90年に自身の名前を冠したアルバム『Lalah Hathaway』で表舞台に登場。それ以来、絹のように滑らかで繊細な歌声と、丁寧で緻密な歌唱を武器にファンを増やしてきた、イリノイ州シカゴ出身のシンガー・ソングライター、レイラ・ハザウェイ。

“A Song For You”や”The Ghetto”などのソウル・クラシックを残し、カーティス・メイフィールドやジーン・チャンドラーと並んで、シカゴを代表するシンガー・ソングライターとして今も愛されているダニー・ハザウェイを父に持つ彼女は、シカゴの芸術学校を卒業するとヴァージン・レコードと契約。バークリー音楽院で学びながら、プロとしてのキャリアをスタートする。

デビュー作である『Lalah Hathaway』で見せた、20代前半(当時)とは思えない落ち着いた歌唱と、洗練された演奏で音楽通を唸らせた彼女は、R&Bチャートの18位に入るなど一気にブレイク。その後は、2016年までに7枚のアルバムを録音する一方、メアリーJ.ブライジやチャカ・カーンなど、多くの有名ミュージシャンの作品に参加。中でも、2015年に発売されたケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』や、2012年にリリースされたロバートグラスパーの『Black Radio』は、ヒット・チャートと音楽賞、両方で高い成果を上げる傑作となった。また、彼女自身も2015年のアルバム『Lalah Hathaway Live』と同作に収められている”Angel”や”Little Ghetto Boy”でグラミー賞など、複数の音楽賞を獲得。着実に成果を残してきた。

このアルバムは、彼女にとって『Lalah Hathaway Live』以来、約2年ぶりとなるフル・アルバム。スタジオ録音の作品としては『Where It All Begins』以来、実に7年ぶりのアルバムとなる本作は、ソランジュやジル・スコット、SiRなどを手掛けている、カリフォルニア州イングルウッド出身のシンガー・ソングライター、ティファニー・ガッシュがプロデューサーとして参加。ゲストの人数は最小限に抑え、彼女の歌にスポットを当てた、本格的なR&B作品を披露している。

アルバムのオープニングを飾る”Honestly”は、レイラとティファニーによる共作曲。重い低音とビヨビヨというシンセサイザーの音色を使ったトラックが、モダンな印象を与える曲だ。この曲の上で、繊細だがふくよかな歌声を駆使して、メロディを丁寧に歌う姿が光っている。起承転結のはっきりしたメロディは、父、ダニーや彼女が残してきた作品にも似た雰囲気を持っているが、電子楽器を多用することで、現代のR&Bとして聴かせている。

続く、”Don't Give Up”は、今年発売されたデビュー・アルバム『All Things Work Together』も記憶に新しい、ヒューストン出身のクリスチャン・ラッパー、レクレーがゲストとして参加した作品。 シンセサイザーの音を重ね合わせて、荘厳な雰囲気を醸し出したトラックの上で、低い声域を強調したヴォーカルを聴かせるレイラのパフォーマンスが光る曲だ。厳かな雰囲気のトラックに乗って、軽やかに言葉を繰り出すレクレーの姿も格好良い。厳粛な雰囲気とダイナミックなグルーヴが一体化した良曲だ。

また、ティファニー・ガッシュとのデュエット曲”What U Need”は、メアリーJ.ブライジの作品を彷彿させる、ヒップホップの要素を取り込んだ重厚なトラックが魅力的な楽曲。シンセサイザーを使った重いビートに乗って、艶めかしい歌声を響かせるミディアム・ナンバーだ。サビで聴かせる硬い声による荒っぽい歌唱が、メアリーJ.ブライジにそっくりなところも面白い。脇を固めるティファニーの歌唱が、彼女のパフォーマンスを引き立てている点も見逃せない。

そして、本作の収録曲では少し異色なのが”Won't Let It Go”だ。アコースティック・ギターの演奏を軸に据えたバック・トラックに乗せて、淡々と歌う彼女の姿が魅力のミディアム・バラード。しなやかなメロディはダニーの作品を思い起こさせるが、サビのところでヒップホップのライブのようなコール&レスポンスを盛り込んで見せるなど、ほかの曲とは一味違う演出が加わっていて面白い。21世紀を生きる彼女の感性と、往年のジャズやソウル・ミュージックのエッセンスがうまく混ざり合った佳曲だ。

今回のアルバムは、流麗なメロディに繊細さと強靭さを兼ね備えた歌声、きめ細やかな歌の表現が合わさった、シンプルで味わい深い楽曲が揃っている。そこに、シンセサイザーを駆使した現代的なサウンドを得意とするティファニー・ガッシュのプロダクション技術が加わり、70年代のソウル・ミュージックを彷彿させる美しいメロディと、2017年のR&B作品らしいモダンなサウンドが同居した、懐かしさと新しさが同居した作品に仕上がっているのが面白いところだ。この、往年のソウル・ミュージックをベースにしながら、新しい音を積極的に取り入れる姿勢が、彼女の魅力なのだろう。

リスナーに新鮮な印象を与えつつ、繰り返し聴きたいと思わせる普遍性も兼ね備えた面白い作品。ヒップホップに慣れ親しんだ若い人から、新しい音楽に抵抗のある年配の人まで、あらゆる世代の人に触れてほしい、2017年のクラシックだと思う。

Producer
Lalah Hathaway, Tiffany Gouche

Track List
1. Honestly
2. Don't Give Up feat. Lecrae
3. Change Ya Life
4. What U Need feat. Tiffany Gouche
5. Call On Me
6. Won't Let It Go
7. Storm
8. y o y
9. I Can't Wait



Honestly
Lalah Hathaway
8th Floor Production
2017-11-03