2008年にリジー・グラント名義のEP『Kill Kill』で鮮烈なレコード・デビューをした、ニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、ラナ・デル・レイこと、エリザベス・ウールリッジ・グラント。

2012年にインタースコープと契約を結び、アルバム『Born To Die』を発表すると、全米アルバム・チャートで1位を獲得。全世界で700万枚を売り上げる大ヒット作となる。その後も2014年に『Ultraviolence』を、2015年には『Honeymoon』をリリース、両作品とも各国のヒット・チャートで上位に食い込み、ゴールド・ディスクを獲得するなど、華々しい成果を上げている。

また、2012年にはボビー・ウーマックの遺作となったアルバム『The Bravest Man in the Universe』に収録されている”Don't Let Me Be Misunderstood”に客演。2015年にはウィークエンドのアルバム『Beauty Behind the Madness』からシングル・カットされた”Prisoner”に参加、翌年にはアルバム『Starboy』からのシングル曲”Party Monster”にソングライターとして関わるなど、R&Bファンの間でも知名度を高めていった。

このアルバムは、彼女にとって2年ぶり4枚目のフル・アルバム。これまでの作品では、ポップス畑のクリエイターと一緒に作ることが多かった彼女だが、本作ではボーイ・ワン・ダやメトロ・ブーミンといったヒップホップやR&Bで実績のあるプロデューサーを多数起用。ゲスト・ミュージシャンにもウィークエンドやエイサップ・ロッキーなど、ヒップホップやR&Bが好きな人にはおなじみのアーティストが集まるなど、ブラック・ミュージックを積極的に取り入れた音楽に取り組んでいる。

本作の2曲目、ウィークエンドをフィーチャーした”Lust for Life”は、ブリトニー・スピアーズからウィークエンドまで、幅広いジャンルのミュージシャンと仕事をしてきたスウェーデン出身の名プロデューサー、マックス・マーティンが参加したミディアム・ナンバー。電子楽器を多用した幻想的なサウンドをバックに、繊細な歌声をじっくりと聴かせている。電子音を多用した伴奏と、高音を聴かせることに重きを置いたメロディ、ガラス細工のように繊細で透明な歌声活かしたヴォーカルの組み合わせはウィークエンドの”Starboy”を思い起こさせる。

これに対し、エイサップ・ロッキーとプレイボーイ・カルティの二人が参加し、ボーイ・ワン・ダがプロデュースを担当した”Summer Bummer”はピアノをバックに訥々と歌うという意外な幕開けが面白い曲。ここからパーティネクストドアドレイクを彷彿させる、シンセサイザーを多用したダークな雰囲気のヒップホップのトラックにつなぐ手法が新鮮だ。ゆったりとしたテンポのビートの上で、リズミカルに言葉を繋ぐ二人のラッパーと、あくまでも淡々と歌うラナ・デル・レイの対照的なパフォーマンスが光っている。

一方、エイサップ・ロッキーを招いたもう一つの楽曲” Groupie Love”はリック・ノウェルズら、ポップス畑のクリエイターが制作に携わっている楽曲。シンセサイザーの音色を重ね、ストリングスのように聴かせる伴奏に乗って、語り掛けるように歌う姿が印象的な曲。スロー・テンポのバラードに、あえてラップを組み込んで起伏をつけるセンスと、ポップスのバラードに溶け込むよう、抑揚を抑えたラップを披露するエイサップ・ロッキーの技術が聴きどころ。

そして、メトロ・ブーミンがプロデューサーに名を連ねる”God Bless America: And All the Beautiful Women in It”は、ヒップホップのビートを取り入れたミディアム・ナンバー。DJプレミアやピート・ロックが作っていたような、緻密でリズミカルなトラックを採用しつつ、じっくりとメロディを歌う姿が魅力的。パワフルなヴォーカルをウリにするソウル・ミュージックとは一味違うポップスのバラードだが、荘厳なメロディに軽妙な印象を持たせるアレンジが魅力の曲だ。

今回のアルバムでは、ヒップホップやR&Bのミュージシャンを起用して、新しいスタイルに挑戦しつつ、これまでの作品に慣れ親しんできたファンの期待を裏切らない絶妙なバランスの楽曲が目立っている。ウィークエンドやフランク・オーシャンなど、ヒップホップやR&Bとロックやポップスの要素を融合したスタイルのミュージシャンが流行る中で、彼らの手法をポップスの側から取り入れたように映る。

R&Bやソウル・ミュージックではないが、アメリカの音楽に黒人音楽が深く根差していることを感じさせる佳作。好き嫌いは別として、「時代の音」として触れてほしい。

Producer
Lana Del Rey, Rick Nowels, Benny Blanco, Boi-1da Emile Haynie etc

Track List
1. Love
2. Lust for Life feat. The Weeknd
3. 13 Beaches
4. Cherry
5. White Mustang
6. Summer Bummer feat. ASAP Rocky, Playboi Carti
7. Groupie Love feat. ASAP Rocky
8. In My Feelings
9. Coachella: Woodstock in My Mind
10. God Bless America: And All the Beautiful Women in It
11. When the World Was at War We Kept Dancing
12. Beautiful People Beautiful Problems feat. Stevie Nicks
13. Tomorrow Never Came feat. Sean Ono Lennon
14. Heroin
15. Change
16. Get Free





Lust For Life
Lana Del Rey
Interscope
2017-07-21