本作に収録されている”24K Magic”や”That's What I Like”が立て続けにヒットし、2016年11月にリリースされた作品ながら、ケンドリック・ラマーの『DAMN.』に続く、2017年にアメリカで2番目に売れたアルバムとなったブルーノ・マーズの『24K Magic』。次々と新作が発表されるアメリカの音楽市場で、長く親しまれる作品となったこのアルバムから、新たにシングル化されたのが、この”Finesse”だ。

ブルーノが率いるプロダクション・チーム、シャンプー・プレス&カールとステレオタイプスがプロデュースしたこの曲は、ガイやベル・ビヴ・デヴォーなどを思い起こさせる、跳ねるようなビートと電子楽器の音色が格好良い、90年代初頭に流行したR&Bのスタイル、ニュー・ジャック・スウィングを連想させる、軽快なトラックとキャッチーなメロディが光るダンス・ナンバー。今回のリミックス版では、原曲のトラックやメロディは大きく弄らず、2017年のシングル”Bodak Yellow”がローリン・ヒル以来、約20年ぶりとなる女性ラッパーによる全米ナンバー・ワン・ヒットとなった、カルディBのパフォーマンスを加えたものになっている。

カルディBといえば、男性顔負けのハードなラップが持ち味。だが、この曲では彼女のアグレッシブな側面は残しつつ、ニュー・ジャック・スウィングを意識したビートに合わせ、リスナーを煽って見せるなど、いつもより軽やかで表情豊かな一面を見せている。また、そんな彼女のラップと呼応するように、ブルーノもしなやかで色っぽいヴォーカルを聴かせている。この曲で聴けるパンチの効いたラップとダイナミックなヴォーカルの組み合わせは、斬新なサウンドと、それに負けないパワフルなパフォーマンスで、多くの人の度肝を抜いた、デビュー当時のガイを思い起こさせるものだ。

この曲は、彼が『24K Magic』で見せた、80年代終盤から90年代初頭に流行したR&Bへの、強い傾倒を象徴する作品の一つだ。しかし、この曲が単なる当時の音楽の焼き直しに終わらないのは、共同制作者であるステレオタイプスの豊かな経験による部分が大きい。彼らはジェイソン・デルーロやオマリオンなどの作品を手掛ける一方、韓国のSHINeeやEXO、日本の赤西仁といった、アジアで絶大な人気を誇るミュージシャン達と多くの楽曲を作ってきた。テディ・ライリーがEXOに楽曲を提供し、ゴスペラーズや三代目J Soul Brothersなどがニュー・ジャック・スウィングの手法を取り入れた楽曲を発表するなど、現在も80年代や90年代に流行したスタイルのR&B作品がヒットしているアジアでの経験が、彼らの音楽を単なる当時のリメイクでは終わらない、現代の若いリスナーに向けた新鮮な作品にしていると思う。

各地の文化に合わせ、色々なスタイルの音楽が生まれ、他の地域に波及している2010年代を象徴するようなヒット曲。日本のリスナーには懐かしさすら感じさせるサウンドとメロディが心に残る良質なリミックスだ。

Producer
Shampoo Press & Curl, The Stereotypes

Track List
1. Finesse(Remix) feat. Cardi B