2014年にソロ名義でリリースした”Happy”が世界的なヒットとなり、その後も、映画「ミニオンズ」シリーズや「ドリーム」などの映画のサウンドトラックをプロデュース。それ以外にも、ダフト・パンクやカルヴィン・ハリスの作品で自慢の喉を披露している、売れっ子ミュージシャンのファレル・ウィリアムス。そして、彼と組んだプロダクション・チーム、ネプチューンズの名義で、ジェイZやノー・ダウト、宇多田ヒカルなどにヒット曲を提供してきたチャド・ヒューゴ。彼らにシェイ・ヘイリーなどのメンバーを加えたバンドが、このN.E.R.D.だ。

デビュー前から、ネプチューンズが携わった作品のレコーディングやライブなどで腕を振るってきた彼らは、2002年にアルバム『In Search Of...』を発表。乾いた音色を使った軽快なトラックが魅力のネプチューンズとは全く異なる、荒々しいギターの演奏が光る”Rock Star”などのヒット曲を残すが、 商業的には今一歩の結果に終わる。その後、2004年に『Fly or Die』をリリース。同作からシングル・カットされた”She Wants to Move”がQ-ティップやデ・ラ・ソウルなどが名を連ねる、ネイティブ・ダンの面々を起用したリミックス・ヴァージョンも含めヒット。また、2008年には『Seeing Sounds』、2010年には『Nothing』を発売している。

このアルバムは、前作から約7年ぶりとなる通算5枚目となるスタジオ・アルバム。リアーナケンドリック・ラマー、エド・シーランといった、今をときめく人気ミュージシャンが顔を揃えた、ヒット・メイカーらしい豪華な作品になっている。

アルバムの1曲目は、ファレルに加え、トリッキー・スチュアートのところで活動していた、カーク・ハレルが制作に携わった”Lemon”。ゴムボールのように跳ねるビートと、ピコピコという電子音を組み合わせたトラックは、クリプスの”Grindin'”などで一世を風靡した、2000年代初頭のネプチューンズを思い起こさせる。しかし、ドラムン・ベースを連想させるビートや、曲調を次々と切り替えてリスナーの度肝を抜く手法は、ヒップホップの枠に捉われないN.E.R.D.っぽい。変則的なビートをしっかりと乗りこなすリアーナの存在も見逃せない。

これに対し、グッチ・メインウェイルという、重くパンチの効いた声が魅力のラッパー二人が参加した”Voilà”は、乾いたギターの音色が心地よいアップ・ナンバー。ギターやベースを使って、ロックの要素を盛り込むスタイルは、デビュー作のころから変わらないN.E.R.D.らしいものだ。肩の力を抜いたラップで、軽快な伴奏に溶け込んだ2人のラップもいい味を出している。

また、フューチャーを招いた”1000”は、アーハの”Take on Me”を思い起こさせる、軽快な伴奏が格好良いアップ・ナンバー。途中で細かく刻んだ声ネタを盛り込んだり、クイーンの”We Will Rock You”を連想させるフレーズが飛び出すのも面白い。大胆な発想で強烈な印象を残しつつ、ポップスとして完成させる彼らのスキルが発揮された良曲だ。

そして、本作の隠れた目玉が、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした”Don't Don’t Do It!”だ。カーティス・メイフィールドの”Tripping Out”を彷彿させる、しっとりした伴奏の上で切ない歌声を聴かせたと思いきや、途中からパンク・ロックに切り替わる奇想天外な曲。今をときめくケンドリック・ラマーが、唸るようなギターの演奏をバックに歌う光景は必聴。

個性的なサウンドで多くのヒット曲を生み出してきた、ネプチューンズやファレルの作品とは一味違う、ドラムン・ベースやグライム、パンク・ロックといった、色々な音楽のエッセンスを取り入れた音楽性が魅力のN.E.R.D.。久しぶりの新作でも、彼らの持ち味は変わっていない。

しかし、今回の作品では”Lemon”のように、ヒップホップのトレンドと呼応したような作品が目立っている。それは、彼ら地震がトレンドを意識したことも大きいが、ブラッドオレンジソランジュをプロデュースし、ゴリラズのアルバムに多くのラッパーが参加したように、ロックやエレクトロ・ミュージックとヒップホップやR&Bの距離が縮まり、混ざり合った曲が増えたことも大きいと思う。そんな、色々なジャンルの音楽が混ざり合った時代を先取りしつつ、流行とは一定の距離を置いた作品に落とし込んでいることが、彼らの音楽の魅力だと思う。

新しいトレンドを生み出してきた彼らの、本気が伺える佳作。これまでの作品同様、商業的に大きく成功するタイプの作品ではないが、今後のヒップホップやR&Bのトレンドを先取りした演奏が楽しめる。音楽のファッションショーといった趣のアルバムだ。

Producer
Pharrell Williams, Chad Hugo, Kuk Harrell, Mike Larson, Rhea Dummett

Track List
1. Lemon feat. Rihanna
2. Deep Down Body Thurst
3. Voilà feat. Gucci Mane and Wale
4. 1000 feat. Future
5. Don't Don’t Do It! feat. Kendrick Lamar
6. ESP
7. Lightning Fire Magic Prayer
8. Rollinem 7's feat. André 3000
9. Kites feat. Kendrick Lamar and M.I.A.
10. Secret Life Of Tigers
11. Lifting You feat. Ed Sheeran




No One Ever Really Dies
N.E.R.D
Sony
2017-12-15