melOnの音楽四方山話

オーサーが日々聴いている色々な音楽を紹介していくブログ。本人の気力が続くまで続ける。

2018年02月

Ravyn Lenae - Crush [2018 323Music, Atlantic]

2015年に自主制作で発表したEP『Moon Shoes』が、音楽通の間で注目を集めたことをきっかけに、アトランティックと契約。2016年に同作をアトランティックから再発すると、音と音の隙間を効果的に使った構成と、繊細なヴォーカルで多くの人を魅了した、イリノイ州シカゴ出身のシンガー・ソングライター、ラヴィン・レネー・ワシントン。

シカゴで生まれ育った彼女は、教会で宣教師をしていた祖父の影響もあり、子供のころから教会で音楽に慣れ親しんでいた。そんな彼女は、シカゴのハイスクールでクラシック音楽を専攻。卒業後は自身の作品を作りながら、同郷のプロデューサー、モンテ・ブッカーや、セントルイス出身のラッパーのスミノなどとコラボレーションしてきた。また、それらの縁もあり、2015年にはモンテが制作を担当した、自身名義では初となるミニ・アルバム『Moon Shoes』を録音している。

そして、2017年には2枚目のEP『Midnight Moonlight』をリリース。モンテに加え、シーザの作品に携わっているカーター・ラングなどが参加したことが話題になる。また、同じ年に行われたシーザのツアーでは、オープニング・アクトとして起用されるなど、着実に知名度を上げてきた。

このアルバムは、そんな彼女にとって、1年ぶり3枚目のEP。プロデューサーには初のソロ作品『Steve Lacy's Demo』を発表して話題になった、ザ・インターネットのスティーヴ・レイシーが担当。本作でも、バンド名義やシドの作品で魅せた、泥臭いソウル・ミュージックと先鋭的なヒップホップが融合した、独創的な音楽に取り組んでいる。

アルバムの1曲目は、本作からの先行シングル”Sticky”。不気味な雰囲気を醸し出すオルガンのイントロから、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの作品を彷彿させる乾いた音色のギターへと繋がる展開が面白い曲。少し早めのイントロから一転、ゆったりとしたテンポのビートの上で、ラップとも歌とも形容しがたい、個性的なパフォーマンスを披露するラヴィンの姿が光るっている。バック・トラックはエリカ・バドゥやシドの作品にも少し似ているが、ヒップホップのエッセンスを盛り込んだヴォーカルはドレイクっぽくも聴こえる不思議な音楽だ。

続く”Closer (Ode 2 U)”は、エフェクターを使って歪ませたギターの伴奏や躍動感あふれるビートが、サイケデリック・ロックとソウル・ミュージックを融合した、70年代初頭のファンカデリックやカーティス・メイフィールドを思い起こさせるアップ・ナンバー。バス・ドラムの音を強調して、現代のヒップホップっぽく纏め上げたトラックや、ラヴィンの繊細な歌声を際立たせた演出が、サイケデリックなソウル・ミュージックを、2018年のR&Bのように聴かせた異色の作品だ。

また、スティーヴをフィーチャーした”Computer Luv”は、彼の作品では珍しい、思いっ切りギターをかき鳴らすフォーク・ミュージック寄りのアレンジが新鮮な作品。複数のシンセサイザーの音色を組み合わせて、エフェクターを多用したサイケデリックなサウンドとは一味違う、幻想的なフォーク・ソングに仕立てた伴奏が聴きどころ。

そして、もう一つのコラボレーション曲”4 Leaf Clover”は、リズム・マシンを使った軽快なビートとパワフルなギターの音色が眩しいミディアム・ナンバー。70年代前半のロキシー・ミュージックやデイヴィッド・ボウイを連想させる、グラマラスな伴奏に乗って、爽やかなヴォーカルを披露する二人の姿が心に残る良曲だ。

今回の作品で彼女は、独創的なサウンドに定評のあるスティーヴを起用することで、自身の持ち味である尖ったR&Bを維持しつつ。それを新しい切り口で表現した作品を生み出すことに成功している。多くのバンド・メンバーを抱えるザ・インターネットの中でも一番若く、かつ個性的な作品を残しているスティーヴを相方に選ぶことで、ゴスペルやクラシック音楽から、最新のヒップホップやR&Bまで、色々なジャンルに取り組んできた彼女の強みが遺憾なく発揮されている。

恵まれた環境で色々なジャンルの音楽を吸収する一方、自身の作品では鋭いセンスを発揮してきた彼女の長所が、遺憾なく発揮された佳作。大ベテランのエリカ・バドゥを筆頭に、シーザやシドといった多くの名シンガーが鎬を削る、ネオ・ソウルの分野に新しい風を吹き込んだ良盤だ。

Producer
Steve Lacy

Track List
1. Sticky
2. Closer (Ode 2 U)
3. Computer Luv feat. Steve Lacy
4. The Night Song
5. 4 Leaf Clover feat. Steve Lacy





Crush EP [Explicit]
Atlantic Records/Three Twenty Three Music Group
2018-02-09

Various Artist - Black Panther The Album [2018 Top Dawg, Aftermath, Interscope]

2017年には4枚目のスタジオ・アルバム『Damn』を発表。複数の国でゴールド・ディスクを獲得し、同作に収録されているシングル”Humble”は、各国の年間チャートに名前を連ねる大ヒットとなった、カリフォルニア州コンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマー。2018年1月に開催されたグラミー賞では、主要部門のうち、最優秀レコードと最優秀アルバムの2部門にノミネートし、ラップ部門を総なめにするなど、2017年を代表するヒップホップ・アーティストとして、華々しい成果を上げた彼の2018年最初の作品は、アフリカ系アメリカ人が主人公のマーベル・コミックを実写化した、ハリウッド映画のサウンド・トラック。

彼が在籍するレーベル、トップ・ドーグから発売されたこのアルバムでは、同レーベルの所属アーティストを中心に、ジェイムス・ブレイクやウィークエンド、アンダーソン・パークなど、凝ったサウンドで多くの音楽ファンを魅了してきた面々が集結。斬新なサウンドとキャッチーな曲作りで、聴き手を魅了している。

本作の1曲目は、ケンドリック・ラマーと同郷のプロデューサー、マーク・スピアーズが手掛けるタイトル・トラック”Black Panther”。60年代のポピュラー・ミュージックから引用したような、ロマンティックなピアノの伴奏に始まり、シンセサイザーを駆使したおどろおどろしいビートへと繋ぐ展開が新鮮な作品。トラックの変化に合わせて、ラップのスタイルを変えるケンドリック・ラマーのテクニックも光っている。

これに続く”All the Stars”は、プロデュースをマークとロンドン出身のアル・シャックスが担当した、ケンドリック・ラマーとシーザのコラボレーション曲。エムトゥーメイの”Juicy Fruits”を彷彿させる、スタイリッシュなビートに乗って、爽やかな歌声を響かせるシーザと、切れ味の鋭いラップを聴かせるケンドリック・ラマーのコンビネーションが格好良いミディアム・ナンバー。強烈な存在感を発揮しながら、息の合ったパフォーマンスを見せる姿は、多くのシンガーとヒット曲を残してきた、ナズやジェイZを思い起こさせる。

また”Humble”の共作者としても有名な、マイク・ウィル・メイド・イットが制作に参加した”King's Dead ”は、ジェイ・ロックやフューチャーといった、実力に定評のあるラッパーに加え、ビヨンセやフランク・オーシャンのアルバムにも拘わっているジェイムス・ブレイクを起用。マイクが得意とするチキチキ・ビートの上で、三人が豊かな個性を遺憾なく発揮している。ジェイムス・ブレイクのヴォーカルを含め、最小限の音数でスリリングなヒップホップを聴かせるテクニックは、流石としか言えない。

そして、本作の最後を締める”Pray For Me”は、2016年のアルバム『Starboy』が年を跨いで売れ続けた、カナダ出身のシンガー・ソングライター、ウィークエンドとのコラボレーション曲。ウィークエンドがダフト・パンクと録音した大ヒット曲”Starboy”の共作者でもあるドック・マッキンネイに加え、ドレイクやニッキー・ミナージュに楽曲を提供しているカナダ出身のヒット・メイカー、フランク・デュークスが制作者に名を連ねるこの曲は、アナログ・シンセサイザーの太く、柔らかい音色を使ったトラックが”、Starboy”を連想させるミディアム・ナンバー。殺伐とした雰囲気の作品が多いケンドリック・ラマーに合わせて、哀愁を帯びたメロディや伴奏を取り入れた構成が心憎い。”Starboy”の路線を踏襲しつつ、このアルバムに合わせて絶妙な調整を加えた佳作だ。

本作の聴きどころは、強烈な個性で台頭したトップ・ドーグの面々の持ち味を際立たせながら、ゲスト・ミュージシャンやアルバム全体の構成で、作品全体に起伏をつけているところだろう。単独名義の作品ではアクが強過ぎて使いづらいスタイルの楽曲を録音しつつ、曲ごとにプロデューサーやアーティストの組み合わせを変えることで、パフォーマーの個性を引き出しつつ、アルバムにメリハリをつけている。また、映画という一つの軸を持つことで、バラエティ豊かな楽曲を揃えつつ、一本筋が通った作品に仕立てている点も見逃せないだろう。

ケンドリック・ラマーやシーザを輩出したトップ・ドーグの、高い実力が遺憾なく発揮された名盤。2018年初頭に発表されたアルバムだが、この年を代表する作品になりそうな風格さえ感じる。

Producer
Anthony "Topdawg" Tiffith, Kendrick Lamar, Dave "Miyatola" Free etc

Track List
1. Black Panther - Kendrick Lamar
2. All the Stars - Kendrick Lamar, SZA
3. X - Schoolboy Q, 2 Chainz, Saudi
4. The Ways - Khalid, Swae Lee
5. Opps - Vince Staples, Yugen Blakrok
6. I Am - Jorja Smith
7. Paramedic! - SOB X RBE
8. Bloody Waters - Ab-Soul, Anderson .Paak, James Blake
9. King's Dead - Jay Rock, Kendrick Lamar, Future, James Blake
10. Redemption Interlude
11. Redemption - Zacari, Babes Wodumo
12. Seasons - Mozzy, Sjava, Reason
13. Big Shot - Kendrick Lamar, Travis Scott
14. Pray For Me - The Weeknd, Kendrick Lamar





Black Panther: The Album
Various Artists
ユニバーサル ミュージック合同会社
2018-02-10

Caleb Hawley - Love, Drugs, & Decisions [2017 storage unit]

ケイレブ・ホウレーは、プリンスやジャム&ルイスなどを輩出してきた、ミネソタ州ミネアポリス出身のシンガー・ソングライター。

子供のころから、プリンスなどの音楽に慣れ親しんできた彼は、次第に自分でも音楽を作るようになる。そして、2009年の『Steps』を皮切りに、2016年までに3枚のアルバムを発表。ロックやファンク、ディスコ音楽などを飲み込みながら発展してきた、ミネアポリスのサウンドを踏襲したスタイルで、多くの音楽ファンを楽しませてきた。

今回のアルバムは、彼にとって3年ぶり4枚目の録音作品。全ての曲でホウレー自身がペンを執る一方、フェイス・エヴァンスアンジー・ストーンの楽曲を手掛けている、プリンス・チャールズ・アレクサンダーなどがプロデュースで参加。プリンスやジャム&ルイスなどの手で世界に広まった、シンセサイザーを多用したファンキーなソウル・ミュージックを現代に蘇らせている。

アルバムの2曲目は、本作に先駆けて発表された”Addiction”。プリンス・チャールズ・アレクサンダーが共同プロデューサーとして名を連ねたこの曲は、ウェイン・マーシャルの”Check Yourself”などに使われたレゲエのリディム、”Masterpiece”によく似たビートを組み込んだアップ・ナンバー。口笛のように軽妙なヴォーカルと、変則的なビートのコンビネーションが新鮮だ。

続く”Pieces On The Inside”は、地鳴りのようなドラムと、色々な楽器を組み合わせた、色鮮やかな伴奏が心地よいミディアム。多くの楽器を使い分けるスタイルは、タジ・マハルの70年代の録音のような、ロックやアメリカのルーツ・ミュージックを積極的に取り込んだ音楽を彷彿させる。ブルースが盛んとは言いづらいミネアポリスの出身ながら、アメリカのルーツ音楽を貪欲に取り入れる姿勢には驚くばかりだ。

これに対し、ケレイブ自身がプロデュースしたバラード”Spinnin”は、シンセサイザーを駆使したモダンなアレンジと、絶頂期のプリンスが降臨したと錯覚しそうな、艶めかしいハイ・テナーが心を揺さぶる名演。しなやかで色っぽい歌声は、プリンスというよりロナルド・アイズレーに近い。

そして、本作の収録曲では一番最初に公開された”U & I”は、パンチの効いたドラムと、ギターの弾き語りを組み合わせた伴奏が気持ち良いミディアム・バラード。パワフルな演奏をバックに、切々と歌い上げる姿が印象的。アデルやエド・シーランなどのヒットで、ファンを広げているロック色の強いバラードを巧みに取り込んでいる。

このアルバムで彼が披露したのは、プリンスに代表されるミネアポリスのブラック・ミュージックをベースに、彼らが活躍した80年代のソウル・ミュージックや、それ以前の時代のブルース、、現代のR&Bやロックまで、様々な時代の音楽を研究し、融合したものだ。アナログ・シンセサイザーを使った幻想的な音色を、ダンス・ミュージックに組み込んだプリンスの手法から、泥臭い演奏で歌に重みを与えたブルース寄りのバラードまで、色々なスタイルの音楽に食指を伸ばしながら、きちんと自分の作品に落とし込んでいるのは、彼が音楽への深い造詣と高い技術を持ってるからだろう。

ソウル・ミュージックへの愛を隠すことなく楽曲に注ぎ込み、聴き手を楽しませる作品へと昇華させた貴重な作品。若い世代には往年のブラック・ミュージックが持つ魅力を、年季を積んだ人には、当時の音楽を新鮮な解釈で楽しませてくれる良質なアルバムだ。

Producer
Caleb Hawley, Doxa, Drew Ofthe Drew & Prince Charles Alexander

Track List
1. Carelessly
2. Addiction
3. Pieces On The Inside
4. We All Got Problem
5. I Choose
6. Spinnin
7. Dive Bar
8. Stalk Me
9. Goodbye
10. U & 1
11. Thank You
12. Thank You (Outro)
13. GIve It Away
14. I Just Want You
15. I Want Your Innocence
16. Little Bit of Bad






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