ブラック・ミュージック千本ノック~SoulとR&Bと色々な音楽~

管理人が手に入れたR&Bのアルバム、1000枚の紹介文を書き続けるブログ その先に見えるものは天国か地獄か・・・

2017年10月

Keyshia Cole - 11:11 Reset [2017 Epic]

カリフォルニア州オークランド出身のシンガー・ソングライター、キーシャ・コールことキーシャ・ミーシャ・ミッチェル・コール。

12歳の時にMCハマーのレコーディングに参加した彼女は、それをきっかけに音楽産業への関心を強め、18歳の時にロス・アンジェルスに移住する。そして、元トニー・トニ・トーンのドウェイン・ウィギンスといった、西海岸を拠点に活動するミュージシャンと交友を深めながら、ライブやレコーディングなどで幅広く活動。2002年にはA&Mと契約を結ぶ。

そんな彼女は、2004年に映画「バーバーショップ2」のサウンドトラックに収められた”Never”でメジャー・デビュー。ルーサー・ヴァンドロスの代表曲”Never Too Much”を引用したスタイリッシュなダンス・ナンバーで注目を集める。そして翌年には初のフル・アルバム『The Way It Is』を発表。 アメリカ国内だけで100万枚を超えるセールスを上げた。

その後も、2016年までに6枚のアルバムと数多くのシングルをリリース。特に彼女がデビューするきっかけとなった曲を録音し直した2006年の”Love”や、リル・キムとミッシー・エリオットを招いた翌年の”Let It Go”などは100万ダウンロードを越せる大ヒット曲となった。また、ディディやトリナ、DJキャリッドなど、多くの人気ミュージシャンの作品に客演。力強く華やかな歌声で楽曲に彩を添えてきた。

この作品は、彼女にとって2014年の『Point of No Return』以来、約3年ぶりの新作となる通算7枚目のオリジナル・アルバム。3作目以降のアルバムを配給していたインタースコープからエピックに移籍したものの、制作陣はこれまでの作品同様、有名プロデューサーが多数参加。彼女自身も積極的にペンを執り、パワフルでダイナミックなR&Bを送り出している。

アルバムに先駆けて発表されたのは、ブロンクス出身のレミー・マとフレンチ・モンタナが参加したミディアム・ナンバー”You”だ。ロンドン出身のH-マネーが制作したトラックは、古いレコードから抜き出したような温かい音色を使いつつも、FKJケイトラナダのようなエレクトロ・ミュージックのクリエイターの作品を連想させる淡々としたもの。最初から最後まで、力強い声で歌い続けるキーシャを、鋭く硬い声質を活かしたラップが魅力のレミー・マと、飄々としたラップのフレンチ・モンタナが上手く盛り立てている。

これに対し、同曲に続く”Incapable”は彼女の十八番といっても過言ではない壮大なスケールのバラード。パーティーネクストドアと一緒にDJキャリッドの”Shining”を制作した、マイアミ出身のクリエイター、ダンジャがプロデュースしたこの曲は、声ネタを使ったイントロに始まり、ギターやキーボードの伴奏を効果的に使った、生演奏風のトラックが面白い作品。メアリーJ.ブライジを彷彿させる、重厚なヴォーカルが格好良い。

そして、前作にも携わっているニューヨーク出身のプロデューサー、アマデウスを起用した”Best Friend”は、シンセサイザーを駆使した煌びやかなトラックと、その上でふくよかな歌声をじっくりと聴かせるロマンティックなバラード。しっとりとしたメロディを丁寧に歌う彼女の姿と、滑らかだけどグラマラスな歌声が印象的だ。R&Bミュージシャンの作品ではよく見るタイプのバラードだが、これを自分の音楽に昇華して、リスナーの心を満たす技術は群を抜いている。

また、オークランド出身の女性ラッパー、カーマイヤーを招いた”Ride”は、リアーナなどを手掛けているDJマスタードをプロデューサーが録音に参加。トラップやダンスホール・レゲエのエッセンスを盛り込んだビートに乗って、ゆったりと歌う姿が魅力のミディアム・ナンバーだ。妖艶なキーシャのヴォーカルと、太く重い声を活かしたカーマイヤーのパンチの効いたラップの組み合わせが光っている。

今回のアルバムでは、過去の作品同様、太くしなやかなヴォーカルが活きる、落ち着いた雰囲気のトラックと、優雅でロマンティックなメロディを強調した作品が揃っている。ヒット・チャートに名前が出てくるような他の人気ミュージシャンの曲と比べると、いささか保守的な印象さえあるが、リスナーを飽きさせないのは、彼女の豊かな表現力と色々なタイプのトラックを取り込む柔軟さのおかげだと思う。

アレサ・フランクリンからメアリーJ.ブライジまで、新旧の名歌手達が受け継いできたスタイルを踏襲しつつ、それを現代の流行に合わせて巧みにアレンジした楽曲が魅力の佳作。女性ヴォーカルのダイナミックなパフォーマンスが好きな人に聴いて欲しい、本格的なR&Bアルバムだ。

Producer
Keyshia Cole, Amadeus, Danja, H-Money, JV etc

Track List
1. Cole World (Intro) feat DJ Khaled
2. Unbothered
3. You feat Remy Ma and French Montana
4. Incapable
5. Best Friend
6. Vault
7. Act Right feat Young Thug
8. Right Time
9. Emotional
10. Ride feat Kamaiyah
11. Cole World (Outro) feat Too $hort




11:11 Reset
Keyshia Cole
Epic
2017-10-20

dvsn - Morning After [2017 OVO Sound Warner Bros.]

2006年にドレイクが設立。当初は彼のミックス・テープを配給するためのレーベルだったが、2012年以降は、ワーナー・ミュージックと契約した彼が率いるレーベルとして多くの人気ミュージシャンやクリエイターを輩出しているOVOサウンド。当初はボイ・ワン・ダやT-マイナスといった、プロデューサーが主力だったが、2013年のパーティーネクストドアやマジッド・ジョーダンを皮切りに、シンガー・ソングライターや音楽ユニットとも契約するようになる。特に、パーティーネクストドアは2枚のアルバムを全米R&Bチャートの1位に送りこむなど、レーベル内でもドレイクに次ぐ華々しい成果を上げてきた。

dvsnはシンガー・ソングライターのダニエル・ディレイと音楽プロデューサーのナインティーン85によるユニット。2015年に同レーベルと契約すると、翌年に発表した1枚目のフル・アルバム『Sept. 5th』がR&Bチャートの17位となるスマッシュ・ヒット。マックスウェルを彷彿させる、ダニエルの繊細でしなやかなヴォーカルと、ナインティーン85が作り出す洗練されたトラックが話題になった。

このアルバムは、前作から約1年ぶりとなる2枚目のフル・アルバム。制作には2人に加えレーベル・メイトの40や、ドレイクの作品にも数多く携わっているマニーシュ、オランダの人気ソングライター、ロビン・ハンニバル等が参加。前作の手法を踏襲しつつ、それを拡大したスタイリッシュなR&Bを聴かせている。

アルバムに先駆けてリリースされたシングル曲”Think About Me”は、制作を2人、プロデュースをナインティーン85が担当したバラード。重い音を使ったビートを軸にしたトラックと、みずみずしいヴォーカルのコンビネーションが魅力のバラード。浮遊感が心地よい上物が彼の色っぽい歌声を引き立てている。

これに続く”Don't Choose”はパーティーネクストドアがソングライティングに参加したスロー・ナンバー。彼の作品を連想させる、チキチキという音を使ったヒップホップ寄りのビートの上で、語り掛けるように歌う姿が印象的な曲。流れるようなメロディでありながら、ラップのように多くの言葉を盛り込むパーティーネクストドアのスタイルと、ナインティーン85が手掛けるシンプルなトラックの組み合わせが新鮮だ。コーラスとして組み込んだ、アイザック・ヘイズの歌声がアクセントになっている。

また、マニーシュが制作に携わった”Mood”は、ファルセットを多用した美しいメロディとピアノやギターの音色を巧みに取り入れたトラックづくりのセンスが光るスロー・ナンバー。高音を多用したスタイルはマックスウェルの”Fortunate”や”I Wanna Know”などを思い起こさせる。電子楽器を中心に使いつつ、アコースティック楽器のような音色を盛り込んで70年代のソウル・ミュージックのように聴かせる手法は面白い。

だが、本作の目玉は、二人で制作したスロー・ナンバー”P.O.V.”だろう。R.ケリーがペンを執ったマックスウェルのバラード”Fortunate”をサンプリングしたこの曲は、90年代のR&Bを思い起こさせる温かい音色のトラックと、ダニエルの繊細な歌声の組み合わせが気持ち良い作品。楽曲の冒頭で使われているマックスウェルの歌声が、ダニエルのきめ細かで滑らかな歌声を際立たせている。

彼の音楽は、レーベル・メイトのR&Bミュージシャンであるマジッド・ジョーダンやロイ・ウッズ、プラザと比べると、繊細な歌声の魅力を引き立たせる、流麗なメロディをじっくりと聴かせる作風が特徴的だ。シンプルなトラックとしなやかなメロディという、90年代から現代にかけて、色々なミュージシャンが挑戦し、ヒット曲を残してきたR&Bの王道ともいえるスタイルを取り入れながら、新しい音楽のように聴かせているのは、音の配置や響きにも配慮した彼らの高いスキルによるものが大きいと思う。

新しい音を取り入れているにもかかわらず、どこか懐かしい雰囲気を感じる佳作。90年代にR&Bを聴いていた人にお勧めしたい本格的なR&Bグループだ。

Producer
Nineteen85, 40, Alpha, Maneesh, Noël, Robin, Hannibal

Track List
1. Run Away
2. Nuh Time / Tek Time
3. Keep Calm
4. Think About Me
5. Don't Choose
6. Mood
7. P.O.V.
8. You Do
9. Morning After
10. Can't Wait
11. Claim
12. Body Smile
13. Conversations in a Diner






Gucci Mane - Mr. Davis [2017 Guwop Entertainment, Atlantic]

T.I.やヤング・ジージーといったアトランタ出身のラッパーの作品によって、アメリカのブラック・ミュージック界に一大ブームを巻き起こしたトラップ。このスタイルを早くから取り入れ、多くのヒット作を残しているのが、アラバマ州バーミンガム出身のラッパー、グッチ・メインことラドリック・デランティック・デイヴィスだ。

14歳から音楽活動を始めた彼は、2005年には初のフル・アルバムとなる『Trap House』をリリース。インディー・レーベル発の新人の作品ながら、10万枚を超えるセールスを上げるヒット作となった。その後も立て続けにアルバムを発表した彼は、2007年にアトランティックと契約すると、ミックス・テープを含む多くの作品を世に送り出し、全ての作品で商業的な成功を収める。また、それと同時に、作品やライブを通して、色々なミュージシャンと舌戦を繰り広げたことも話題になった。

本作は、メトロ・ブーミンとのコラボレーション・アルバム『Droptopwop』から5か月ぶり、単独名義の作品としては昨年12月の『The Return of East Atlanta Santa』以来、約10か月ぶりの新作となる通算11枚目のオリジナル・アルバム。これまでの作品同様、プロデューサーに多くのヒット・メイカーを起用し、ゲスト・ミュージシャンにはミーゴスやウィークエンド、タイ・ダラ・サインといった人気ミュージシャンを多数招いた、ワイルドでキャッチーなヒップホップを披露している。

本作に先駆けて発表されたシングル曲”I Get the Bag”は、アトランタ出身のサウス・サイドとメトロ・ブーミンがプロデュースを担当し、トラップのビートを使ったヒット曲を数多く残しているラップ・グループ、ミーゴスがゲストとして参加。重低音を強調した陰鬱なトラックに乗って、リズミカルに言葉を繋ぐラップが魅力の作品。チキチキというハットの音がキモになるトラップだが、この曲では高音を抑え気味にして重厚でダークな雰囲気を演出している。重々しいビートを軽妙なラップで聴きやすくする4人のスキルが発揮された良曲だ。

これに対し、カナダ出身のシンガー・ソングライター、ウィークエンドを招いた”Curve”は、ウィークエンドと同じカナダ出身のプロデューサー、ナーヴが制作を担当。ゴムボールのように弾む電子音がウィークエンドの作品っぽくも聴こえるビートに乗って、次々と言葉を繰り出すウィークエンドと、一つ一つの言葉を丁寧に紡ぐグッチ・メインの対照的なパフォーマンスが光る曲だ。メロディ部分では言葉数が多いにも関わらず、サビでは甘酸っぱい歌声をじっくり聴かせるウィークエンドの器用さも魅力だ。

また、クリス・ブラウンが参加した”Tone It Down”は、カルディアックとヒットメイカーがプロデュースした作品。ジェイZの”Big Pimpin”にも少し似ている、変則的なビートを取り入れたトラップ・ナンバー。トラップを取り入れた作品が多い両者のコラボレーションだけあって、奇抜なビートの上でも流れるようなメロディとラップを聴かせてくれる。この分野で多くのヒット曲を残してきた二人の経験が発揮された、安定感が光る佳曲だ。

そして、本作の目玉と言っても過言ではないのが、アメリカを代表する人気女性ラッパー、ニッキー・ミナージュをフィーチャーした”Make Love”だ。サウス・サイドに加え、デトロイト出身のディテイルがプロデューサーとして参加したこの曲は、音数を絞ったビートとマリンバのような音色の上物が不思議な雰囲気を醸し出す作品。シンセサイザーの音色を強調しないポップなトラックはニッキー・ミナージュに近い印象、畳み掛けるようなグッチ・メインのラップも彼女の作品を連想させるものだ。

彼の音楽は、シンセサイザーを駆使して流行の音を自分のスタイルに合わせて咀嚼したトラックと、50セントやウータン・クランの面々のような硬く重い声質を活かしつつ、絶妙な力加減で聴きやすいラップに還元するスキルが合わさった、コアな音楽ファンからそうでない人まで、万人受けするスタイルが特徴的。彼の持ち味は本作でも健在で、新しい音を積極的に取り入れながら、それに色々な解釈を加えて自分の作風と融合している。

10代のころからラップ・ゲームの一線で戦い続けてきた早熟の天才らしい、安定感と柔軟な感性が光る佳作。現代のアメリカで流行っているヒップホップに興味がある人はぜひ聴いてほしい。

Producer
Gucci Mane, Southside, Metro Boomin, Cardiak, Hitmaka, Southside, Detail etc

Track List
1. Work in Progress (Intro)
2. Back On
3. I Get the Bag feat. Migos
4. Stunting Ain't Nuthin feat. Slim Jxmmi & Young Dolph
5. Curve feat. The Weeknd
6. Enormous feat. Ty Dolla $ign
7. Members Only
8. Money Make Ya Handsome
9. Changed feat. Big Sean
10. We Ride feat. Monica
11. Lil Story feat. ScHoolboy Q
12. Tone It Down feat. Chris Brown
13. Make Love feat. Nicki Minaj
14. Money Piling
15. Jumping Out the Whip feat. A$AP Rocky





Mr.Davis
Gucci Mane
Atlantic
2017-10-13

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