トロント出身のシンガー・ソングライタ-、マイケル・ミロッシュと、デンマーク出身の音楽クリエイター、ロビン・ハンニバルによる音楽ユニット、ライ。

2000年代前半から活動している、実績豊富な二人によって、2010年に結成されたグループは、ハンニバルがミロッシュのヴォーカルに興味を持ったことをきっかけに活動を開始。

その後、ロス・アンジェルスに活動拠点を移した二人は、インターネット上に複数の楽曲を投稿。高い実力を持ちながら、正体を明かさない謎の音楽グループとして、音楽通の間で注目を集めた。

そして、2013年になるとユニバーサル・ミュージックから、初フル・アルバム『Woman』をリリース。シンセサイザーを多用した神秘的なサウンドと、シャーデーを彷彿させるスタイリッシュなヴォーカルが高い評価を受け、複数の国でヒット。この作品で正体を明かしたハンニバルは、ソングライターやプロデューサーとして、ケンドリック・ラマーやカルヴィン・ハリスなどの作品で起用されるようになり、2017年にはグラミー賞にもノミネートしている。

このアルバムは、彼らにとって5年ぶり2作目のスタジオ録音。ハンニバルがグループを離れ、ミロッシュのソロ・ユニットとなったものの、音楽性は前作のものを踏襲。様々な国のミュージシャンを招き、シンセサイザーと生音を巧みに組み合わせた、大人向けのR&Bを制作している。

アルバムに先駆けてリリースされたのは、キング・ヘンリーが鳴らすグラマラスなベース・ラインが、ファンクの名曲”Seven Minutes of Funk”っぽくも聴こえる”Taste”。ベースを軸にしたスタイリッシュな伴奏をバックに、セクシーなヴォーカルを披露するアップ・ナンバーだ。曲の途中でベースの音を抜き、ヴォーカルにフォーカスを当てるなど、凝った演出が面白い。

これに対し、もう一つのシングル曲である”Please”は、ミロッシュによるピアノの弾き語りを核にしたミディアム・ナンバー。静かにリズムを刻むドラムなどを組み合わせ、ミロッシュの歌とピアノを強調したシンプルな作品だ。ピアノの弾き語りというと、ノラ・ジョーンズやアリシア・キーズを連想するが、彼女らの音楽に比べると、ジャズやソウルのテイストを弱め淡々と歌うスタイルが印象的だ。

また、6曲目の”Song For You”は、ポロポロとつま弾かれるギターの音色と、キーボードを使った伴奏のコンビネーションがお洒落なミディアム。ギターやキーボードなど、繊細な音色の楽器を組み合わせながら、一つ一つの音をしっかりと聴かせるアレンジ技術と、丁寧な歌唱が心に残る曲だ。

そして、太いベースラインと、電子楽器の落ち着いた音色が心地良いミディアム・ナンバー”Stay Safe”は、シャーデーを連想させる重厚だけど洗練された演奏が心を揺さぶる作品。メロディや演奏は奇をてらわないシンプルなもので、歌と演奏をじっくりと聴かせることに重きを置いている。

5年ぶりの新作であり、ミロッシュのソロ・ユニットになって初のフル・アルバムとなる本作。しかし、新体制になって初のアルバムとなる作品だが、彼女らの音楽性はブレずに安定している。匿名で作品を発表し、多くの人に愛されていた初期のスタイルを大切にし、それを発展させたことが、この作品のクオリティを高めているのだろう。

シャーデーやミント・コンディションなど、多くのミュージシャンが、生演奏と電子楽器を組み合わせて洗練されたR&Bを生み出していた、90年代を思い起こさせる良質なアルバム。じっくりと歌やメロディを堪能したい人には、うってつけの佳作だ。

Producer
Michael Milosh, King Henry, Thomas Bartlett

Track List
1. Waste
2. Taste
3. Feel Your Weight
4. Please
5. Count To Five
6. Song For You
7. Blood Knows
8. Stay Safe
9. Phoenix
10. Softly
11. Sinful





Blood
Rhye
Loma Vista
2018-02-02