ヴィヴィアン・グリーンことヴィヴィアン・サキーヤ・グリーンは、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のシンガー・ソングライター。

子供のころからピアノを演奏し、自作曲を生み出していた彼女は、13歳の時に4人組の女性ヴォーカル・グループ、ユニーク(Younique)に加入。97年にはボーイズIIメンの97年作『Evolution』の収録曲”Dear God”でソングライターとしてデビューすると、その後はソング・ライターやバック・コーラスとして活動、ジル・スコットなどのツアーに帯同するなど、多くの仕事をこなすようになった。

このアルバムは、2015年の『Vivid』から約2年ぶりとなる、通算6枚目のスタジオ・アルバム。前作も扱っている自身のレーベル、メイク・ノイズからのリリースで、配給は前作に引き続き、クリセット・ミシェルやジョニー・ギルの作品を配給しているヴァージン傘下のキャロライン。プロデュースは彼女に加え、他の作品にも携わっているクワメ・ホランドやフィリップ・ランドルフが担当し、ゲストには ミュージック・ソウルチャイルドやシャリッサ・ザ・ヴァイオリンディーヴァが名を連ねた、本格的なソウル作品担っている。

アルバムの実質的な1曲目は、初期のカニエ・ウエスト作品を思い起こさせる、ソウル・ミュージックをサンプリングしたような伴奏が格好良い”Vibes”。声ネタなどを多用し、ヒップホップ色を強めたトラックと、その上でゆったりと歌うヴォーカルが心地よいミディアム。クリセット・ミッシェルシリーナ・ジョンソンなど、ヒップホップを取り入れたスタイルのソウル・ミュージックに取り組んでいる女性シンガーは少なくないが、この曲は他の人の作品よりもワイルドな印象。

また、本作に先駆けてリリースされた”I Don't Know”は、ウェイン・ワンダーやルシアーノなどのレゲエ・シンガーを彷彿させる甘酸っぱいメロディと歌声、陽気でまったりとした雰囲気のトラックが心に残るスロー・ナンバー。レゲエ歌手には伴奏に合わせて、柔らかく歌う歌手が多い中、所々で力強い歌声を響かせる姿が印象的。

だが、本作のハイライトは何といってもフィリップ・ランドルフが制作に参加した”Happy With You”だろう。シンセサイザーを軸にしたシンプルな伴奏をバックに、丁寧にメロディを歌う彼女の姿が印象的なスロー・ナンバー。ギターやドラムの生演奏が主体の50年代から、延々と使われてきた古典的なアレンジとメロディを、豊かな表現力と歌声で新鮮な音楽に聴かせる技は圧巻の一言だ。

そして、ミュージック・ソウルチャイルドを招いた “Just Like Fools”は、同曲の路線を踏襲したバラード、グラマラスで器用な歌が魅力のヴィヴィアンと、柔らかい声と武骨な歌唱が魅力のミュージックの個性がぶつかり合う、ダイナミックなバラード。高い技術とパワーを兼ね備えた両者の持ち味が遺憾なく発揮された名演だ。

彼女のアルバムは、シャンテ・ムーアレイラ・ハザウェイといった歌唱力をウリにした女性シンガーと比較しても保守的な作品に映る。緻密ではあるが、奇抜なアレンジは皆無で、彼女がキャリアをスタートした90年代のR&Bをベースに、ヴォーカルの表現を駆使して楽曲に様々な表情を与えている。その姿は、アレサ・フランクリンやエッタ・ジェイムスといった、ずば抜けた歌唱力を武器に、色々な曲に魂を吹き込んだ名シンガーを思い起こさせる。

「歌」の可能性を極限まで突き詰めた、高い実力を持つ歌手による本格的なヴォーカル作品。斬新なサウンドが次々と生まれる2018年では歌の持つ無限の可能性が堪能できる数少ないアルバムだ。

Producer
Vivian Green, Kwame Holland, Phillip "Phoe Notes" Randolph

Track List
1. Overture
2. Vibes
3. Promise
4. I Don't Know
5. That's What Love Can Do
6. 1st Time (Again)
7. Happy With You
8. Just Like Fools [Revisited] feat. Musiq Soulchild
9. Chances
10. Mutual Feelings feat. Charisa the Violindiva
11. Supa Dope Fresh Beat Show (Interlude)
12. Sunglasses
13. Stop Sleeping (See the Light)



Vgvi
Vivian Green
Make Noise Llc
2017-10-06