ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

2017年03月

Soul II Soul - Origins: The Roots of Soul II Soul [2016 Metropolis Recordings]

1987年に、ロンドン出身のDJ兼プロデューサーであるジャジーBが率いるサウンド・システムとして活動を開始。翌88年にはローズ・ウィンドロスをフィーチャーしたシングル『Fairplay』でデビューすると、97年までの約10年間に5枚のオリジナル・アルバムと”Keep On Moving”や”Back To Life”、”Get A Life”などのヒット曲を残してきた英国の音楽グループ、ソウルIIソウル。今世紀に入ってからは活動のペースが落ちているものの、2012年にはロンドン・オリンピックの開会式で”Back To Life”がプレイされるなど、英国を代表するソウル・グループとして現在も多くの人から愛されている。

本作は、90年に発表された『A New Decade: Live From Brixton Academy』以来、実に27年ぶりとなるライブ・アルバム。メイン・ヴォーカルは”Keep On Moving”などのヒット曲でヴォーカルを務めたキャロン・ウィーラーが担当する一方で、バック・トラックの大部分を生バンドに差し替えるなど、全盛期の雰囲気を意識しつつ、リズム・マシンやシンセサイザーが中心のオリジナル・ヴァージョンとは違うパフォーマンスを聴かせている。

イントロに続く実質的な1曲目は、彼らのデビュー曲である”Fariplay”。原曲ではパーカッションとキーボードで刻んでいたリズムが、本作ではエレキ・ギターとキーボードに入れ替わっているほか、ベースやドラムの演奏を強調するなど、重心の低い、落ち着いたアレンジになっている。ドラム、ベース、ギター、キーボードの演奏が強調されたサウンドは、心なしか同時期にイギリスからデビューしたブランニュー・ヘヴィーズっぽくも聴こえる。

これに続くのは、彼らの代表曲の一つ”Keep On Moving”。屋敷豪太がプログラミングで参加した原曲では、リズム・マシーンの個性的な音色が淡々とリズムを刻むビートが印象的だったが、この作品では生演奏による力強いドラムに変わるなど、人間の演奏を活かした温かい雰囲気に仕上がっている。オリジナル・ヴァージョンでもリード・ヴォーカルを担当したキャロン・ウィーラーのパフォーマンスは、当時よりも滑らかで感情表現も豊かになっている。

一方、90年にリリースされた2枚目のアルバム『Vol. II: 1990 - A New Decade』からのシングル曲である”Missing You”は、ギターやキーボード、パーカッションの華やかな演奏が格好良いジャズ風の演奏にアレンジし直されている。オリジナル・ヴァージョンでは透き通った歌声でクールな歌唱を聴かせてくれたキム・メイゼルに対し、今回のアルバムでは、キャロンがじっくりと粘り強いヴォーカルを聴かせている。

だが、本作のハイライトは、なんといっても終盤を盛り上げる”Get A Life”、”Back To Life”、”Jazzie’s Groove”の3曲だろう。

原曲を知る人にはお馴染みの、ストリングスを使ったイントロから始まる”Get A Life”では、ジャジーBの淡々としたラップや、小鳥のさえずりのようなコーラス、重厚なビートなどが、オリジナル・ヴァージョンそっくりに再現されている。リード・ヴォーカルも、マルシア・ルイスの妖艶な雰囲気を忠実に踏襲している。また、メアリーJ.ブライジがカヴァーしたことでも話題になった”Back To Life”では、同曲を有名にしたイントロ部分を原曲よりも長めにとって観客の歓心を惹きながら、トラックの大部分が生演奏になったことで、感情表現がより豊かになった本編へと繋いでいる。キャロン・ウィーラーのヴォーカルは原曲よりも貫禄が増し、バンドによる伴奏と合わさって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。そして、ジャジーBがリード・ヴォーカルを担当する”Jazzie’s Groove”では、各楽器のソロ・パートを設けるなど、色々な意味で「ジャジー」な作品に仕上げている。

今回のライブ・アルバムは、これまでに発表したヒット曲が中心のセット・リストで、新曲を期待する人には物足りない内容かもしれない。だが、生演奏による起伏に富んだサウンドや、経験を積んで表現の幅を増したキャロン・ウィーラーのヴォーカルによって、リズム・マシンやシンセサイザーの使い方が斬新だったオリジナルとは違った意味で、新鮮な演奏が楽しめる。

90年代のイギリスを代表するバンドが、リスナーと一緒に成熟していった軌跡を堪能できる。魅力的なライブ録音。この勢いで新作も出してくれないかなあ。

Track List
1. Intro
2. Fairplay
3. Keep On Moving
4. I Care
5. Missing You
6. Universal Love
7. Love Enough
8. Get A Life
9. Back To Life
10. Jazzie’s Groove
11. Zion

注:以下の動画はオリジナル・ヴァージョンのもの






 

SoMo - The Answers [2017 Republic, UMG, Universal]

動画投稿サイトにアップロードした自作曲や有名なヒット曲のカヴァーが、300万回以上再生されたことで注目を集め、ユニヴァーサル系列のリパブリック・レコードと契約。2012年にシングル『Kings & Queens (Throw It Up)』でデビューした、テキサス州デニソン出身のシンガー・ソングライター、ソーモことジョセフ・アンソニー・ソマーズ・モラレス。彼にとって、フル・アルバムとしては2014年に自身のアーティスト・ネームを冠した1作目『SoMo』以来、ミックス・テープも含めると2015年の『My Life II』以来となる新作。

『SoMo』では、収録曲の大部分をセルフ・プロデュース、もしくはコディ・タープレイとの共同プロデュースで制作していたが、今回のアルバムではトリッキー・ステュアートを含む複数のプロデューサーを起用。ウィークエンドやクリス・ブラウンの楽曲を巧みに乗りこなす、繊細で器用なヴォーカルを活かした、緻密で美しいメロディのR&Bを聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目”Mirror”はピエール・メイダーとトリッキー・ステュアートがプロデュースを担当したミディアム・ナンバー。シンセサイザーの電子音を効果的に使ったシンプルなトラックと、爽やかな歌声を活かした語り掛けるようなメロディが、クリス・ブラウンの”Back To Sleep”を思い起こさせる。デビュー前から、クリス・ブラウンの曲をレパートリーにしていた彼だけあって、この曲のようにポップで軽やかなタッチのR&Bとの相性は極めて高い。

一方、この曲に続く本作からのシングル曲”First”は、電子音と”間”を強調した神秘的なトラックと、丁寧に言葉を紡ぎ出すヴォーカルが印象的なミディアム・ナンバー。電子音をフル活用したトラックと、繊細なヴォーカルはウィークエンドの”Starboy”を彷彿させるが、こちらの曲もプロデューサーはピエール・メイダーとトリッキー・ステュアート。ヒット曲を数多く手掛けている敏腕プロデューサーの多芸多才っぷりと、彼らが作るトラックとソーモの声の相性の良さを再認識させられる。

これに対し、本作で唯一、ゲスト・シンガーをフィーチャーしている”Play”はコディ・タープレイがプロデュースを担当したアップ・ナンバー。マーカス・ヒューストンの”Favorite Girl”を彷彿させる、流麗なメロディが印象的だ。本作に客演しているポップ・シンガーのメイティ・ノイエスのスマートな歌声も、本作の洗練された雰囲気を強調しているように映る。こちらはコディ・タープレイのプロデュース。

それ以外の曲で、特に注目したいのは、本作では異色のダイナミックなバラード”Just a Man”だ。コディ・タープレイに加えジェイソン・ファーマーやジム・ジョンシン、ニコラス・マルゾウカといった大物ミュージシャンも担当しているプロデューサーが終結したこの曲は、キーボードの伴奏からドラムを核にしたシンプルなトラックへと続くこの曲は、ジョーの”I Believe In You”やブライアン・マックナイト”One Last Cry”のような、美しいメロディと感情を巧みに表現する歌唱力で勝負した曲。シンセサイザーを多用した隙間の多いトラックと、繊細な歌声を強調した曲が多い彼だが、声量や表現力が求められる曲も、文句の付けどころがないくらい完璧に歌い上げている。同路線のタイトル曲”Answers”も甲乙つけがたい良曲。ヒットする可能性は皆無だと思うが、この路線を突き詰めたら大化けするんじゃないかと思う。

動画投稿サイトのパフォーマンスが評価されてデビューしただけあって、ヴォーカリストとしてのポテンシャルは非常に高いと思う。だが、流行を切り開く運の良さと大胆さが乏しいのが仇になって、曲のクオリティに見合った結果を得られていないように見える。

だが、彼の明るいメロディからナイーブフレーズまで柔軟に対応する技術や柔らかい声は、稀有なものだ。「歌」や「声」をじっくり味わいたい人にはぜひおすすめしたい。魅力的なシンガーだ。

Producer
Cody Tarpley, J. Pierre Medor, C. "Tricky" Stewart

Track List
1. Intro
2. Mirror
3. First
4. Campion
5. Play feat. Maty Noyes
6. Control
7. Over
8. Curve
9. Do You
10. Want It
11. Just a Man
12. Answers
13. You





Answers
Somo
Republic
2017-03-17

 

Trey Songz - Tremaine [2017 Songbook, Atlantic]

2005年にアルバム『I Gotta Make It 』でデビュー。エボニーズの”It's Forever”をサンプリングし、トゥウィスタを起用したミディアム・ナンバー”Gotta Make It”で、カニエ・ウエストやジャズト・ブレイズの成功でR&B界の一大ブームとなった「早回し」を自分の音楽に取り込む若々しい感性を見せる一方、21stセンチュリーの”Child”をサンプリングしたロマンティックなミディアム・バラード”Gotta Go”のような、歌唱力で勝負する曲もしっかり歌い切る高い表現力も兼ね備えたことで、幅広い世代から支持を集めたヴァージニア州ピーターズバーグ出身のシンガー・ソングライター、トレイ・ソングスことトレメイン・アルドン・ネヴァーソン。

その後も、スターゲイトが手掛けるふわふわとしたトラックと流麗なメロディが心地よいアップ・ナンバー”Can’t Help But Wait”と、リル・ウェインやジム・ジョーンズも手掛けているヤング・ヤニーをプロデューサーに起用した、トラップ・ビートとR.ケリーを彷彿させるセクシーなラップ風ヴォーカルが格好良い”Say Aah”、マイアミ出身のケイン・ビーツが手掛ける変則ビートの上で、ニッキー・ミナージュとポップでセクシーなコラボレーションを披露する”Bottoms Up”や、リコ・ラヴが手掛けるシンセサイザーを駆使したポップなトラックと壮大なメロディが印象的なミディアム”Heart Attack”など、多くのヒット曲を生み出してきた。

今回のアルバムは、2014年にリリースされた『Trigga』以来、約3年ぶりとなるオリジナル・アルバム。直近の2作品はラッパーを起用した楽曲と彼のヴォーカルを強調した楽曲をバランスよく配置した構成で、全米アルバム・チャートの1位を獲得していることもあり、本作への期待も非常に高かった。

そして今、彼の最新作を聴いているのだが、まず驚いたのは、彼の大胆な路線変更だ。これまでの作品ではラッパーを起用して流行のビートを乗りこなした、ヒップホップ色の強い曲を複数収録していたが、今回のアルバムでは、ゲストは”Game With Play”で客演しているマイク・エンジェルのみで、彼の参加曲も、ロマンティックなメロディを強調したバラードと、これまでのアルバムと比べて、ヴォーカルを聴かせることに重きを置いたR&B作品になっている。

アルバムの実質的な1曲目”Come Over”は、彼に数多くの楽曲を提供してきたトロイ・テイラー作のバラード。ドラムを基調にしたシックなビートの上で瑞々しい歌声を響かせる姿が美しいスロー・ナンバーだ。セクシーな女声を間に挟んだ色っぽいヴォーカルは、アル・グリーンやロナルド・アイズレーをスタイリッシュにしたような雰囲気さえ感じさせる。

これに対し、リコ・ラヴが楽曲を提供した”Playboy”は、ブライアン・マックナイトやジョーの作品を思い起こさせるシンプルなバック・トラックに乗せて、スマートな歌声を力いっぱい張り上げるスロー・バラード。フィンガー・スナップをアクセントに使った伴奏をバックに、今にも泣き崩れそうな勢いで、感情を剥き出しにしながら歌うトレイの姿が印象的だ。

一方、本作では希少なヒップホップ色の強い楽曲に”Nobody Else But You”がある。クリス・ブラウンの”Lonely Dancer”やトレヴァー・ジャクソンの”Mixtape”等を手掛けている、エレクトロ畑出身の気鋭のクリエイター、アレックス・アイザックが手掛けるこの曲は、リュダクリスのような南部出身のラッパーの音楽を連想させる、シンセサイザーを多用した軽妙なトラックの上で、ラップのように言葉を繋ぐ姿が光るミディアム・ナンバー。ゲスト・ミュージシャンを招かなくても、ヒップホップのビートを自分の音楽に取り込めるようになった、彼の進化が垣間見れる興味深い楽曲だ。

そして、本作で最も印象に残ったのはミュージック・ソウルチャイルドの”Radio”や『Trigga』に収録されたている”Y.A.S. (You Ain't Shit)”を制作しているプロダクション・チーム、L&Fの一員であるクリストファー・ウマナが手掛けたバラード”Song Goes Off”だ。シスコの”Incomplete”を思い起こさせるダイナミックで滑らかなメロディと、女声のような透き通った音色のシンセサイザーを含む、複数の電子音を上手に組み合わせたスタイリッシュなトラックが心地よいスロー・バラード。個人的な感想だが、彼のキャリアを代表する名曲だと思う。

最初にも書いたが、今回のアルバムは、トレンドを意識してはいるものの、全体としては彼自身の歌を聴かせることに徹した、これまでの作品以上にR&Bへとシフトしたアルバムだと思う。おそらく、過去の2作品が商業的に成功し、バラードのヒット曲も送り出せるようになったことが一番大きいが、アデルやビヨンセがミディアム、スローのヒット曲を送り出し、ジョーやブライアン・マックナイトなど、バラードに定評のあるベテランも活発な動きを見せるなど、一時期に比べてバラードを歌うシンガーにとって有利な環境ができたことも無関係ではないだろう。

50分弱のアルバムに流行のサウンドとヴォーカル作品の醍醐味を凝縮した、ヴォーカル好きのための本格的なR&Bアルバム。「2017年を象徴する男性ヴォーカルの作品は何か?」と聞かれたら、間違いなく本作が候補に挙がると思う。

Producer Troy Taylor, Dwayne Nesmith, Patrick Hayes etc

Track List
1. The Prelude
2. Come Over
3. Number 1 Fan
4. Nobody Else But You
5. Playboy
6. The Sheets... Still
7. Song Goes Off
8. She Lovin It
9. Animal
10. IXI
11. Priceless
12. What Are We Here For
13. Games We Play feat. MIKExANGEL
14. Picture Perfect
15. Break From Love





トレメイン・ジ・アルバム
トレイ・ソングス
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-04-05

 
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