近年は自身名義の活動だけでなく、人気ロック・バンド、マルーン5のキーボード奏者として活躍している、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のシンガー・ソングライター、PJモートンことポール・モートンJr.

2017年には、自身の4年ぶりの新作『Gumbo』を発表。同作を引っ提げてツアーを敢行する一方、マルーン5の一員として『Red Pill Blues』を制作。前者はビルボード・チャートに入らない、通好みの作品でありながら、グラミー賞のベストR&B部門にノミネートし、後者は複数の国でゴールド・ディスクに認定される大ヒット作となった。

このアルバムは、本人名義では約1年ぶりのスタジオ・アルバム。新作の録音やツアーで多忙な日々の合間を縫って録音された本作は、オーケストラと組んで『Gumbo』の作品を再演した、スタジオ・ライブ作品だ。といっても、単なる既発曲の再演ではなく、収録曲の順序を替え、MCも盛り込むなど、スピーカーの向こうの観客を意識して演奏された、本格的なライブ録音になっている。

本作の1曲目は、『Gumbo』では3曲目に収録されている”Sticking to My Guns”。軽快なギターのカッティングに荘厳なストリングスを被せる演出は、これから始まるライブへの期待を掻き立てる。軽やかなリズム・セクションの上で、オルガンを演奏しながら歌うモートンの姿は、”Sir Duke”を歌っていたころのスティーヴィー・ワンダーによく似ている。楽しいライブの幕開けにふさわしい1曲だ。

続く”Claustrophobic”では、スピーカーの向こうの観客に語り掛けるところから始まるミディアム・ナンバー。オリジナル版でも印象的だった、年季を感じさせる音のシンセ・ベースを使いつつ、ヴォーカルはメロディを丁寧になぞるスタイルに切り替えている。原曲ではペルが歌っていたパートを、キーヨン・ハロルドのトランペットが担当してる点も見逃せない。

また、前作の最後を飾ったビージーズのヒット曲のカヴァー”How Deep Is Your Love”は、低音を抑え気味にして、軽妙なヴォーカルを強調している。ストリングスの音を控え、ハンド・クラップやオルガンの伴奏でリズムをとる演出からは、ゴスペルの影響も感じられる。ギターやコーラスのアレンジも含め、伴奏全体でグルーヴを生み出す手法は、ゴスペルからロックまで、あらゆるジャンルの音楽に取り組んできた彼の、音楽への深い造詣とセンスの良さを感じさせる。

そして、今作の最後を締めるのは、BJザ・シカゴ・キッドとハミルトンズをフィーチャーした ”Everything’s Gonna Be Alright”。『Gumbo』では6番目に入っていた曲だが、本作では一番最後に収録。多くの歌手に歌い継がれている名曲だが、本作ではライブのクライマックスを意識して、『Gumbo』版の泥臭さを残しつつも、高揚感のある演奏に仕立てている。コール&レスポンスなどのゴスペルで用いられる手法が、他の音楽でも通用することを教えてくれる。

このアルバムから感じるのは、多くのライブを経験してきたモートンの演奏能力の高さだ。難しいフレーズを正確に演奏するだけでなく、楽曲やライブ全体の展開を意識して緩急をつけたり、アレンジを加えたりする。この単なる手先の演奏技術を超えた、楽曲全体に目を配り、具体的なパフォーマンスに落とし込む技が、彼の魅力だと思う。

同じ楽曲でも、演奏の度に違った表情を見せる、ライブの醍醐味が思う存分楽しめる良質な録音。作品としての完成度が高さだけでなく、彼のステージを見てみたいと思わせる説得力もある名盤だ。

Producer
PJ Morton

Track List
1. Sticking to My Guns
2. Claustrophobic feat. Keyon Harrold
3. Religion feat. Lecrae
4. How Deep Is Your Love
5. First Began
6. Go Thru Your Phone
7. They Gon’ Wanna Come
8. Alright
9. Everything’s Gonna Be Alright feat.BJ the Chicago Kid & The Hamiltones