビートにハンドクラップを織り交ぜたトラックは、ミッドナイト・スターの”Curious”のミディアム・テンポ版といった趣だ。もっとも、メロディは”Curious”のように流麗なものではなく、リスナーに語り掛けるかのように淡々と言葉を繋いでいる点が大きく異なる。もっとも、胸を締め付けるような美しく、ロマンティックなメロディはこの曲でも健在なので、安心して楽しんで欲しい。

そして、本作に先駆けて公開された”Everything”は、”I Want U”と同じ路線のスロー・バラード。ピアノの伴奏に乗せて美しいテナー・ヴォイスを披露、流れるようなメロディを丁寧に歌い上げている。起承転結がハッキリとした展開や、ヒップホップの要素が少ない、しなやかで緻密なメロディは最近少なくなったが、古臭さを感じさせない点も面白い。

彼の面白いところは、20年以上のキャリアを誇りながら、その音楽性を大きく変えることなく、常に一線で活躍しているところだろう。流行のサウンドや新しいスタイルを積極に取り入れてきたR.ケリーやファレル・ウィリアムスとは対極の、ジョーキース・スウェットのように一つのスタイルを貫きながら、昔からのリスナーを飽きさせず、新しいリスナーに新鮮さを感じさせる姿は、もはや「ブライアン・マックナイト」という、一つのジャンルになっているといっても過言ではない。

ワインが時間をかけて熟成されるように、自身の音楽にじっくりと向き合い、磨き上げた彼だからこそ生み出せる、シンプルだが唯一無二の個性を持った味わい深いR&Bアルバム。声などの身体的要素や表現などの技術を磨き上げることで、ヴォーカル作品の可能性はどこまでも広がることを再認識させる好事例だと思う。

Track List
1. Genesis (Prelude)
2. I Want U
3. 10 Million Stars
4. Hungry 4 U
5. Forever
6. Don't Leave
7. So Damn Real
8. UDONTHAV2BLONELYNOMO
9. Everything
10. Die For Your Love
11. Blow Your Mind
12. Genesis





Genesis
Brian Mcknight
Independent Label Se
2017-08-25