90年代には、”Right Here”や”Weak”などのヒット曲で、歴史にその名を刻んできた3人組ガールズ・グループ、SWVが2016年にリリースした、5枚目のオリジナル・アルバム。

2012年に発売された、彼女達にとって再結成後初めてのフル・アルバム『I Missed You』では、ケイシア・コールの”Let It Go”やジャズミン・サリヴァンの”Need U Bad”などをヒットさせたCainon Lambをプロデューサーに迎え、90年代のR&Bを彷彿させる親しみやすいメロディと、2000年以降の楽曲制作では欠かせない存在になったシンセサイザーの鋭いサウンドを巧みに融合して、往年のR&Bファンの期待に応えつつ、懐古趣味では終わらせない、21世紀のR&B像を提示してくれた。

4年ぶりとなる本作では、ケイノン・ラムに加え、新たにヒップホップのプロデューサーとして活躍しているビッグ・Dが制作を担当。前作の路線を踏襲しつつ、流行も適度に取り入れた2016年のSWVを披露している。

アルバムに先駆けて発表された”Ain’t No Man”は、しっとりとしたメロディを、可愛らしいコーラスと、ジャーメイン・デュプリの影響を伺わせる打ち込みのビートでポップに聴かせるミディアム・バラード。また、もう一つの先行リリース曲”MCE(Man Crush Everyday)”は、”Weak”と”Use Your Heart”を混ぜた合わせたような、切ないメロディと気怠い雰囲気が合わさったスロー・バラードを聴かせてくれる。どちらの曲も、彼女らの持ち味である口ずさみやすいメロディを大切にしつつ、新しいサウンドを確実に取り入れた、良質なR&Bだ。

また、それ以外の収録曲では、”Right Here”や”I’m So Into You”を意識したフレーズが飛び出すタイトル曲”Still”や、”Anything”の2016年版といった趣のミディアム”Love Song”ような曲がある一方、パトリス・ラッシェンの”Never Gonna Give You Up”をサンプリングした、四つ打ちのダンス・ナンバー”On Night”や、ハロルド・メルビン&ブルー・ノーツの”I Miss You”をサンプリングした爽やかなバラード”Miss You”など、マーク・ロンソンの”Uptown Funk”以降、再び盛り上がっているディスコ・ミュージックや往年のソウル・ミュージックを取り入れた曲が登場している。

90年代のキャッチーなメロディを大切にしながら、流行のサウンドを積極的に取り入れた本作は、往年のR&Bファンを納得させつつ、新しい世代に彼女達や90年代R&Bの魅力を伝える橋渡し役になりそうだ。


Track List
1. Still
2. MCE (Man Crush Everyday)
3. On Tonight
4. Let's make music
5. Ain't No Man
6. Love Song
7. When Love Didn't Hurt
8. Miss You
9. Leaving You Alone
10. What We Gonna Do





スティル
SWV
ビクターエンタテインメント
2016-02-10