2013年のメジャー・デビュー以降、着実に成果を積み上げ、2016年の『Wings』と2017年の『Love Yourself : Her』で、その名を世界に知らしめた、韓国発の7人組男性ヴォーカル・グループ、BTS(漢字圏では「防弾少年団」表記)。

2017年の終わりには、『Love Yourself : Her』に収録されている”Mic Drop”を、日系アメリカ人のDJ、スティーヴ・アオキがリミックスして再リリース。ビルボードのシングル・チャートで28位に入り、アジア地域発のヴォーカル・グループとしては、史上初となるゴールド・ディスクの認定を受けた。

本作は、同グループのラップ担当、J-Hopeの初のソロ作品。BIGBANGのV.I.やKARAのKoo Haraと同じ光州出身。彼らと同じ指導者の元でダンスの腕を磨いてきたという、ラッパーとしては異色の経歴の持ち主だ。デビュー前には、ストリート・ダンスの大会で何度も優勝しており、ラップ担当でありながら、ダンスの練習では、コーチの代わりにメンバーを牽引することもあるなど、BTSの特徴である、歌やラップと複雑なダンスを組み合わせる、独特のスタイルを確立するのに一役買ってきた。

今回のアルバムでは、楽曲の大半を彼自身がプロデュース。脇を固めるクリエイターには、ビッグヒットの看板プロデューサー、Pドッグや、BTSの数多く手掛けているシュープリーム・ボーイの他、エピック・ハイなどの作品に参加しているドックスキンなどを起用。ラップとダンスの両方でグループを支えてきた彼にとって初となる、本格的なヒップホップ作品になっている。

アルバムの1曲目は、ドックスキンがプロデュースを担当した”Hope World”。四つ打ちっぽいビートと、ギターやシンセサイザーを組み合わせた爽やかなトラックの上で、表情豊かなラップを聴かせる彼の姿が心に残るアップ・ナンバーだ。グループの曲では滅多に聴けない荒々しいラップから、軽やかなヴォーカルへと繋ぐ技術と、ワイルドなラップをポップに聴かせる演出が光っている。子供のころからヒップホップに傾倒する一方で、世界屈指の人気ポップ・グループの一員として経験を積んできた、彼の持ち味が発揮された良作だ。

続く”P.O.P (Piece Of Peace) pt.1”は、ソカを連想させる明るい音色と、ダディー・ヤンキーやピットブルの作品にも似た、陽気なビートが心地よいミディアム・ナンバー。ラテン音楽の要素を取り入れて、ポップにまとめつつ、地声を使った鋭いラップで楽曲を引き締める演出が心憎い。

また、本作に先駆けて発表された”Daydream”は、BTSのヒット曲でも辣腕を振るってきたPドッグのプロデュース作。ニュー・ジャック・スウィングを彷彿させる軽快なビートで幕を開けたと思いきや、カルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol. 1』を思い起こさせる、ディスコ音楽の要素を盛り込んだトラックに繋いでいく演出が面白い。ポップで軽快なビートに合わせて、緩急をつけたラップを聴かせるJ-Hopeの技術が光る佳曲だ。

そして、シュープリーム・ボーイをフィーチャーした”항상 (HANGSANG)”は、ミーゴスグッチ・メインのスタイルを取り入れた、電子楽器による跳ねるようなビートが格好良い曲。アメリカ南部のヒップホップを意識したトラックに合わせ、ドスの効いた声で攻撃的なラップを畳み掛ける姿が印象的。アメリカで流行しているスタイルをそのまま取り入れながら、人気ポップ・グループの一員らしい、大衆性を感じさせるパフォーマンスを聴かせてくれる良曲だ。

このアルバムを初めて聴いたとき、真っ先に思い浮かんだのはSKY-HIのアルバム『Marble』のことだ。AAAで様々な年代、趣向のファンと向き合いながら、様々な価値観を持つ人々の心を惹きつける表現を磨き上げ、自らの音楽の糧にしたSKY-HIと、BTSの一員として、ポップス市場の一線で活躍しながら、グループで積んだ経験を自分の音楽に還元したJ-Hope。ルーツも経歴も環境も違う二人だが、ポップスの世界で得た経験を盛り込んで、自身のヒップホップを確立した点はよく似ている。

ポップス畑での成功という稀有な経験を活かして、ほかの人には作れないヒップホップを作り上げた野心的なアルバム。欧米のアーティストの背中を追いかけてきたアジアのヒップホップ・ミュージシャンが、彼らにはない独自性を見出し、具体的な作品に落とし込んだ一つの成功例だと思う。

Producers
J-Hope, Pdogg, Adora, DOCSKIM, Hiss Noise, Supreme Boi

Track List
1. Hope World
2. P.O.P (Piece Of Peace) pt.1
3. Daydream (백일몽)
4. Base Line
5. 항상 (HANGSANG) feat. Supreme Boi
6. Airplane
7. Blue Side (Outro)