同じハイスクールに通っていた面々で結成。その後、メンバー交替を繰り返しながら、地元を中心に多くのライブを行い、豊かなバリトン・ヴォイスと滑らかなハイ・テナーが織りなす、美しいコーラスで名を上げてきた、アトランタ出身の4人組ヴォーカル・グループ、112。

93年にショーン・コムズが率いるバッド・ボーイと契約すると、95年に映画「Money Train」のサウンド・トラックに収録されている”Making Love”で、華々しく表舞台に登場した。

また、96年にアルバム『112』を発表するとノートリアスB.I.G.などをフィーチャーした”Only You”や、アーノルド・ヘニングスがプロデュースしたバラード”Cupid”などが立て続けにヒット。その後も、ショーン・コムズ作のノートリアスB.I.G.への追悼ソング”I'll Be Missing You”に客演する一方、自身の名義でも”Dance with Me”や”Peaches & Cream”などのヒット曲を発表。2007年以降はバッド・ボーイを離れ、複数のレーベルから作品をリリースしてきた。

本作は、2005年の『Pleasure & Pain』以来、実に12年ぶりとなる通算5枚目のスタジオ・アルバム。といっても、彼らはこの12年間にメンバーの大半がソロ作品を発表し、色々なミュージシャンの楽曲に参加するなど、精力的に活動し、力を蓄えてきた。このアルバムでは、SWVAfter7ラトーヤ・ラケットの作品を配給しているeOneをパートナーに選び、プロデューサーにはブライアン・マイケル・コックスやケン・ファンブロといった、90年代から活躍するクリエイターを起用。一世を風靡した112のサウンドをベースにしつつ、2017年に合わせてアップ・トゥ・デイトした楽曲を聴かせている。

アルバムの実質的な1曲目となる”Come Over”は、ベティ・ライトとザ・ルーツのコラボレーション・アルバムにも携わっているショーン・マクミリオンが参加したスロー・ナンバー。メロー・ザ・プロデューサーとエクスクルーシブスが手掛けるトラックは、電子楽器を使ったシンプルなビートだ。90年代後半に流行したスタイルのトラックを使いつつ、これまでの4人の作品ではあまり聴けなかった、強くしなやかなヴォーカルを披露する手法が新鮮だ。線が細く色っぽい歌声が魅力の4人が、力強いパフォーマンスも使いこなせるようになったことに、時間の流れを感じさせる。

続く、”Without You”は、ビヨンセやアッシャーのような大物から、クリセット・ミッチェルやジニュワインのような通好みの名シンガーまで、多くの歌手の作品にかかわってきたエルヴィス・ヴィショップが制作を担当。シンセサイザーを使ったシンプルなトラックは、”Come Over”に似ているが、ヴォーカルのアレンジでは、彼らの繊細でしなやかな声を活かした、緻密な編曲技術を披露している。彼らの代表曲”Cupid”のフレーズを取り入れた点も含め、90年代から活躍する彼らの持ち味を尊重しつつ、それを現代向けにアレンジしたセンスが印象的だ。

そして、本作に先駆けてリリースされた”Dangerous Games”は、”Without You”も手掛けているエルヴィス・ヴィショップと共作したバラード。グラマラスで滑らかなヴォーカルと、美しいハーモニーの組み合わせは、112というよりボーイズIIメンの新曲っぽい。繊細さとしなやかさを兼ね備えた歌声で、ダイナミックな感情表現と正確無比で重厚なコーラスを披露するスタイルは新鮮だ。

だが、本作の目玉は何といっても”Both Of Us”だろう。マライア・キャリーやアッシャー、クリス・ブラウンなどに楽曲を提供してきたブライアン・マイケル・コックスのプロデュース、ゲスト・ヴォーカルとして、112と一緒に90年代以降のR&Bシーンを盛り上げてきたジャギド・エッジが参加したこの曲は、ロマンティックなトラックをバックに、美しいメロディを個性豊かなヴォーカルが歌い上げる豪華なバラード。ヴォーカル・グループが好きな人なら、最初の一声を聴いた瞬間に涙腺が崩壊すること間違いなしの、経験を積んで老獪さを増した8人のヴォーカルが堪能できる名バラードだ。強烈な個性がウリのラッパーやソロ・シンガーが流行っている2017年には貴重な、歌の技術で勝負した名演だ。

今回のアルバムは、これまでの作品同様、スマートで繊細なヴォーカルや、ヒップホップをベースにした硬質なトラックを軸に据えつつ、時に大胆に感情を吐き出し、時に力強く歌う場面や、分厚いハーモニーを聴かせるアレンジなど、旧作では見られなかった表現にも挑戦している。バッド・ボーイ時代から続くヒップホップをベースにしたスタイルと、経験を積んで深みを増した表現が融合したことが、本作に新鮮さと奥深さをもたらしていると思う。

若者向けのヒップホップをバックボーンに持ちつつ、大人向けのミュージシャンへと成長を遂げた4人のパフォーマンスを思う存分堪能できる良盤。ヴォーカル・グループに厳しい時代と言われる時代でも良質な音楽の魅力は変わらないと感じさせる、強い説得力のある音楽だ。

Producer
Bryan-Michael Cox, Marcus Devine, Elvis Williams, Ken Fambro etc

Track List
1. Intro
2. Come Over
3. Without You
4. Dangerous Games
5. Both Of Us feat. Jagged Edge
6. True Colors
7. 112/Faith Evans Interlude
8. Wanna Be
9. Still Got It
10. Lucky
11. 1’s For Ya
12. Thank You Interlude
13. Simple & Plain
14. My Love
15. Residue



Q Mike Slim Daron
112
Ent. One Music
2017-10-27