シンガー・ソングライターのワフェンデと、DJやプロデューサーとしても活動しているニュープレックスによる、デンマーク発のソウル・ユニット、ブラック・ディランにとって1枚目のオリジナル・アルバム。

2015年にアルバムに先駆けてリリースされたシングル”Don’t Wanna Be Alone”では、初期のシュープリームスやヴァンデラスを彷彿させるポップでキャッチーなサウンドと、ジョン・レジェンドを思い起こさせる、泥臭い声で丁寧に歌うワフェンデの姿が印象的だった二人。待望のファースト・アルバムでは、同曲のような60年代以前のソウルから影響を受けたことを伺わせる楽曲が、数多く収められている。

アルバムの発売前にリリースされたもう一つのシングル曲“Hey Stranger”は、曇ったホーンの音色と、今時のR&Bっぽい打ち込みによる安定したビートを組み合わせて、アナログ楽器の温かい音色と精密な演奏技術で独特のサウンドを生み出した、モータウンの作風を現代に蘇らせたアップ・ナンバー。この他にも、フィンガー・スナップとウッドベースっぽい音色のベースを使って、街頭で演奏されていた初期のドゥー・ワップっぽく聴かせたミディアム”The One”。崩れ落ちるような歌と演奏で、初期のジェイムズ・ブラウンのダイナミックなパフォーマンスを取り入れつつ、ヒップホップで用いられるような硬いビートを使うことで、21世紀のリズム&ブルース像を示したスロー・ナンバー”She Said I Was A Failure”など、60年代以前のソウル・ミュージックやリズム&ブルースのスタイルをベースに、新しい楽器も積極的に使って、新しいブラック・ミュージックの形を感じさせる良曲が揃っている。

往年の黒人音楽を現代風にアレンジしたと聞くと、メイヤー・ホーソンやジョン・レジェンドを思い出す人もいるかもしれない。実際、ワフェンデの歌を聴くと、ジョンに似た部分も見受けられる。しかし、彼の歌声はロック・シンガーのように硬く、ソウル・シンガーに多いゴスペルの影響が薄いうえ、バックのトラックも音数を絞り込んだシンプルなもので、現行のR&Bとリズム&ブルースの中間にあるものだと思う。この点で、分厚いトラックを背景に、豊かな声を披露するほかのソウル・シンガーとは一線を画しているだろう。

イギリスのイーライ・ペイパーボーイ・リードやフランスのベン・ロンクル・ソウルに続く、欧州発のソウル・リヴァイバル。初期のルーファス・トーマスやバレット・ストロングのような、60年代初頭のソウルやリズム&ブルースを現代風にリメイクした、ありそうでなかったアルバムだ。

Track List
1. Hey Stranger
2. Get Up Child
; 3. Don’t Wanna Be Alone
4. You’re Getting Stronger
5. The One
6. She Said I Was A Failure
7. Who Got My Back
8. Keep Your Eyes On The Road
9. Papa
10. Hummin’





Hey Stranger
Black Dylan
Imports
2016-09-02