melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2017年08月

Damian Marley - Stony Hill [2017 Island]

“One Love”や”Get Up Stand Up”などの名曲を残し、レゲエ界のアイコンとして今も絶大な人気のあるボブ・マーリー。彼の息子達も、それぞれミュージシャンとして個性的な作品を送り出しているが、その中でも特に精力的に活動しているのが、ボブにとって二人目の妻である、シンディ・ブレイクスピアとの間に生まれたダミアン・マーリーだ。

10代前半から他の兄弟と一緒に音楽を始めた彼は、歌やプロダクションに興味を持った他の兄弟とは異なり、早くからディージェイ(ヒップホップでいうMCに相当)に傾倒し始める。

そんな彼は、96年に初のアルバム『Mr. Marley』でレコード・デビューを果たすと、ビルボードのレゲエ・アルバム・チャートで2位を獲得。その5年後に発表した2作目『Halfway Tree』はグラミー賞を獲得するなど、華々しい実績を上げてきた。

また、彼は自身の活動と並行して、色々なジャンルのアーティストとコラボレーション作品を録音。なかでも、2010年にヒップホップ・ミュージシャンのナズと共作した『Distant Relatives』は全米アルバム・チャートの5位を獲得。彼をフィーチャーしたエレクトロ・ミュージックのクリエイター、スカイレックスのシングル”Make It Bun Dem”は、プラチナ・ディスクに認定されるなど、偉大な父と同様に、レゲエに詳しくない人達からも親しまれるようになった。

今回のアルバムは、自身の名義では実に12年ぶりとなる通算4枚目のアルバム。近年もジェイZの『4:44』に参加するなど、多芸っぷりを発揮していた彼だが、本作ではセルフ・プロデュースの作品や兄であるステファン、幾度となくグラミー賞を獲得しているジャマイカを代表するプロダクション・チーム、スライ&ロビーといった、レゲエ畑のクリエイターを中心に起用。ゲストもステファンやメジャー・マイジャーといったレゲエ・ミュージシャンが顔を揃えた、原点回帰とも受け取れる作品に仕上がっている。

2016年に、アルバムに先駆けてリリースされたシングル曲”Nail Pon Cross”は、彼自身のプロデュースによるミディアム・ナンバー。コンピューターによる重低音を強調したビートはスレンテンのような80年代終わりから90年代初頭に流行したスタイルを踏襲したものだが、彼はナズやノートリアスB.I.G.のようなニューヨークのヒップホップ・ミュージシャンを連想させる、昔のソウル・ミュージックのような温かい音色を取り入れて、アメリカの音楽っぽく仕上げている。

また、彼自身がペンを執ったR.O.A.R.は、ブジュ・バントンの”Me & Oonu”をサンプリングした作品。マーチング・バンドっぽい軽快で緻密なビートをバックに、荒々しいパフォーマンスを聴かせてくれる。ブジュ・バントンのワイルドな歌声が、楽曲に攻撃的な雰囲気を加えている。

これに対し、ピットブルの作品に参加するなど、ダミアン同様アメリカでの活躍が目立つ兄、ステファンが参加した”Medication”は、生前のボブ・マーリーの音楽を思い起こさせる、生バンドによるゆったりとしたサウンドが心地よい曲。ステファンの艶やかなテナー・ヴォイスとダミアンのワイルドな歌声の組み合わせが面白い。歌とディージェイ、スタイルは違うが一緒に仕事をすることも多い二人だから作れる、際立った個性と一体感が両立された佳作だ。

そして、本作の隠れた目玉と言っても過言ではないのが、バウンティ・キラーやアシュリー・ロスなどの作品に携わってきた気鋭の若手、メジャー・マイジャーを招いた”Upholsteryv”だ。ピコピコという電子音を使った躍動感溢れるサウンドは、2000年代初頭、アメリカを中心に世界を席巻したダンス・ホール・レゲエを思い起こさせる。ファルセットを多用したメジャーのヴォーカルと、ダミアンのパンチが効いたパフォーマンスのコンビネーションも、いい味を出している。ボブ・マーリーの音楽が持つ親しみやすさと、21世紀に世界の耳目を惹きつけたダンス・ホールの斬新さを融合させた面白い曲だ。

今回のアルバムでも、レゲエをベースにしつつ、アメリカの音楽市場を意識してメロディやサウンドに工夫を凝らした、彼の持ち味が遺憾なく発揮されている。ボブの音楽がロックやソウル・ミュージックを取り入れながら唯一無二の個性を発揮したように、彼はヒップホップやエレクトロ・ミュージックを取り込みつつ、自分の音楽に落とし込んでいる。

ショーン・ポールやウェイン・ワンダーなど、アメリカの音楽を取り込んで成功を収めたレゲエ・ミュージシャンは少なくないが、アメリカの音楽を分解、研究して、自分の音楽の糧にした例は希少だと思う。海外のトレンドを意識しつつ、母国の音楽や自身のスタイルに昇華した好事例といえる傑作だ。

Producer
Damian Marley, Stephen Marley, Sly & Robbie, Stephen McGregor

Track List
1. Intro
2. Here We Go
3. Nail Pon Cross
4. R.O.A.R.
5. Medication feat. Stephen Marley
6. Time Travel
7. Living It Up
8. Looks Are Deceiving
9. The Struggle Continues
10. Autumn Leaves
11. Everybody Wants To Be Somebody
12. Upholsteryv feat. Major Myjah
13. Grown & Sexy feat. Stephen Marley
14. Perfect Picture feat. Stephen Marley
15. So A Child May Follow
16. Slave Mill
17. Caution
18. Speak life






ストーニー・ヒル
ダミアン“ジュニア・ゴング”マーリー
ユニバーサル ミュージック
2017-08-09

Noah Slee - Otherland [2017 Majestic Casual Records]

2010年代前半からオーストラリアで活動。その後、同地での活躍が評価され、ダニエル・カエサルなどの気鋭のアーティストを擁することでも知られている、ドイツのシュトゥットガルドに拠点を置くマジェスティック・カジュアルと契約。現在はドイツを中心に活動するニュージーランド生まれ、オーストラリア育ちのシンガー・ソングライター、ノア・スリー。

ドイツに移住後は、継続的に新曲を発表しながら、キャッツ&ドッグスやカルマダなどの作品にも客演。ソウルフルな歌声と繊細なメロディ、先鋭的なトラックで耳の肥えた音楽ファンのみならず、ミュージシャンの間でも注目される存在になった。

今回のアルバムは、彼にとって初のフル・アルバム。今年の5月に発表した『Freedom TV』も話題になったウェイン・スノウや、ノアと同じニュージーランド出身のジョーダン・ラケイやレイチェル・フレイザー、アメリカを代表するソウル・シンガーの一人として知られているジョージア・アン・マルドロウなど、彼の豊かなバックグラウンドと人間関係を反映した、豪華な面々が参加した作品になっている。

ウェイン・スノウとレイチェル・フレイザーが参加したアルバムの実質的な1曲目”Instrore”は、マックスウェルを彷彿させるきめの細かいファルセットと、ディアンジェロを連想させるシンプルで抽象的なトラックやラップのようにリズミカルに言葉を繋ぐヴォーカルが印象的なスロー・ナンバー。柔らかく軽やかな歌声のノアと、芯の強い声のウェイン、ふくよかな歌唱のレイチェルと、三者三葉のヴォーカルを披露している点が面白い。少し気になるのは、サビのファルセットが3人の声と明らかに異なる点だが、歌っているのは誰なのだろうか。

これに対し、ニュージーランド出身のラッパー、メロダウンズを招いた”Lips”はサンファの作品を思い起こさせる、荘厳な雰囲気のエレクトロ・サウンドが印象的なミディアム・ナンバー。ノアの繊細な歌唱と、ヴォーカルと一体化した淡々としたラップの組み合わせが格好良い。エレクトロとソウル、ヒップホップを巧みに融合した佳曲だ。

また、”Sunrise”は太い音のベースと温かい音色のビートが格好良いアップ・ナンバー。電子音と生演奏を組み合わせたスタイルは、スティーブ・レイシーの作品にも少し似ている。ディアンジェロやエリカ・バドゥの作風を踏襲しつつ、彼らとは違う新鮮な音楽に落とし込む技術とセンスが光っている。

そして、女性フォーク・シンガーのシロー・ダイナスティが客演した”DGAF”は、彼女の繊細なヴォーカルをアクセントに使ったアップ・ナンバー。ギターの演奏をR&Bのトラックと組み合わせた手法は、マックスウェルやインディア・アリーにも似ているが、この曲はもっとタイトなビートを取り入れた本格的なR&B作品になっている。緻密な表現力を持つ二人だからこそできる曲だろう。

彼の音楽は、ウェイン・スノウやサンファホセ・ジェイムスのようなR&Bと電子音楽を融合したものだが、彼らの音楽と比べると、緻密な演奏が目立つ一方、それぞれの曲は斬新なアイディアを前面に押し出した粗削りな作品が多いように見える。それは、彼の音楽が若々しい感性と、強力なエネルギーによって生み出されたものだからかもしれない。

ウェイン・スノウに続き、ドイツから世界に羽ばたいた気鋭のクリエイター。今後の活躍が楽しみな逸材だ。

Producer
Noah Slee etc

Track List
1. Kamata‘anga (Intro)
2. Instore feat.Wayne Snow & Rachel Fraser
3. Radar
4. Invite (Interlude)
5. Lips feat.MeloDownz
6. Told
7. Sunrise
8. Dawn (Interlude) feat.Georgia Anne Muldrow
9. Reality feat.Jordan Rakei
10. DGAF feat.Shiloh Dynasty
11. Wander (Interlude)
12. Stayed
13. Way Back
14. Kiez (Interlude)
15. 100
16. Silence
17. Ngata‘anga (Outro)





アザーランド
ノア・スリー
Pヴァイン・レコード
2017-08-18

SOL - White Night [2017 YG Entertainment]

2006年にEP『Always』でメジャー・デビュー。同年のファースト・アルバム『Bigbang Vol.1』がアルバム・チャートの1位を獲得して、同国を代表する人気アーティストの仲間入りをした、YGエンターテイメント発のダンス・ヴォーカル・グループ、ビッグ・バン。

そんな彼らは、2012年に発表したEP『Alive』と同作に収録されたシングル”Fantastic Baby”で、世界にその名を轟かせる。特に後者は、EDMとヒップホップやR&Bを融合した独特の音楽性と、色鮮やかで幻想的な世界観のMVが注目を集め、非英語圏のヴォーカル・グループでは唯一となる500万ダウンロードを記録(余談だが、2015年にリリースされた”Bang Bang Bang”も同記録を達成している)。”江南スタイル”が1000万ダウンロードを記録したレーベル・メイトのPSYとともに、韓国のポップスの存在を世界に知らしめた。

SOL(国によってはTaeyang表記)ことトン・ヨンベは、同グループのリード・ヴォーカル。11歳の頃から事務所に所属し、目標とする歌手にマイケル・ジャクソンを掲げてきた彼は、高い歌唱力とダンス技術でグループを牽引。また、ソロとしても2008年にEP『Hot』発表したほか、それ以外にも2枚のフル・アルバムをリリース。その全てを韓国チャートの1位に送り込み、2014年には単独でのアジア・ツアーを成功させるなど、着実に成果を上げてきた。

この作品は、彼にとって3枚目のフル・アルバム。過去作にも関わっていた同僚で盟友のG-ドラゴンは不参加だが、彼が所属するYGエンターテイメントのイン・ハウス・プロデューサーであるテディ・パクやチョイス37などが制作を担当。その一方で、彼自身も大半の曲に携わるなど、ミュージシャンとしてのテヤンを強く打ち出した作品になっている。

アルバムに先駆けて発表された”Wake Me Up”は、テディ・パクがYG傘下に設立したブラック・レーベルに所属するカッシュ、R.ティー、ジョー・リーの3人が手掛けた作品。荘厳さすら感じさせる重厚なトラックをバックに、パワフルな歌声を聴かせるミディアム・バラード。セクシーなファルセットを強調したアレンジや音響技術の妙が光っている。10年以上、音楽業界の一線で活躍してきた彼の円熟した歌声が堪能できる佳作だ。

また、テディ・パクやチョイス37に加え、フィフス・ハーモニーの”Work From Home”やDJスネークの”Let Me Love You”などを手掛けてきた韓国系アメリカ人のブライアン・リーが制作に参加した”Darling”は、ピアノの伴奏をバックに、泣き崩れるように歌う激しいヴォーカルが魅力スロー・ナンバー。ベイビーフェイスが90年代に作ったような、メロディの美しさと歌唱力で勝負した作品だ。6月に発売されたG-ドラゴンのEP『KWON JI YONG’』からシングル・カットされた”Untitled 2014”にも通じる本格的なバラードは、アジア市場を意識したものだろうか?

また、本作の収録曲では珍しいアップ・ナンバー”Ride”は、彼自身がペンを執った曲。2000年代初頭にネプチューンズが作っていたような、軽やかなビートをバックに、流れるようなヴォーカルを披露したダンス・チューン。しなやかなテナー・ヴォイスを器用に操る姿は、彼が目標とするマイケル・ジャクソンのスタイルにも似ている。ヒップホップを基調にしたトラックの上で、彼のスタイルを踏襲する姿は、アッシャーやジャスティン・ティンバーレイクのような、ポスト・マイケル・ジャクソンの系譜に立つものだと思う。

そして、本作の最後を締めるのがブラック・レーベル所属のプロデューサー、ピージェイが制作を担当した”Tonight”だ。古いレコードの音をサンプリングしたようなビートの上で、ダイナミックな歌唱を披露した壮大なミディアム・ナンバー。テヤンの指名で参加したブロックBのジコが切れ味の鋭い高速ラップで、雄大な楽曲に起伏を付けている点にも注目してほしい。

今回のアルバムは、収録曲の大半がミディアム・テンポやスロー・テンポの作品であり、「ヒップホップのビートをバックに激しく歌って踊るテヤン」を期待するファンにとっては意外なものかもしれない。しかし、力強い歌声と、経験を積んで磨かれた豊かな表現力、そしてヒップホップのトレンドを適度に取り入れた本作は、彼が憧れたマイケル・ジャクソンが生前最後のアルバム『Invincible』で見せてくれた、ポップなメロディとダンス・サウンド、そして円熟した歌唱が融合した絶妙なバランス感覚をしっかりと受け継いでいる。その姿は、2年の兵役というアーティストにとって長いブランクを控えた彼の微妙な立場と、兵役後に求められるだろう成熟した大人のテヤンの姿を見据えたものと言ってもいいかもしれない。

マイケル・ジャクソンやジャスティン・ティンバーレイクのように、ボーイズ・グループの枠を超え、一人の男性シンガーへと進化しつつある、彼の歌唱を楽しめる本格的なヴォーカル作品。30代のテヤンがどんな音楽を歌うのか、将来を期待させる良作だと思う。

Producer
Taeyang, Teddy Park, Kush, Choice37, Joe Rhee

Track List
1. White Nighrt
2. Wake Me Up
3. Darling
4. Ride
5. Amazin'
6. Empty Road
7. Naked
8. Tonight feat. Zico






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