melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2017年12月

Talib Kweli - Radio Silence [2017 Javotti Media]

98年にモス・デフと組んだラップ・グループ、ブラック・スターの名義のアルバム『Mos Def & Talib Kweli Are Black Star』で華々しいデビューを飾ると、詩的な表現と哲学者を彷彿させる深い思索が光るラップで、注目を集めたタリブ・クウェリ。

ニューヨーク州ブルックリン出身の彼は、社会学者の父と言語学者の母の間に生まれ、後に大学教授として教鞭を執る弟を持つなど、アカデミックな家庭環境で育ってきた。そんな彼は、デ・ラ・ソウルの作品に触れたことで音楽へと興味を持ち、90年代中頃から、シカゴのラップ・グループ、ムードなどの作品に参加。レコーディングやライブを通して実力を蓄えてきた。

また、2002年に初のソロ・アルバム『Quality』を発表すると、その後はコンスタントに数多くのソロ作品やコラボレーション・アルバムを発表。マーリー・マールやKRSワンが活躍していた、90年代初頭のニューヨークのヒップホップ・シーンを思い起こさせる、サンプリングを効果的に使ったトラックと、現代社会やそこで生きる人々が抱える、様々な問題に鋭く切り込んだラップで評価を高めていった。

このアルバムは、今年4月に発売したニューヨーク出身のラッパー、スタイルスPとのコラボレーション・アルバム『The Seven』以来、自身名義の作品としては2015年の『Fuck the Money』以来となる、通算8枚目のフル・アルバム。前作同様、自身のレーベル、ジャヴォッティ・ミュージックからのリリースとなる本作は、プロデューサーとしてケイトラナダやオー・ノーが参加し、ゲスト・ミュージシャンとしてロバート・グラスパーアンダーソン・パックが名を連ねるなど、斬新なサウンドで音楽シーンを盛り上げてきた面々が集結した、新しい音へと挑戦する彼の野心を感じさせる作品になっている。

本作の収録曲の中でも、特に異彩を放っているのは2曲目の”Traveling Light”だろう。カナダ出身のケイトラナダがプロデュースを担当し、カリフォルニア州出身のアンダーソン・パックをフィーチャーしたこの曲は、60年代のソウル・ミュージックを連想させる勇壮なホーンの音色と、現代的な電子オルガンの伴奏を組み合わせたトラックが印象的な曲。ホーンの音色を使ったトラックは、多くのヒップホップ作品で見られるものだが、電子オルガンの音色を組み合わせることで新鮮な印象を与えている。アンダーソン・パックの歌も、タリブの切れ味鋭いラップをうまく盛り立てている。育った環境も世代も異なる、三人の持ち味が上手く噛み合った面白い曲だ。

これに対し、マッドリブの弟としても知られる、オー・ノーがプロデュースした”She's My Hero”は、古いレコードから引用した音を活かしたトラックが光る作品。オランダのプログレッシブ・ロック・バンド、スコープが74年に発表した”Kayakokolishi”をサンプリングした、アクション・ブロンゾンの”Bonzai”のトラックを再構築したこの曲。滑らかな管楽器の音色を効果的に使った、物悲しい雰囲気のビートは、ジャスト・ブレイズのプロデュース曲にも似ているが、こちらの方がよりレコードの質感を強調している。このトラックの上で、攻撃的なラップを聴かせるタリブ・クウェリの姿は、常に社会と闘ってきた、彼の孤独さを映しているようだ。

また、BJザ・シカゴ・キッドを招いた”The One I Love”は、サンファの”Can’t Get Close”をサンプリングした電子音楽のテイストが強い作品。泥臭いヴォーカルとモダンなサウンドを組み合わせた音楽性で、グラミー賞にもノミネートしたBJザ・シカゴ・キッドのスタイルを取り込んだ、懐かしさと新鮮さが入り混じった不思議な曲だ。立て続けに言葉を繰り出すタリブのラップと、シャイ・ライツのユージン・レコーズを思い起こさせる、艶めかしいBJのヴォーカルが心を掻き立てる良作。

そして、Jローズがトラックを制作し、リック・ロスとヤミー・ビンガムが客演した”Heads Up Eyes Open”は、本作のハイライトと呼んでも過言ではない作品。ジャスト・ブレイズや9thワンダーが作りそうな、70年代のソウル・ミュージックっぽい音色を使ったトラックが印象的だが、クレジットを見る限り、昔のレコードをサンプリングしたものではないようだ。このソウルフルなビートの上で、個性豊かなラップを披露するタリブとリックのコンビネーションが格好良い。サビでキュートな歌声を聴かせるヤミーの存在が、切れ味の鋭い二人のラップを聴きやすいものにしている。

これまでのアルバムでも、色々なスタイルのトラックに取り組んできた彼。だが、本作から感じるのは、往年のソウル・ミュージックやジャズに触発された音楽で知られる、若い世代の完成を取り込んだところだと思う。ソウル・ミュージックやファンク、ジャズの音を引用してきた彼が、それらの音楽に独自の解釈を加え、新しい音楽として聴かせている若いミュージシャンと組むことで、自分の軸を残しつつ、斬新な作品に仕上げている点が面白いと思う。

知的なリリックで、独創的な世界を組み立ててきた彼が、フレッシュな感性を取り込んで、その世界観を深めた良作。ヒップホップにはまだまだ進化できる可能性があると感じさせる、魅力的なアルバムだ。

Producer
The Alchemist, J Rhodes, KAYTRANADA, LordQuest, Oh No etc

Track List
1. The Magic Hour
2. Traveling Light feat. Anderson .Paak
3. All Of Us feat. Jay Electronica & Yummy Bingham
4. Let It Roll
5. Chips feat. Waka Flocka
6. Knockturnal
7. Radio Silence feat. Amber Coffman & Myka 9
8. She's My Hero
9. The One I Love feat. BJ The Chicago Kid
10. Heads Up Eyes Open feat. Rick Ross & Yummy Bingham
11. Write At Home feat. Datcha, Bilal & Robert Glasper






RADIO SILENCE
TALIB KWELI
JAVOTTI MEDIA/3D
2017-12-01

SHINee - Five [2017 SM entertainment Universal]

日本のSMAPとともに、東アジアのボーイズ・グループの存在感を世界に知らしめた神話(シンファ)にはじまり、韓国人ミュージシャンの海外戦略に大きな影響を与えたBoAや東方神起など、多くの人気タレントを送り出してきた韓国最大手の芸能事務所、SMエンターテイメント。同社から2008年にデビューしたのが、5人組のボーイズ・グループ、シャイニーだ。

デビュー作『The Shinee World』を発表した彼らは、韓国の音楽賞の新人部門を総なめにする一方、事務所の先輩である東方神起や少女時代のツアーに帯同したり、事務所主催のツアーに参加したりするなどして、地道に経験を積んでいく。また、2010年以降は、自分達の名義でも日本を含むアジア地域で多くのライブを敢行。着実に評価を高めてきた。また、ライブと並行して2016年までに韓国で6枚、日本で4枚のアルバムをリリース。特に、2012年に発表した”Sherlock”は二つの曲を繋ぎ合わせる手法と、90年代初頭のニュー・ジャック・スウィングの手法を取り入れた作風、美しいコーラス・ワークが注目を集め、同曲を収録したEPがビルボードのワールド・アルバム・チャートの5位に入ったほか、ローリング・ストーン誌の特集「ボーイズ・グループの名曲トップ50」に、事務所の先輩である東方神起や、日本勢では唯一ランク・インしたKAT-TUNなどを押しのけて、アジア勢では最高位となる12位で紹介される。

このアルバムは、日本盤としては2016年の『D×D×D』以来、約1年ぶり、韓国盤も含めると『1 of 1』のリパッケージ盤『1 and 1』以来、約3か月ぶりとなる5枚目の日本語版アルバム。最年長者のオンユが、2018年から兵役に就き、その後も他のメンバーが続く予定のため、本作は長いブランクを前にした彼らの、キャリアを総括するような作品になっている。

本作のオープニングを飾る”Gentleman”は、スウェーデンのプロデューサー、アンドレアス・オーバーグらが曲を作り、SMAPやクリス・ハートなどの作品でもペンを執っているいしわたり淳治が詞をつけたミディアム・ナンバー。60年代のシカゴ・ソウルを彷彿させるホーンのような音色が心を掻き立てるトラックをバックに、美しいハーモニーやコール&レスポンスを繰り出す作品。「新しい世界のドア、レディ・ファーストがマイ・マナー」という歌い出しや、「踊ろう、僕がエスコートしてあげる」というフレーズのとおり、聴き手を彼らの世界に引き込んでくれる。ゴスペラーズやラッツ&スターが得意としていた本格的なコーラス・ワークと、彼らのスター性が同居した面白い曲だ。

また、デンマークのプロデューサー、イラガーク・ラムハルトが曲を書いた”Get The Treasure”は、ハウス・ミュージックとR&Bの要素を混ぜ合わせたアップ・ナンバー。キラキラとした音色のシンセサイザーを駆使した伴奏と、滑らかなテナー・ヴォイスのコンビネーションが素敵な良曲。「ルーレットは回る」「伸るか反るかどうする?」という歌詞の通り、躍動感溢れるトラックと、緊迫感に満ちたヴォーカルの組み合わせが光っている。

また、韓国で2016年に発表されたシングル”1 of 1”は、カナダのソング・ライター、マイク・ディレイなどが制作を担当。イントロを聴いた瞬間、ガイの”Teddy’s Jam”を連想してしまう、軽快に跳ねるビートと、女性に語り掛けるように歌う軽妙なヴォーカルが魅力のアップ・ナンバーだ。サラ・サクライが作る甘酸っぱい雰囲気の歌詞は、80年代後半から90年代前半にかけて多くのヒット曲を残した、ニュー・エディションやベイビーフェイスの作風を連想させる。

そして、本作に先駆けて発表された”Winter Wonderland”は、スウェーデンのプロデューサー、エリック・リボムと日本のプロデューサー、田中秀典の共作によるバラード。東方神起や嵐にも楽曲を提供しているエリックが生み出すメロディは、起承転結がはっきりした展開と、日本人の琴線を突くメロディが心地よい。しなやかなテナー・ヴォイスを駆使した美しいコーラス・ワークは、R&Bグループのそれとは少し違うが、年齢、性別を問わず人の心を引き付ける不思議な魅力を持っている。日本を含む、アジア各国に多くのファンがいるという話も納得の内容だ。

彼らの音楽の面白いところは、80年代後半から90年代前半のR&Bという、若い人には馴染みの薄い音楽を取り入れつつ、彼らに愛されるポップス作品に落とし込んでいるところだろう。日本でもゴスペラーズやFOHのような、R&Bをベースにしたヴォーカル・グループはあるが、ポップ・スターというポジションで、このような音楽を作るグループは珍しい。

また、彼らのもう一つの強みは、結成以来、変わらない5人による隙のないコンビネーションだと思う。メンバーのソロ作品を除くほぼ全ての曲で、5人全員が一丸になって、美しいハーモニーやマイク・リレーを披露する彼らのパフォーマンスは、誰か一人が欠けても同じ音楽にはならないし、新しいメンバーや外部のシンガーを加えても同じクオリティのものにはならない。完成度の高いものだ。

誰もが厳しい競争にさらされる、韓国の音楽シーンの中で、音楽に誠実に向き合ってきた彼らの姿勢が垣間見える優れたヴォーカル作品。5人が揃ったステージは二度と見れない今、彼らが残してくれた素敵な音楽を大切にしたい。そう思わせる説得力のあるアルバムだ。

Producer
Lee Soo Man etc

Track List
1. Gentleman
2. Mr. Right Guy
3. ABOAB
4. 君のせいで
5. Do Me Right
6. Become Undone
7. Get The Treasure
8. 1 of 1 (Japanese Ver.)
9. Nothing To Lose
10. Melody
11. Winter Wonderland
12. Diamond Sky





FIVE(通常盤)
SHINee
Universal Music =music=
2017-02-22


Eminem - Revival [2017 Aftermath, Shady, Interscope]

97年に発表した自主制作のアルバム『The Slim Shady EP』で表舞台に登場。同作のヒットを受けて出演した、ラジオ・ショーで披露したフリースタイルがDr.ドレに認められ、彼のレーベル、アフターマスと契約。99年に『The Slim Shady EP』に新曲を追加した『The Slim Shady LP』でメジャー・デビューすると、アメリカ国内だけで400万枚、全世界で600万枚を超える大ヒットとなった、ミズーリ州セントジョセフ生まれ、ミシガン州デトロイト育ちのラッパー、エミネムことマーシャル・ブルース・マーザーズ三世。

その後も彼は、『Marshall Marthers LP』や『The Eminem Show』などのヒップホップ・クラシックをリリース。特に前者は、発売初週の売り上げが179万枚、最終的にはアメリカ国内だけで1250万枚を売り上げ、ヒップホップのアルバムとしては史上最高となる売り上げ記録を残す。

また、彼の活動は音楽にとどまらず、自身の半生をもとにした映画『8 Mile』で主演俳優と音楽を担当。彼が歌う主題歌”Lose Yourself”がアカデミー賞を獲得するなど、高い評価を受けている。また、99年に立ち上げた自身が運営するレーベル、シェイディを本格的に始動し、50セントやオービー・トライスなどを世に送り出してきた。

そんな、2000年代にはトップ・ミュージシャンとして音楽業界をけん引してきた彼だが、2010年代に入ると活動は抑え気味に。ロイス・ダ59とのコラボレーション作品や自身名義の『Marshall Marthers LP 2』などを発表するなど、ゆっくりとしたペースで、着実にヒット作を残していった。

このアルバムは、彼にとって4年ぶりとなる9枚目のフル・アルバム。プロデュースは、デビュー前からのパートナー、Dr.ドレに加え、リック・ルービンやジャスト・ブレイズが担当。ゲスト・シンガーとしてビヨンセやエド・シーラン、ケラーニなどが参加した、ビック・ネームにふさわしい、豪華なものになっている。

アルバムの1曲目は、本作からのリード・シングル”Walk On Water”。多くのヒップホップ・ミュージシャンと仕事をしてきたリック・ルービンと、ホーリー・ブルック名義で複数のヒット作を残しているスカイラー・グレイがプロデュースを担当。ビヨンセの丁寧な歌唱が心を掻き立てるミディアム・ナンバーに仕上げている。Dr.ドレとエミネムのコラボレーション曲”I Need a Doctor”や、エミネムの”Asshole”にも関わっている、スカイラー・グレイの哀愁を帯びたメロディが光る良曲だ。

これに対し、彼自身がプロデュースした”Untouchable”は、唸るようなギターの音色が格好良い、ロック色の強い作品。サビで流れる威圧感のあるギターから、エミネムの軽妙なラップを引き立てるように、シンセサイザー中心のビートを組んだメロディ部分へとつながる展開も面白い。エミネムの武器である、コミカルでキャッチーなヒップホップが堪能できる作品。

また、エド・シーランをゲスト・ヴォーカルに招き、エミリー・ハインが制作を担当した”Rive”は、エドの物悲しい歌声が鳴り響くサビと、ギターの弾き語りを組み込んだ、フォークソングっぽいトラックの上で、荒っぽいラップを聴かせるエミネムの姿が印象的。ポップス畑のシンガーと組んだ作品には、他にイギリスのシンガー・ソングライター、ダイドを起用した”Stan”などがあるが、こちらの曲ではギターやベースの音を強調し、ポップス寄りの作品に仕上げている。

そして、ジャスト・ブレイズが制作に参加し、ゲスト・ヴォーカルとしてアリシア・キーズを招いた”Like Home”は、アリシア・キーズの楽曲を彷彿させる、ピアノの伴奏が光るロマンティックな作品。クラシック音楽の影響をうかがわせる荘厳なトラックに乗って、次々と言葉を繰り出すエミネムの姿が格好良い。ジェイZやナズ、ドレイクなど、個性豊かなラッパーとコラボレーションしながら、ブレる気配のない安定したアリシアの歌唱が、エミネムの個性を際立たせている。本作の目玉といっても過言ではない曲だ。

今回のアルバムは、前作同様、音楽業界の頂点を極めた後、自身の新しいアーティスト像を模索するエミネムの姿が姿が印象的な佳作だ。線の細い白人青年による、皮肉たっぷりのラップと、「スリム・シェイディ」という別人格を使い分けることで、成功への階段を駆け上がってきた彼。だが、今の彼は音楽界でもトップクラスの富豪であり、多くのヒット作を残しているトップスター。デビュー当初の異端児キャラとはミスマッチが起きているのも事実だ。それを乗り越えるため、色々なスタイルを取り入れて、新しい音楽を模索したのが今回のアルバムだろう。

反抗的な青年が大人になり、地位と名誉を掴んだあと、新たな目標を模索する。多くの大人が抱えている課題に、彼のスタイルで取り組んだ佳作。成長期から成熟期へと突入したエミネムの、「次」が楽しみになる面白い作品だ。

Producer
Dr. Dre, Rick Rubin, Just Blaze, Eminem, Emile Haynie, etc

Track List
1. Walk On Water feat. Beyonce
2. Believe
3. Chloraseptic feat. Phresher
4. Untouchable
5. Rive feat. Ed Sheeran
6. Remind Me (Intro)
7. Remind Me
8. Revival (Interlude)
9. Like Home feat. Alicia Keys
10. Bad Husband feat. X Ambassadors
11. Tragic Endings feat. Skylar Grey
12. Framed
13. Nowhere Fast feat. Kehlani
14. Heat
15. Offended
16. Need Me feat. Pink
17. In Your Head
18. Castle
19. Arose1.1.



a

Revival
Eminem
ユニバーサル ミュージック合同会社
2017-12-16


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