ドレイクやパーティーネクストドアのようなヒップホップ、R&B畑のアーティストから、ジャスティン・ビーバーのようなポップ・スター、バッドバッドノットグッドのようなファンク・バンドに、ケイトラナダのようなクリエイター、フランク・デュークスやボイ・ワン・ダなどのプロデューサーまで、多彩な才能を輩出し、世界の音楽市場で存在感を強めているカナダ出身のミュージシャン達。

同国発の音楽は、メジャー・レーベルが扱うものに留まらず、インターネットなどを経由して公開されるインディーズのミュージシャンでも台頭。インターネット上で発表した楽曲がブレイクのきっかけとなったドレイクのほか、モーリス・ムーアやJRDN(ジョーダン)のような、コアな音楽ファンをターゲットにしたミュージシャンも数多く登場している。

2017年12月に4作目の録音作品『Give Me One More』を発表したライズも、そんなカナダ出身のアーティストの一人。パキスタン生まれの彼は3歳の時にアメリカに移住、13歳のときにトロントへ移り住み、以後同地を拠点に活動していた。そんな彼は、2014年に初のミックス・テープ『Session One』を発表。同作がアメリカの音楽情報サイトに取り上げられると、その繊細でスタイリッシュな作風が注目を集めた。以後、新作がリリースされるごとに、アメリカの音楽雑誌などで紹介されてきた気鋭の若手だ。

今回のアルバムでも、これまでの録音同様、地元のプロデューサーを数多く起用し、自身もペンを積極的に執るなど、自身が制作に深くかかわった、意欲的な作品になっている。

本作の収録曲で最初に目を引くのは、彼自身がソングライティングとプロデュースを担当した”Outside of Us”。洗練されたトラックはドネル・ジョーンズやカール・トーマスっぽくも聴こえるし、ささやきかけるように歌うスタイルはマックスウェルの姿がダブって見える、2000年代初頭に流行した大人向けのしなやかなR&Bの手法を踏襲したアップ・ナンバー。川のせせらぎのようにしなやかなメロディのバックで、色々なギミックを盛り込んだトラックが鳴り響く面白い作品だ。

これに対し、アルバムに先駆けて公開された”Lil Lavish”は、重いドラムやベースの音を軸にしたトラックをバックに、けだるい歌声を披露するミディアム・ナンバー。ラップを織り交ぜることで、曲にメリハリをつけつつ、陰鬱な雰囲気を演出する技術が光る良曲だ。彼の作品を数多く手掛けているローズの作るトラックは、レコードからサンプリングしたような音を盛り込むことで、90年代のヒップホップのような空気を醸し出している。

そして、ライズとローズに加えシャーが制作に参加した”Instances”は、ダフト・パンクを起用したウィークエンドのヒット・シングル”I Feel It Coming”によく似ている、エレクトロ・ミュージックを取り入れたモダンなビートと、繊細な歌声の組み合わせが心地よいアップ・ナンバー。煌びやかな伴奏をバックに、淡々と歌う姿が印象的な、どこか物悲しい雰囲気のダンス・ミュージックになっている。

しかし、本作のハイライトは何といってもスロー・ナンバーの”Induce”だろう。ピアノやシンセサイザーの音色を巧みに組み合わせたロマンティックなトラックの上で、甘くささやきかけるライズの姿が魅力的なバラードだ。シンプルなトラックに乗せて、艶めかしい歌声を聴かせる手法はマーカス・ヒューストンやトレイ・ソングスのようなR&Bシンガーを彷彿させる。

彼の音楽は、アメリカのR&Bをベースにしつつ、そこに含まれる様々な技法の組み合わせを変えることで、同国の音楽とは一味違う楽曲に仕立てている。また、歌とラップを両立する技術や、武骨な声のラップ、ヴォーカルで見せる繊細な表現や甘い歌声など、多彩な表現を使い分けられることが、彼の音楽にバラエティをもたらしていると思う。

4作目にして、高い完成度と表現の幅を兼ね備えた楽曲を披露した稀有なアルバム。90年代、2000年代のR&Bが持つ、シンプルだけど煌びやかなサウンドを取り入れた、懐かしさと新鮮さを感じる佳作だ。

Producer
Laffey, Lais, ROZE, SHER

Track List
1. Hit Me
2. Outside of Us
3. Lil Lavish
4. Instances
5. Diamonds Tell No Lies
6. Induce
7. Baby Love