80年代にクラブ・ヌーヴォなどを手掛けていた、フォスター&マッケルロイが主催するオーディションの合格者で結成。1990年にアルバム『Born to Sing』で華々しいデビューを飾った、カリフォルニア州オークランド発の4人組ガールズ・グループ、アン・ヴォーグ。

メンバー全員がリード・ヴォーカルを執れる高い技術とスター性、曲の途中でリードとコーラスを切り替える大胆で緻密なアレンジ。往年のドゥー・ワップ・グループを思い起こさせる端正の取れたヴォーカルと、有名ファッション誌から貰った「Vogue」の名前にふさわしい、洗練されたヴィジュアルが魅力の彼女達。ストリート色の強いファッションと、ヒップホップを取り入れた華やかな音楽性で人気を集めたTLCとは対極の、大人っぽい雰囲気がウリのグループとして、多くの人の記憶にその名を刻んだ。

しかし、2000年以降はメンバーの脱退やソロ転向などで、グループの活動は停滞。2002年には初のクリスマス・アルバム『The Gift of Christmas」を発表し、2004年にはアルバム『Soul Flower』を発売するが、商業面では苦戦。その後は、ライブや各人の活動に軸足を移すようになる。

このアルバムは、そんな彼女達にとって14年ぶりとなる通算7枚目のフル・アルバム。残念なことに、2011年に収録曲の一部が公開されたものの、後にお蔵入りになったEP『Rufftown Presents En Vogue』に入る予定だった楽曲は収められていない。だが、新たに録音された作品は、彼女達のヒット曲を生み出してきたフォスター&マッケルロイを中心に、元サムシン・フォー・ザ・ピープルのカーティス・ウィルソン、元メンバーのドーン・ロビンソンと組んだ音楽ユニット、ルーシー・パールも話題になったラファエル・サディークなど、彼女達と一緒に90年代のR&Bシーンを盛り上げてきた面々が参加。それ以外にも、ドクター・ドレの『Compton』で辣腕を振るっていたディム・ジョインズを起用するなど、西海岸出身の新旧の敏腕クリエイターが顔を揃えた力作になっている。

収録曲で最初に目を惹くのは、フォスター&マッケルロイがプロデュースした”Deja vu”だ。ロドニー・ジャーキンスのプロデュースで、2001年にソロ歌手としてデビュー、後にグループに加入したローナ・ベネットと、ソロ作品の発売経験もあるテリー・エリスがペンを執ったアップ・ナンバーだ。ピート・ロックやマーリー・マールを仕事を彷彿させる軽快なヒップホップのトラックの上で、艶めかしい歌声を響かせる3人の姿が印象的。複雑なヒップホップのグルーヴを巧みに乗りこなす、絶妙なさじ加減のメロディも見逃せない。

これに続く”Rocket”は、プロデュースをカーティス・ウィルソン、曲作りにニーヨとウィルソンが担当したスロー・ナンバー。電子楽器を多用したスタイリッシュなトラックと、みずみずしい歌声をじっくりと聴かせるスタイルは、カーティスが在籍していたサムシン・フォー・ザ・ピープルの音楽そのもの。その一方で、一聴したら忘れない、シンプルでキャッチーなメロディでは、ニーヨの持ち味がきちんと発揮されている。カーティスの色っぽいサウンドと、ニーヨの親しみやすいメロディ、透き通った歌声で精密なコーラスを聴かせる三人のヴォーカルがうまく噛み合った、良質なバラードだ。

また、スヌープ・ドッグが客演した”Have a Seat”は、キッド・モンローが制作に参加。ブリブリと唸るベースは、レイクサイドやオハイオ・プレイヤーズが70年代に録音したファンク・ミュージックを連想させる。ディスコ・サウンドをバックに、軽やかなメロディと息の合ったコーラスを披露する3人の姿は、70年代に一世を風靡したエモーションズにも少し似ている。2005年にスティーヴィー・ワンダーの『Time to Love』で軽妙なコーラスを披露していた彼女達らしい、ソウル・ミュージックとの相性の良さを感じさせる良曲だ。

そして、オークランドが世界に誇る名シンガー・ソングライター、ラファエル・サディークが手掛けた”I'm Good”は、本作に先駆けて公開された楽曲。生のバンドを使ったと思われる、太く荒々しい音色の伴奏をバックに、囁きかけるような歌声を聴かせる3人のパフォーマンスが魅力のバラード。一音一音の間に隙間を置いたメロディや、抽象的なフレーズを盛り込みながら、流麗なR&Bに纏めた構成は、トニ・トニ・トニの代表作『House of Music』を連想させる。

本作の聴きどころは、高いコーラス技術を活かした3人のパフォーマンスと、現代の流行を融合した曲作りだ。いまや、欧米のヒット・チャートではヴォーカル・グループが少数派になり、その希少なヴォーカル・グループも、ラッパーを交えたメンバー間の掛け合いがウリの、ソロ・アーティストの集合体のようなものになっている。その中で、彼女達は昔ながらのハーモニーで勝負している点は驚きだ。

また、本作は往年の輝きを懐かしむに留まらず、ディム・ジョーンズのような若いクリエイターを起用し、あくまでも「2018年の新作」として仕上げている。この前例や先駆者のいない作品に取り組んでいる点も、このアルバムの面白いところだろう。

「複数人の声を組み合わせることで、楽曲に色々な感情を吹き込む」という、言葉に起こすとシンプルだが、実践するのは難しい表現技法でポップスの歴史に名前を残した彼女達の新作にふさわしい、充実の内容。高いレベルの歌の技術と制作技術の両方が揃ったことで生まれた、味わい深い作品だ。


Producer
Foster & McElroy, Dem Jointz, Raphael Saadiq, Curtis "Sauce" Wilson etc

Track List
1. Blue Skies
2. Deja vu
3. Rocket
4. Reach 4 Me
5. Electric Cafe
6. Life
7. Love the Way
8. Oceans Deep
9. Have a Seat feat. Snoop Dogg
10. I'm Good
11. So Serious
12. Have a Seat (No Rap Ver)





ELECTRIC CAFE
EN VOGUE
EONE
2018-04-06