melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2017年11月

Ty Dolla Sign - Beach House 3 [2017 Hunnid, Taylor Gang, Atlantic]

2010年にYGの”Toot It and Boot It”にフィーチャーされたことで注目を集め、2012年にアトランティックと契約すると、同年にデビュー作となるミックス・テープ『Beach House』を発表。その後も多くのミックス・テープやシングルをリリースして、リスナーの耳目を惹きつけてきたカリフォルニア州サウス・ロス・アンジェルス出身のミュージシャン、タイ・ダラ・サインことタイロン・ウィリアム・グリフィンJr.。

父親はファンク・バンドのレイクサイドのメンバーだったという彼は、若いころはギャングのグループに入るなど、やんちゃな経歴を重ねてきたという。しかし、音楽に興味を持つようになると、次々に技術を習得。最後には自身の手でトラック制作からラップまで、一通りこなせるようになった。

そんな彼は、2015年に初のフル・アルバム『Free TC 』を発表。翌年にはフィフス・ハーモニーの”Work from Home”に参加し、多くの音楽賞を獲得。人気ミュージシャンの仲間入りを果たした。

本作は、彼にとって2年ぶり2枚目のフル・アルバム。前作に引き続き、アトランティックが配給を担当。プロデューサーにはマイク・ウィル・メイド・イットファレル・ウィリアムスといった売れっ子が参加。ゲスト・ミュージシャンとしてリル・ウェインやウィズ・カリファ、スクリレックスやダミアン・マーレイといった多彩な面々が顔を揃えた、豪華な作品になっている。

アルバムに先駆けてリリースされた”Love U Better”は、DJマスタードがプロデュースを担当、リル・ウェインとザ・ドリームをフィーチャーした作品。シンセサイザーを駆使した軽妙なビートと、二人の軽やかなラップの組み合わせが光る良曲だ。サビの部分を担当する、ザ・ドリームの甘酸っぱい歌声が、楽曲の爽やかな雰囲気を盛り上げている。

これに対し、ブレイクのきっかけとなった恩人YGを招いた”Ex”は、バッド・ボーイ発の男性ヴォーカル・グループ、112が96年に発表した大ヒット曲”Only You”のベース・ラインをサンプリングした(ヴォーン・メイソン・クルーの”Bounce, Rock, Skate, Roll”を再引用した)トラックが格好良いアップ・ナンバー。ビッグ・ショーンやオマリオンに楽曲を提供してきた、L&Fのボンゴ・バイ・ザ・ウェイが作ったトラックはダンス・ミュージックの古典を大胆に引用したものだが、シンセサイザーやリズム・マシーンを使った音楽が主流になった2017年には新鮮に映るから不思議だ。

また、マイク・ウィル・メイド・イットがプロデュースした”Dawsin’s Breek”は、シカゴ出身のシンガー・ソングライター、ジェレミーを起用したミディアム・ナンバー。重いドラムと、チキチキというハットの音を強調したトラップのビートの上で、個性豊かなラップを披露した面白い作品だ。重厚なビートに合わせて、音数を絞ったライムと、所々にメロディのついたフレーズを盛り込んだ器用なラップを披露する二人の姿が印象的だ。歌とラップを使う分けるスタイルがウリの、二人の持ち味が発揮されている。

そして、本作の収録曲でも異彩を放っているのがスクリレックスが制作に携わり、彼とダミアン・マーレイが客演した”So Am I”、EDM畑出身のクリエイターながら、ダミアン・マーレイ以外にも、ザ・ドアーズのメンバーやビッグバンのG-ドラゴンスヌープ・ドッグなど、様々なジャンルのミュージシャンとコラボレーションしてきたスクリレックスが作ったビートは、ゆったりとしたテンポのバス・ドラムの上に、パーカッションの音色を盛り込んだ、レゲエとヒップホップを混ぜ合わせたようなもの。温かい歌声でヴォーカルとラガマフィンを使い分けるダミアンを軸に据えた作品だ。普段はヒップホップをベースにしたパフォーマンスを披露することが多い、タイ・ダラ・サインとスクリレックスがレゲエの手法に挑戦した点も面白い。

今回のアルバムは、流行のサウンドを乗りこなしてきた彼らしい、新鮮さと親しみやすさが両立された佳作だ。個性豊かなプロデューサー達が作る多彩なトラックをきちんと乗りこなしつつ、硬派なイメージと大衆性を両立できるのは、地道な活動で鍛え上げた彼の高いスキルのおかげだろう。

次々と新しいスタイルが生まれ、消えゆくヒップホップ・シーンの中で、ゲームのルールに適応しつつ、独自性を発揮したタイ・ダラ・サインの高い技術が発揮された良質なアルバム。「2017年のヒップホップ」を1枚のCDに凝縮したような、充実した内容の作品だと思う。

Producer
Ty Dolla Sign, DJ Mustard, Mike Will Made It, Pharrell Williams, Skrillex, Poo Bear etc

Track List
1. Famous
2. Famous Lies
3. Love U Better feat. Lil Wayne & The-Dream
4. Ex feat. YG
5. Famous Excuses
6. Droptop In The Rain feat. Tory Lanez
7. Don’t Judge Me feat. Future & Swae Lee
8. Dawsin’s Breek feat.. Jeremih
9. Don’t Sleep On Me feat. Future & 24hrs
10. Stare feat. Pharrell Williams & Wiz Khalifa
11. Famous Friends
12. So Am I feat. Damian Marley & Skrillex
13. Lil Favorite feat. Madeintyo
14. In Your Phone with Lauren Jauregui
15. All The Time
16. Famous Amy
17. Side Effects
18. Famous Last Words
19. Message In A Bottle
20. Nate Howard Intro





Beach House 3
Ty Dolla $Ign
Atlantic
2017-11-07

Sharon Jones & The Dap-Kings ‎– Soul Of A Woman [2017 Daptone]

アレサ・フランクリンやメイヴィス・ステイプルズを彷彿させる、ふくよかでダイナミックな歌唱が魅力のシャロン・ジョーンズを核に据え、名うてのミュージシャン達が脇を固めたスーパー・バンド、ダップ・キングス。 90年代中ごろから、ニューヨークを拠点に活動していた彼女達は、生演奏によるパワフルなパフォーマンスと、CD全盛期の時代に積極的にアナログ・レコードを発売するビジネス・スタイルが話題になり、徐々にファンを増やしていく。

また、バンドを支える演奏者の高いスキルは有名ミュージシャンの間でも注目を集め、エイミー・ワインハウスやマーク・ロンソンなどの作品に起用されたほか、バンドのメンバーが結成したメナハン・ストリート・バンドの”Make the Road by Walking”は、ジェイZなどのヒップホップの楽曲にサンプリングされるなど、様々なジャンルのアーティストから高い評価を受けてきた。

しかし、2013年にシャロン・ジョーンズの胆管癌が見つかると、その後は長い闘病生活と並行しての活動に突入する。そんな中でも、ホリデー・アルバムを含む複数の作品を発表し、病と闘いながら音楽活動を行うシャロンを題材にしたドキュメンタリー映画が発表をするなど、限られた時間の中で多くの足跡を残してきたが、2016年の11月に彼女はこの世を去ってしまう。

本作は、彼女が生前に録音した未発表曲を集めた編集盤。当初はアルバム2枚分の楽曲を作る予定だったが、本作では完成に至った11曲を収めている。

アルバムの1曲目は、本作からの先行シングルである”Matter Of Time”。ギターを担当しているビンキー・グリップタイトがペンを執ったこの曲は、三連符を効果的に使った優雅な雰囲気が魅力のミディアム・ナンバー。マヘリア・ジャクソンのゴスペル作品を思い起こさせる雄大なコール&レスポンスと、荒波のように強烈な音を繰り出すホーン・セクションのコンビネーションが面白い曲だ。

また、バンドの中心であるボスコ・マンが制作した”Just Give Me Your Time”は、60年代のジェイムズ・ブラウンを思い起こさせる激しい感情表現と、一つ一つのフレーズをじっくりと歌い込むシャロンの姿が光るスロー・ナンバー。絶妙なタイミングで彼女の歌を盛り立てる演奏が、ヴォーカルの豊かな表情を引き出した良曲だ。力技だけではない、彼女の多才な一面が垣間見れる魅力的な作品だ。

そして、ギターのジョー・クリスピアーノが提供した”Come And Be A Winner”は、軽やかなギターの伴奏が心地よいミディアム・ナンバー。ギターの音色を強調して爽やかな雰囲気を演出する手法は、スピナーズの”It’s A Shame”にも少し似ているが、この曲の演奏はもっと柔らかい。豊かな歌声を巧みに操って、リスナーに語り掛けるように歌うシャロンの姿が印象的な曲だ。

だが、本作のハイライトは何といっても彼女自身がペンを執った”Call On God”だろう。オルガンやコーラスを加えた本格的なゴスペル作品でもあるこの曲は、生演奏をバックに朗々と歌う姿が魅力的。 分厚いコーラスをバックに力強い歌声を聴かせる姿は、70年代にアレサ・フランクリンが発表したライブ録音を連想させる。闘病中とは思えない、力強さと生命力に溢れた歌唱が堪能できる名演だ。

今回のアルバムは、ふくよかで表情豊かなシャロンのヴォーカルと、ダップ・キングスの緻密な演奏が合わさった良質な作品だと思う。見方によっては、過去の路線を踏襲したようにも映るが、それをマンネリ化ではなく、バンドの一貫した作風だと思わせる説得力が、彼女達の凄いところだと思う。むしろ、病と闘いながらも、それ以前と変わらないパワフルなパフォーマンスを披露し続けている彼女と、それを普段の録音と同じような演奏で支えるバンドに、最後までブレることなく貫かれた、彼女達のチームワークと強い信念さえ感じられた。

音楽史に残る傑作を残してきた彼女達の最終作にふさわしい、充実した内容。今後、どんなシンガーを迎えても、本作みたいな音楽は作れないと思わせる力作だ。

Producer
Bosco Mann

Track List
1. Matter Of Time
2. Sail On!
3. Just Give Me Your Time
4. Come And Be A Winner
5. Rumors
6. Pass Me By
7. Searching For A New Day
8. These Tears (no Longer For You)
9. When I Saw Your Face
10. Girl! (you’ve Got To Forgive Him)
11. Call On God





SOUL OF A WOMAN [CD]
SHARON JONES & THE DAP-KINGS
DAPTONE RECORDS
2017-11-17

Martha High - Tribute To My Soul Sisters [2017 Record Kicks]

ブーツィー・コリンズやメイシオ・パーカーなどの名手を輩出する一方、リン・コリンズやマーヴァ・ホイットニー、タミー・テレル(当時はタミー・モンゴメリー名義で在籍)など、多くの女性シンガーが所属していたジェイムズ・ブラウンのバンド。彼のバンドから巣立ち、今も一線で活躍している女性シンガーが、ワシントンDC出身のマーサ・ハイだ。

同じハイスクールに通う友人と結成したガールズ・グループ、フォー・ジュエルズがジェイムズ・ブラウンに認められ、バック・コーラスとして加入した彼女は、65年から2000年まで、実に35年もの間、彼のツアーに帯同。その一方で、72年には初の自身名義のシングル”Georgy Girl”をリリース、79年には初のソロ・アルバム『Martha High』を発売するなど、バンド活動と並行しながら着実に実績を積み上げてきた。

2000年以降は、主にソロとして活動。ヨーロッパのレーベルから作品を発表しつつ、日本を含む世界各国でライブを行ってきた。

本作は、2016年の『Singing For The Good Times』以来、約1年ぶりとなる新作。これまでにもイギリスのスピードメーターやフランスのシャオリン・テンプル・ディフェンダー、イタリア人プロデューサーのルーカ・サピオなど、ジェイムズ・ブラウンの音楽から多くの影響を受けてきたミュージシャンと組んできた彼女だが、今回のパートナーに選んだのは、日本のオーサカ=モノレール。近年はヨーロッパを含む海外でのライブも経験するなど、日本を代表するファンク・バンドとして知られている彼らと録音した本作は、ジェイムズのバンドから世に出た女性シンガー達の楽曲を取り上げた、トリビュート・アルバムになっている。

アルバムのオープニングを飾るのは、リン・コリンズが1972年に発表した”Think (about it)”のカヴァー。溌剌とした歌声が魅力のリンのヴォーカルを御年68歳(執筆時点)のマーヴァが忠実に再現している点が面白い。オーサカ・モノレールが生み出すグルーヴが、オリジナル以上にダイナミックな点も見逃せない。原曲を忠実に再現しつつ、その持ち味をオリジナル以上に強調したアレンジが魅力の佳曲だ。

これに対し、リズム&ブルース作品の”A little taste of soul”は、後にチェスからもレコードをリリースしているシュガー・パイ・デサンドが、1962年に発売したダンス・ナンバー。激しく歌う姿が印象的な原曲に比べると、グラマラスで貫禄溢れる歌唱が印象的な曲だ。唸るようなベースと軽妙なリズムも格好良い。ジェイムス・ブラウンといえば”Sex Machine”のようなファンク・ミュージックのイメージが強いが、この曲のような50年代、60年代に制作していたリズム&ブルース・ナンバーにも良曲が多い。エイミー・ワインハウスの登場以降、ヴィンテージ・ミュージックが見直されている今だからこそ聴きたい作品だ。

また、同じリズム&ブルースの作品では、ジェイムズ・ブラウンが63年に発表し、同じ年にタミー・テレル(当時はタミー・モンゴメリー名義)がカヴァーした”I cried”も見逃せない。泣き崩れるように歌うジェイムズのヒット曲を、タミーは可愛らしい声を活かした甘酸っぱい歌唱で歌いなおしたことでも有名な本作。マーサはふくよかな歌声と老練な歌唱で、両者の演奏とは一味違う、本格的なソウル・バラードに改変している。彼女の高度な表現力と、様々なアレンジに耐えうるジェイムズの作品の奥深さを感じさせる良曲だ。

そして、本作に”Sex Machine”のようなファンク作品を期待する人にお勧めしたいのが、リン・コリンズが1973年に録音した”Mama feel good”だ。ジェイムズ・ブラウンがサウンドトラックを担当した同年の映画「Black Caesar」で使われたこの曲は、乾いた音色のギターのカッティングと、重厚なドラムとベースが生み出すグルーヴが魅力のミディアム・ナンバーだ。ジェイムズ関連のファンク・ナンバーではしばし見られる、少し肩の力を抜いた演奏をじっくりと聴かせる作品だが、彼女は絶妙な匙加減で乗りこなしている。

このアルバムを聴いて強く感じるのは、マーサの高い歌唱力と、ジェイムズが残した楽曲の多彩さ、そして、彼のバンドから羽ばたいていったシンガー達の強い個性だ。ロックンロールにも通じる激しいリズム&ブルースから、リスナーの胸を揺さぶるダイナミックなバラード、腰を刺激するファンクまで、様々なスタイルの楽曲を色々なスタイルで演奏してきた名シンガー達。そんな彼女達の楽曲を、自分の音楽に染め上げるマーサの豊かな表現力と想像力が本作の醍醐味だろう。そして、彼女を支えるオーサカ・モノレールの高い演奏技術が、ジェイムズ・ブラウンが提供した曲のカヴァーという難解なお題を実現可能なものにしていると思う。

ジェイムズ・ブラウンが残した珠玉の名曲が持つ魅力を、余すことなく収めた良質なトリビュート・アルバム。マーサとオーサカ・モノレールの演奏をじっくりと楽しんでも良し、ジェイムズが手掛けた女性シンガーの作品を集めた『James Brown's Original Funky Divas』に入っているオリジナル・ヴァージョンと聴き比べても良し、一粒で二度おいしい企画盤だ。

Producer
Osaka Monaurail

Track List
1. Think (about it)
2. This is my story
3. A little taste of soul
4. Mama’s got a bag of her own
5. I cried
6. Don’t throw your love in the garbage can
7. Things got to get better
8. Put it on the line
9. Unwind yourself
10. You can make it if you try
11. Answer to mother popcorn
12. Mama feel good
13. Oh what a feeling






トリビュート・トゥ・マイ・ソウル・シスターズ
マーサ・ハイ
ディスクユニオン
2017-11-18



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